「――責務を果たすために、軍を率いてきてみれば……ク、フフッ、フフフ」
町の広場にて、サーヴァントらしき者たちが降り立つ。上空には無数のワイバーン。先の砦とは比べ物にならぬ量だ。
「何事だ」
『あぁよかった!間に合った王様!サーヴァントだ!五騎もいる!どうしよう!?』
『マシュ、リッカを護って!一瞬でも気を抜いてはダメよ!』
「はい……!」
「――――」
白き聖女、黒き聖女が相対する。
まるで鏡写しだ。湛える表情はまるで異なるが
挫けぬ光を灯す白
けして消えぬ憎悪を灯す黒
竜を描く旗
神を称える旗
その総てが――コインの裏表のようで。
「ッ――あはははははは!なんてこと!誰か、誰か私に水をかけて!ヤバいの、死んでしまうわ!私!」
「……」
「だって、だって滑稽なのだもの!何、アレ?ネズミ?ミミズ?ムシケラ?あはははははは!あまりにもちっぽけで笑っちゃう!」
けらけらと笑い続ける黒き聖女。その声音は間違いなく、先程聞いていたジャンヌのものだ
――だが
「ッ、く。フハハハハハハハハハハ!!!」
嘲笑の笑いを、高らかな笑いがかきけす。
「――なんですか、そこのサーヴァント。黙りなさい。耳障りな笑いを止めなさい」
鬱陶しげに呟く黒い聖女に構わず、笑い続ける器
「これが笑わずにいられるかたわけ!傑作だ!これが竜の魔女だと!?数多の同伴者に連れられる童にしか見れぬわ!待て、失せよ!死ぬ!笑い死ぬ!ハハハハハ!ハハハハハ!!」
「ぎ、ギルストップ!」
「どうどうです!」
突如として笑いだした器――どうやら、絵面が受けたらしい。裁定者のツボは解らない。
「――そう。アンタだったのね。ジルが言ってた、鉄馬で走る目障りな金色って言うのは」
「なんだ、保護者もいるのか。父親はどうした?赤っ恥をかかされて泣きつく胸板が見当たらぬが?」
「クス……」
「フッ」
鉄のドレスを纏うサーヴァントと、豪奢なサーヴァントが笑みを溢す。
「何が可笑しい――!!」
「ごめんなさい、あまりにもあちらが愉快そうだから」
「うむ、言動にて失した。許せ」
「チ――。まぁいいです。もともと、貴方達をおびき寄せるつもりでしたから」
「私達を――?」
「――貴方は何者ですか。竜の魔女……」
「ハァ?――この期に及んでまだそんな問いを投げるの?私に?私はジャンヌダルク。旗の聖女――」
「貴方は聖女ではない!私がそうではないように!」
(マスター、召喚の準備をしておけ。マシュは防衛だ)
(ギル……!)
(貴様らの命題は、生き残ることだ。今は生存に総てを尽くせ……マリー)
『解っています。あのサーヴァント達の情報が、もう少しあれば……』
(よい、旗持ちが時間を稼ごう)
「えぇ――私は聖女ではない。ジャンヌダルクでありながら、奇跡を信じはしない」
黒き旗を高らかに掲げる、黒きジャンヌ。
「私は魔女――竜の魔女!ワイバーンを、ドラゴンを、サーヴァントを駆り、このフランスを焦土へと変える魔女――!!」
「竜の、魔女……!」
「あなたはジャンヌなの!?違うの!?どっちなの!?」
「あら――貴方がマスターね?この残りカスの聖女、そしてデミ・サーヴァント――そこの目障りな金色の」
「答えて!」
「吐き気がするほど愚かですね。手を上げて指差されるのは学校だけですよ?」
「貴様は学校なんぞ通っていまい」
「――あぁ、目障り、耳障り。本当に胸糞の悪いサーヴァント!何よ、ギルギルマシンとか、ふざけてるの!?ワイバーンとタメを張れる速さとか、なに!?どんなデタラメ!?バカじゃないの!?」
「吼えるな吼えるな。手を上げて指差されるのは学校だけなのであろう?」
「我と語らいたければ請え、頭を垂れよ。その無礼にて頸刑に処してやろう」
器の挑発が続く。ジャンヌを名乗る魔女の顔が憤怒に染まっていく
――大分なれた。次の展開に備える
「あぁ――すまぬな。読み書きもできぬ無学の娘よ。復讐の魔女ごっこなどを楽しんでいた時分に我は空気を読んでおらなかったな」
――空を飛ぶ、飛竜の数を計算する
「――――」
「その紋様は手製か?よほど丁寧に教え込まれたと見える。アレか?机にかじりついて懸命にデザインしていたか?率直に言わせてもらえば無いな、微塵もない。救世の旗などに並ぶべくもない見るも惨めな愚連隊の旗よ。センスがない者の横好き程、見るに堪えんものはない」
(うわぁ……酷い煽りだ……愉悦の笑みだ……)
(先輩、あちらのジャンヌさん、肩が震えだしました……)
(怒ってる――怒ってるよ……!)
「――――黙って聴いていれば……好き放題宣いますね――サーヴァントの分際で――!!」
「そのサーヴァントの言葉にて激す貴様はなんだ?道化か?農民から、聖女から道化にクラスチェンジか?――あぁ」
見下ろすように。最後のだめ押しを見舞う。
「『救世から逃げ出した』その様が、その姿か?ようやく、救うより滅ぼす方が楽と知ったか?ハハハハハ!よし、上出来だ!白い方よりマシになったな!飴をやろうかそらやるぞ?あぁ、貴様は贅沢とは無縁であったなぁ!侘しい娘よ!言うに事欠いて蜥蜴の魔女――とはなァ!!」
ブチり、と。
何かが切れる音がした。
「――良いでしょう――気が変わりました!」
バッと旗を掲げる。
「そのウザったい口――この町もろとも焼き払ってくれる――――!!!」
「いけません!まだ町には人が――!!」
「焼き尽くせ、ワイバーン!!食らい尽くせ!!あらゆる生命を!!殺せ――――価値ある総てを!!」
振り下ろされる号令――だが
――もう、遅い。
「――!?」
空中に待機していたワイバーンは、その本領を発揮する前に『総てが』撃ち落とされたのだ
『ギル――!!』
「うつけが。我が何故、何の益にもならぬ言葉を交わしたと思う」
そうだ。時間を稼いでいたのは、空中のワイバーン『総て』に狙いを定めるためだ
数秒、隙ができるが―――彼女が実直で律儀な性格で助かった。
悠々と竜殺しの原典を選定し、一息に一斉発射
砦の時とは違い、血や肉が飛び散っては困るので速度を重視し、当たった場所を『削り取る』宝具をチョイスした。
肉を削り取る音速の宝具など、財の中にはいくらでもある。
――民達を殺させはしない
フランスを滅ぼさせはしない
そこに生きる人たちもまた……人間なのだから。
「――!!」
「そら、雑兵は一掃したぞ。将を出さねば貴様の首を飛ばすぞ?」
「――――金ぴかァ――――――!!!!」
怒りのままに旗を振り下ろす魔女。どうやら本番らしい
「バーサーク・ランサー!!バーサーク・アサシン!!バーサーク・ライダー!バーサーク・セイバー!!」
「殺せ――奴等を八つ裂きにしなさい――!!」
殺気立つ相手陣営
始まる。サーヴァント戦だ。
「田舎娘。マシュ。マスターを護れ。貴様らは盾だ、務めを果たせ」
「は、はい!」
「解りました!」
「マリーの苦労が水の泡とはな。よい自爆芸よ」
黄金の波紋から、白銀のハルバードを取り出す
「さぁ――凡英霊ども。来るがよい。クラス・ゴージャスのサーヴァント――英雄王・ギルガメッシュ」
気を引き締める。
「興の乗った王の偉容、存分に見せてやろう――!!」
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