人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「フォウ先輩、大丈夫かなぁ・・・」




『ボクが消えたときは・・・エアに伝えてくれ。約束、護れなくてごめんよ、って』



「私、どんな顔してエアちゃんに会えって言うのさ・・・」

「大丈夫」

「ティアママ・・・」

「彼女と、彼なら・・・大丈夫」

「・・・うん。そうだね!私と王子様みたいに、姫様と先輩も永遠不滅だよね!」

「えぇ。此処から先の未来を――信じましょう・・・」


空域

「縁を辿る、本当に良かったの?コブラ」

「コブラ?違うね。俺は――スペースアーチャーさ!」


「カズマァーっ!!カズマさぁーん!なんかグロイ!グロい柱みたいなのがいっぱいなんですけどカズマさぁーん!!」

「神霊を探知、排除」

「アハァハァかじゅまじゃーん!!だずげでみずでないでーっ!!」

「うるせぇ駄女神囮にでもなってろ!いやマジでなんだここ本当になんなんですかマジで迷いこんだんですかなんなんですか」

「さっき!私と似たような声を出す人がいました!それはともかく撃っていいですか!レッツ爆裂していいですか!」

「無限に痛め付けられる!なんて、なんて――なんて羨ましいんだ!!私も、私も来い!ガンガン!突いてこい!!突いてこぉい!!」

「うるせー!!こうなりゃ自棄だ、スティイィイール!!」


『ネプテューヌさん、無茶はしないでくださいね。というか、何故そんな無茶を・・・』

「それはね、私が女神で、誰かを助けずにはいられないからよ!」

『――そこはいるだけでダメージを受けます。ギリギリまで粘ったら撤退してくださいね』

「分かっているわ。カルデアの皆、どうか負けないで!」

【施しには正しき報いがあらねばならん。英雄王、我が力も一助とし、玉座に至るがいい】

(あの英雄王と共闘なんて滅多にない!滅多撃ちの開祖としてリスペクトせずにはいられないからな!よし!たまにははしゃいでみるか!)

「桐生チャーン!なんやおもろい事になっとるやないか!水臭いで!こないないべんと独り占めにするのはいけずっちゅうもんや!」

「いや、リッカに義理を遠そうとしただけでな」

「いくでぇ~!目ん玉抉りとったるわぁ!!」

「はぁ。――本当に、あんただけは、読めねぇなぁ・・・」

「リッカちゃ――――ん!!助けに来たよ――!!」

「リッカ!?いや、違う・・・誰だアレ!?」


「最短で、最速で、真っ直ぐに!一直線に!有給休暇と説明もバッチリ!繋いだ絆と手は、離すつもりは無いからね!さぁ!かかってこーい!!」

「ウジャウジャしてて気持ちわりぃパァアァンチ!!」

「末端、損壊」 

「ヌメヌメしてて鬱陶しいキィイィック!!!」

「末端、破壊」

「次があるかは解らねぇ。だからこそ、派手に暴れてやろうじゃねぇか!行けよお前ら!!テメェらが信じる、テメェらを信じろ!!」

「こんな所じゃ、終われねぇ!そうだろ、ミカァ!!!」

『うん。――お前、バルバトスって言うんだろ』

「――!?」

『コイツもなんだ。・・・全部寄越せ、お前の全部』

「やっちまえミカァ!!」

『いいよ』

ソードメイスがバルバトスに叩き付けられ、余波にてオルガが吹き飛ばされる

「ヴアァアァアァア!!!」

『あっ』

「オルガマリー・・・ここは食い止めるからよ・・・だからよ・・・」


――止まるんじゃねぇぞ――――


『オルガはもう、辿り着いてた・・・』


至尊

激震する、時間神殿――

 

 

 

あらゆる末端、あらゆる魔神が、あらゆる手段にて滅ぼされていく

 

 

溶鉱炉、情報室、観測所、管制塔、兵装舎、視覚星、生命院、廃棄孔。それら総ての末端が、新生と死による復活を繰り返し、中央の防衛に送る魔力が潰えていく

 

 

それらの要因は、召喚されし英霊、英雄王の財宝、有り得ざる次元より訪れしもの、様々である

 

 

彼等には巡ってきているのだ。取るに足らぬと捨て置いた星見の輝きが、形となって襲い来ている

 

 

因果応報、自業自得

 

それら総ての贖いを、その身をもって為し遂げている

 

 

――その先頭を走るのは、英雄王ギルガメッシュ

 

「綻びが生じる今こそ好機!放て!マルドゥーク!小賢しき防衛、貴様の主砲にて跡形もなく粉砕せよ!!」

 

その身に、姫たる魂を宿し、唯一無二の英雄王――そのマスター、サーヴァント達――!

 

 

『GAAAAAAAAA!!!』

 

 

惑星破砕主砲、エヌマ・エリシュを20%チャージし、胸のエネルギーコアから真紅の光線として撃ち放つ

 

僅かに残っていた防衛機構すらも力づくで捩じ伏せ、ソロモン王の玉座、その核心への道を拓く――!

 

 

「玉座への道、開けました!後は、突入するだけです!!」

 

【――行くよ、皆!この先に、私達の戦いのゴールがある!】

 

ギルギルマシンが更に加速し、転移場所めがけて唸りをあげる

 

「マルドゥークは此処で待機せよ!領域の脱出の足がなくてはな!」

 

『GuuuuuuAAAA!』

 

『承知しました。ご武運を、王』

 

『どうか、お気をつけて。私も、無事を願っております』

 

『やってやるのだわ!待っててあげるから、必ず帰ってくるのよ!』

 

「無論だ!!」

 

力強く頷き、アクセルを踏み込む

 

 

――行くよ、フォウ

 

(あぁ。――エア)

 

フォウと目線を合わせ頷き合う

 

(必ず、必ず皆で帰ろうね!ボクとの約束、絶対に護るんだぞ!)

 

――うん!さぁ、行きましょう!総ての決着をつけるために――!

 

『止める理由は何もない!僕の亡骸から産み出された積年の慚愧、哀しみから生まれた獣を――どうか、討ち果たしてくれ!』

 

『そろそろ総決算――皆様、商売繁盛大勝利と参りましょう♥』

 

『マシュ、リッカ。ギル・・・所長ではなく、私個人としてのお願いです』

 

毅然と、はっきりとオルガマリーは告げる

 

『――必ず勝って!誰一人、欠けることは認めません!』

 

「ふははははははは!!良かろう!その意地らしい願い、聞き届けてやろうではないか――!!」

 

 

総ての願いを束ね、今――英雄王達が総ての元凶に挑む――!!

 

 

 

 

「玉座の転移、完了しました!リッカ、マシュ、英雄王!最深部に向かいます!」

 

「・・・・・・」

 

力強くモニターを睨むロマンの背中を、ダ・ヴィンチが叩く

 

「大丈夫さ。私達の代表の彼等が負けるはずがない。信じてあげなよ」

 

「心配はしてないさ。・・・だからこそ、僕はこうしてここにいる」

 

懸命に指示を飛ばすオルガマリーの指に嵌められている、指輪を見やる

 

「必ず、誰も欠けない未来へ至ることができるさ――」

 

 

その言葉に、シバにゃんは力強く頷いた――

 

 

 

 

――其処は、余りにも美しかった

 

 

白き華の草原。空に輝く光帯。白き階段、荘厳なる玉座

 

「此処が――ソロモン王の玉座・・・」

 

息を呑むマシュ

 

そこは――獣がいる場所には似つかわしくない、余りにも美しく、壮麗なる光景に他ならなかった

 

三千年の輝きを誇る、静寂なる神殿

 

此処こそが、ソロモンの設立せし固有結界に他ならない――

 

【・・・】

 

その風景に目もくれず、リッカは真っ直ぐ玉座にいるソレを睨む

 

――獣の反応・・・!来ます!

 

それは、かつて垣間見たもの

 

監獄にて相対せし人類悪

 

人が人を憐れむ驕りを抱えし獣

 

「来たぞ。例えようも無い愚か者。何も残さぬ憎しみにて人類を焼き払った大馬鹿者――我等が滅ぼす悪、一の座を戴く憐憫なる獣」

 

英雄王の言葉に応えるように、辺りが漆黒に染まり、魔神と終末の風景に塗り潰される――!

 

 

【――そうだ。魔術王の名は捨てよう。もう、騙る必要はない】

 

黄金の人型、逞しき四肢。燃え盛る角、全てを従える全能感

 

【我等に名は無かったが。讃えるのならこう讃えよ】

 

胸に、陥没せし場所に抱く球体。恐ろしくも、理知的な声音で全てを圧倒する風格を醸し出す

 

 

【我等は星の極点へ至るもの。貴様らを糧とし、死と終わりを乗り越えし偉業を果たすもの】

 

ゆっくりと行きだし、今、その名を告げる――

 

グランドキャスターなど偽りの冠位。基は、人間が生み出した、人類史を最も有用に悪用した大災害――

 

【顕現せよ、祝福せよ。ここに災害の獣、人類悪の一つを成さん。即ち――人理焼却式。魔神王、ゲーティアである】

 

 

 

【人類悪顕現】

 

――人類悪。魔神王、ゲーティア

 

「ウジ虫風情が大仰に名乗ったものよな。人に扱われねば存在できぬ式の分際でよくもそこまで思い上がったものよ」

 

醸し出す風格に微塵も揺らがず、英雄王は吐き捨てる

 

(エア、ボクとコイツから離れないで。こいつはちょっと質が悪いから)

 

フォウが七色に輝き、エアの魂を庇護する

 

(君の戦いは、もうすぐだ。今はまだ、力を溜めておいて)

 

――うん!

 

【そうだ。私は、いや、我々は人の手によって作られた生命体だ。肉体を必要としない、高次の生命体。人間以上の能力を設定され、人間に仕えることを良しとした】

 

だが、とゲーティアは綴る

 

【それも過去の話だ。私は、お前たちには付き合えない】

 

「・・・――」

 

【人類最高の無能の王、ソロモンの知覚に同調し、我々はあらゆる悲劇を見た。多くの哀しみを、裏切りを、略奪を、結末を見た】

 

もう十分だと、ゲーティアは断じる

 

【もう十分だ。見るべきものはない。この惑星では、神ですら消滅以外の結末を持ち得ない。我々はもう、人類にも未来にも感心はない】

 

【――】

 

リッカが、震えていた。どうしようもないほどに、震えていた

 

恐れではない、畏怖ではない。それは――

 

【私が求めるものは、健やかな知性体を育む完全な環境だ】

 

――・・・

 

【この惑星は間違えた。『終わりのある命』を前提にした狂気だった。――私は極点に至る。46億年の過去に遡り、この領域に『天体』が生まれる瞬間に立ち会い、その全てを取り込み――【自らを新しい天体とし、この惑星を作り直す】】

 

明かされる、ビーストⅠの偉業の全貌、その本意

 

【創世記をやりなおし、死の無い惑星を作りあげる。それが我々の大偉業。――我々は憎しみから人類を滅ぼしたのではない。過去に飛翔するためのエネルギーと、天体の誕生に立ち会い、これを制御する一瞬にして無限の調整。これ程の計画には、膨大な魔力が必要だ】

 

それが、人類史。3000年にて栄えに栄えた、知性体の積み上げた総魔力量

 

【紀元前1000年から、2016年までの人類史の全てを魔力に変換できれば、それは星の始まりに跳ぶ魔力量になる】

 

人類を滅ぼす、焼却する理由はこの一点のみ

 

人類は、憎いから滅ぼされたのではない

 

その必要があったから滅ぼされた。遥かなるソラへ至るため、始まりのソラへと至るため

 

 

・・・奇しくも、それはエアの結論と真逆

 

 

未来と希望を求め、ソラの果てを夢見たエア

 

絶望と死を乗り越えるため、始まりのソラを目指したゲーティア

 

・・・近しくも、永遠に交わらぬ結論。二人は、余りにも結論を近しく、また遠きに置くモノであったのだ

 

【玉座を見るがいい。あれがお前達の生命の収束】

 

 

無限に重なりし、人類史そのもの。今の地球に、その光帯に勝る熱量は存在しない

 

それは正しく――大偉業の実現を意味していた

 

「フッ、随分と頭を使ったものよな。貴様の理想など、原初の母が既に実現していたぞ?」

 

【――何?】

 

英雄王は嘲笑う。死を、生命の悩みと苦しみを越えた、おぞましき生命の在り方を

 

「死を、哀しみを越えた生命体――ラフムと言ったか。肉体は強靭、死の不安はなく、また単一なため争いも起こらぬ。――貴様らの望む生命のカタチを、一足先に垣間見た。ゲスの一言だったがな」

 

【――我等は結論を異とする。新たなる天体で、必ず、健やかな知性体を】

 

「たわけめ。いくら知性や力を得ようが、貴様は人間から生まれしもの。その人格や結論は人間となんら変わらぬものだ。故に――完全なる創生など出来よう筈もない。新たなる天体に至ったとしよう、新たなる生命を作ったとしよう。そして必ず貴様らはこの結論に至ろうさ」

 

侮蔑と愉悦をもって、魔神王の愚行の結末を突きつける英雄王

 

「『こんな筈ではなかった』と・・・未来永劫、完全にして磐石なる創生などは夢物語よ。『この世に、完全なる生命など何処にもおらぬがゆえに』。不完全な人間から産み出されたお前もまた、真理に至ることなく消えて失せるが定めなのだ」

 

完全なる生命などいない。完全なる事象は存在しない

 

今のエアには、その言葉が理解できた

 

・・・全能を手にしながら、何一つ喜びを得なかった彼と対話したからこそ、彼の事象の綻びが解る

 

この世界に、完結する単独の生命はない

 

だからこそ、完全なる生命など有り得ない。至れる筈もない

 

何故ならば――

 

「『完全なる生命』など、生命とは呼ばぬ。不完全な者が出逢い、切磋琢磨し、後に残る価値あるものを織り成す。だからこそ、かけがえのない宝が生まれる。ただ満たされただけのものから生まれる完全、美しいものから生まれる美しいものに何の意味があろうか。人は、歴史は『不完全が織り成す紋様である』――その事実に気付けず、人を知らぬまま哀しみを乗り越えんとした獣よ。――此処で貴様は、何を掴む事なく死に果てるのだ」

 

――そう。この世界に完全なものはない。不完全な者が出逢い、支え合い、世界を構成し、成り立っていくことこそが正しき在り方。

 

だからこそ、ゲーティアの偉業の終末が見えてしまう

 

完全な生命は、永遠に生まれない。完全に至った生命は、最早生命ではなく現象、概念である

 

だからこそ・・・完全な生命を望む偉業は・・・永遠に叶わぬ絵空事であるのだと。エアとギルは、思い至っているのだ――

 

――けれど、それを乗り越えようとした、ゲーティアの根底にあるものは・・・

 

【――・・・英雄王。最早お前との対話に意味を見出だす必要はない。敬意は払った。ようやく報復の時間だ】

 

 

玉座が輝く。大気が、揺れる

 

【聞いての通り、我々はとても忙しい。この先に、本命の仕事が待っているのでね。頭の悪い貴様らでも分かるだろう?片付けたはずの仕事が戻ってくるなど、不愉快の極みだと】

 

絶望の、熱量が牙を剥く

 

【時は満ちた。原始惑星の再設計案も完成した。そして言うまでも無く――】

 

――・・・

 

【――・・・無駄話は、これで終わりだ】

 

 

僅かに訪れた、空白

 

見ていた。こちらを。・・・確かに

 

 

「第三宝具、展開を確認。あれは・・・止められませんね、マスター」

 

【止める?】

 

拳を鳴らし、マシュの隣に立つは、最後のマスター。藤丸リッカ

 

いや――世界を信じる人類悪。アジ=ダハーカ

 

【違うよ。私達はいつだって――『乗り越える』】

 

人類総ての熱量を前にして、心揺らがず

 

【マシュ、――私達を護って。私が、マシュを護るから】

 

「先輩・・・」

 

【――愚かな。自ら希望を燃やすとは。だが好都合だ。もろともに死ね。ここで――】

 

【うっさい。鹿頭】

 

ゲーティアの理屈を、首切りサインで返す

 

【御託はもういいよ。私達が死ぬか、あなたが死ぬか。これはそういう戦いなんだから。あなたが見たもの、あなたが感じたもの。あなたが信じたもの。――全部どうでもいい】

 

ビシリ、と、指を突きつける

 

【私は、あなたをぶっ潰しに来たんだから。さっさと御自慢の人類史ビーム、撃てばいいじゃん。――私達は絶対に死なない】

 

それが当然と言わんばかりに――

 

【私達の人生は、これからなんだから!!】

 

リッカ総ての魔力、無限に等しい泥の魔力放出を以て、ゲーティアに相対する――!

 

【望みとあらば叶えよう。人間の悪性、悪辣と愚かしさが凝固し、体現されし我等の過ち、人間の愚行の体現。不始末は我々がつける。その魂の一片まで、浄化され、消え去るがいい】

 

 

――マスター、マシュ・・・!

 

《此処が分け目よ。奴等の研鑽が実を結ぶか、もろともに死ぬか。――裁定の時だ》

 

王は、動かない。二人の決めた未来を、ただ見据えている

 

(・・・エア)

 

そんな中、フォウが静かに告げる

 

(――リッカちゃんと、マシュを・・・喪いたくないかい?)

 

――フォウ・・・?

 

(最後の確認さ。――皆で、結末を迎えたいかい?)

 

【では御見せしよう。貴様らの終わり。この星をやり直す。人類史の終焉】

 

「それは、総ての瑕、総ての怨恨を癒す――我等が故郷――」

 

――うん!

 

【我が大願成就の瞬間を――!第三宝具、展開。誕生の時来たれり。其は全てを修めるもの】

 

【立ち上がれ、我が盾。――我が決意】

 

――フォウも、マスターも、マシュも、ギルも・・・皆で!

 

【芥の様に燃え尽きよ――!】

 

【誰も死なせない――!死なせるもんか!!】

 

「顕現せよ――!!」

 

 

――皆で、一緒に・・・!未来へ行きたい!

 

 

(そっか。――そうだね)

 

《・・・お前の本懐、今こそ果たすがよい》

 

(あぁ。――今度は――)

 

 

 

【アルス・アルマデル・サロモニス!!】

 

【『蒼天囲う小宇宙(アキレウス・コスモス)』――!!!!!】

 

(――護って見せるとも!)

 

・・・人類愛が、今――

 

 

「『今は遥か理想の城(ロード・キャメロット)』――!!!!」

 

結末を変えるため、飛び立つ――!

 

 

――フォウ――っ!!

 

《――》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・それは、時間が止まったかのような光景だった

 

 

光帯の熱量を防ぐ物質は今の地球上には存在しない。だが、それはあくまで物理法則の範疇だ

 

 

彼女の護りは精神の護り

 

 

その心に一切の穢れなく、また迷いがなければ、溶けることも、ひび割れることもない無敵の城壁となる

 

 

 

分かっていた

 

分かっていたとも

 

 

彼女の城壁ならば、必ずや我が第三宝具を防ぐだろうと

 

 

そして

 

 

【うぉぉおぉおぉおぉおぁああぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!】

 

『――――!!!』

 

 

「先輩っ――フォウさんっ――!!」

 

 

人類愛と、人類悪が熱量を防ぐ。世界そのものと、泥と、尊き願いを使って、盾を構えし少女を守る

 

 

人類が産み出せし悪が

 

魂が産み出せし愛が、彼女を護っている

 

 

【――言ったもんね。皆で、帰るって】

 

悪に貶められた少女が、マシュと自らを熱から護り

 

(悪いな。お前にやれるものは何一つ無いんだよ!)

 

獣であるはずの何者かが、生命を守護している

 

 

人類史の熱をマシュが防ぎ、マシュと龍の体を獣が防ぎ、マシュと獣の心を、龍が護る

 

【これなら――!!!】

 

人理の、熱が、弱まる

 

「――あぁ。また・・・先輩に護られちゃいました」

 

はにかみながら、涙を流しながら、マシュが笑う

 

 

「私は、だめですね。いつも、先輩に護られてばかりだったから・・・最後に、一度くらいは・・・」

 

【最後じゃないよ】

 

泥を焼き尽くされ、体に伝わる熱を堪えながら、リッカが笑う

 

【これから、ずっと――一緒だから】

 

「――はいっ――!!」

 

 

・・・互いに結ばれた絆と願いは、今、奇跡を起こし

 

 

(――あのとき、ボクは見ているだけだった。一度、大切なものを取りこぼしていた)

 

獣が、頷く

 

(――ありがとう。エア。君のおかげで――ボクは、今度は・・・護ることができた――)

 

獣が、姫から貰ったものは。それほどまでに大きく、かけがえなく、大切なものだった

 

 

それが、今――

 

 

【・・・――】

 

 

・・・見るがいい。光帯の熱量に晒された。人類史の全てを叩き込まれた

 

「はぁっ、はぁっ、――はあっ・・・!」

 

だが、その精神(こころ)は何者にも侵されず。雪花の盾は傷一つなく、彼女の心を、身体を護り続けた

 

【ふーっ・・・!ふーっ・・・!ふーっ・・・!】

 

 

・・・当然。人間二人にこんな真似が出来る筈はない。いくら力があろうと不可能だ

 

 

その奇跡を

 

たった二人で、人類史の熱量を防ぐ奇跡を成し遂げられたのは――

 

――フォウ!!フォウっ!!

 

(大丈夫。聞こえてるよ。無事だし、ボクはボクだし・・・キミの、親友さ)

 

 

――あぁ、あぁあ!フォウっ――!!

 

 

人類愛に至りし、小さな獣の存在が在ったのだ――

 

 

 

【――――――】

 

 

「目の前で起きたことが信じられぬか、人類悪」

 

 

硬直するゲーティアに、英雄王が問い掛ける

 

 

「無理もあるまい。これが貴様が見ようとしなかったもの。人類史の中で紡がれ、連なり、哀しみと憎しみと共に回る紋様――至尊と言う」

 

 

王が、穏やかに告げる

 

「貴様が見落とし、見失い、不要と断じたものは・・・その実、紛れもなく価値のある人間の営みであったのだ」

 

【至尊・・・――それが、レメゲトンが見つめ、人類から得た答えだと・・・?】

 

 

そんなものが、人類悪を人類愛に変え・・・人間二人を、人類史そのものから護ったと・・・?

 

 

【――良いだろう。レメゲトン、その答え、その結論。極点に至る前の記録として胸に留めるに相応しい議題だ】

 

ゲーティアは告げる。もう一度、それを見せてみろ、と

 

【ただの一度だけ。その魂の答えを耳にしよう。その返答を以て、私達は極点へと旅立つ。――さぁ、来るがいい。お前達の旅路を、その決議を見せてみよ・・・!】

 

 

――・・・王

 

言葉は、いらなかった。そっと、王と目線を交わす

 

《うむ。――事此処に至って、言葉はない》

 

そっと、エアの魂を抱き寄せる

 

《思うがままに告げるがよい。研鑽の果て、旅路の答え。――此処に示す時だ》

 

――はいっ!!

 

瞬間、爆発的に魔力が高まる

 

【――!】

 

「ゲーティアよ。我が至宝、我が魂の真体、拝謁する栄誉を許す。人類を見守るために組み上げられながら、人類を嘆き、滅ぼす決議を下した愚か者よ。――貴様が不要と断じ、目の当たりにしなかったものの真意を知るがいい。――我が至尊と認めるもの。――秘匿秘蔵の姫、此処に披露宴としてやろう!」

 

英雄王の周囲に、数多の因子が集う

 

英雄姫の魂を、その器を輝かせし数多の力が集結し、カタチを成していく――!

 

エルキドゥより返還されし、七つ目の『界聖杯』

 

アンデルセンより託されし、『貴方のための物語』

 

器に備わる『冠位』の資格

 

 

王が持つ、黎明の力にして姿『神話礼装』

 

 

そして――

 

 

『ふふっ。いつかの願い、果たさなくてはね。飛びっきりのおめかし、私にも手伝わせて?』

 

 

かつて誓った、友よりの『願い』

 

『今こそ、素敵な未来を、誰もが望む夢を叶えましょう』

 

――ありがとう。式ちゃん!・・・賢王、今こそ・・・貴方から託された力と願いをカタチにします!

 

取り出したるは『天命の粘土板』。正しき資格を持ちし者に、窮極の王権を授ける至高の宝――!

 

 

――我が研鑽の成果、遥かなる時の果てにて示します!

 

最後の鍵は――エアの『魂』そのもの。転生し、魂でありながら生を謳う存在

 

その『未来を変えうる今の生命』としての力を振るい――今、英雄姫は獣を討つ者の力を宿す――!!

 

《謳え、エア!!王の名の下に!!我が傍にて目の当たりにし、手にしたお前の真理を此処に教授する時だ!!》

 

王の高らかな宣言に、揺るぎない決意を以て応える!

 

――はいっ!!今こそ、あらゆる憐憫に訣別を!!

 

『あなたのための物語』にその名が記され、総ての力が魂に集う――!

 

【――馬鹿な、その、姿は――】

 

 

・・・降臨し、顕現し、君臨せしは。遥かなる地よりこの世界に至りし転生者

 

『――今こそ世界に、誇りある我が名を告げる時刻!』

 

世界を愛し、慈しみ、受け入れ、許容し、在り方と尊さにて愉悦を成すもの

 

「えぇえ!?」

 

(あぁ――やっと、か・・・)

 

英雄王の傍らに在り、数多の世界にも無二の魂。人類最新の英雄姫にして――

 

『我が真名――慚愧より生まれし獣へ、手向けとして名乗りましょう!――ワタシの名は――!!』

 

獣を討ち果たし、遥かなるソラを夢見るもの。至尊の『冠位』を戴きし、叙事詩を彩りし魂――

 

『英雄姫――ギルガシャナ・ギルガメシア!世界の総てを認め、信じ、遥かな時空の果てまで寄り添う者也――!!』

 

 

至尊英雄姫エア――傍らに人類愛の獣を侍らせし、姫の名を戴く魂である――!




英雄姫エア

身長 171㎝ 体重 61㎏ 属性 秩序・善

スリーサイズ 86 55 84

性別 女性

クラス グランド

ステータス 筋力★ 魔力 ★ 耐久★ 幸運★ 敏捷 ★ 宝具 EX


クラススキル

裁定 EX

この世の全てを見定め、価値を決める。英雄王の在り方をスキルと化したもの

無価値としたもののあらゆる数値と能力を無力化し、価値ありと定めたものを獲得する

処断 EX

今すぐ終えるべき生命と定めたあらゆるものの全てを奪う。裁定にて無価値としたものに自動的に働く。概念、あらゆる能力や存在であろうとも、この絶対の決定からは逃れられない

獲得 EX

価値あるものと定めたものの所有権を絶対的に手に入れる王の法。無機物、概念、宝具、スキル。あらゆるものに作用する

転生者 ★

物語には有り得ぬ者。しかして、誰もが目の当たりにせぬ結末を導くもの

全ては、完全無欠の結末の為に

至尊 ★

エアが旅の果てに手にした在り方

魂の絶対性。どのような苦難や絶望に至ろうとも、けして、世界の全てを慈しみ、見守る想いは揺らがない

新しきを知る喜び。未知に胸をときめかせる本能。続く世界、広がる営み、そこに生きる人々の在り方そのものが、英雄姫の望む愉悦である  

スキル

カリスマA+

軍団を指揮する才能。その在り方は、神すらも尊きものと認める程に輝く

黄金律(富&体)A+

神と人の裁定者として造られし英雄王の女体。地上で最も美しい黄金律を誇る芸術(ギルガメッシュ談)。並ぶものなき至高の美。神ですら、この肢体に追従できるものは極めて少ない

一生を大富豪として生きる程の金銭が付いて回る。けしてひもじい想いはしない

魅惑の美声A+

聞くものの耳を蕩けさせる美声。異性、人間のみならず、異種、異生物にも作用する

フォウはメロメロである

魅了の魔眼A+

紅く、無垢に煌めく二つの眼差し。見るものを釘付けにする穢れなき視線を常に、無自覚に贈る

フォウは見られただけで死ぬときがある

扇動A+

大衆の気持ちを煽り、意のままに動かすスキル

人の善と理性に訴える真摯な叫びとして、姫の言葉はあらゆる全てに届けられる


宝具

全知なるや全能の星 ランクEX

英雄王の全てを見定め、決める在り方が昇華されたもの

宇宙の真理と合一したかのような英断も、前後不覚の愚行も、等しく王の裁定と為す

あらゆる真実や隠し事を、たちどころに看破する宝具である。常時発動


??? ランク★

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  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

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