人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「美味しいです!これです!この為に生きています!おかわりお願いします!」


「貴様、武田は良いのか?先に逝ったぞ?」

「お腹が一杯なら、誰も争いません」

『うむ!まことその通り!腹が満たされる以上の幸せは無い!分かっているな上杉アルトリア殿!』

「トータさんマジチート」

『・・・――ギル、あれは上杉ですから。アルトリアでは、ありませんからね』

「解っている。アーチャーの我でもあるまいに、鼻息荒く執着などするものか」

『おや・・・』

「極天にて別れは済ませた。我とセイバーの邂逅と離別はとうに終わっている。――我の求めるセイバーは、とうに手の届かぬ場所へ旅立ったのだ」

『ギル・・・』

「ま、だからといって無下にするという訳でもない。無礼講だ、新たな出逢いを楽しむまでよ。故にそうむくれるな。貴様の価値は変わらん。マルドゥークの操作、抜かるなよ」

『解っています!・・・ふふ、解っていますよ!』

――仲良しだね!フォウ!

(これがミステリアス・ヒロイン・エックスか・・・)

「お話は終わりましたか?おかわりください」

「――これがギャグにおけるセイバーなのか・・・」


ぐだぐだ八つ当たりの誠!

皆と一致団結し、武田騎馬隊を無事撃破したぐだぐだ一行

 

 

「まさに破竹の勢い!!これぞ天下布武!生前以上にヌルゲーな天下取りじゃのぅ!!戦国時代楽勝ゲーすぎワロタwwww」

 

調子をぶっこく織田一同は歩きに歩き、やがてとある海岸沿いにやってきた。波の音と、青い空がぐだぐだ一行を暖かく迎える

 

「ふむ、ここらで一つ自由時間を設けるとするか。敵地ではあるが、気を張ってばかりいては肝心要に緊張の糸が切れるやもしれぬ。適度な休暇、適切な労働こそがあるべき社会の姿よ」

 

「ホワイト!やっぱウルクとかいうバトルシティ統治してた王はひと味違うのぅ!」

 

王の言葉に意見を申し立てる者はいない。満場一致でひとまず休憩と相成ることになった。思い思いの時間を過ごすことになる一同

 

「マシュさーん。釣れましたかー?中々釣りを嗜むことは無いものでしたから私はさっぱりなんですがー・・・」

 

マシュと沖田はせっかくなので、海釣りを楽しむ。互いにやれぬ事をやってみようと一念発起した結果だ。「ノッブの他にカップリングを増やした方が良いです!はい!」といった企みは聞き流す

 

「私もです・・・釣り、単純そうに見えて奥がふか・・・あ!揺れてます!来てます!来てます!」

 

「本当ですか!?網!網!確保は任せてください!」

 

「よーし!マシュっと引き上げます!!」

 

年相応の無邪気さではしゃぐ二人の少女

 

「ノッブ――!!!」

 

「人面魚ノッブ――!?生き物こんなんばっかりですかやだ――!!」

 

「今日のご飯にできますか・・・?」

 

「絶対腹に来ますよごっふぅ!?」

 

「沖田さぁん!?」

 

釣りにもぐだぐだな粒子が蔓延し大騒ぎな混沌の呈を表す。そんな中対称的なのが・・・

 

「ほう。女子力を上げるためにのぅ。というか取り戻すくらいの女子力あったんじゃなリッカ先輩」

 

「ぐぬっ・・・!あ、あるもん!多分!」

 

「うはははは!構わん!そういうのはガンガンやるがよい!女子力とかそういうのじゃなく、新しいことに挑戦することはとても良いことじゃ!よいかリッカ、人間50年!若い頃はなんだってできるしやれる!好き嫌い食わず嫌いせず、諦めずやってみることこそが、人生を楽しむ秘訣じゃ!」

 

「・・・うん!ありがとう、ノッブ!」

 

「構わん構わん!わしは有能な人材大好きじゃからのぅ!とびきりの有能マスターを気にかけるは至極当然!これは聖杯を賜す瞬間が楽しみじゃ!だがリッカ先輩、人類悪とガチバトルってそういう意味じゃないと思うんじゃが!」

 

お茶を立て、互いに飲み合うリッカとノッブ。有能かつ優秀な人間、リッカをノッブは全力で気に入り、気にかけ、笑い合う

 

「んー、ぐだといったらなんというかたまに救いがたいほどキモオタになる在り方一つで善を為す等身大主人公だった気がするんじゃが・・・リッカ先輩程ぶっ飛んでなかった気がするんじゃがのぅ」

 

「他の時空の私かぁ・・・皆普通にマスターやってるんだろうなぁ・・・(遠い目)」

 

 

「少なくとも人類悪なんて御主だけじゃろ!サーヴァント相手や女神とガチれる一般人とか何それ怖い」

 

「やっぱり?だから藤丸『リッカ』なんだよね!」

 

 

そんなこんなで休息の一時を堪能する一同。で、我等の王はどうかというと・・・

 

 

「こいつを、姫さんにやってくれ」

 

樽に詰められた沢庵を、王に直接進呈するは土方である。生前より沢庵を気に入り、樽クラスで貯蔵するほどの沢庵ジャンキーなのが土方だ

 

「貢物か。御苦労、確かに受け取ってやろう」

 

「頼むぜ。ついでに、姫さんに一句考えてみた」

 

「・・・なんだと?」

 

こほん、と咳払いし、俳句を紙にさらさらと書き上げる

 

「『英雄姫 醸す輝き 白と金』。どうだ、中々のもんだろ。季語はないんで、川柳だがな」

 

「・・・・・・――」

 

「指揮を上げる姫さんが随分と別嬪さんだったもんでな。俺としては、声を掛けれなかったのが残念だ」

 

絶句する王と対称的に、フッ、と自信ありげにニヒルに笑う副長

 

鬼の副長、と呼ばれ、厳しい戒律や法度を敷いた土方ではあるが、無慈悲にして冷血なだけの人物ではない。むしろ、落ち着きがあり、優しい人だったといった評価が後世では知られていたりもする

 

その美形から女性にもててもててもてまくり、『モテまくってつらい』といった手紙をしたため送ったり、豊玉といった名前を持ち、俳句に嗜む文化的な一面もしっかりと持っている魅力的な人物であるのだ

 

その俳句の出来は・・・とにかくド直球、ストレートである。捻りなく、飾り気なく、情景をそのまま写し表したその句は後世に『下手の横好き』という評価を欲しいままにしている

 

「・・・う、うむ。ヤツも喜ぶであろうよ。しかと受け取ったぞ」

 

あまりのストレートさに困惑を表しながらも、確かに姫に対する供物を保管する英雄王

 

――わぁい!ありがとうございます!真っ直ぐで素敵な川柳をいただいちゃいました!たくあん!たくあんもです!

 

(川柳もだ!)

 

――ところでフォウ、別嬪さんってどういう意味?

 

(物凄く綺麗って事さ)

 

フォウの言葉に、自慢げに胸を張るエア。それはエアにとって当然の評価であるからだ

 

――この世で最も素晴らしい芸術!神と人が造りし至高の肉体ですからね!美しいのは至極当然ですよ!英雄王の女体!英雄王の女体なのですから!ふふん!魂のワタシも鼻が高いと言うものです!ありがとうございます!

 

ふふーんと鼻高々になり上機嫌となりフォウをうりうりする。そんな様子を微笑ましく思い目を細める

 

《うむ、傲慢とは何処までも無縁な魂よな。その器を賜せた所以がその在り方よ。・・・しかし、日本の俳句とやらはこれほど捻りのないものなのだな》

 

(いやいや、ヒッジが特別なだけでしょ)

 

――ワタシも詠んでみようかな!『王とフォウ なんだか響きが 似ているね』!どうかな!

 

(清々しいまでに直球というか所感だった!)

 

《字余りを除けば中々よ。確かに似ているな。うむ。筋が良いではないか》

 

(やっぱりエアに甘いんだなオマエ!)

 

――これは文化人ギルガメシアとしてワンチャンスあるかも!

 

「今度はカルデアで顔を合わせたいもんだな。薬膳の一つもくれてやらにゃ礼を失するってもんだ」

 

美女、特に胸の大きな別嬪さんに目がないヒッジ。無事エアは別嬪さん認定を賜るのだった

 

そんなこんなで休暇の時間は穏やかに過ぎていく――

 

 

「――む」

 

・・・とは、問屋が下ろさぬのがままならぬもの。一同に、真っ直ぐ突っ込んでくる小数なりし軍が一つ

 

「・・・敵襲か」

 

王が指を鳴らし、土方が銃と剣を抜き放つ

 

 

「あれは――・・・ハッ、見知った顔よ。腐れ縁も此処に清算されるようだな」

 

言葉通り、こちらに攻め入りしは・・・

 

 

「織田連中!織田連中だ!織田連中だろテメェら!心臓おいてけやぁ!!」

 

我等が兄貴、クー・フーリンが怒号を上げて進撃を為す――!

 

 

「うおわぁあぁあ!!!わしの心臓がぁあぁあ!?」

 

「落ち着いてノッブ!まだなにもされてないから!」

 

ドタドタと転げ回るノッブを宥めるリッカ、血を吐きくたばっている沖田をおんぶし合流するマシュ

 

「クー・フーリンさんが迫る一大事!なんとかして迎撃しましょう!あ、沖田さんは欠席で!」

 

「大丈夫沖田さん!?」

 

「だ、大丈夫です・・・ちょっと、生きるのが辛いだけで・・・こふっ・・・!」

 

「貴様がくたばるのは勝手じゃ。じゃがその場合、誰が代わりに割を食うと思う?わしらじゃ。じゃが貴様はそのままで良かろう。大して役にも立たんしのぅ」

 

「ノッブ本当覚えといてくださいよ・・・」

 

「兄貴が敵かぁ・・・!ケルト組、全員しゅうご・・・あれ?」

 

迎撃体制を整える一同だが、クー・フーリンが奇怪な動きを見せる

 

「――あ~、なんだよ。見張りの伝令より数が多いじゃねぇか。ここは退くしかねぇか」

 

突如踵を返し、撤退を始めてしまったのだ。開戦してすらいないにも関わらずである。その様子にポカンとする一行。――一人を除いて

 

《――釣り野伏せとやらか》

 

釣り野伏せ。小数の軍にて敵軍の前に姿を晒し直ぐ撤退、敗北を装いて所定の位置にまで敵軍を誘き寄せる。誘いに乗った敵軍を、辺りに仕掛けていた本命の軍の伏兵にて一網打尽にし討ち取る、日本最南端の戦闘民族が得意とする戦法だ

 

《となればあの狗は島津の因子を持つ、か。戦国という時代考証からして背後には一人か二人が控えていよう。島津の近場は・・・長宗我部、毛利であろうな。長宗我部はともかく、毛利はあの女狐か・・・うむ、見知った顔ばかりではないか》

 

斥候の顔ぶれを一目見た瞬間、たちどころに総てを見抜く英雄王。財ではなく、武力ではなく、この視点の広さ、慧眼にこそ王の真価は宿るのだ

 

『これは何かある!何かあります!コンラには解ります!英雄王!』

 

シークレット回線にてコンラが声を上げる

 

『お父様が背を向けて逃げるなんて絶対何かあります!お父様が臆すなんてありえません!私のお父様は最強なんだ!』

 

集中線と共にクー・フーリンを上げる息子コンラ。ムニエル三大イチオシサーヴァントのコンちゃんの言葉を笑いながら受け止める

 

――あからさまに怪しいのですが、追撃しますか?恐らく伏兵が・・・

 

《うむ、構わぬ。虎穴に入らずんば虎児を得ず。見えている地雷は踏むが王道、試しに引っ掛かってみようではないか》

 

窮地すら愉しむ王様スタイル。本来なら諫言すべき箇所ではあるが、エアはただ頷く。王ならば悪戯に窮地を見過ごさない。二手三手先を、必ず読んでいると信じている

 

《それでよい。サーヴァントどもに付与されている武将の因子が予測を射ているとすれば――この戦い、まこと容易きものだろうよ》

 

幸か不幸か、マスター達も意気揚々と追撃の体制を整え始めている

 

「しゃらくせぇ、踏み潰すぞマスター!」

 

「兄貴がやる気になる前に仕留めるんだ!槍を投げさせたら誰かが死ぬぅ!!」

 

『そうか?案外外れまくるかもだ。プロットアーマーの貫き方は教えてくんなかったんだよな師匠・・・』

 

「よーし!!わしに続けぇい!!」

 

一同が即座に駆け抜ける。好都合よと王は笑い、後に続く

 

《さて、如何な顛末が待っているのやら――》

 

――ちびノブの皆、何が起こるか分からないから今は待機していてね

 

『『『『ノブゥ・・・』』』』

 

一同は、クー・フーリンの背中を追いかける・・・!

 

 

「いやいやおかしいよね!?絶対あれ囮だよ!クー・フーリン程の大英雄が何もせずに退く理由がない!ギルなら分かっているのに何故何も言わないんだ!?姫様が戦術で君が戦略の筈だろう!?」

 

困惑するロマンを尻目に、座標を特定するマリーとダ・ヴィンチ

 

「王が自分の楽しみを優先するなんて当たり前でしょう。あえて突っ込んでいるのよ」

 

「あえて!?愉悦というやつかい!?」

 

「あぁ!大したものだ、どんな無茶もキテレツも、王ならば大丈夫という安心感とまた愉悦かという諦めが渦巻く!天才だからね、私情で辺りを巻き込む傍迷惑さは理解しているとも!」

 

「そうか!王様がそんなものだとしても僕のことは信じてほしかったなぁ神様!」

 

「え?王様の癖にやりたい放題?酷い王だ、そんな王は保管庫送りにしよう」

 

「ダビデ王は本当に黙っててくれないかな!?あなたは尊敬と同じくらい軽蔑されてるんだからね!『ダビデのような偉大な人物たれ、ダビデのような男にはなるな』って!」

 

「いやぁ、照れるなぁ。ところで子供は何人作るつもりかな?」

 

「シバ!追い払おう!僕と君ならできる!」

 

「はーい♥謎かけにてお義父様をブッ飛ばしましょー♥」

 

「お、これが親子の暖かい団欒かい?想像していたのより血生臭いんだなぁ!」

 

「所長止めてくださーい!!」

 

「落ち着きなさい。ムニエル、冷静にコーヒーでも飲んで」

 

「ヒステリー所長が若干恋しいー!!」

 

「おかしいなぁ。ワクチン、効いてないのかなぁ?」

 

後ろもぐだぐだなカルデアであった

 

 

 

 

 

~そんなこんなで

 

「あーあ、追い付いちまったか」

 

兄貴のあからさまな撤退に追い付き、気炎を上げる織田連中

 

「さぁ、島津とやら覚悟するのじゃ!首は貴様らにはやらんぞ!」

 

「あぁ、覚悟しな」

 

ニヤリ、とクー・フーリンが笑う

 

「――てめぇらがな」

 

同時に――

 

 

「!?何事じゃ!?」

 

辺りを揺るがす大爆音、大轟音と共に海岸線が激震する。辺りに無差別に砲撃が巻き起こり、砂浜に柱が立ち起こる――!

 

「砲撃!?そんな、何処から!?」

 

「落ち着け!隊列を乱すな!固まって互いの背中を護れ!」

 

土方の号令に即座に互いの背中をカバーし、被弾を徹底的に避ける

 

「この宝具損壊の扱い・・・――贋作者か。小癪な真似を」

 

マシュ達に被弾するルートの壊れた幻想を天の鎖にて貫き、滞空防御として爆散させる

 

――フォウ!離れないでね!

 

(分かっているさ。キミこそ、ピンチだと思ったらボクを頼るんだよ)

 

お互いの安全を確保しながら、ただ堪える――

 

「ふむ、中々攻めきれないのは当然か。・・・英雄王までいるとはな」

 

砲撃をひとしきり終えた後に歩み寄るは・・・エミヤ、長宗我部エミチカである

 

「やはり貴様か。抑止に扱われ、このような珍妙な部隊に扱われ、まこと体よき役者よな」

 

「・・・今回は本気で辞退したかったのだが」

 

「その身に宿せし因子は・・・『長宗我部』だな」

 

王の言葉に、ぴくりと反応する土方、そして沖田

 

「長宗我部・・・だぁ?」

 

「長宗我部・・・土佐?」

 

「そして貴様の戦法から鑑み・・・狗、貴様は島津であろう?」

 

更に告げられる言葉に、ゆらりと立ち上る――殺気

 

「「島津・・・―――」」

 

「あなたにしては迂闊では・・・いえ、あなたは迂闊が普通なのよね?あれ?どっちが貴方らしいのかしら?油断していない?油断している?」

 

困惑しながら姿を現すは、清純なリリィが出てきたと思ったらとんでもなく無垢サイコであったメディアである

 

『メディア女史・・・!』

 

オルガマリーが反応する。最近はファッションの手解きを受けているゆえ無理もないのだが

 

「あら、可愛らしいお声。無性に着飾りたいわ、えぇ」

 

「立ち位置が違うのは仕方あるまい。作者の数だけ我は在る。此度の我は最も愉快な我だ。まぁそれはよい。そやつは貴様の弟子なのだぞ、カルデアのな。毛利」

 

たちどころにぐだぐだ武将を見抜く王。――口にしたのは、きちんと意味があるのだ

 

 

――囲まれてしまいましたね。マルドゥーク神を呼び出し、乖離剣に終末剣を使用する準備を・・・

 

【くっ、こうなったらアーマーキャストオフで蹴散らすしか・・・!】

 

「こんな失敗、金ヶ崎以来なのじゃ・・・長政ェ・・・」

 

思い思いに対応する一同

 

補足しておくと、金ヶ崎の戦いとは織田信長の撤退戦である

 

妹であるお市を嫁がせ義兄弟の契りを結んだ浅井長政と共に挑んだ戦、そんな折に信長の耳に飛び込んできたのは『浅井、裏切り』という衝撃の伝令であった。これには流石の信長も仰天し

 

『嘘じゃろ?いや、嘘であるべし』

 

と取り合う事すらしないほどに困惑したという。だが、次々と舞い込むその情報に信じざるを得ず

 

『覚えとれよ長政のうつけめぇ!!』

 

捨て台詞と共に撤退を余儀無くされてしまった風雲児痛恨のミスである。尚、ここの殿はサルこと豊臣秀吉が頑張ったのは別のお話

 

だがまぁ、今はノッブのターンではない。その脇で、殺気を練りに練っている二人である

 

「おや、沖田さんの様子が・・・!?」

 

「ひ、ヒッジ?どしたの・・・わぶっ!」

 

無言で誓いの羽織を着込む沖田。洋装の外套を脱ぎ捨て、漆黒の羽織を肩よりかける土方

 

《こうなることは必然であった。ノコノコと怨敵の因子を掲げて現れたのが運の尽きよ》

 

ニヤリと笑う英雄王。――そう、読んでいた、読んでいたのだ。この展開をすでに。だからこそ、態々武将の名を呼んだのだから

 

 

島津、毛利、長宗我部。薩摩、長州、ついでに土佐。新撰組に名を連ねるならば、この忌名を見過ごす道理なし

 

何故ならば――

 

「「うぉおぉおおぉぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお――――――――――!!!!!」」

 

薩長絶対殺すマンこそが、新撰組の本分であるが故に――!!

 

 

「え、ちょ、何!?この二人、殺気まみれなのですけれど!?」

 

「薩長殺すべし慈悲はない!!えぇ、近藤さん!鳥羽伏見の借りを今ここで返しますとも!!」

 

いつもの緩さは縁側に捨て置き、決意と殺気にてエミチカを睨む

 

「長宗我部に言われても困るのだが・・・」

 

「土佐もなんとなく許しません!!」

 

「薩長同盟もあるのだ、致し方無しか・・・」

 

「薩摩に長州・・・てめぇらに骨の髄まで叩き込まれたなァ。剣と槍の時代は終わったと、口を滑らせたもんだが・・・」

 

目を血走らせ、左手にライフル銃を引き抜き、地獄から響く低音で唸りを上げる土方

 

「やべぇ殺気だな。師匠を思い出すぜ・・・つぅか島津とかオレ知らねぇよ!?」

 

「だが、俺だ・・・俺がいる限り新撰組は、・・・誠の旗は・・・――」

 

剣を引き抜き、真っ直ぐに突きつける――!

 

 

「俺の『誠』は終わらねぇ!!新撰組!!前進!!!俺が――新撰組だぁあアァァァァァァァァ!!!!」

 

唸りを上げ、二人のサムライが海岸を駆ける――!

 

 

・・・・・・其処からは、語るまでもない。生前の因縁に対し、信念と矜持を奮い立たせた二人の狼、対して聖杯に勝手に因子を押し付けられた異国の英雄

 

「ランサー覚悟!!滅ぶべし島津!!『無明三段突き』――!!!!」

 

「だから別に俺は島津じゃねえってぐはっ――!!!!」

 

全く同じ箇所に突き込まれる三段の突き。存在矛盾を起こし、事象崩壊を起こさせる『防御不能の魔剣』をうっかり受け止めてしまい致命傷を負う島津セタンタ

 

「なんで幼名なんだろうな――」

 

そんな今際の際の疑問を呟き、島津は粛清される

 

「うぅうぅうぅぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぁあ!!!!!」

 

「くっ!何発も弓矢を受けていながらまるで止まる気配が無いだと・・・!」

 

身体中に弓矢を食らいながらも狂気の前進を進めていく土方。誠の旗は不滅、己ある限り、新撰組は不滅

 

「斬れ!進め!斬れ!!進めェ!!!」

 

「ぐうっ――!!」

 

血塗れになり、身体中から血を吹き出しながら。鬼のごとき気迫と形相で刀剣による十字斬りをお見舞いし

 

「俺がァ!!新!!撰!!組だァァァァァァァ!!!」

 

銃口でエミチカを持ち上げラストシューティングめいて撃ち放つ――!

 

「これが、幕末の動乱を駆け抜けた魂か――」

 

身体を貫かれ、なすすべなく、ぐだぐだ要因を吹き飛ばした土方にて敗北を喫するエミチカであった・・・

 

【まずいよマシュ!メディアさんだけは私達で!女性にスプラッタは不味いから!】

 

「は、はい!覚悟してください今のうちに!」

 

「出きるだけ優しく御願い致しますわ!」

 

「「毛利――!!」」

 

「はやく――!!」

 

マシュとリッカに、五体満足で倒されるメディア

 

「あぁ・・・凄惨な散り様はステイナイトだけで充分・・・」

 

穏やかに、なんとか消え去るのであった――

 

「俺は死なん・・・!俺がある限り――新撰組は不滅だ・・・!!」

 

「はぁ、はぁ・・・やりましたよ、土方さん・・・」

 

――日本、凄まじいところです・・・これが、サムライスピリッツ・・・!

 

《島国の民族もつくづく侮れんな。変態とは日本の総称であったか》

 

『ノブッ!』

 

(先輩たちもいつか是非日本へ・・・そうだね。できれば現代にね・・・)

 

感嘆と畏敬と困惑が渦巻く海岸線の戦いは、此処に幕を下ろした・・・――




「お疲れ様ふたりと」

「こっふっ――!!!!」

ばたりとぶっ倒れる沖田さん

「沖田さ――――ん!?」

「うぅぉおぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」

ガッツで踏みとどまったものの身体中から血を吹き出し倒れる土方

「ヒッジ――――!?」


――ちびノブの皆!手当と治療を――!

『『『『ノッブぅ!!』』』』

ちびノブとマスター、マリーの医療魔術にてなんとか二人は一命をとりとめた・・・

(太く短く過ぎる・・・)

《気迫だけならウルクの民すら上回るやも知れんな・・・》

「終わりましたか?ならご飯にしましょう。美味しいわんこそばをお願いします」

『――これも、私なのですね・・・』

『なんだろう、この胸に去来するがっかり感は・・・』

ひたすらに食い意地を張る自らの醜態に、アーサー、騎士王が静かに恥じ入るのだった・・・

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