「ジル――!!」
オルレアンの居城、帰還を果たしたジャンヌは声を張り上げジルを呼び出す
「はっ!ジル・ド・レェめはここに」
「苛立つわ、腹が立つ!腸が煮えくり返って焼けただれてしまいそう!!なんとかしなさいジル!私のこの昂りをなんとかして!!」
猛り狂うジャンヌ。それを見てジルの巨大な眼は涙を浮かべる
「なんと痛ましい姿――過多極まる華美の黄金を目の当たりにして黒き崇高な輝きを汚されてしまうとは――」
「あの金ぴか、あの金ぴか、あの金ぴか――!!よくも、よくも私の掲げた旗を馬鹿にしたわね――!」
「渾身の自負があったあの竜の旗を……!!私が記したあの象徴をよくも――!!」
辺り一帯に炎が舞い上がる。ジャンヌを被う火炎はうねりとなって肥大する
「贅沢したことがない――救世から逃げた――白い方より偉いですって――!!」
「ジャンヌ、どうかお気を静められよ……」
「るッさい!!」
「ホアッ!?」
ドガ、と腹に蹴りを食らわせるジャンヌ。もんどりうって倒れるジル
「おぉ……憎悪と屈辱にまみれた悲痛なる一撃……このジル・ド・レェ……魂に刻みました……」
「気持ちの悪いことを言わないで!!あぁ、もう……もう!!」
ツカツカと部屋を一周しながら叫び回る
「私は負けてない!!私は逃げてない!!私は贅沢なんか必要ない!!私は、私は、私は――!!」
「あぁ、ジャンヌ」
起き上がり、ジルはそっと肩に手を置き、幼児に諭すように語りかける
「よろしいのです。心ない罵倒は柳のように流すことが重要なのです。真に受けていては如何な魂も砕けましょう。嵐の際、折れずに済むのは大木ではなくオジギソウなのです」
「でも、それじゃ私の気が収まらない――!!」
「良いのです、ジャンヌ。怒りを忘れることも鎮める必要もない」
「ゆっくりと噛み締め、臓腑に行き渡らせるのです。受けた屈辱は薪となり、与えられた罵倒は憤怒となりて貴方の輝きを称えましょう。よろしいか、ジャンヌ。貴方は竜の魔女……万物を憎み、滅ぼす事を赦されたもうた存在。思うがままに振る舞われるがよろしい。あなたが受けた理不尽はうたかたの夢。深呼吸をなさい。さぁ、一、二、三……」
「……そうね」
言われた通りに、落ち着きを取り戻すジャンヌ
「私は誰とも会わなかった。鬱陶しい金ぴかも、増えた私もすべて夢。ですね、ジル」
「左様にてございます。さぁ、今宵もつかれましたでしょう。寝室にて御休みあれ。このジルはいつでも御側におりますれば」
「…………解ったわ、眠る。お休み、ジル」
「良き、夢を。ジャンヌ――」
「あら、眠っちゃったかしら、魔女様は」
バーサーク・ライダーが現れたのは、それから数分の事だった
「ジャンヌは煽られ真っ赤になったお顔と魂を静めにセイラムへと旅立ちました。して、何か用命ですかな?」
「あぁ――伝言があったのと進言」
「ほう?」
「『育ての親に慰めてもらえ』ですって」
「――、――」
ジルが固まる。ピタリ、とあらゆる動きが停止する
「……何よ、どうしたの?」
「……いえ、何も。些末な事です。言葉は確かに伝えましょう」
「して、進言とは?」
「あぁ。――あいつらの追撃は、私にやらせてくれるかしら」
「なんと。かのマスター達を貴方が仕留めると?」
「バーサーク・ランサーとバーサーク・アサシンは霊基を存続できるギリギリまで痛め付けられたわ。復帰には時間がかかると思う」
「それに――目障りでしょう?あいつら。特にあの、趣味の悪い金色は」
「――それは確かに」
ギョロり、と、深淵に覗かれし瞳がライダーを見据える
「ジャンヌのメンタルは見る影もなくご傷心。今の我等に軽快に動ける方はあなたとセイバーだけ……ワイバーンも補充しなくてはなりません」
「――やってもらえますかな?バーサーク・ライダー殿」
「……任せてちょうだい」
「必ず……言わなきゃいけないことがあるものね」
~
「まぁ!なんてこと!こんなに空が広くって、お月様がこんなに近くにあるなんて!本当に絵本の世界に入り込んだみたい!」
謎の少女、マリーと名乗る少女と男性二人が同行を申し出てきたのが少し前
~
「嵐のような王様に、オルレアンの奇跡、ジャンヌ・ダルク!それに小さく素敵なおふたかた!私の話を聞いてはもらえませんか?」
「む、知己か?」
「はじめまして、私はマリー!あなたたちとたくさんお話ししたいと思いましたの!つもるお話は、あなた方の秘密の場所で行いたいの。私のわがままを聞いてくださらないかしら?」
「僕はアマデウス。とりあえず僕らは君達の敵じゃあない。怪しい身分だがそれだけは断言しよう。こっちはクズ、あっちは褒め殺しが上手な人たらしなんだけどね」
「ひどいわアマデウス!人たらしなんて言い方、私は皆が大好きなだけなのに!」
「また珍妙な輩が出てきたぞマスター。貴様に判断は一任する。つれていくか?」
「敵じゃないなら、いいと思う!」
「決まりだな」
「ありがとう!どこかアマデウスな感じがする嵐の王様!私、あなたのファンになってしまいましたの!ご一緒できて嬉しいわ!」
「我のカリスマが怖いな。我には后がいるのだがな。ははは!よし!善はいそげだ、出立するぞ!」
――無銘知ってる。それはイマジナリなんとかって言うんだって事を
~
「いい加減所帯が増えてきて鉄馬も定員超過ゆえな。真の力は封印しつつ、我のもう一つの脚を見せてやろう!」
空中――ワイバーンのいない領空を飛来する、近未来のデザイン意匠を為す黄金の船
「鉄馬の改造が間に合わぬ故、顔見せだけしてやろう。しかと見よ!これこそがゴージャスのクラスたる黄金の船――ヴィマーナである!」
ヴィマーナ。思考の速さで駆け抜け、エーテルを噴射し空を自在に駆けるという船のようだ
ギルギルマシンでギル、マシュ、ジャンヌ、そして謎の二人を乗せることは流石に無理だったので、代わりに出した船がこれのようだ
「ヴィマーナ――なんて素敵なお名前かしら!でも……ねぇねぇ英雄王様、まさか……もっともっと素敵なものをお持ちなの?このきらきらしたお舟も、まさか貴方の宝石箱の中身ほんの少しでしかないのかしら?」
「無論だ!我の財に限界はない!」
「まぁ……!私、もっともっと貴方の宝物を見てみたいわ!」
「マリー、止めたまえ。この方は限界のないアレなやつだから」
「アレなんて失礼ではなくて?アマデウス?きちんと、王様と呼んで差し上げなくては無礼でしてよ?」
「よい、特に許す!貴様の声は耳に心地よいからな!」
「お、僕も王様に認められたかな?やっぱり持ってるヤツはもってるんだなぁ」
「飛んでるー!」
「はい、先輩!地上が遠いです!」
「あなたたちは……」
「つもる話は、降りてからしましょう?」
「仲良くできるとうれしいわ!ジャンヌ・ダルク!」
「では行くぞ!マスター!黒光りする戦闘機はいないか!いないな!?では、発進!」
――遥かな夜空を、賑やかな船が走っていった
イラつきには深呼吸。貴方にセイラムの安らぎあれ
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