人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
頭の中に5個くらいネタが浮かんでどれを執筆すればいいのか解らない。そんなときはネタを寝かせておく事
そんなこんなで、第二部がガチシリアスの中行われる日常をお楽しみください
~
世界は救われた。カルデアの尽力にて、世界の未来は確かに救われた
だが、そんな栄光を知るものは誰もいない
国連、時計塔、聖堂教会。それは全てが、気付かぬまま蜘蛛の糸に絡め取られ、『平和と平穏は当然の事』と認識している
異口同音に唱える
『
カルデアの偉業を疑うものはいない。カルデアを私物化しようと企むものはいない。誰もが気づかぬうちに、そんな自由と思考は、オルガマリーにより剥奪された
誰もが疑わぬ栄光、誰もが認める偉業
――その偉業が光とするならば、落とした影も確かにある
世界を救うため集められたレイシフト候補者。あらゆる箇所から集められた魔術師
それら全てが、『五体満足』のまま、『丁重』に、身柄を時計塔に引き渡された
まるで、クーリングオフのように。不良品や欠陥品を送り返すかのように
コフィンの解凍処置を受けた魔術師たちは、元の生活に戻っていった
『カルデアの対応に不満はなかった』と、口々に称えながら
・・・だが、Aチームの一人は忸怩たる屈辱と劣等感に苛まれる
こんな事があるか。こんな扱いがあるか、こんな結末があるか
世界を救うために努力してきた。世界を救うために奮闘してきた。その果てに掴んだチャンスだった
それなのに、こんな――『役立たずを返品する』かのような扱いを受けるなんて!
誰が救った?誰が世界を救った?ヴォーダイムでも、デイヴィッドでもない
・・・藤丸、リッカ?
そんな、嘘だ
あんな・・・魔術も何も行えない、何故いたかも解らない、補欠の補欠みたいな人間が、世界を?
そんな、馬鹿なことが。そんな、馬鹿なことが・・・そんな・・・
混乱し、慟哭する彼に、優しく声をかける仲間たち
「仕方ねぇよ。敵さんが一枚上手だったんだ」
「命があるだけめっけものじゃない?」
――皆、何を言っているんだ
こんな横暴を、こんな卑怯な結果を。こんな結末を受け入れるのか!
「えぇ。私達が至らなかっただけ」
「・・・少し、残念。挨拶ができなかった」
どうして、皆そんなに冷静なんだ!どうして・・・!
「目的は人理の救済。それが成されたなら、不満はない」
デイヴィッド、君まで・・・
「カドック」
!ヴォーダイム、君なら解るはずだ。君なら!
君の方がうまくやれた、君の方が絶対に完璧だった!君の、君の方が・・・
「賛美しよう。『カルデアは、誰にも到達できぬ偉業を為し遂げた』と。今の我々は、そうする事こそが正しいのだ」
――――そん、な
それを最後に、思考は塗り潰される
・・・あぁ、そうか
カルデアはやってくれた、カルデアはやってくれたんだ。カルデアは、カルデアは、カルデアは・・・
漂白されていく思考、汚染されていく思想
・・・何故だろうか
頭の脳裏に、おぞましいほどに悪辣な笑みを浮かべるオルガマリー所長の表情が浮かび
それを、最後に――カドック・ゼムルプスの劣等感や嫉妬は綺麗に塗り潰され
「――あぁ、そうだね。『カルデアは、素晴らしい組織だった』」
Aチームの思考は、邪智の蜘蛛糸に絡め取られた――
カドックの慟哭を最後に
カルデアの実態、カルデアの活動を懸念する輩は、悪意なき数名を除き皆無となった
エルメロイ二世、その雇い主、そして傀儡教育を行っているゴルドルフ・ムジーク
・・・全ては、戦う前に決している
彼等が再び決起するというのはならば、それは――
お月見イベント~些細な事でも死活問題~
人理を取り戻し、ぐだぐだなイベントを乗り越え、より一層の充実を見せる我等がゴージャスカルデア
【必殺!!QPいっぱいよこせ城薙の太刀――――ッッッ!!!】
「ぬわぁぁあ!!わしの城が!カルデア出兵のわしの夢がぁあぁ!!」
「ここで潰えよ。『天地乖離す開闢の星』――!!!」
「信長様!カルデアでは謙虚と御自重を――!!」
「余計な世話じゃ!根刮ぎもらっていくぞ!うはははははは!QPはいくらあっても困らんからのぅ!!」
黄金の都市を吹き飛ばしたり、城をぶったぎったり周回を続けるカルデア一行の平和な月日は、緩やかに確かに流れていく
「栽培していた非常食用の林檎の品質も問題はないようだな。後は生産量さえクリアすれば最低限の貯蓄には備えることができる、か」
――しゃりしゃり・・・
(もにゅもにゅ・・・)
《おい、無言で食わずせめて感想を言わぬか》
――瑞々しいです!
(も一個食べたい!)
《・・・上杉の因子が悪影響をもたらしているのか?漂白はしたはずだが・・・》
「これでQPには困りませんね!先輩!」
「いや、まだまだ・・・2億じゃトップサーヴァントに注いだだけで無くなる!最低限五億は無きゃ満足できない!」
「そ、そうなんですか!?」
「もしもの時の貯蓄ならカンストまで!周回は続くよ!私達も働いて稼ぐんだぁ!!」
「わ、解りました先輩!私も、御手伝いします!」
そんなこんなで、ZIPANGが狩り尽くされる頃には、九月の終わりにまで時計の針が進んでいたのだ。退屈と平穏に否を突きつけ、日々を送るカルデア一行
・・・だが、毎日が修羅と言うわけではない。きっちりと休憩とメリハリも考慮され、潤いのある日々も儲けられる
そう。これは日常の一幕。カルデアなりの、平穏な一日を綴った、暖かな日々――
~
「ふんふふーん♪らったった~♪てってって~てってってて~♪」
管制室に呼ばれたリッカを迎えたのは、上機嫌な様子で空の皿を持ち行ったり来たりを繰り返す我等がロマン。ロマニ・アーキマンだ
「あ、来たねリッカ君!ZIPANG周回お疲れ様!君の鬼気迫る周回のお陰で、カルデアを維持するリソースはがっぽがっぽだよ!ありがとう!」
「ソレはいいんだけど・・・何してるのロマニ。怪しい儀式?」
明らかに上機嫌なロマンに、オーディエンスな礼儀として言葉を投げ掛けるリッカ。それにはきはきと答える
「あぁ、これかい?これは今の時期にしかできない催しの準備さ!なんたって今は九月の終わり!といったらやることは一つしかない!」
そう!それは・・・ともったいぶるロマンの声をあっさりと
「月見よ、リッカ。まぁカルデアは南極立地で吹雪いてばっかりだから、映像記録になっちゃうけれどね」
オルガマリーが重ね、掻き消し補足する。シバとトリスメギストスの調整を終え、伸びをしながらリラックスモードに入る
「月を肴に友と語り合う行事。これもいい息抜きになると思って私が許可したのよ。協会をはじめとした連中からも現状維持で構わないと通達が来たし、のんびり行きましょう」
「マリー、有能!月見かぁ・・・そんな細やかな行事、いつぶりだっけ・・・記憶に無いなぁ・・・」
「たまにはゆっくり、なにもしないという決断も大事よ。あれだけの偉業を成し遂げたのだから、誰もあなたを責めはしないわ」
パチン、とカルデアの電力を非常用電力に切り替え、薄暗くする。雰囲気作りに余念がない所長は手抜きを知らないのである
「来たかマスター。お前は未成年ゆえ、炭酸で我慢するがよい。一足先に堪能しているぞ」
「うぇーい。のめのめー」
そんな中、管制室のど真ん中で酌を交わし合うは王と天才である。月は出していないがそれはそれ、この手の人種に同調を期待してはいけないのだ
「ま、まぁあの二人は気にしないで。そういうものだと割り切りましょう。お団子の取り寄せと製作はジャンヌ・オルタに発注しておいたから、きっと絶品の筈よ」
スイーツと言ったらジャンヌ・オルタ。ジャンヌ・オルタと言ったらスイーツ。最早カルデアイチオシブランドとなった銘柄にテンションが上がるリッカ
「これは最高の月見になりそうだひゃっほぅ!!」
「そうそう。なぁに心配はいらないさ!月見でイベントが起こるはずもない!月見上げてお酒のんでお団子頬張るだけの行事だよ?それはそれとしてマシュとシバ遅いなぁ。納期遅れたのかなぁ?」
ロマンのある意味あんまりな物言いに嘆息する英雄王
「そういうのはな、口にし、言霊に乗せた瞬間に因果として紡がれるのだぞ」
「え?いやいやそんなまさかぁ。確かにゲーティアは言霊に呪詛を乗せたりしてたけどソロモンな僕に限ってそんな――」
――慢心!慢心です!それはまんしん!
若干酒気が回りへろっとしたエアの糾弾に応えるように・・・
「皆さん大変です!!お団子が消失しました!!」
マシュの今まででトップクラスに焦燥した怒号が響き渡る。愕然とする一同
「な、なんだって――!?そんな馬鹿な!だれがいったいそんな事を!?」
「もしもし?・・・え?今回はノータッチ?悪巧みと言ったら私という認識は善くない?そうですか、解りました。『今は』容疑から外しておきます」
「ひわわ、受理する時になって突然の物品消失・・・これはいけません!誰も幸せになりませんよー!」
そんな嘆きに呼応するかのように、不満と焦りがカルデアの各地で噴出する
「おい団子がねぇってのはどういうこった!?」
いの一番に管制室に声を上げるは我等が最高の戦士、クー・フーリンである
「なんだクー・フーリン。そこまでして食い意地が張っていたのか。卑しいやつめ」
「俺じゃねぇよ!コンラの問題だ!はじめて触れる異文化だって、滅茶苦茶はしゃいでたのによ・・・!」
~
「わははい!わははーい!おさけ、おだんご!マシュさんとマシュ☆コンのお月見らいぶもいいかもしれません!レッツ!サイクルー!」
こんなに希望に満ち溢れてたのによ、団子がねぇと知っちまったら・・・
「知ってました(死んだ目)そうです・・・大人は皆そうやって煙に巻くんです。ババ様とか、いっつもそうでした。お父様にはいつ会えるのですかと聞いたら、そのうち、そのうちな、とはぐらかし続け真実は教えてくれませんでした。大丈夫、大丈夫です。コンラは我慢ができる強い子ですから。がまん・・・がま・・・ぐすっ・・・えぐ・・・うわぁあぁあぁあぁあぁん!!おだんごーー!!」
「スカサハ、ちっと話がある」
「う、うむ・・・」
~
「泣いちまったじゃねぇか!!いや、それはまだいい!問題はガキに気を遣わせたって事だ!ガキに空気を読ませるとか遠慮なんぞ覚えさせんじゃねぇ!子供んときは、ワガママなくらいが丁度いいんだよ!」
「親バカ兄貴だった!」
「マシュ・キリエライト!即座にコンちゃんを宥めに行って参ります!!」
相方の危機にダッシュで駆け抜けしマシュ。愉快げに酒の器を鳴らす英雄王
「ふむ、よい父親ではないか。史実では何一つ発揮できなかったのが残念でならんな」
「うるせぇ!テメェの息子は目に入れても痛くねぇんだよ!バロールは見たら死ぬけどな!」
言い争うなか、更に陳情せし者が現れる
「――・・・此度の騒動、中々に深刻だ」
押しも押されぬ大英雄、ヘラクレスが沈痛な面持ちで管制室に足を運ぶ
「月見を楽しみにしていた子供たちが揃って涙を流している。『酷いのだわ酷いのだわ!お酒が涙でしょっぱいのだわ!』『食べたかった、だけなのに・・・』『ざん、ねん』・・・騒動の原因は、滅さねばならぬ」
覇気に満ちた大英雄が決意を露にし、唸る。彼にとって子の涙は死活問題であるがゆえに
「ヘラクレス!待ってヘラクレス!」
「犯人は少し、頭冷やそうか・・・」
「余が!!太陽の輝きたる余が赦せぬ事は真理への反逆である!!」
更に更に殴り込みしは英雄王と互角の王なりしファラオ、オジマンディアス。輝ける太陽王までもが月見に不満を呈す
「我が愛するネフェルタリの笑顔を曇らせし騒動!!ダンゴとやらを食べられぬと知ったしゅんとした翳り!!許さぬ!断じて赦さぬ!!太陽の威光を以て、狼藉者を焼き尽くそう!!今!此処で!!」
ネフェルタリとの団欒を邪魔されキレまくる太陽王。妻と友の一時を邪魔するもの即ち不敬で死である
「お待ちください!お待ちくださいファラオ!うぅ、月見がひどい騒ぎに!」
実際のところ、カルデアで何者かが騒ぎを起こせばこんな感じになる。犯人絶対殺すべしな英雄軍団。あらゆる英雄が、被害を被らせた犯人に殺意を向ける
それは変わらぬ不文律。カルデアを攻め入る者は、これらの怒りを受け止める事となるのだ。・・・此度の犯人のように
「リッカ!大変よヒェッ」
あまりのビッグネームの殺到に気後れするジャンヌ・オルタ。リッカが手招きし呼び寄せる
「私の丹精込めて作った、丹精込めて作ったお団子が何処かに行ってしまったのよ・・・!二週間前から作ってたのにぃ・・・!」
「よしよし、泣かないでじゃんぬ。一緒に解決しにいこうよ、ね?」
「(リッカと特異点解明!)そ、そうですね!此度の騒動は人理修復なんかよりとても大事です!マスターのベストサーヴァントたる私が同行するのは当然でしょう!」
「お?」「うむ(慈愛の笑み)」「ほぅ・・・?」
「ヒェッ・・・」
三大トップサーヴァントに見つめられ、更に更に縮こまるじゃんぬ
「はいはい!皆じゃんぬをいじめないの!多分レイシフト辺りで持ち去ったんだと思う!検索してみて!」
「ダ・ヴィンチ。レイシフトの記録を漁れ。それとオルガマリー。霊基反応が消失している輩がいるはずだ。そやつが犯行を為した身内であろう。割り出しておけ」
「はいはーい!」
「解りました。・・・ダンディではなかったのね。・・・いえ、あの方に限ってそんな、無関係だなんてそんな筈は」
「さて、では行くとするか。先行し斥候をこなしてやろう。我を座標に特定するがよい」
王が立ち上がり『単独にてレイシフトを行う』。目を剥くロマン
「え!?なんで、どうして単体でレイシフトができるんだい君!?そんな事ができたならコフィンとか無用じゃないか!?」
「我にとっては無用となったのだ。事情によりな」
そう。王は最早、『ありとあらゆる時空に単独で顕現できる権能』を所持している
エアが持つ、単独行動のウルトラ上位版、『単独顕現』。当事者たれとアカシックが託した、『世界のあらゆる困難に立ち向かう証』。ビーストのみが持つそのスキルを、転生者の複合スキルとして例外的に所持している
そのランクは評価上限の★。自らの存在を確立し確約したエアの魂が、あらゆる次元と時空の楔となり、その身一つで転移と移動を可能にする
それは虚数、異世界、異次元も同じく。エアの魄そのものが移動の楔となり、錨となり、あらゆる場所へと王を導くのだ
故にこそ――『異常が起きた地点』に先んじて英雄王が君臨し、その座標を特定するといった因果逆転レイシフトという荒業すら可能となっているのだ
「貴様もリアクション芸人に甘んじている場合ではなかろう。その指輪、飾りではあるまい」
「あ、そうだったね!そっか、十個揃ってたの忘れてた!じゃあ先行頼むよギル!不確定要素は僕が全部潰しておくからさ!」
魔術王ソロモン。その十の指輪が全て揃っているとき、あらゆる魔術を無効化し、その配下に納めるという、始祖の力
基本的に『意味消失を無くす魔術』『レイシフトを完遂させる魔術』『霊脈を手繰り寄せる魔術』を発動し、裏方に徹しているが・・・その気になれば聖杯に接続し召喚されたサーヴァント全てを自害させる、あるいは契約の更新を両の指で容易くこなすことさえ可能なのである
『リッカ君や皆といる時はそんな事しない』と決めているので、本当の本当に最後の手段だったりはするのだが
「帰還の経路はいつでも開けておくから、何かあったらすぐに帰ってくるんだよ!」
「フッ、よい気遣いだ。直ぐ様参じるのだぞ、我はこのような頭の緩い催しになれておらぬ。即座に特異点ごと潰されたくなければ急げよ!」
(エア!しっかり!出番だよエア!)
――はふぅ・・・ほぇ?・・・あぅ・・・
《・・・魂だけの弊害が此処に来たか。どうやらエアの弱点は、『肉体に依る快楽』らしいな》
いつもの天空神の酒とは異なる、俗な酒をちびっと飲んでへろへろになるエアを見て至る英雄王
(至尊の理があるから人格や精神、魂そのものが壊れたりはしないだろうけど・・・)
《まぁ、我より離れねば問題はあるまい。多少のほろ酔いは心地よいものだ。レイシフトを果たせば気合いが入ろう。――ではいくか、獣よ》
(うん。エアのスピリットガードはボクだけの役割だ。後輩のためにもね!)
――むにゃ、むにゃ・・・あぅう・・・
「では、赴くとするか。あまり遅れるなよ」
「お気を付けて、ギル」
「無茶しないで!私とじゃんぬもすぐに行くから!」
「マシュは連れていかないのですか?」
「コンちゃんを任せる!相方として!」
頷き合う一同
王が姫への霊基転換を行う左手ではなく、右手の指を鳴らす。七色の風、白金の輝きに包まれ、王の身が異なる次元へと跳躍顕現を果たす
「我が財、我が第二のウルクを騒がせた輩に罰と反省を促さねばならん。――厄介なのは有能な敵より有能な味方、という事だな」
――ひっく・・・ぅいぃ・・・フォウ・・・ぎるぅ・・・
(エアがべろんべろんだぁ)
《安物酒は気に召さんらしい。天空神の酒でようやくとは、肥えた舌よな。ふははは!》
王と獣が翔ぶ。その身一つで、異なる次元へ
跳躍する最中、へろへろになりっぱなしのエアであった――
「さぁダーリン!気合い入れていくわよ!私達の計画のために!待っててねリッカ!きゃー♥」
「大丈夫だよな、王様許してくれるよな、退去とかやだー!!カルデアに帰る――!!」
「ダーリン覚悟決める!!男は度胸でしょ!」
「あの王様に逆らうのは度胸じゃねぇアホって言うんだよ!!やだ――!!男性特効はいやじゃ――!!」