人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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マシュの描写がいまいちだったので、補完と補填を兼ねて一話挟みます。マシュだってメインサーヴァントだ!


オルテナウスはこれからなんだよね、ね?


それぞれの一歩。変わり行く関係
憧れ、そして新たなる決意


「っっ、く、うぅっ・・・!!」

 

 

カルデア、シミュレーションルームにて歯を食い縛る音と、炸裂音と爆発音が響き渡る

 

 

盾を振るい、己を奮い立たせしは藤丸リッカのメインサーヴァントの一角、マシュ・キリエライト。己の守護をより一層強くするため、模擬戦にて自らを高めんと抗っている

 

「――ふむ」

 

その相手をするは――絢爛なりし英雄王、ギルガメッシュ。髪を下ろし、上半身を惜し気もなく晒す原初の姿を見せつけし至高の王にして、カルデアの大黒柱

 

マシュたっての指名で、シミュレーションの相手を務めている。とは言っても、手抜きや油断など、微塵も考慮しない王であるため・・・

 

 

――マシュちゃんの行動予測、27通り。その行動への対処へ予測される移動、35通り。対処予測にして、防げなければ致命傷となる行動パターン、9通り。それら全ての予測の数秒先に財にて捕捉、選別、射出します

 

傍らにて、真紅の瞳を輝かせ、冷静沈着に選別と戦術を報告し、財宝の射出、ロックを同時に行い、マシュの防御力の極限を試している

 

狙う場所は常に急所。選別する財は常に最高の戦果を挙げられるもの。予測は戦闘終了までの道筋

 

淡々と用心深く、王の財宝の切れ味と捕捉の精度を高めていく。射出のパターンも増やしつつ、マシュを試していく

 

「そら――前方に気を配れ!」

 

突き出した右手の回りに、六門の波紋を展開し高速回転させ速度と貫通力を高める射出法

 

「足許が留守になっているぞ?」

 

相手の足下から、対空砲のように放たれる射出法

 

「空間把握を怠るな!」

 

辺りの空間一帯から放たれる射出法。ありとあらゆる射出形態がマシュを撃ち据える。それらすべてが、急所のみを狙い撃つ事を想定したおぞましい迄の精度を誇り、相手にとって最悪の弱点を衝くための財を装填されたものと定義している

 

「っつく、ぅうぅうう・・・――っ!」

 

その息をも付かせぬ至高の弾幕に、歯を食いしばって食らい付くマシュ。肉体も精神も極限状態に追い込まれながら、盾を振るっている

 

マシュの提案により行われし模擬戦、容赦する理由はないと。英雄王とエアは本気でマシュを鍛えている。手加減の仕方など、とうの昔に忘れているが故に

 

――マシュちゃんの動きが鈍いですね

 

そんな中、エアが違和感に、小さな違和感に気付く。動き出しがやや遅いと見抜いている。ところどころ補正したが、行動から行動へ移る際に僅かな迷いと空白がある。王が本気で生命を取りに行ったと仮定して、生命を落としていた局面が軽く10を越える程に見分けられる

 

《であるな。肉体の負傷は見られぬ。ならば・・・またぞろ何か悩み事か》

 

王の言葉に頷く。発汗、表情、呼吸からしてあれは体調の不調ではない。何かしら心構え、精神的な問題だ

 

《苦悩は人の醍醐味にしてよい酒の肴だが・・・まだ愉悦すら弁えぬ魂を壊すのもよいモノではないな》

 

――切り上げますか?

 

エアの言葉に軽く頷き同意を示す。至高の財から、ソレを抜き取る

 

「シミュレーションは切り上げるぞ。お前は些か不調を抱えているな」

 

「そ、れは・・・」

 

「――一掃せよ、エア」

 

威力を極限にまで落とした乖離剣、エアの風圧にてマシュを打ち付ける。出し惜しみ、加減した撫でる程度の風圧、が・・・迷いを抱えたマシュとシミュレーション風景を打ち払うには十分な威力だ

 

「っ、ぁあぁあっ――!」

 

成す術なく吹き飛ばされ、強化物質に身体を叩き付けられるマシュ。シミュレーションシステムも電源が落ち、元の風景に様変わりする

 

「けほっ、けほっ・・・うっ、く・・・!」

 

身体を強く打ち付け、肺の空気を苦しげに吐き出しうずくまるマシュ。風圧に触れてこの程度にて済むのは、マシュの力あってこそだ

 

「あ、ありがとう、ございました・・・っ!」

 

息も絶え絶えに礼を告げるマシュを引き起こす英雄王

 

「未だ我が風圧の欠片も防ぎきれぬか。それは自らの防衛の不備ではあるまい。その中核、盾を振るうお前自身の問題であろう?」

 

真紅の瞳の視線がマシュの全てを射抜く。マシュの抱えている悩みをたちどころに見抜く

 

「――全く悩み事が達者なヤツよ。己の戦う意味の定義、その感情の在り方に戸惑っているな」

 

「――っ!、わかり、ますか」

 

「解るとも。我が財の曇りを見抜けずして何がコレクターか。しかし、ふむ・・・」

 

顎に手を当て、静かに思いを巡らせる。その財の曇りを祓う方法を、思案しているのだ

 

――マシュちゃんは生まれたばかりですから、自らが懐いた感情のカタチが分からないのですね。その気持ち、凄くよく分かります!

 

何しろ自分も無銘でしたから!とよく分からないところで胸を張るエア

 

――ふよふよふわふわした在り方ならワタシの右に出るものはおりません!いつもふわふわしていますから!なんというか、こう、魂的な、在り方!

 

《それは確かにな。風船かお前は》

 

苦笑しながらからかう英雄王。その例えにほにゃっと顔を綻ばせる

 

――いいですよね、風船・・・ふよふよしてて、可愛いです・・・じゃなくてですね!マシュちゃん、何に曇っているのでしょうか?

 

聞き出そうにも、疲労困憊、満身創痍で聞き出せる雰囲気ではない。少し休息を挟むとしようと二人で定義する

 

「もう、大丈夫?模擬戦にギルを指名するなんて・・・無謀にも程があるわよ?」

 

オルガマリーがコントロールを終え、マシュに肩を貸す

 

「オルガマリー、我が話をつけておく、間食の時間にするがいい。マシュめは不調なようだ、悩みの一つも聞いてやれ」

 

「・・・――そうなの?マシュ」

 

「・・・はい。絶好調とは、言い難いです・・・」

 

王の前に立つ以上、隠し事は叶わない。オルガマリーに後の事を任せ、英雄王は退出する

 

「我にはやることが出来た故、ダ・ヴィンチと打ち合わせる。次に顔を見せるまでには、少しはマシになっておけよ」

 

――身体と心を大事にしてね、マシュちゃん

 

手を振りながら、汗の一つもかかず後にする英雄王の後ろ姿を見送る二人

 

「指一つ動かさずサーヴァントを倒せるのはギルだけね。立てるかしら?」

 

「は、はい。・・・所長」

 

隠し事や、悩み事を抱えてばかりでは、進歩がない・・・そう王に言われた気がしたマシュは、意を決して告げる

 

「少し・・・御相談に乗っていただけますか・・・?」

 

 

~~~~

 

 

カルデア・スイーツじゃんぬにて、頼んでいたスイーツを用意するじゃんぬ

 

「お待ちどおさま。ショートケーキに、モンブランよ」

 

「ありがとうございます、じゃんぬさん」

 

「いえいえ、安いものです。というか金ぴかに負けっぱなしってどういう事よ。次は勝ちなさいよ」

 

ふん、と鼻を鳴らしながら厨房に引っ込むじゃんぬ。そっと店の立て札をcloseにし、二人きりの貸し切りとする

 

扉もしっかりと閉め、自分も含めた部外者が聞こえないよう配慮して、生地を整える作業に戻っていったのだ

 

「それで、どうしたのかしら?マシュは溜め込みやすいタイプだから、ここでガス抜きしておきなさい」

 

コーヒーを啜りながら、マシュへ会話の主導権を渡す、静かに冷静に、ヒステリーとは無縁の落ち着いたデキる女性の風格を醸し出す所長

 

「はい・・・その」

 

ケーキを崩しながら、信頼できる所長に言葉を告げる

 

「憧れとは、悪なのでしょうか。私は先輩の隣には、立てないのでしょうか?」

 

悪、という言葉に反応するオルガマリー。堰を切ったようにマシュの悩みが吐露される

 

リッカが背中を躊躇いなく、じゃんぬに預けた事

 

信頼のカタチが人によって違うことを知った事

 

自分の気持ちでは、何かが足りないと言うこと

 

絶望を励ませる強さとは、なんなのかと言うこと

 

そんな悩みを打ち明けるマシュ、静かに聞き及ぶオルガマリー

 

「私は・・・先輩のサーヴァントとして、なにか間違えているのでしょうか・・・?」

 

苦悩に満ちたマシュの物言いに、あえて静かに答える

 

「そうね・・・遠巻きに見るのなら憧れは善で、肩を並べる相手には、憧れは悪かも知れないわね」

 

「ど、どういう事でしょう・・・?」

 

「仮定の話をしましょうか」

 

ことり、とコーヒーカップを置く

 

「マシュはリッカのどんな箇所に憧れているのかしら」

 

その心持ちを問い掛けるオルガマリー。マシュは目を輝かせ、饒舌に告げる

 

「はい!明るくて、快活で、どんな時も優しくて、どんな相手にもけして揺らがない心の強さ、ポジティブさ。諦めない不屈さ、マスターとして最強といっていいその実力、何より目を見張るコミュニケーション力!挙げても挙げてもキリがありません!」

 

「そう、そうね。では、そのあなたの先輩が『絶望に立ち尽くしている姿』を想像してみて」

 

「――え?」

 

絶望に、立ち尽くしている?先輩が?

 

マシュは一瞬、オルガマリーの言葉の意味が分からなかった。全く違う言語を話しているとさえ思ってしまった

 

オルガマリーは冷静に告げる。シミュレーションを行う

 

「何か、どうにもならない事に直面して絶望し、硬直してしまうリッカ。その傍に立ったとして、あなたは何をしてあげられるかしら」

 

「な・・・ま、待ってください。先輩が、絶望に?そんな、有り得ません。だって先輩は・・・」

 

「私ならそうなる前に何かをするわ。ロマンも、必死にメンタルケアをするでしょう。シバにゃんは壺でも売るかしら?師匠はあの手この手で励ますでしょう。王なら下らぬ悩みと一蹴するでしょう。じゃんぬなら、無言で抱きしめるくらいはするでしょう。姫なら、想像もつかない程の尊重と慈しみをくれるでしょう。――あなたは?」

 

「待って、そんな・・・」

 

「あなたは、立ち尽くすリッカに何をしてあげられるかしら?」

 

「待ってください!」

 

オルガマリーの言葉を、図らずとも強く遮ってしまうマシュ

 

「先輩は、絶望なんてしません!今までどんな困難も、絶望も乗り越えてきた先輩が、どんな事実で絶望すると言うのですか!所長は、先輩を侮辱するのですか!?」

 

リッカの為に感情的になるマシュを嬉しく思いながら、おくびにださずオルガマリーは告げる

 

 

そう言うところ(・・・・・・・)よ、マシュ。――リッカは英雄でもない、ましてや世界を救う機械でもない。あなたと同じくらいの人間なのよ」

 

「――!」

 

「そんなリッカが、これから先全く折れず、挫けず、最後までカッコいいままでいられると本気で考えてしまっている。あなたが思い描くリッカを、リッカに押し付けてしまっている。」

 

愕然とするマシュに、ある意味冷酷に告げる

 

「押し付けによる視野狭窄。理想による色眼鏡。解った気になっている自己完結に自己陶酔。そして――理想と現実の乖離による思考停止。憧れる事の悪がなんなのかと問われたなら、これだけ悪いところがあるわ、マシュ」

 

動悸と、視点が揺らぐマシュ。問われた事実に、真摯に応える

 

「じゃんぬが伝えた事はそう言うことよ。あなたの憧れは、いつの間にかリッカをリッカとして見ていないの。『絶対に挫けない、カッコいいマスター』として、気づかぬうちに依存してしまっている。私はこの人となら戦える、ということは・・・裏を返せば、『リッカが折れたならあなたも共倒れ』という事よ」

 

オルガマリーはどこまでも冷静で、真摯で、真剣だ。何故なら――マシュが懐いた悩みは、今目の前にいるマシュは自分そのものだ

 

レフに・・・盲目的な信頼と依存を寄せていた自分と、全く同じなのだ。だから、抱えている歪みが致命的に分かってしまう

 

「憧れは色眼鏡よ。いつの間にか自分に都合のいい虚像を作り上げ、それで理解した気になり、歩み寄ることを止めてしまう。その癖、本当の相手を目の当たりにした時、一方的に否定と失望を行ってしまうのよ。『こんなの、私が知っているあなたじゃない』『こんな人だと思わなかった』ってね。」

 

絶句するマシュに、あえてはっきりと告げる

 

「『あなたは護る事はできても、励ますことはできない』。じゃんぬが告げていたのはそう言うことでしょうね。――それが、彼女が告げた言葉の真意なのではないかしら」

 

コーヒーを再び飲み干すオルガマリー。マシュは突き付けられた事実の残酷さに、頭を抱え机に突っ伏してしまう

 

「・・・先輩・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・私、私は・・・」

 

マシュは今、絶望していた。失望していた

 

期待していた自分ではなく、依存していた自分ではなく

 

『いずれ、リッカに失望してしまう自分に』『勝手に期待し、勝手に拒絶してしまうであろう身勝手さ』に、深く深く打ちのめされていたのだ

 

先輩を、無敵のヒーローだと勘違いしていた。誰にも負けないマスターだと陶酔していた

 

弱気な自分を、励まし、支えてくれる強い人だと確信していた

 

それは事実だろう、それは真実だろう。・・・でも

 

「先輩も、辛かったですよね・・・弱音を吐きたかったことも、いっぱいありましたよね・・・そんなとき、そんなとき・・・私は、なにもしてあげられなかった・・・何も・・・」

 

辛いことがたくさんあった筈だ。弱気になった事も、たくさんあった筈だ。そんな時に、私は何もしていなかった。考えもしなかった

 

支えられてばかりで、頼りにしてばかりで、彼女の心の機微を、何も考えていなかった

 

じゃんぬが言った事は、そういう事だ。本当の意味で、リッカの隣など立てる筈も無かったのだ

 

背中ばかり見ていて・・・今までの旅路は一度も、リッカの心の支えになれてすらいなかったのだと、マシュは思ってしまったのだから

 

「ごめんなさい・・・先輩・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・う、ぐぅ、ぅううぅう・・・!」

 

声を押し殺して涙を流すマシュ。そんなマシュに、静かに付き添うオルガマリー

 

涙を流し続け、やがて、救いを求める信者のように、すがるように問い掛ける

 

「・・・所長。私は、これから・・・どうやって、先輩と向き合えばいいんでしょうか・・・」

 

涙で目を真っ赤にしながら、マシュは告げる

 

「こんな、自分勝手で、最低な私が・・・どうやって・・・?」

 

「決まっているじゃない。今まで通りよ」

 

マシュの涙を、そっと拭き取り笑うオルガマリー

 

「やっと眼鏡が取れたわね。リッカを、ちゃんと見られるようになった、友達の顔よ」

 

「今まで、通り・・・?」

 

「えぇ。これからもリッカを護ってあげなさい。今度は強さではなく、弱さも。欠点も。きちんと認めた上でリッカと一緒に戦いなさい」

 

期待と依存は、憧れは押し付けず、胸に抱いて前を見ろ

 

弱さと、欠点を。その心で護ってやれと。あなたならそれが出来るんだと

 

オルガマリーはそう告げたのだ。あなたは、リッカのサーヴァントなのだから、と

 

「あなたならそれが出来るわ。手を握ってくれたリッカの為に、あなたは戦えてこれたのでしょう?」

 

「・・・私は・・・――」

 

思い出す。始まりの景色。笑顔で手を取ってくれた、彼女の笑顔

 

「今度はあなたが支えてあげなさい、彼女をね。なまじ強くて大体の事が出来るから、誤解しやすいけど・・・私たちと同じくらいなのよ?あの子」

 

支える。護るだけでなく、支える。『憧れ』ではなく『支援』・・・

 

「それが・・・じゃんぬさんの『誇り』と同じもの。先輩の隣に立つための、一歩・・・」

 

マシュの心が、新たな境地にたどり着く。英雄ではなく、ヒーローではなく、同じ人間だからできる事。

 

同じ・・・今を生きる生命だから、できる・・・私だけの、戦う意味・・・

 

「そういう事。なら、リッカの日常に目を向けるのが第一歩じゃないかしら?日常にこそ、人となりを掴むチャンスが溢れているのよ」

 

オルガマリーに告げられたマシュは弾かれたように席を立つ

 

「ありがとうございます!所長!私・・・解った気がします!支える事の意味!」

 

「それは何より。勉強中の身でも役に立ててよかったわ」

 

「行ってきます!所長!あ、ここは私の奢りにさせてください!」

 

意気揚々とポケットから財布を出す

 

「・・・お小遣い一人分しか・・・」

 

「・・・いいのよ、マシュ」

 

「・・・ごめんなさい・・・」

 

微妙な雰囲気のなか、会計を済ませて走り去るマシュ。そんな中、オルガマリーが優しく背を見守る

 

「おバカなんだから。リッカの弱い時期を護ったのは誰だと思っているのよ」

 

悩みやすい友達を持ってしまったわね、とコーヒーを飲み干す。友達というより、妹のようだとすら思うほど愛くるしい相手だ

 

「これからも頑張りなさい。世界も救ったのだから、歩み寄れるチャンスはいくらでもあるわよ」

 

貸し切りとなったお店の中で、満足げに天井を眺め、一人笑うオルガマリーであった

 

「・・・なんだか私、ダンディに毒されすぎじゃないかしら・・・性悪みたいじゃない・・・」

 

ちょっと悪どい顔は控えようと、邪悪教典を読みすぎるのは控えようと決意するオルガマリーでもあった

 

 

 

リッカ自室

 

「いきなりマッサージの時間です先輩なんてびっくりしちゃった。まぁいいや宜しくね~」

 

ベットでうつぶせに寝そべりながら、マシュにされるがままのリッカ。スパッツとスポーツブラで隠された柔肉と、見た目は女性ながらケイローンに鍛えに鍛え上げられた鋼のような皮下筋肉、鍛えすぎて柔らかいレベルの肉体の手応えのギャップに戸惑いながらもマッサージを行う

 

「先輩・・・」

 

見れば、身体中の皮膚が傷だらけである。リッカの辿ってきた旅路が、どれほど凄まじいかを物語っているのだ

 

「あ、傷だらけでごめんね。でもこれ、中学校の・・・グドーシがいた頃の想い出だから」

 

朗らかに笑うリッカに、マシュが告げる

 

「・・・先輩」

 

「ん~?」

 

「・・・私、先輩を支えたいです。マスターや、サーヴァントとしてだけじゃなく・・・一人の人間として、先輩を」

 

「あははっ、ほんとぉ?私結構ずぼらでだらしないよぉ?じゃんぬに身だしなみ任せっぱなしだし、甘えっぱなしだし」

 

「じゃんぬさんみたいに、すぐに出来るとは思いません。・・・でも、私も、先輩の弱さを支えたい」

 

「・・・――」

 

「弱いところを見せあって、なんだかんだで高めあって。一緒に頑張りたいんです。『支援』や『援護』をしたいんです。そして、私も・・・私も、先輩の傍に立ちたい」

 

「――マシュぅ・・・あぁ~・・・」

 

「だから・・・私に・・・先輩っ!?」

 

へにゃりとへにゃへにゃになるリッカ

 

「私を甘やかしてくれるんだねぇ~。もっと私を甘やかして~。たくさん私をダメにしてぇ~」

 

マシュの決意を汲み取り、『カッコいい先輩』から『ただのリッカ』を見せることにするリッカ

 

「せ、先輩・・・!?」

 

「どうしたのマシュ!はやく私を甘やかして!じゃんぬみたいに!じゃんぬみたいに!!」

 

「ま、待ってください先輩!さ、支えるってそういうものじゃ・・・!」

 

「やだー!私に優しくないマシュなんてきらい~!ちぇんじ!じゃんぬにちぇんじ~!」

 

「も、もうっ!先輩!そんな事言うとマイルームに住み込んじゃいますよ!だらしない先輩をもっとダメにしちゃいますよっ!」

 

「来い!!」

 

「先輩!男らしくて最低ですっ~!」

 

笑い合い、冗談を言い合うリッカとマシュ

 

 

「――手間がかかるんですから、全くもう」

 

そんな二人を眺めながら、デコレーションケーキ二人分を、そっと置いておくじゃんぬ

 

「――どこまでリッカに近付けるか、期待していますよ。幻滅した時が、あなたのゴールなのだから、気を付けなさいね?」

 

クスクスと笑いながら、リッカのベストサーヴァントの余裕たっぷりに立ち去るのであった――




翌日


「おはようございます!英雄王!」

「うむ、精悍な挨拶よ。・・・」

「うぃっす~」

「先輩だらしないです!シャキッとしてください!それでも人類悪ですか!カルデアの希望ですか!」

「人類悪だってのんきに過ごしたい」

「それでは龍でありません!カバです!カバですよ先輩!」

「オォン!?後輩が調子こいてるとカバさんが食べちゃうよオォン!?カバさんすげぇ強いんだかんね!」

「迎撃しますよ!盾で!」

「そうやってすぐ力に頼る~!ギャラハッド先輩に愛想つかされちゃいますよーいいんですか~!」

「その時はマシュっと肉弾戦で抵抗します!倒せたらなんでもしていいですよ!」

「ん?」

――見違えるくらい元気ですね二人とも!なんだかとっても気安くなっています!

《ようやく年相応の間柄になったようだな。依存と色眼鏡が無くなればこんなものよ》

「では、マシュ・キリエライト!後輩として先輩のお尻をぺちぺちします!」

「後輩が厳しいなぁ。よーし今日も頑張るかぁ!」

走り去る背中を、王が愉快げに見送る


「――あれならば、新たな武装も造り甲斐があると言うものよ。使いこなせるか、見物よな」

(マシュ・・・立派になって・・・)

『強化装甲・オルテナウス』
『飛来式自律ユニット・スパルタ』
『戦術推進起動ブースター・アキレウス』
『反射式光学鏡面・アイギス』
『多段展開前面遮断防壁・アイアス』
『離脱推進騎乗ボード・プリドゥエン』

――原典を選別し終わるまで少々お待ちください。ダ・ヴィンチちゃんと設計図を煮詰めましょう!

「フッ、案ずるなマシュ。お前にも、然るべき強化は待っているのだぞ?」

笑いを浮かべ、英雄王はダ・ヴィンチラボへと足を運ぶのであった――
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