きちんと御参りして御願いしたので大丈夫だと信じています。下総舞台にしてこの人がいないのはおかしいかなと思いましたからね
数話やるか、隔週でちょくちょく挟むかは考え中です。ではどうぞ
夢幻の邂逅~此所は何処?貴方はだれ?~
人は、誰しも夢を見る
大望を抱くもの、覇道を志すもの、平穏なる道を望むもの、有り得ぬ未来を望むもの。それらは全て夢となり、生きる活力となり、それらを導くは人の想然であり、願いであり、それらを束ねるは人の意志である
人とは願いを紡ぎ、明日を紡ぎ、未来を望み、平穏と泰平を愛す生き物である
なればこそ人は脅威を畏れ、怪異を畏れ、有り得ぬ恐怖を畏れる
・・・それは、別段と忌むべきものではなく。人が人で有る限り、至極当然なりし心の所作なのだ
で、あるならば。それらの願いに応え、何者かがこの地に導かれるは必然なのやも知れぬ。この、日ノ本たる東の地に、平定をもたらす何者かが現れるは至極当然なのやも知れぬ
・・・それらは、禍々しき災か、暗雲吹き散らす光明か。それは運命、天運のみぞ知ると言った所か
・・・ならば、我が立たぬとして何者が立つという。暗雲立ち込め、屍山血河築かれんとする予兆に、何者が警鐘を示すという
その役割が、何者たりとも果たせぬならば。平定されしその地を、見過ごすわけにはいかぬのならば
人ならざるこの身にて現世に在ろうとも。他ならぬ我こそが、異変の兆を告げねばならぬ――
我が身、魔人に非ず。我が身、怨霊に非ず
在るべき平穏と営みを守護せし、護人なり――
「・・・・・・ん?」
カルデアのマイルームにて、じゃんぬとアルクを抱きしめて眠っていたリッカは、慣れぬ感覚にて目を覚まし、慣れぬ感触にて違和感を感じる
草の感触、肌をくすぐる風、暖かな陽射し、うららかな感覚。それらの、まるで原っぱにいるような感覚が五感を震わせ、やがてぼんやりとしていた頭を、精神を、魂をゆっくりと目覚めさせる
「あれぇ・・・?寝惚けてるのかなぁ私・・・?」
頭をゆっくりと振りながら、やがて身体を起こす
「ちょっと~。誰ー。私をシミュレーションに放り込んだのー」
声を上げて確認を取ってみる。が・・・改めて問うてみても、全く返事が返ってこない。そもそも、ここはカルデアではないのだろうか?此所は何処なのだろうか?
「~?」
辺りをぐるりと見回してみる。山々と、整備されていない道。そして、それらを見渡せる原っぱに自分は立っている
空は突き抜けるような蒼穹。陽の傾きかたは・・・どうやら今は早朝らしい。それくらいはなんとなく解った
「どうなってるんだろう・・・」
胸の内にいる母上に、問いかけてみる
【ねぇ母上、これ何事?夢?夢なの?】
胸の、心の奥底にいる母上、丑御前は何も答えない。この場、この空間、この一時がなんなのかを、彼女は伏して語らない
「返事がない ただのお母さんの ようだ」
返事はないが、魂の宿る童子切安綱はしっかりとこの手にある。・・・試しに起き上がり、鞘から抜き放ち
「・・・ふっ!」
ふぉん、と軽く振ってみる。軽い一振りであってもその太刀筋に澱みなく、その武はまさに平安の守護者のものに他ならない
「うん、問題なし。母上がいなかったら振るえないし、ちゃんといるんだよね」
なら・・・別段気にすることでも無いんだろう。きっとこれは夢で、凄くリアルな夢を見ているんだろう。格好も寝巻きから、普段着になってるし。夢にしては気が利いてるなと、リッカはほんわか思う事にする
「よし!じゃあ・・・もう一回寝ようかなぁ・・・」
ゴロン、と寝っころがり大の字になって空を仰ぐ。ロマンやオルガマリー、マシュにギルが何も言ってこない以上、そう大した問題でも無いんだろう。平和そのものの景色を臨み、頬を緩ませながら空を見上げる
「ヘイワダナー」
何処かも分からないし、何をするために此処に来たのかすら分からないのがちょっとふわふわしすぎな気もするけど、夢に整合性を求める方が無粋なのだ。取り合えずあるがままを、知るがままを楽しむのがいちばんだ
「あ、鳶が飛んでる」
ピーヒョロロロ、と鳴き声を上げて、雲一つない青い空を飛んでいるトンビ。その飾らなさ、ありのままの姿がとても自由で、微笑ましく感じる
「――・・・」
耳に響くは風の音、身体をくすぐる草の感触、鼻に届く土の匂い。それらはとても真に迫りリッカの五感を刺激する。それらはとても、懐かしく。それらはとても新鮮なようで・・・不思議と安らぐ感覚であった。まるで、ふるさとに帰ってきたかのような。長らく踏みしめていなかった何かを、再び踏みしめたかのような
「こんなにのんびりしてもいいのかなぁ・・・あぁ、じゃんぬにおにぎりとか作ってもらいたいなぁ・・・」
ぼんやりと呟く。平和なら平和でよろしい。だって夢に無粋なものはいらないと相場が決まっているし。私がなにもしないでいいのなら、その世界は上手く回っているという事になるのだし
陽が少しずつ顔を出し、昇っていく。それらは少しずつ、眩しさを感じさせる程に、顔を、全身を照らし・・・
・・・――否。この平穏は、とある異変にて切り裂かれる
「――!?」
その刹那、信じられぬ事が起こる。先程までに晴天快晴であったその青空に異変が呈される
「空が・・・」
黒い。黒い暗雲が刹那の内に立ち込めて。その心地好かった青空を、晴天を漆色に塗り潰してしまったのだ
「夢かな?やっぱり夢だよねこれ」
口では言うが、その身体は自然と戦闘体勢を執り行う。バキリと拳を鳴らし、辺りの警戒に勤しむ
「――・・・?」
先程とは一転し、どんよりとした空気と雰囲気に辺りが支配されている。困窮を極めた鉄火場のような、中学校の教室のような嫌な雰囲気だ
「取り合えず・・・歩いてみようかな」
じっとしていては、成すべき事を成し遂げられない。ひとまず動いて現状を把握しなければ、と決意した瞬間・・・
「!」
リッカの前に現れる。人ならざる化生。変生せし怪異、害成す悪の魂にて迷える亡霊
それらは鎧を纏い、刀を手にし面を被っている。漆黒の鎧武者・・・といった所だろうか。風貌の印象は
「エネミー?・・・ははーん」
合点が行く。この荒唐無稽な環境、異変、そして有り得ざる敵の襲来。これらが導き出す結論は一つ
(ギルの抜き打ちシミュレーションだねきっと。寝起きが、寝てる最中が一番危険なんだと私に教えてくれているんだ!きっとそうだ!)
母さんが返事してくれないのもきっとそんな感じなんだろう。心を鬼にして・・・と言うやつだ。睡眠学習と言う奴なんだろうか?うん、きっとそうだと自分を納得させる
『――!!』
中央に陣取っていた鎧武者の一体が躍り出る。右手に手にした長い刀を、人ならざる膂力で上段に振るい上げ、一息に振るい下ろす。兜を割り、鎧を砕かんが如きの剛力を発揮する魔性の一撃
一般の人間なら身体の正中線から真っ二つに割られ、裂かれていた所だろう。本来のマスターならば、サーヴァントもおらぬ様相で襲い掛かれては中々に難儀するだろう
『――!?』
だが・・・よりにもよって、此処にいる少女は普通ですら無い。善良な魂ではあるが、その身の末端に至るまでこれ即ち致死の泥に浸されし魔力の総身
右手だ。右手だけでその渾身の一振りを無力化したのだ。刀を右腕の肘の先の部位にて受け止めた
その箇所には・・・漆黒の籠手が顕現している
『!!!』
同時に、絶命を果たす。左手にて刀を抜き放ち、瞬時に胸に突きを放ち核を砕く。その絶技に霧散する武者。天下に伝わる五剣が一振りを利き手に持ち替え
「変わったタイプだなー。まぁいいや。よろしくね!」
天に掲げ、ぐるりと空を切り裂く。――それに呼応し、暗雲がその箇所のみ裂け、リッカの身体に変化が起きる
身体中に空より飛来せし禍々しき鎧が装着されていく。見るものの心を畏怖させへし折る凶悪な面構えの邪悪なる鎧。心胆を震え上がらせ、戦う意志を根こそぎ刈り取るおぞましき意匠。翼、龍頭の籠手、弓と一体化した左腕。そして、身体中に走る真紅の線紋様、真紅と漆黒の眼
人類悪たる証の鎧。それを纏いし人類最悪のマスター。それこそがこの人間の正体・・・藤丸リッカなのだ
【夢で身体を動かすのも変な話だけど・・・まぁいっか!よーし、やるぞ!】
刀が斬艦刀に変化し、気炎と気合いを吐き出す人形の邪悪なる龍。その気迫とおぞましき異様に気圧されるように飛び掛かる鎧武者。大地を踏みしめ、跳躍し頭上に飛び上がる
【――はっ!】
指を指し、左手を弓矢に例えて突き付ける。発光し、指先に深紅の魔力が凝縮し、矢が如く鋭利となり
『!?』
レーザーめいて鎧武者の身体を貫く。過たず穿たれた胸に穴を開け、硬直し、だらりと弛緩する怪異
【よっと】
左手をクイクイっと動かし、レーザーで五体をバラバラにし、徹底的に戦闘不能にする。霧散し、消えていく鎧武者
【ラスイチだね】
真正面に相対し、刀を構えるリッカ。鎧武者も退路なしと悟ったのか、八相に構え突撃を成す
『――!!』
斜め上段より振るわれし起死回生の一撃。首筋めがけて振り下ろされる殺意のみなぎるその攻撃を
【ここに刃を入れる】
なんの気も無しに、さらりと容易く刀の軌道に安綱を置き、いなす
【刃は止まる。――此処に刃を入れる】
そのまま身体を最小限に捻り――
【――首は飛ぶ】
くるりと、駒を回すように一回転し、その流れと共に刃を差し込む
吹き飛ぶ首、吹き出る鮮血。ぐらりと弛緩し倒れ伏し、霧となり霧散する鎧武者
この動きは人間に到達できる領域に非ず。平安の守護者としてその勇名を轟かせし【源頼光】の武練が、安綱を通してリッカに染み付いているのだ。それ故に、在りし日の平安を覆す事叶いし者にしか、リッカを剣技にて下すこと叶わぬのである
ヒュン、と血を払い、ゆっくりと母との絆の証を納刀し息を吐く
【――!】
空を見上げる。暗雲が立ち込めていた空に、再び青空が、太陽が現れる。その奇想天外な仕掛けと有り様に首を傾げるリッカ
【これ、シミュレーションじゃない・・・?】
刀にて首を刎ねる感覚や、受けとる殺意。偽物にしては、シミュレーションにしては真に迫り過ぎているような気がする。誰もいないと言うのも、号令がかからないと言うのもなんだかおかしいような、そうでないような・・・
【結局夢なのかな、夢じゃないのかな・・・?まぁ、どっちにしろ穏やかじゃないのかな?今のこれ】
暗くなる空、這い出る怪異。安綱が小さく振動している。・・・気を付けなさいと伝えるように
【うぅん、解らぬ】
取り合えず悩むのは止めようと思い、刀を握りしめる。一先ず自分は生きている。生きているのだ。生きているから、なんとかなるだろう
【取り合えず霊脈探そっかなぁ・・・】
カルデアとの通信さえ繋がれば、ロマンが力ずくで引っ張り出してくれるか、ギルが首根っこ掴んで引き戻してくれるだろう。オルガマリーも何とかしてくれるだろうし、じゃんぬは令呪を使って何かあったら喚んで、肝心な時にいないマシュケベなすびはおしおきのスパンキングをしてあげなければならない。仕方ないね。おぉなすび・・・
【よし!なら・・・行こうかな!】
決意し、身体を動かそうとした刹那・・・
【・・・――】
・・・――風向きが、変わる。背中を押した追い風から、突風へと変ずる
【――・・・?】
何となしに、振り向いた。振り向かねばならない気がしたから、そんな想いが去来したから
その視線の先に在ったのは――
『霊脈を、在るべき世への帰参を求むるならば、我が身と導きに耳を傾けるべし』
圧倒的な威厳、身体を縛られるかのような風格、金と黒の質実剛健な鎧に身を包みし巨大な鎧武者。先程の鎧武者とは比較にすらならない、超常たる威風を醸し出す、その存在
『我が守護せし地に脚を踏み入れし人理を背負うますたぁよ。我が言霊に耳を傾けるが良し』
190はある長身、腰に下げし大刀、小刀。豪奢にして覇者の装いたる鎧、鬼を思わせる二本角の前立て。顔は――見えない。顔の部分に、真紅の輝きが二つ、在るのみだ
【あ、あなたは・・・?】
思わず、そう問うていた。そう、問わねばならぬと魂が告げていた
『我は、下総を、関東を守護せし者。乱世と悪政を憂い、明日へと通ずる平穏をこそ尊び、正しく在るものに力を貸す者』
リッカに近付きし、その人物。人間ではない。このただならぬ風格、まさしく――
『銘は未だ伏せよう。我は・・・平定者。この関東に平安と安寧をもたらせし者。くらすは、るぅらぁと申す者也――』
【関東の・・・ルーラー・・・】
その夢の中にて果たした邂逅
それは、何を意味するのか――
【・・・・・・!】
【どうかしたのん?黒縄はん。なんやこわいかおしてむこう睨んで。珍しい鳥でもいたん?】
【黙りなさい。私は貴方と馴れ合うつもりはありません】
【あらいけず。まぁどうでもええけんど、またその『骸』が騒ぎだしたん?ほんま、しぶとく生き汚くてかなわんわぁ。呼ばれてまで、埋め込まれてまで忘れられんよって、譫言みたいに呟いてしもうて。ふふっ、かわいそ】
【――――】
【あぁ、こわい、こわい。ほな、うちは引っ込ませてもらうわ。まだ頭数も揃わんにいがみ合ってしもたら怒られてしまうよって。あんまり気に病まん方がええんちゃいます?もうあんたはんはそれとちゃう。単なる剣豪、カラクリ仕掛けの壊れもんやさかいに】
【・・・】
【ほなさいなら。うふふ、うふふ・・・うふふふふ・・・】
【――・・・藤丸、リッカ・・・】
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