人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

339 / 3000
続けて書いちゃいます。なんだか筆のノリとアイデアが湧いてきて非常にいいぞ!


カルデア 午前一時

「むにゃむにゃ・・・あふぇくしょん・・・」
「」
「リッカ・・・むにゃむにゃ・・・」


(あぁ、私の順番が今日でなかったなら・・・私もリッカを抱きしめて、ねんねんころりを歌ったと言うのに・・・!)

「せめて・・・安眠を邪魔するものがいないよう・・・部屋前で見張ると致しましょう・・・」




宝物見つけた!護らなきゃ!

夢とされる空間に迷いこみ、そして関東のルーラーと名乗る英雄に出会った藤丸リッカ。元の世界に戻る道筋を熟知していると豪語するルーラーの言葉と導きに従い、行動を共にする事を決意したのだった

 

『・・・・・・』

 

ルーラーは何も語らず、黙々と歩を進める。その足取りは揺るぎなく、決して逸れず、決して迷わぬものだ

 

「あの、ルーラー様。此所は一体何処なんでしょうか・・・」

 

何となく敬語を使わなくてはならないやんごとなきお方だと直感にて受け取り、おずおずと告げるリッカ。醸し出す風格、気品からしてとても身分の高い方だと言わずとも伝わるからだ

 

彼の言葉に嘘は微塵もない。ただ、在るのは強き肯定と決意のみだ。この場所を護りたいという、強き意思

 

その揺らがぬ決意と気迫を、魔術師としてはイマイチなリッカは心で理解した。だからこそ、彼女は彼に敬意を払っている

 

『――この場は下総。貴様の世代においては東京と呼ばれ・・・国の支柱を成す場所也』

 

「東京!?此処が・・・!?」

 

・・・夢にしては随分とピンポイントな・・・そう思うリッカに続けて告げるルーラー

 

『この場にて動乱の胤、兆しを感ずる。しかし未だ、宿業は揃わじ、怨の穢土の土台は培われず。貴様もまた、夢幻なる過客に過ぎず』

 

「は、はい」

 

『我、警鐘を鳴らすもの。我、覚悟を問うもの。貴様が奮うか、臆するか。見極める者也。是ならば力を授けんとし、否ならばその魂魄を砕かんとす』

 

「――・・・」

 

物言いが古風で難解だが、要するに『ヤバイことが起きたとき、対処できるのか?』と問い掛けている、のだと思う。どんな困難でも、大丈夫なのかと

 

「・・・分かりました。今は、あなたの導きに従います」

 

この人相手に、弁舌や交流はあまり意味を成さないと感じたリッカは、ただ敬虔に言葉に従う事にする

 

自らを導くと言ってくれた以上、彼は嘘は吐かないだろう。必ず、自分を求める何処かに導いてくれるはずだ。現に、前を歩き自分をリードしてくれている

 

(何も分からないなら、渡りに船には乗っておこう!私一人で行くよりは確実だろうし!)

 

どうもサーヴァントの皆とも上手く連絡が取れない。どうやら本格的に隔絶されているようだ。ならば自分なりに、脚を進めて行くしかない。取り合えず、前に進むことを・・・

 

「わぶっ!!」

 

考えながら歩いていたら前にルーラーと正面衝突する。突如止まり、リッカとぶつかってしまったのだ。鼻頭を抑えるリッカ

 

『・・・――』

 

「ど、どうしましたルーラー様!?」

 

突如止まるルーラー。そしてリッカへと向き直り、ゆっくりと近付き。そして右手を差し出す

 

無礼だった・・・!?両手で顔を覆いびくつくリッカ

 

『――拵えよ』

 

ルーラーの言葉に、目を右手に向けると・・・

 

「・・・おむすび?」

 

右手には、おむすびが握られていた。輝くような白米、ほかほかした湯気に目が釘付けになる

 

「・・・いいんですか?」

 

『些か行軍が嵩む。空腹では苦痛なりて、僅かながらも鋭気を蓄えることに異論無し』

 

ぐいぐい、と右手を勧めてくる。その厚意に、リッカはおずおずと頷き

 

「じゃあ・・・あっちの原っぱで食べましょうか、一緒に」

 

『是』

 

二人で、朝御飯の時間とするのだった。丁度陽は、登り始めた頃合いである

 

 

「わ、美味しい!」

 

ルーラーから頂いたおむすびは、まさに神気が立ち込めているかのような出来映えであり、一口口にしただけで手放しにて称賛する程に素晴らしいものであった

 

絶妙な柔らかさ、塩の利き加減。暖かさ、どれを取っても至高の逸品だ。エミヤが一週間に一度作れる絶品おにぎりに勝るとも劣らない素晴らしいおむすびである

 

『・・・』

 

隣で胡座をかきながら黙々と食べているルーラー。何処から取り込んでいるかはあえて突っ込まないリッカであった

 

「わざわざ、ありがとうございます!あの、なんで・・・?」

 

『先の競り合いにて身体を動かしたが故、空腹であることに致し方は無し。食は正しき生命の活動であるが故、噛み締めるが良し』

 

「あ、気を遣っていただいてありがとうございます!」

 

さっきの戦闘にて動いたことを気にしてくれたらしい。威圧感ばかり目に行っていたが・・・

 

「・・・優しいんですね、ルーラー様って」

 

そんな所感を漏らしてしまう。無礼に当たってしまったなら申し訳ないのだが・・・いの一番に自分の身を案じてくれたその心意気は、ありがたいものに他ならないから、きちんと伝えておきたいと思ったのだ

 

『礼に及ばず。当然の施なり』

 

「はい。ありがとうございます」

 

『案ずる事は無し。未だ開戦は遠く、この場にて流るる血は無し。気楽に構え、揺るぎなく道を歩むが良し』

 

「はい!」

 

もふもふとおむすびを頂き、手を合わせて挨拶を終え、立ち上がる

 

『再び足を進める時分、覇気を湛え歩むべし』

 

「よーし!行くぞー!」

 

最低限の腹拵えを終え、二人は再び霊脈に向かって歩みだすのであった――

 

 

『日ノ本は良き国であるか』

 

歩みながら進むルーラーが、ぽつりとそんな言葉を告げる

 

「日本ですか?」

 

『然り。我が領地、我が未来に生きる者よ。日ノ本に生きる者よ。日ノ本は・・・良き国であるか?』

 

「――はい!」

 

その問いに、躊躇うことなく即答するリッカ。少なくとも、自分はそう思う

 

繊細な技術、技術の革新、文化や芸能の発展。それらが今なお行われていて、美味しいものがいつでも食べられる今の日本は、とても素晴らしい場所だと思う

 

そんな日本に生まれたことは、自分にとって幸せの一つであると・・・まっすぐ伝えられるくらい素敵な国だと思っている。だって、アニメやマンガは世界一だし!カルチャーは世界一だし!

 

「日本に生まれて、良かったです!」

 

『――・・・そうか。解なりや。我が身、礎と成った甲斐が在るというもの』

 

心なしか、嬉しげな笑いを低く響かせるルーラー。関東のルーラーだから、やっぱり日本を誉められるのは嬉しいのだろうか

 

『されば――・・・、・・・』

 

ふと、空を見上げる。ルーラーの視線に合わせ空を見上げると・・・

 

「真っ暗・・・」

 

澱む空、黒き怨念。不穏なりし空気が、辺りを充たす。戦闘体勢を行うリッカ

 

「何処かにまた現れるんでしょうか?怪しいあの、鎧武者みたいな・・・」

 

『・・・』

 

「あ、ルーラー様じゃないですよ!?」

 

慌てて訂正するが、ルーラーが気にかけしものは其処ではない

 

 

 

 

「びぇえー!びぇえー!だぅ、あぅう・・・!」

 

「――!」

 

赤ん坊の声がした――それを認めたリッカの行動はまさに迅速、電光石火の如く駆け抜ける。声のする場所へ、一直線に

 

『・・・――』

 

その迷いのない行動に、小さく笑いながら後を追うルーラー。互いに、敵には容赦しない理由があるのだから是非も無し

 

互いに譲らず、混乱の最中へと向かう――

 

 

「よしよし、田助、こわくない、こわくないから・・・」

 

「えぐっ、あうー!えぅー・・・」

 

辺りを鎧武者に囲まれてしまい、恐怖と重苦しさにて泣き出してしまった赤ん坊を背負い、あやしながらも気丈に振る舞う一人の少女。梅色の着物にて田助と呼ぶ赤ん坊を、自分の恐怖を圧し殺し懸命にあやす

 

彼女たちは、人里離れた庵に私用にて脚を運ぶ少女と赤ん坊である。父と母の飾りや鍋を直してもらおうと歩む最中であったのだ

 

「ととさまとかかさまに内緒で来ちゃったから、ばちがあたったのかな・・・」

 

自分も泣き出したい状況でありながらぐっとこらえ、田助をあやし続ける気丈な少女

 

【――・・・!】

 

しかし、外道なりし妖に宝の価値を解る筈も無し。血生臭く撒き散らす殺気を、二人の子らに臆面もなく向け放つ

 

「うぅ、こわいよぅ・・・でも、しっかりしなくちゃ・・・」

 

その震えながらも懸命に奮い起つ者に、手を伸ばす者は誰もいないのか?誰も、この生命を護らんとする者はいないのか?神は、仏はいないのか? 

 

「お、おねがいします・・・田助だけは、田助だけは見逃してください・・・」

 

ペコリと頭を下げ、懇願する彼女の言葉に耳を傾ける温情無し。彼等、闇夜に這い出る畜生なれば

 

【【【――!!!】】】

 

「っ・・・」

 

一斉に飛び掛からんとする鎧武者。生命、等しく刈り取る礎なれば。その区別、老若男女ありはせず

 

「びぇえ!びぇえー!」

 

「よしよし、ごめんね・・・ごめんね、おぬいが内緒で出たから・・・ごめんね・・・」

 

最後まで思慮する幼児へ、その凶刃が襲い掛かり――

 

「っ・・・!」

 

白刃が煌めく。未来の宝に迫りしは無粋にて醜悪なる血の饗宴

 

 

 

 

止める者はいないのか、阻む者はいないのか

 

・・・この場に神も仏もおらぬのならば

 

【誅罰執行――!!!!】

 

「え、あ・・・」

 

在るはただ――悪逆を赦さぬと吼え猛る人龍である――!

 

「・・・りゅうじん、さま?」

 

二人の前に立ち塞がり、その外道共を切り捨てる。ちいさな生命を前にして、守護せんと吠える悪がある

 

【【【!?】】】

 

蠢く数、8余り。二人を護り、小さく呻く

 

【言っておくけど、私を狙うのと子供を狙うのじゃ全然意味が違うから】

 

静かに、確かに殺気と怒気を孕ませながら低く呟く 

 

【ルーラー様、力を貸して。私はこの二人を護りたいです!】

 

『無論、是なり。それこそが人が懐くべき義憤なれば、その猛りに力を貸さぬ道理無し』

 

二人の傍に寄り添うリッカに、三人を守護せんと仁王立ちを果たすルーラー

 

「あらまぁ、おさむらいさんまで・・・?」

 

「きゃっきゃう♪あうー♪」

 

【よしよし。よく頑張ったね。縁もゆかりもない身だけど、お節介を焼かせてね】

 

二人を撫でる。・・・いつも、母上がしてくれるように

 

「あ、ありがとう!りゅうじんさま・・・!」

 

【私は神様じゃないんだよぅ。神様は、あっち】

 

 

『――』

 

腕組みを崩さず、泰然と相対するルーラー。その威風を前に、鎧武者は一歩たりとも動けずに縛られている

 

『我が地、我が子、我が未来にして宝に働きし狼藉、獄門すら生温し。その妄念、輪廻より外れ虚無へと至らせん』

 

大刀を抜き放つ。その刀より光が充ち溢れ、あらゆる魑魅魍魎と怨霊、邪なる者を浄化し、一掃し、強制的な即死判定を付与させる

 

『散滅すべし――』

 

大上段から下段まで一息に振り下ろす。ただそれだけで、『目の前の万物が切り裂かれる』

 

【ファッ!?】

 

天まで届き、地を照らし、目が潰れんばかりの凄まじい輝きと共にあらゆる万物を切り裂いた・・・かに思われた一閃は、しかして過たず鎧武者のみを切り捨てていた

 

『我が威光、届く総てが我が間合い。即ち是、東の在る国は容易く処断が叶う証左也』

 

つまり、守護せし領土にて彼は無敵。あらゆる敵を討ち、あらゆる動乱を平定する者であるのだ。その威光と威厳こそが・・・かのルーラーの力であり、守護者足る由縁である

 

一閃と共に、雲も吹き散らされ快晴となる。その光輝を阻むものは無いと、知らしめるかのように

 

『――無事か、幼児。そして、藤丸』

 

【はい!ありがとうございます!ルーラー様!】

 

「ほわぁ・・・!おさむらいさまは、光るんだねぇ・・・!」

 

「きゃっきゃう♪だー♪だー♪」

 

背中にて守護せし者達の安全を確かめ、静かに戦闘体勢を解く

 

『・・・』

 

「・・・あの、ルーラー様」

 

『言わずとも、良い』

 

ルーラーは静かに頷く。此処にて、二人の思惑は一致する

 

 

「うわぁ~!高い!高いねぇ・・・!」

 

『・・・――』

 

ルーラーに肩車され、二メートル近い景色を見てはしゃぐ少女と

 

「だっだぁ♪きゃうー♪」

 

「よーしよしよし。小さいなぁ。赤ん坊可愛いなぁ・・・」

 

「きゃう♪うー♪」

 

赤ん坊をあやしながら、二人の子が目指していた場所へと進路を変えるリッカとルーラー

 

「帰る前に、ちょっとだけ寄り道をさせてくださいね、ルーラー様!」

 

『急ぐならば回るべし。その手間こそが良縁を呼ぶと我が言霊は告げるが故に』

 

「おさむらいさまはつよいねぇ!りゅうじんさまはとてもとても優しいんだね・・・!」

 

「ふふっ、そうでーす。りゅうじんさまは優しいのでーす!」

 

「だっだぁ♪きゃうー♪」

 

『・・・方角は此方で是、なりや』

 

「うん!じいちゃまの庵は、向こうだよ!」

 

「じいちゃま・・・誰なんだろうなぁ」

 

「あうー♪」

 

何処であろうと、リッカのスタンスは変わらない

 

ただ、困っている者を救うために、奔走と徒労は惜しまないのだった

 

『・・・――』

 

ルーラーもまた、その在り方には何の異論も挟まなかったが故に。リッカの胸に、もう疑惑は消え去っていた

 

二人は同伴し、二人の子供の保護先へと向かう・・・

 




「――ふっ!!」

とある庵、離れた箇所にて無心に何かを打ち続ける赤毛の匠が一人

「――チッ、まァた失敗だ。こんな切れ味ばっかり突き詰めてもどーしようもねェだろがよ」

出来栄えを見るまでもなく望むものではないと悟った彼は、即座に見切りをつける


「・・・来るとは言ってたが、大丈夫なんだろうな。しっかりてめぇの親と来やがれよ・・・?」

顔を洗いながら、その匠は心配そうな声をあげるのだった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。