人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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深夜・二時


「もう少し・・・もう少しです。感動のエンディングまでもう少し・・・義仲さま、私に力を・・・旭の輝きを!!」

ブラッドボーン、エンディング直前までやり込みながら呪詛の願いを告げプレイする

「勝った!!ぶらっどぼーん、完・・・」

あっさり殺されゲームオーバーとなる

「ヅァアァアッ!!!」

鬼の力で投げ付けられたコントローラーはぐしゃぐしゃとなるのであった・・・





【ンン、黒縄地獄はどうなさいました?】

「はっ、単独行動を行っておりまする。行方、とんと知れず」

【躯に振り回されているのでしょうか?ンン、まぁよいでしょう。アレがアレである限り、人類最悪のマスターは折れるより他ないが故に。さぁ、こちらはこちらの手筈を整えましょうぞ段蔵。霊脈に、この札を】

「はっ」

【魑魅魍魎、百鬼夜行。再現して御覧に入れましょう・・・うふ、うふふ、うふふフフふぅ!!】


仇なすもの、祟るもの、平定するもの

「うひゃあー!はやい!はやーい!」

 

 

下総、昔なりし日ノ本の地。空が広がり、地が広がり、雲が浮き、川が流れ、澄んだ空気が心地好く流れ行く東の地。その広く穏やかなる土地を疾走し、駆け抜ける少女・・・

 

【どう?お馬さん速いでしょ!おぬいちゃんも田助くんもいつか、こういう立派なお馬さんに乗れる日が来るんだよ!】

 

正確には少女、ではない。日ノ本に迷い込みし夢幻の顧客、藤丸リッカの能力、人類悪の証たる泥を、騎乗のカタチに変えて産み出した泥馬【龍騎】に乗り、おぬいと田助をしっかり抱えながら疾走しているのだ。徒など比べ物にならぬ速さと疾走は共に、二人の幼児に味わった事のない体感を与える

 

風を切る音、伝わる震動。馬の暖かさ(魔力ではあるが)。そして、飛び去るように後ろへ流れていく景色。その新しい世界に大興奮な二人であり、そんな様子を見てやっぱり笑うリッカと、霊体化しているルーラー

 

【白馬のお馬さんじゃないのが心残りだなぁ・・・】

 

「おぬい、これ好き!りゅうじんさまも、お馬さんもかっこいい!」

 

「きゃっきゃっ!あうー!」

 

『豪胆なり。かの子ら、必ず大成せり』

 

(私もそー思います!あ、でも美的センスだけは影響しない方がいいかも・・・)

 

早馬の何倍もの速度で駆け抜ける龍騎。母上の刀は村正に預けているため、流鏑馬や馬上槍などは使えないが、騎士王と母上からみっちり馬術を仕込まれたため、問題なく手綱を手繰ることが叶うのだ。まぁ、本体の一部のようなものなので不手際は起こらないのだが

 

「かたなを振ったり、お馬さんに乗ったり・・・りゅうじんさまもおさむらいさまも、すごいんだねぇ・・・」

 

【私は別にすごくないよー。すごいのは、私を支えてくれた人達だよ】

 

「わぁ、りゅうじんさまは他にもたくさんいるの?」

 

【大切な人は、もう数えきれないくらいいるよー。おぬいちゃんも覚えといてね。何か大きな事を成し遂げたいときは、誰かに頼る事を忘れないで】

 

「うん!だれかにたよることを、わすれない!」

 

「あうー!あうー!」

 

その返答に鎧の下の顔を綻ばせながら、リッカと龍騎はひた走る。おぬいと田助を乗せ、里を目指し駆け抜ける

 

『例え一時の夢と言えど、生者の交流に変わりなし。言の葉を交わす機会を逃すべからず。推進し、対話を楽しむべし』

 

(夢の中だろうと、コミュニケーションを忘れるなって事ですね。分かりました!)

 

そう言ったは良いのだが、リッカの中には気になる事も生まれている。このルーラー・・・関東のルーラーと呼ばれる方だ

 

この御方は、本能的に畏敬と畏怖が湧いてくるほどの凄まじき御方だと心得られる。しかし、真名はまだ明かされない。それは後でいいのだけど・・・気になるのは、ルーラー以外のクラスだ

 

(ルーラー様、ルーラー様は他のクラスは何の資格を御持ちなのですか?)

 

迷ったので訪ねてみる。特になんでもない事のように、疑問の返答は行われた

 

『あさしん、除く他は修めり。側面強きもの、ばぁさぁかぁ、あべんじゃあ、るぅらぁなり』

 

アサシン以外の全て、バーサーカー、アヴェンジャー適性、そしてルーラー適性を持つ・・・ヘラクレスと並ぶ多彩さだ。余りの答えに驚愕するリッカ

 

(なんでも出来るんじゃないですか!?)

 

『守護せしもの、(まじな)うもの。あさしんは、他に任せし者在り』

 

ルーラー様の言葉によれば、アサシンは自分の他に任せている者がいるという。だから自分はやらない・・・という事なのだろうか

 

『我、召喚に応じし事象未だ無し。呼び出されんとする機運、ばぁさぁかぁ、あべんじゃあに限り・・・召喚せしもの、直ちに災いあるのみ』

 

(わ、災い?)

 

『ばぁさぁかぁ・・・呼び出されし我。何者の意見上申聞き届けず、その時代の治世に直ちに牙を剥く荒御霊也。ますたぁ、我が身を縛る無礼者とし即座に首を贖いに求めんとす。成す事、悲願唯一つ。--時の朝廷の転覆なり』

 

要約をすると・・・バーサーカーの彼はマスターを無礼者と抹殺し、そのまま呼び出されし世界の枠組みに挑み、転覆させんと挑むと言うものらしい

 

(あの、現界はどうやって・・・?)

 

『すきる、にて行うなり。身一つあれば、一週間程は活動叶うが故に。・・・あべんじゃあ、此即ち時代を祟る怨霊の化身なり』

 

最も恐ろしきものと、ルーラーは語る

 

『望むもの、我が胴、我が再戦、我が生命也。生きとし生ける生命、全てを呪う怨嗟を撒き散らす者也。疫病、災厄、天変地異を操り、時代そのものを憎む大化生とす。余人、目に入らず。日ノ本、我が怒りの牙を剥き、憎悪、けして尽きぬ釜なりし故に』

 

誰彼構わず怨み、祟り、呪い殺す怨霊、大化生と成るのがアヴェンジャーのクラスの彼だと言う。世界を祟るのが、彼の一つの側面だと

 

『故に。我、召喚に応じず。余人の手による召喚、聞き入れず、世の煩悶、苦難、全て生命の糧なれば。その世に我が助力、不要なり』

 

人間の争いには関与せず、ただ見守るのみだという。ならば・・・

 

(願いは無いのですか?聖杯に懸ける願いとかは・・・)

 

リッカの言葉に肯定を示すルーラー。自分の願いは他者に預けるものではないと語る

 

『我が願い、日ノ本の平穏と繁栄のみである。その祈り、たかが杯にくべる矮小な祈祷に非ず。連綿と続く日ノ本の魂が紡ぎ上げる道標であり、掲げる錦の旗である。故に我が身に願望機など不要。それ処か、我が子々孫々を惑わす愚物、この手で破却すべき器なり』

 

平和も歴史も日本の皆が掲げるものであり、その平穏と安寧こそが我が願い。それは聖杯などに汲み取らせる願いでなく未来を生きる者達が作るもの。だからこそ、自分の身に叶えたい願いなどなく、むしろ堕落と誘惑の化身として壊したいとすら考えている・・・と言うことらしい

 

(だから『ルーラー』なんですね・・・聖杯に願いなく、全てを平等に見守るべきという自負と願いから・・・)

 

母上といい、なんで昔の日本人はこんなに強くあれるのだろうと不思議と誇りが入り交じった妙な気分になってくるリッカであった。昔の日本人は、本当に心に神を宿していたんだなぁと。改めて痛感させられる

 

『故に・・・此度の召喚、我が身に心地好し』

 

かといって召喚を腹に据えかねていると言えば、けしてそうでもないらしい。楽しく、面白いと彼は語る

 

『未来の子孫と日ノ本を駆ける。未来の侍を、生命を導く。なんと愉快、そして新鮮な体験か。るぅらぁの我、調和と発展、繁栄を重んず和魂なれば。使役され、共に轡を並べるさぁばんと、ますたぁの関係、面白き事と把握せし事柄也』

 

日ノ本の未来の子らを垣間見、共に戦う。それらは望むところであり、また愉快であると笑うルーラー。願いはなくとも喜びはあると、彼は空を見上げながら語るのだ

 

(ルーラー様って、とても情が深いんですね!)

 

『日ノ本とは、日の国であり。沈み行き登り行くモノなれば・・・その結論には是なり』

 

ルーラーの厳かな物言いに、笑顔で頷く。ルーラーとしての彼は間違いなく、この日ノ本の守護者であり、大英雄だと確信が持てた

 

(これからもよろしくお願いいたします!ルーラー様!)

 

『・・・ますたぁの畏敬、しかと受けとらん。我が身を頼る事、正しき敬いなる事を認めんとす』

 

互いの在り方、互いのスタンスに好印象を懐きつつ、馬を走らせ駆け抜けて行く

 

「わー!お空も青くて、きれい!とってもはやくて、それから、それから・・・!」

 

疾走せし馬上にて空を仰ぎながらおぬいがはしゃぎ、その胸に去来する感想や感嘆を懸命に言葉にせんとはしゃぐその時――

 

「あ・・・」

 

【・・・】『――』

 

空が、淀む。不吉な予兆を表す、どんよりとした空模様に変わり

 

【【【――!】】】

 

進行を妨げしは幽霊にて鎧武者。何処ぞより現れし魑魅魍魎の怨霊が、里への道筋を阻む

 

【せっかく気分のいいお散歩してたのに・・・空気の読めない怪物さんたちですねぇ田助くん】

 

「あぅー!!」

 

【やってしまっていいですか?田助くん】

 

「だぃー!」

 

【成る程、徹底的にぶち殺せと仰有いですか。他ならぬ田助くんの頼みならば仕方ありません】

 

馬から下り、田助とおぬいを庇うように大地にマスターは立つ

 

「あれまぁ、田助の言葉もわかるの?りゅうじんさま!」

 

【なんとなく、なんとなーくね。・・・ルーラー様!】

 

二礼二拍一礼にてルーラーに願い奉るリッカ。地響きと風を伴い実体化する、漆黒と黄金の鎧武者

 

【お願いいたします。おぬいちゃん、田助くんを阻む外敵をやっちゃってください!】

 

『上奏、聞き入れた。二人から離れること無かれ、ますたぁ』

 

頷き合い、素早く二人をガードするリッカ

 

【(今回は倒す戦いじゃなくて、護る戦いだね)】

 

背後に護るべき何者かがいる以上、傷つけられない何者かがいる以上、その何者かを護るために誰か一人が傍にて気を配らなくてはならない。武勇を示すよりも、今は二人を護ることが一番大事な戦いだ

 

(母上の力添えも無いし、気を付けなきゃ)

 

故に、サーヴァント・・・頼れる相棒、パートナーに頼る。自分が戦うのではなく、戦いを任せるのもまた・・・マスターとしての在り方だ

 

怪物側からして見れば、女子供に襲い掛かったと思ったら虚空から日ノ本の守護神が現れし状況に気後れし、気圧される。その腑抜けた様相に鼻を鳴らす

 

『尊き願いにあまりに釣り合わぬ雑兵共。速やかに霧散すべし』

 

スゥ、と脚を上げ

 

『我が国土、踏むに能わず』

 

軽く大地を踏み締める。ただそれだけの所作にて--

 

【【【【!!!】】】】

 

割れる大地。ひび割れ、疾走する大地の亀裂。五匹余りの狼藉者が動くまでも無く、速やかに崩落に巻き込まれ墜ちていく鎧武者。軽く踏み鳴らす。砕けていた大地が速やかに修復され、文字通り『圧壊』される

 

軽く息を吐く。吐息、風となり、嵐となり、竜巻となり、形なき亡霊を巻き込む神風となり、天へと吹き飛ばす

 

『霧散すべし』

 

見上げ、厳かに召喚せしは巨大な黄金弓。嵐が集い、風が逆巻き、一つの矢となり、並の英霊数騎を穿ち貫く程の威力と神威を宿らせし一射を――

引き絞り放つ

 

その結果、語るまでも無し。たかが辺りをさ迷う亡霊に過ぎたる、軍を吹き飛ばし城を砕く無銘の一射、在りし結末ただ爆散のみ。霊を穿つのみならず、暗黒に染まりし空をも貫く黄金の竜巻

 

勝負、もはや結末を語るも無粋なり。晴れ渡る空、霧散する闇、過たず吹き散らされし暗黒。日ノ本を守護せし平定者の前に立つ狼藉者、住まう場所無し

 

『些か時を掛けた。先を急ぐが良し』

 

「うわぁーい!おさむらいさまは強いねぇ!」

 

「だうだう!きゃいー!」

 

その異様に、純粋に称賛を、諸手をあげて喜ぶ幼児二人

 

「よーし!じゃあ行こう行こう!」

 

【龍騎】を召喚し、皆を素早く乗せて走り出す

 

「りゅうじんさま、おさむらいさまはすごいんだねー!かっこいい!」

 

【そうでしょうそうでしょう。私はともかく、サーヴァントの皆は凄いんだよぉ。皆凄いからサーヴァントになったんだけどね!】

 

「わたしも田助も、なれるかな?りゅうじんさまや、さぁばんと!」

 

【なれるよ。あなたがそういう生き方をしたいと願うなら、きっとね】

 

「きゃいー!あぅー!」

 

『・・・日々を、揺るぎなく進むべし。それのみが、悔いなく生を送る真理なり』

 

語り合い、話し合い、駆け抜ける一同

 

軍も中々ないその疾走にて、おぬい達の里へとたどり着いたのは走り出して1時間程であった――

 




人里

「ととさま、かかさま!ただいま!」

「おぬい!田助!あぁ、何処にいってたんだい!」

「これ、直してもらってたの!りゅうじんさまと、おさむらいさまにまもってもらってたの!」

「りゅうじんさま?おさむらいさま・・・柳生の方々か・・・?」

「ね、田助!」

「だうー、きゃいー!」

「あ、あぁ・・・ともかく、無事でよかった・・・」

「一言お礼を言わなきゃならんだろう。その方々は何処に?」

「えっとね、二人はね・・・」


里外れ

『--』

念じ、自らの神気を分け与えし結界を構築し警備を万全とす。それを見守るリッカ

「里に怪物は来ないという話ですが、用心に越したことは無いですよねルーラー様!」

『是。・・・藤丸』

「?」

『明日には帰参できよう。我を信じ、憂う事なく平穏を享受するが良し』

「はい!大丈夫!ヤバくなったら向こうから来ると信じてますから!」

『--うむ。では、次なる行き先は』

どこにいこうか?などと顔を合わせ思案していた時

「もし。貴方達は旅のお方ではありませんか?」

弾かれるように顔を上げ振り向くリッカ。神妙な顔持ちにて見つめるルーラー

「母上・・・!?」

藍色の着物、三度笠を被った、たおやかな長髪の女性。長い長い髪、そして規格外な胸部が眼を惹き付ける

『--・・・』

「まぁ、母だなどと。(わたくし)、『(より)』と申します旅の者。その・・・不躾で申し訳無いのですが・・・」

その女性は告げる。気弱げに眉を下げながら、嘆願を告げる

「私を・・・城下町へ。下総、土気城のお膝元へ連れていっていただけませんか・・・?」

・・・突如現れた、謎の美女。彼女は何をリッカ達に告げるのか・・・


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