人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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(オルガマリー君は絶賛大成中。カルデアは今誰の手にも渡らぬフリーな立場にある。それらが成されている今、私が如何なる形で皆の前に顔を出すかだが・・・流石にそろそろ大手を振って歩きたいからネ。でも普通に良さげなおじさまとして出るのもアレだしナー。どうしよう)

「ふむ・・・いっそリッカ君達の前に立ちはだかるシナリオとか面白そうかも。敵か味方か謎のダンディ。皆の驚く顔も見られて一石二鳥じゃ無いかね?」

(となると特異点製作くらいは果たしたいが・・・ギルガメ君聖杯貸してくれるかな。私の計画的にリッカ君を倒すにはもう、星ごとやっちゃうくらいしか無理な感じがしてきているからネ)

「・・・待てよ?私が悪巧みからの特異点を起こすと・・・考えられるのは・・・」

(ホームズ来るじゃん!リッカ君とホームズのタッグとか高跳び案件では!?ホームズには割かし力業で倒された感があるがリッカ君はそれを更に上回る力業でこちらを倒してくるだろう!彼女を人類と考えてはいけない・・・そう、人の形をした終末と思うんだ。そうするしかない)

「・・・それに、ホームズと縁を結ばれたらヤツが此処に・・・?--よーし!清く正しく生きよう!」

「ダンディ、頭が・・・悪巧みをしすぎて・・・」



それぞれが身に付けるべきもの

日々の積み重ねとは、往々にして成果に繋がるものである。未来は積み重ねの果ての結果であり、其処に必然と理不尽はあれど偶然と奇跡は挟まれない。正しく、残酷なまでに導きだされるものなのである。故にこそ、楽園にいる者達には平穏は許せど怠惰は許してはいない

 

何かしらスタッフには自主練を課しているし、サーヴァントたちも1日を揺るぎなく過ごさせあるべき戦闘や騒動に備えている。日頃の特訓や研鑽が未来を作るならば、今を疎かに出来るはずが無く。英雄、人間関係無く自らの研磨と錬磨に勤しみ、何れ来る未来に向けての自分を鍛えているのだ

 

そして、それが前線に出る人間であるのなら尚の事大事である。故に、彼女たちは常に新しいことに挑戦し続けている。それが、今を生きるものの義務であるが故に

 

だからこそ・・・そんな者達は、一分一秒前の自分より進化していく。内面的にも、外面的にも

 

そんな、日常の一幕にこそ。自らを強く奮い起たせる力というものは宿るのだ--

 

 

『シミュレーション、終了。お疲れ様でした、先輩』

 

シミュレーションルームの一室。敵対エネミーを肩慣らしに倒し終わり息を吐くリッカに、マシュが声をかける。いつもと違い、マシュは遠巻きにリッカに通信で語りかける形を取っている

 

「お疲れ様。・・・なんでロマンの真似事してるの?マシュ、今更インテリアピールなの?あれだけガンガン盾振り回しといて?」

 

『インテリアピールではありません、インテリなのです!私はこう見えてAチーム首席の出来る後輩なのですよ!もっと私を上方評価してくださっても良いのではないのでしょうか!』

 

「流石私の後輩!エッチな知識を調べさせたら右に出るものないね!恥が高いよ!」

 

『そうじゃないです!もう、先輩の混沌筋肉!バスター三枚!仮面ライダークローズ!』

 

「マシュルルォ!撤回しルルゥオ!万丈カッコいいんだかんね!!」

 

『だから言っているんです!!』

 

「マシュゥ・・・」

 

「はいはい、コントはマイルームでやりなさい」

 

その隣で射撃訓練を続けているのは我等が所長、オルガマリーだ。頭部と腹部を狙ってはいるが、射撃精度は六割程度だろうか

 

「魔術と違って中々難しいわね。でも、確かな重みと信頼性という点は評価が高いわ。要練習ね」

 

「何々、サバゲーでもやるの?」

 

リッカの問いに笑いながら否定を示す。見よう見まねとはいえ、それは本格的な訓練であり、本腰が入ったものだ

 

「魔術師を仕留める科学に、代行者を仕留める魔術。私は両方使うつもりだからこうやって練習しているのよ」

 

「銃が魔術師を仕留めるもの?なんで?」

 

「それはね・・・」

 

ガチャリ、と装填し科学の産物である銃に魔力を込め火力を増強し

 

「『自らと異なるものを、知ろうとしないからよ』」

 

撃ち放つ。銃弾に魔力コーティングと破裂炸裂弾に変換され放たれた弾丸は、ターゲットボードを粉微塵に粉砕する。火薬と魔術の融合を、オルガマリーは即興でやって見せたのだ

 

「おぉ!」

 

「大抵の魔術師は科学の産物を下浅な小道具の類いと見下し軽視しているわ。そういうやりやすい手合いを効率よく狩るには、その見下されている技術を修め、手にするのが一番よ。知らないという事実は致命的、切れる札が増えるのは喜ばしい事。私の仮定する相手は、そう言う人種ばかりだし」

 

カチャリ、と銃を下ろし息を吐く。オルガマリーも一息ついて、休憩に入るようだ

 

『マリー所長が仮定する相手、とは魔術師なのですか?対人相手の特化、代行者との対峙を考案していると?』

 

「少し違うわ。別に私は戦いたい訳じゃない。魔術師なんてもう脅威でもないし。代行者は厄介と言えば厄介だけど、それにしても対処できない訳じゃない」

 

自信と自覚と責任に裏打ちされた物言いにリッカはぐい、と身を乗り出し、訪ねる

 

「じゃあ誰と戦うつもりなの?マリー」

 

「決まっているでしょう。『カルデアに不当な手段を取る人間よ』。人間の敵は人間なのだから、その人間を効率よく仕留められる技術を学んでおいて損はないわよ」

 

正当防衛、権利の行使、示談、対話に和解。これらは素晴らしいものだが、素晴らしい手段を選びとれないのが人間である。実力行使、約束の反故、強行手段など。理不尽にして不当なる手段に訴えられる手はいくらでも考えられる

 

そんな時『約束が違う』と叫ぶだけの所長であってはならない。万事先手と対処を考案し事に望むべし。それらの手段を選ばれても問題ない力と知識を身に付けておくのは、上に立つ者として当然の行いだ

 

組織の運営は、耳に心地好い言葉では護れない。それらを護り実現するスマートな悪辣さが必要なのだ。魔術勝負に徐に火器で仕留めるような、化学兵器に魔術術式を仕込み、打倒するような

 

そうしなければ・・・

 

「マリーはどんどんスマートになっていくな~。マリーがクイック、マシュがアーツ、私がバスター?」

 

『先輩はバスターの枚数を減らしてバランスよくなりましょう』

 

「言うねなすび!じゃんぬ直伝最高に頭のいい戦法してあげちゃうよ!バスター素殴り!」

 

『はい!防御バフからの宝具展開!ダメージカットです!』

 

「強化解除」

 

『ズルいです先輩!?』

 

「――ふふっ」

 

綺麗事も、耳に心地好い誰もが望む絵空事を全力で追いかけるような人達を、護る事ができないのだから

 

「マリーも言ってやってください!クリティカルバスター戦法が最強だって!」

 

『いいえ所長!耐久からの粘り勝ちこそ在るべき姿です!高難易度ではこれが主流なのです!先輩に伝えてほしいです!アーツの魅力を!』

 

「マシュがリッカを護ってリッカがマシュのバフを受けて殴りなさい」

 

「『なるほど~・・・!』」

 

鶴の一声で二人のいさかいを宥め鎮め、脱いでいたコートを羽織り、リッカの背中を叩く

 

「これからリッカは女子力の修行があって、マシュは身体測定があるんでしょう?私も師匠に用があるから、また後で会いましょう」

 

「はーい。ほらマシュ、ドア開けてドアドア。戻るよ~」

 

『はい!二人とも、お疲れ様でした!』

 

互いに顔を見合わせ笑いながら、それぞれの自らを磨く時間へと、その場所へと足を運んでいく

 

「先輩、突然ですが賽の川原を知っていますか?親を残して先立ってしまった子が囚われる場所で、石を積み上げて徳を積む場所です。ですが積み上がる直前に鬼が現れて台無しにしてしまい、また最初からやらなくてはならない責め苦を味わうそうです。積み重ねては消え、積み重ねては消える。物凄く諸行無常とは思いませんか?」

 

「へー、ところでなんでそれを女子力上げの特訓に向かう今言ったのかな後輩。何か言いたいことがあるのかな?ん?ほら、言ってごらんマシュケベ?ん?なすびん?」

 

「あっ・・・先輩・・・わ、私は屈しません・・・」

 

「公序良俗に反する行いはマイルームでお願いね・・・その、なんというか風紀とか、そういったものも必要だと思うの」

 

 

「マリー所長も仲間に入りたいのですね?いいですよ、先輩は・・・先輩は総てを受け入れてくれます・・・!」

 

「あなたなんだか変なスイッチ入ってないかしら!?」

 

年相応の軽口と距離感を確かめ合いながら三人はそれぞれの研鑽へと向かう

 

リッカはケイローン先生が待つケイローン塾へと向かい、女子力の講義を受ける

 

「それでは、リッカの女子力の向上の為に私が教えられることをお教えいたしましょう。今日はよろしくお願いいたします。マスター」

 

「こちらこそ、よろしくお願いいたします!女子になるぞー!」

 

「や、まぁそれはいいんだけどよ。なんで俺とヘラクレスまで出席するんですかね先生。オルガマリーは今忙しいから組手できないんで暇っちゃ暇なんだが」

 

「リッカは言うなれば妹弟子。貴方達が率先して学ぶ姿勢を見せるのはマスターにとってとてもよいモチベーションとなるでしょう。此処で学んだ生き方が、役に立つ日が来るかもしれませんよ」

 

「そんなもんかね・・・十分にリッカはいい女だと思うんだがなぁ・・・」

 

「私達のいい女は現代社会ではレスラーという別名を名乗る場合が大半だぞアキレウス。そうではなくリッカは読者モデルやお天気お姉さん的ないい女になりたいのだ」

 

「綺麗ならおんなじじゃねぇの?ていうかお前もいるのかよヘラクレス!」

 

「私はギリシャで裸エプロンが似合う英雄堂々の第一位。きっとリッカに教えられることがある筈だ」

 

「その自信はどっから来るんだよ!オメーの裸エプロンとかウォエッ!想像しちまったじゃねぇか!!」

 

「大英雄は女子力も極めるからこそ大英雄なのだ。理性を取り戻した私はこれ即ち女子力の化身でもある」

 

「オメーの理性割り振りおかしいだろが!や、まぁ女装なら嗜んだこともあるが・・・だからってなぁ・・・」

 

「二人ともよろしくね!アキレウスは何か女子力めいた事できないの?」

 

「そう言われてもなぁ・・・あ、それなら鉄板ネタがあるぜ。ほいっと」

 

そういってアキレウスはさくらんぼを取りだし口に放り込む。三人が見守る中もにゅもにゅ食べ、そして舌を出す。その上には結ばれた茎が乗っていた

 

「どうだ?大したもんだろ。中々こいつぁ出来ることじゃねぇ。俺並みの大英雄ならばこそ出来る芸当だ。リッカもコイツをマスター出来れば中々な女子になる筈だぜ」

 

「成る程ー・・・!」

 

「はははは、アキレウスは時たま愉快な事を真面目にやってくれます。兄弟子としては頼もしい限りですね」

 

「いやらしいなアキレウス。尊敬半分距離を置きたい度合い半分だ」

 

「常にパンツ穿いてねぇアンタに言われたくねぇ!」

 

「貴様はふんだんにヒュドラの毒の染み込んだパンツを穿いたことが無いからその様な事が言えるのだ。穿いた瞬間『あ、私はこれ果てるな』となる気持ちが分かるか。いや、わかるまい。実際穿いてみない事には・・・!」

 

(分かりたくねぇ・・・)

 

「ヒュドラの毒は辛いですね。リッカ、気を付けてください。貴女でもきっと堪えきれないでしょう。私も堪えられなかったのですから」

 

「ヒェッ」

 

「その節は・・・」

 

「良いのですよ、ヘラクレス。ではそろそろ始めましょう。ではリッカ、号令をお願いいたします」

 

「はい!起立!気を付け!礼!」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

 

オルガマリーはアサシンのエミヤの下へ銃火器の教えを請う

 

「〆の弾丸、切り札はおおよそ実用性を度外視した作りのもので構わない。君は魔術に大いに精通しているから、確実に命に届く一撃になるだろう。なるべく殺傷能力を突き詰めたもの、体内で爆発するようなものもいい」

 

「それは、意識の下から来る油断や警戒の薄さを突く、という事ですね」

 

「そういう事だ。大抵の魔術師は、面白いように引っ掛かってくれるからね。君も立派な魔術師殺しになれる事を祈っているよ」

 

「ありがとうございます。次は銃のメンテナンスを教えていただけますか?」

 

「・・・ブラックバレルは触ったことがないが、基本的な要項は教えられるだろう。それでいいかい?」

 

「是非」

 

自らの操る概念礼装を馴染ませるための技術を惜しみ無く吸収、獲得するための教えを請い、魔術師が忌避する現代科学にも精通していくオルガマリー

 

「しかし、君も形振り構わない形になったね。意識の改革というものは恐ろしいな。敵にはさぞ恐ろしく映るだろうね」

 

「正当な魔術ではキリシュタリアに及ぶべくも無いので。神代魔術や現代科学。やれることはやらなくてはならないまでに過ぎません。カルデアを護るためにも」

 

「・・・責任重大だな、君は」

 

「いえ、全く」

 

代行者を仕留める魔術、魔術師を仕留める科学。それらは総て、不当なる実力行使を行う人間からカルデアを護るために

 

各々が、それぞれの足りないものを自覚し、追い求める。それらはいつか、自らが力になると信じて

 

・・・楽園、カルデア。今日もその偉容と対策は磐石にして万全である




(身体測定ですか・・・確かに胸が少しきつくなったような気がしますから、計ってみるのもいいかもしれません。先輩にもサイズが合うブラジャーをつけないと型崩れするから着用は義務ねと言われたので)

「失礼します。マシュ・キリエライト。健康診断に参りました」

「うむ、入るがよい」

「--えっ?」

メディカルルーム

「漸くか、待ちわびたぞマシュ。我を待たせるとは良い度胸だ」

「え、英雄王!?し、身体測定では!?」

--扉を開けたその先に待っていたのは、黄金の英雄王だった・・・輝かしくも神々しいその光景にひれ伏さずにはいられないね。ははぁ~

(紛れもない選択肢ミスからのタイガー道場案件なんだよねソレ・・・)

《セーブはしたか?よし、来世では選択肢を違えるなよ。エアとセイバー、我が雑種にマスターのみ赦す。我が仲間になってやろう》

(優雅は?)

《・・・?》

(あ、覚えてない)

「あの・・・?」

「む、そうだった身体測定であった。あぁアレは真偽が半々な方便だ」

「ほ、方便ですか・・・?」

「うむ。聞いて驚くがいい。--目覚ましく成長を遂げるリッカやマリーに置いていかれがちなお前にもチャンスをやろう!」

『マシュをマシュっと強化しちゃおう作戦--オルテナウス装備企画書』

「こ、これは・・・!」

「ふはは!これより先の戦いを見据えた、貴様専用の武装を見繕った!覚悟するがいい、貴様はこれより、全体無敵付与三回、クリティカルアップ配布といった壊れ性能を有らん限り付与したハイパーマシュと生まれ変わるのだ!」

「わ、私の--強化プラン・・・!」

「シミュレーションルームに行くぞ!その概要、貴様に垣間見せてくれるわ!」

「はい!よろしくお願いいたします!」

--あ、身体測定はダ・ヴィンチちゃんに依頼してるからね、大丈夫!

(また胸が大きくなったようだね。まさにデンジャラスだ!ちなみにエアも二センチくらい大きくなってるよ。86かな?いや、88かも!)

--王の女体も成長するんだね!凄い!

《黄金比を崩さなければ如何様な姿でも構わぬ。あるがままに育つがよい。ちなみに見た目は晩年になっても変わらぬぞ。神性の血とはそういうものだ》

--賢王もそうでした。この肉体とも、長い付き合いとなれてうれしいです!
 
(エアの見た目が劣化しないのは最高だなぁ!ずっと一緒だからね!嬉しい!)

--うん!

「私の・・・パワーアップ・・・」

(先輩、見ていてください。私、もっともっと強くなります!強くなった私で更に先輩のお役にたって見せます!よーし!)

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