人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「ようやく銃のストックができた・・・私もいよいよスタイリッシュ英霊の仲間入りか・・・長かったな・・・」

(固有結界を撃ち出すとか出来るだろうか。いや、きっと出来る筈だ、オレならやれる。ソードバレル的なアレだ。私の固有結界を信じろ、やれる筈だ。アンリミテッド、アンリミテッド・・・アンリミテッド?・・・ワークス、ロスト・・・)

「--アンリミテッド・ロスト・ワークス!銃弾に固有結界を込めて内部から破裂させる!これしかない!いや、これであるべきと言った確信を感じる!よぅし、早速考案と実践だ!中々に難儀だがやってみせる!行くぞオレ、研磨の準備は・・・」

「--女性に卑猥かつ下劣な提案をしていたアーチャーと言うのは・・・君かな?」

「へ、ヘラクレス・・・!?」

「少し、頭冷やそうか・・・」

・・・この後、滅茶苦茶ナインライブズされたという

「マリー、エミヤと何を話してたの?」

「魔術礼装でちょっとね」

「一発、や触りだけ・・・といった単語が聞こえてきましたが・・・どういう意味なのでしょう?」

「マシュ・・・やっぱりスケベなすび・・・ピュアなすび・・・あえて口にさせるなんて・・・」

「えっ!?」

「マシュはもう少し、大人になってからよ(魔術礼装的な意味で)」

「そうそう!(エロゲ的な意味で)」

「えっ、えっ・・・!?」


月に浮かぶ、人生の墓場

月の裏、そして表へと向かった気ままな漫遊。新王の性格と魂胆を見切った交渉により、同盟と保護の確保を完璧にやり遂げ意気揚々と帰還した英雄王。遥か月より行き帰り一日半と言う圧縮スケジュールにより旅行は完遂し、そして土産を持ち帰り安寧の日々へ・・・と至る前に、諸々の雑事を済ませることから取り組むのであった。むしろ、休暇にて身体に慢心の毒が回らぬよう、怠惰を極めぬように自戒を込め、自らに労働を課している節がある英雄王である

 

まずはオルガマリーに月の居住権を確保したことを伝え、面倒を見させていた家族の情報をBBに見せ、あちらに転送する手筈を整えた。これにより、肉体もろとも彼方へ永住が可能となったのである

 

「コロニーや地下空間を解放する手もないわけでは無いが、閉塞感にて必ずや不平不満が噴出しよう。だからと言って放置していては弱点の健となる。この手の問題は適当に任せてやるのが適解なのだ。また一つ賢くなったな?マリーよ」

 

「感謝します、ギル。これでこの楽園の不利材料は消え去りました。・・・月、月・・・ま、まぁ・・・ギルだから・・・」

 

──月にウサギはいませんでしたが、気高きフランシスコザビエルはいらっしゃいました・・・伝えるべきでしょうか・・・夢を壊すのは心苦しいですが・・・

 

(月にザビエルがいるってどんなキリシタンの世界観なんだい、エア・・・)

 

《次は全員で赴くのだ、真実は自らの眼で垣間見ようさ。──これで問題の一つは解決したな》

 

外的要因、非戦闘員を盾にした脅迫交渉。その手を先んじて潰したことを確認する王。──まぁ、王のカリスマの前に裏切り者が出ることは有り得ぬが其処は油断を潰しておくことにこそ意味があるのだ。・・・呪いとも呼べるカリスマは、肉親の情すら上回るものである。故に──交渉に扱われた場合は、職員すべて自らの家族を見捨てるだろう。故にこそ、身柄を確保しておかなくてはならないのだ

 

・・・余談だが。王がたわむれに異動書、カルデアから月へと移住、移転を望むものへの手配書を職員にばらまき、月へと行きたいものを募ったのだが・・・

 

『馬鹿にしないでいただきたい』

 

と皆移転書を突き返してきたのは王的に極めて愉快な出来事であった。星の面倒から逃れ月に至る平穏を誰も選ばなかった・・・その愚か者達の対応に満足し、夜には鍋を振る舞った一幕が、月より帰還した英雄王達に起きたのである

 

(流石はカルデアの善き人々。甘い誘惑には乗らない精神だね!)

 

《全く、救いがたく愛すべき馬鹿者どもよな。平穏を掴む機会を不意にするとは》

 

──ギル、物凄くお酒が進んでいますよ。ふふっ

 

改めて・・・第二のウルクに住むに相応しき精鋭達の心構えを把握することが叶ったのであった

 

そして同時に、土産たる者達の居住を確保した。アルターエゴにムーンキャンサー、三人のサクラシリーズである

 

「ごっふっ──!」

 

何処ぞの先輩歴の先輩が吐血して胃薬を土方に処方してもらっていたが王には預かり知らぬ話である

 

「あのー、BBと言います・・・ミナサマナカヨクシテクダサイ」

 

「モデラー、序でにアルターエゴ、メルトリリス。腕のいいモデラー募集中よ。精々よろしく頼むわね」

 

「パッションリップです・・・!大きくて、どんくさいけど・・・皆様と、仲良くなりたいです!」

 

皆に元気よく挨拶する三人。ムニエルやリッカの大反響を受け、概ね三人は好意的に受け止められた

 

「女神集合体のハイ・サーヴァントだって!?いい、実にいい!情報処理のムーンセルだからこそ行えた反則技だ!是非、是非その手を見せてくれたまえ!」

 

「え、その・・・?怖くないん、ですか・・・?」

 

「今更今更。生活は大変かもしれないけど、これから慣れていこうね、リップちゃん」

 

「ー!は、はい!マスター!」

 

「──おぉっ、凄い・・・!おぉっ、凄い!!」

 

腕の解析と、身の回りの世話を進んで申し出たダ・ヴィンチちゃんとリッカに支えられしパッションリップ

 

「たまらない、たまらないたまらないたまらないわ!夢のよう!考え、思い描き、絵空事と思っていたこのトイ・ストーリー王国に手が届く!楽園の名に偽りなしね!あのケモミミのアーチャーが言うには『アルテミス様に憧れている?あぁ、うん・・・』と言った反応が気になるけど、後で会いに行かなくちゃ!」

 

「ハロハロー!私の後輩に会いに来ましたー!開けて開けてー!」

 

「・・・?はーい、どな」

 

「やっぴー!♥どもども、アルテミスでーす!♥あなたが私を一部に使った月の人!?じゃあ私達義兄弟!義兄弟ね!やーんうれしー!♥ヨロシクヨロシクー!♥あ、リッカに色目は使わないでね、射殺しちゃうゾ♥」

 

「・・・──(思考停止)」

 

「あーすまん、色々幻想抱いてたかは知らんが・・・此処に置いてくか捨てるかにしてくれ。後々辛いぞ、そうしないと」

 

悟りきったオリオンとイメージと全くそぐわぬアルテミスのギャップに打ちのめされ、傷心と衝撃のまま文化の集いとアタランテの飲み友達になったメルトリリス

 

『よろしく、お願いいたします』

 

「あ、はいよろしくお願いいたします・・・え、ビーストいすぎじゃないですか・・・ラスボスの巣窟ですか・・・?」

 

『これから一緒に働く、冥界の女神エレシュキガル、シドゥリ、そしてお母様、ティアマトなのだわ。余計な企みは捨てておく事ね。大人しくしていたら、反逆以外の全ては許してあげるから』

 

「は、はい・・・」

 

楽園に訪れ、自らの井の中の蛙ぶりを痛感させられ、弱味を握られながらカルデアのメンテナンス、月の連絡役を担当することになったBB。──三種三様にて、それぞれの生活の基盤を整えることが可能となった

 

彼女らは電脳、現実の切り替えと徘徊が可能なので便利な警備プログラムとして王は重宝している。楽園で排出される僅かなゴミをパッションリップがクラッシュし、ウィルスをドレインし、トラブルをCCCするのがBBの役目だ。エレシュキガルとシドゥリ、ティアマトの負担がグッと減り、電脳警備は更に更に磐石となったのである。月から貰った土産は十分に、カルデアの発展と強化に繋がったのだ。よい拾い物をした、と英雄王も御満悦であった

 

・・・そして、改築や人員点検に追われ、一段落したあとに。月に向かった時のように、ロマンと英雄王はスイーツじゃんぬにて管を巻く

 

「いやぁ、まさか本当に行って帰ってくるなんて。半信半疑だったけど信じるしかない。君は時空を股にかける王だったんだね!」

 

「ふっ、言ったであろう?我に不可能は、無い」

 

ロマンの賛辞に気を良くし、経費をもってロマンにお菓子を倍乗せする。さらに二人の平穏な一時は、甘味によって彩られる。フォウとエアもバターケーキを食べ、ふよふよと浮き、甘味を楽しんでいた

 

「いやぁ、まさか本当に月に施設があったなんて。この僕の目をもってしても、ってヤツだね。固定観念は真実の邪魔とはよく言ったものだなぁ。スタッフの皆も、これで全力で頑張れるよ!」

 

「それは何よりだ。血肉の一滴まで我に捧げ、我の楽園にて奮闘させねばならんのだからな。後顧の憂いは断つものよ」

 

上機嫌に笑う王に、ロマンはふと、何気無く。浮かんだ疑問を王に投げ掛けていた

 

「・・・どうして、ここまでしてくれるんだい?」

 

それは、本当に素朴な疑問だった。サーヴァントで、仮初めの顧客である彼が。ここまで自分達を支援し、面倒を見、奮闘してくれる事実が誇らしく、また気がかりであった

 

自分達は、君の期待に応えられているのか・・・と。そんな生来の不安に、王は事も無げに告げる

 

「自らの財を愛でる。その他に理由など不要であろう」

 

この世の全ては我のもの。故に壊すも愛でるも自らの決断にて行われる。雑種は間引き、財は愛でる。それだけの話だ。徹頭徹尾、彼は自らの為に動いている。そして・・・

 

──また月に行きたいねぇ。ローマの町並み、日本のエリア・・・凄かったね・・・

 

(協会も中々だったよ。いつか、キミもあそこにいく日が来るのかなぁ・・・?)

 

──シスターとして働くのもいいね。毎日祈りを捧げて、静かに生きていくのもいいなぁ・・・

 

「・・・──我に、妥協を赦さず。何処までも我を賛美し続ける者がいるのでな。その者を失望させてやる訳にはいかぬと言うだけの話よ」

 

「それは、姫様の事かい?」

 

「──・・・・・・分かりきった事を我に問うな」

 

ニヤニヤと笑いながら告げてきたロマンの頭部に王はなにかを投げつける。回避するまでもなく直撃するドクター。もんどりうって机から転がり落ち、その様を見て満足げに王は立ち上がる

 

「行くぞ、フォウ。自室で呑み直しだ」

 

(はいよー)

 

ピョイんと王の肩に乗りインゴッドを叩きつけスイーツじゃんぬより退出する。悶えるロマンに、背中越しより

 

「お前も覚悟を決めろよ、ロマン。いよいよ、貴様が人生の墓場に入るときが来たぞ」

 

「え、えぇ・・・!?」

 

「せいぜい『ソレ』に汲み取らせる願いを間違えぬ事だな。智恵の覇者よ、貴様には容易き問題であろう?」

 

愉快げに笑いながら、ロマンに問題を投げ掛け。静かに英雄王は退出していった

 

──どうか、御幸せに

 

エアの祝福の言葉と、願いを残しながら・・・

 

「あいたたた・・・言葉に詰まると癇癪を起こすなんて、可愛い暴君ムーブだなぁ・・・にしても、人生の墓場って──、!?」

 

ロマンは目を見開き、足許に転がった容器・・・『聖杯』を見やる。其処に添えられていたのは、・・・

 

『ローマ・ヌプティアエ案内』『結婚披露スケジュールプラン』『新郎新婦』──

 

「え、え、え・・・ぅえぇえぇえぇえぇえ!?」

 

王が月に出向いた本当の意味を、その真理を目の当たりにし仰天したロマンの絶叫を聞き及び・・・二人と一匹はハイタッチを交わすのであった・・・

 

(そういえば・・・)

 

ふとフォウが思い返し、拾った・・・『虎印のペン』を見つめるフォウ

 

(これ、誰のなんだろ?まぁいいか。なんか適当に置いとこ)

 

見るからに虎なペンを見て、星の獣は疑問と共にペンを鼻でくるくる回すのであったとさ

 

・・・そして、もう一つの戦いもまた始まろうとしていた

 

 

「────!!」

 

「⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

 

「シャアァアァア!!!」

 

 

ラマッス、バシュム、スフィンクスの前に立つ、野生の女が一人・・・

 

「ふっ、ペンを求めて3000キロ。・・・私の前には極悪の敵!たぎる、たぎるわ!オリジンヒロイン・タイガーの血が熱くたぎってくるわぁ!」

 

竹刀を持ち、獰猛に笑い、今──

 

「アンリミテッド・シナイワークス!私の道を阻むもの──フッジムラにしてやらぁ────!!!」

 

楽園の迷宮に、月の虎は挑む──!彼女はどうなったのか?楽園へ到達は出来たのか?迷宮は乗りきることが出来たのか?藤村ルートは実装されたのか?何故タイガーはタイガーなのか?

 

・・・その答えは、その結末は。誰も知らず、誰も語ることは無い──

 




部屋に戻った英雄王達を待っていたのは、全く新たな縁だった

「見えてますか、聞こえてますか。イェーイ」

無表情ダブルピースにて応えしは、月の新王岸波白野。王の部屋に直接通信を繋げてきたのだ。驚きを表すエアとフォウ

--ザビエルさん!?何故通信が!?

「BBの仲介でなんとか。文通の形でそちらに送っています。同盟相手だから必要かなと」

プレミアムロールケーキを食べながら、無表情で王に新王は告げる

「ゴルドルフなんちゃら以外の身元受け取りは終わりました。協会も貸しきりましたのでいつでもどうぞ。ハネムーンは万全です」

「仕事が早いな、新王よ。・・・小間遣いにさせればよい仕事を自ら行ったのは、何かしら思惑があっての事か?」

その王の言葉に静かに頷き、新王は告げる

「そちらのマスターと、友達になりたいなぁと」

・・・そして、王の導きによって二人は導かれる


「私は藤丸リッカ!好きなことはコミュニケーションとサブカルチャー全般--」
「フラン(バッ)シスコ(バッ)ザビ--」

人類を救ったマスターに・・・名乗り合いをしたいとの新王の願いは・・・確かに果たされたのであった・・・

「・・・先輩って、こんなに変な人でしたっけ・・・?」
「我に聞くな」

--こうして、友情は紡がれていくのですね・・・!
(友情かぁ?これ・・・)

・・・月との縁を結び。今日もカルデアは楽園である--


・・・そして、此処ならざる場所。世界の一角にて

「先輩、今日は何処に行きましょうか?」

紫の髪色の女性。その傍にいながら

「何処でも構わない。君と一緒なら」

バッグと荷物を背負いながら、前に進み続ける何者か

「はい、私も・・・先輩が一緒なら」

二人は、ただ歩き続ける

望んだ未来へ、皆の明日へ


--何処かの誰かの話をしよう。歩み続ける、女と男の、恋の話を--

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