衆生地獄の細い手が、めりぃ、とパライソの心臓をわしづかむ。英霊剣豪の霊核は、躯にはない。この程度では死なない、死ねないのだ
【せやから、お祈りしよか?脳、心臓にうちの血肉に流れる伊吹の神さんの力、分けてあげるさかい・・・】
それは、すなわち--パライソの総てを呪いにて染め上げ、霊基を暴走させる事を意味する--
【や、やだ、嫌だ、それだけは嫌ぁっ--!】
【大丈夫大丈夫、怖くあらへんよ。ちょーっと、ちょーっと自分がなくなるだけやさかい、はじけよか?楽しめばええんよ。なんも考えんとその方が愉快で、素敵やもん】
心臓を直接掴み、脳に伊吹大明神の力を流し込み、愉快そうにけたけた笑う衆合地獄。対照的に、泣き叫び赦しを乞うパライソ--
【ァアァアァアァアぁあ!!赦して、赦して!お願い止めて!拙者は、私、私、私でなくなって、消える・・・!】
励起する、呪いが。励起する。祟りが
呪う、その血を
厭う、その身を
⬛⬛⬛⬛より幾星霜--そそげぬモノが、此処にはあろう
【入ってくる、入ってくるいやだやめてやめて痛い痛い痛い気持ち悪い気持ち悪いィ--】
ニコニコと笑う衆合地獄は、肩を叩きながら励まし心臓を握り続ける
【ほぉら、夜空が白んで来たさかいきばろか。ほら、流れ星。祈ってみたらええんとちゃう?赦してもらえるかもしれんよって。いたいなら数えてみよか、ひぃ、ふぅ、みぃ、よ。星さんきれいやねぇ】
【私じゃない、私じゃないんだ、私じゃないのよ!ソレ、ソレは私が受け取ったものじゃないのに--!】
入ってくる、止めどなく溢れるモノが私の中に
熱く熱くたぎって醜く私を酷く狂わせる
私が受け取ったものじゃないのに・・・--
私が、一体何をしたというのだ・・・
助けて、誰か
赦して、誰か
蛇が、心臓に絡み付き
脳に、牙を立てる--
【ほんに、堪忍なぁ。まことにいかん、いうやろか?かたちだけでも、謝っとくんが礼儀やろ?ほな、おきばりやす。ほなまたね。詫びは、地獄でするさかい--】
アサシン・パライソの襲撃、そして撃退。その鮮やかかつ迅速な手際に奔走され、また翻弄されし侍衆たち。姫の喉元に刃を突き付けられるという失態、手も足も出ぬが故、柳生が取りし手段は驚愕的かつ合理的なものであった
「頑張りましょうね!リッカ様!つかずはなれずならば、絶対に互いを護りきれます!私達ですもの!」
「も、もちろんそのつもりだよ?でも無茶しないでね?」
清姫の隣にリッカを置き、その傍に柳生が侍る。他の侍衆は総て排し、小太郎、段蔵、武蔵の超少数精鋭にて防御し、防備する大胆極まりない配置。清姫の周りを囲むのは総勢数人ほどという、リッカ達の実力を把握せねばまともに立ちいかぬ程の、ある意味無謀とも言えるほどの布陣に、素振りをしながら苦笑と困惑を表す武蔵ちゃん。いくらなんでも凄まじいまでの、ザルとも言ってもいい警備に驚きを隠せないのだ
「剣を抜かぬお爺様だけど、凄い大胆な防衛の布陣を取ったものね・・・私達がしくじったらそれでもう終わりじゃない」
「最強の兵を当然の位置に配置したまで。そもそも数合わせにもならぬならば、余計な犠牲を増やす必要も無いだろう。元々、怪異は貴様らの管轄であり、兵など私が在れば事足りる」
「天下の乙女流・・・フラグとか、選択肢とかを切り捨てる剣を抜き放つのですか柳生様」
「ふ──左様。私が抜く時は、貴様らがしくじった時。打ち首になるものの手向けとして一閃は垣間見せてやるも吝かではない」
静かな笑みにて恐ろしい事を申し上げる柳生様。抜いたときが賊の、そしてお前達の最期であると念押しされたのだ。抜かせるな、死にたくなければ使命を果たせ・・・柳生の静かな振る舞いと眼光は、厳かにそう告げていた
「ひぇえぇ・・・しくじる気はないけど恐いよ清姫様・・・」
「大丈夫です!そのような事にはなりません!私、リッカ様といられるならば元気百倍です!ですから、頑張りましょうね!」
あ、完全にキラキラ乙女の世界に入っていなさる・・・現実に置かれている様相状況何処へやら。あなたがいるから大丈夫です!などと即答されてしまっては──応えてやらねば女子が廃るというもの。先は母を忌名で喚ばれた事に激し無意識に抜刀、首を跳ねたはいいもののまだ宿業には届かせなかった。彼女は、武蔵ちゃんが討ち果たすべき宿業を持っているのだから
「今度は、きちんと自分を制御しなきゃ・・・」
刀を抜けば、雷鳴よりも迅く総てを斬り裂く。自らに宿った位の凄まじさを痛感しつつ、より一層自分に気合いを入れ直し、空を見上げた・・・──その刹那であった。慌ただしく平穏な時間は、即座に終わりを告げる
「──邪気だ、来るぞ」
空が染まる、より早く。柳生が異変を感じとる。同時に、いや遅きに空が、月が血染めとなりし風貌まといて・・・その根源となりし様相が現れる--
【──いやはや。昨日の今日で再来在らずと油断し、その寝首を掻こうと考えてみれば。隙も蟻の一匹も通さぬその万全な仕事ぶり。まこと、まこと拙者感服いたした。うむ、うむ──】
その声を聞き即座に戦闘準備を行い、身構え、辺りに満ち溢れるまがまがしき妖気を睨み付ける
【天晴れ!!まことやりづらい、侍の一人でも迂闊に並べていれば残らず喰らってやったものを!まこと賢しき、まこと面倒なりし者等にござる!】
其処にありしはアサシン・パライソ。当然のように首は繋がっている。やはり位と言えど宿業を穿ち斬らねば成敗には至らない、ということか・・・!清姫を庇い立て、立ち上がり鎧を纏うリッカ、後ろに隠れる清姫--だが。その配置こそ、アサシン・パライソが仕掛けた悪辣なる手練手管。まさしくマスターを封殺するためのものであった
【先の一閃、まこと見事であった!だが──それを其処の女に振るえるでござるかっ!】
【えっ──ぐぅっ!?】
突如感じる攻撃、衝撃。それはけして重くは無く、しかして衝撃としては十分以上であった。アンリマユの槍にて防いだその鎧の下にて驚愕に目を見開く。自分に攻撃を振るってきた者、それは護るべき・・・
【清姫──!?】
「──あぁ、私、なぜ、こんな。だめ、だめ、です・・・リッカさんに、こんな・・・」
動揺と驚愕の表情が揺らめいたあと、即座に消え去り、冷徹にて冷厳な表情となり、白き髪の毛が美しき浅葱色と変化し、眼が蛇が如くに深紅と変わる。手にした薙刀を自在に振るい、リッカに襲い掛かっていく
「──ごめんなさい。私、私・・・殺します──」
【清姫・・・!!】
槍を構え、受け止めて、払っていく。それらは重くは無く、激しくもなく、達人というほどもない他愛ないもの。しかしリッカに反撃は許されない。彼女は清姫、護るべき対象なのだから・・・!
「マスター殿!」
「主殿っ!」
【御主らの相手はこちらに御座る!】
素早く嘲笑いから転身し、指の腹を噛みきり、その呪われし血、その身体を貪り締め付け続ける先祖代々の呪を其処に顕現させる──!
【出でよ、出でよ、我等の血を恨み怨みて赦さぬ神の一柱!!疾く出で喰らえ、憐れみなく!総てを!噛み砕け!!】
血だまりにて空間が歪み、其処から地響きを立てて顕現せしもの。それは幾星霜を経ても償えぬ怨み、憎しみ、罪の証--牛、馬すらも一呑みにするほどの巨大なりし偉容、おぞましき咆哮にて辺りを威嚇、睥睨せしはパライソの、呪が持ち主の卷属──
【
その巨大な偉容がごとりと鎌首をもたげ、一同を睨み付ける。そして巨大な首を振るい、おぞましく城の中庭を蹂躙する!
「段蔵殿!」
「委細承知!速やかに此を相手取るでござりまする!」
阿吽の呼吸にて飛び退き、クナイ、刃、ミサイル、火炎を振り撒き大蛇を食い止めんと翻る小太郎、そして段蔵。当たれば霊核を砕かれかねないすさまじき大蛇を、必死に押し留めていく--!
「リッカさん!今──」
【そなたの相手は拙者にござろう】
素早く死角からクナイを飛ばし、刃を閃かせ首を狙う一撃をかわす武蔵。にらみ合い、相手の間合いに計られリッカの救援にいけなくなってしまう。見事な分断、その鮮やかな手練に完全に翻弄される一同──清姫とリッカ、どちらも封殺する手段を取られる・・・!
「昔、話をいたしますね・・・リッカ様・・・」
無抵抗なリッカを薙刀にて押し込め、馬乗りになりながら清姫はリッカを虚ろに見下ろす。口から懺悔の言葉が漏れ出ていく
【日本、昔話・・・!?】
「はい・・・私、蛇を・・・蛇の巣を荒らしてしまったのです・・・私、蛇にも命があると分かっていたのに・・・」
ギリギリと首筋に刃を閃かせながら清姫が語る。鎧の強度に不安はないが、渾身の力で刺されたら少しは通されるかも知れないと必死に押し留めていく
「卵だって、あったのに・・・小さな命が、生まれようとしていたのに・・・どうしてあんな事を・・・」
【────?】
・・・その話には違和感がある。その話、その語りには何か、致命的な違和感がある。清姫は、清姫は蛇に関してなにかを告げていた、告げていた筈だ。これは、どういう事だ?思い返す、清姫の言葉を思い返す
~
──私、蛇と仲良しで、お話もできるのです!
動物会話(蛇)・・・!
~
「それでも赦してくれない、蛇は、蛇が、私の、私の体にすり寄ってきて・・・!ほら、ほら・・・!」
【それは違うよ!!】
高らかにその慟哭に否を突きつける。それを、その違和感を、朝の清姫との対話から、違和感を見つけ出し意義ありと突きつける--!
【令呪を使って二人に願う!!段蔵ちゃん小太郎くん!宝具を使って大蛇を食い止めて!!】
右手の甲、全身の光を紅くたぎらせ二人のサーヴァントに奥の手の開帳を願う。それに即座に対応し、二人は自らの必殺を開帳する!
「「────承知!!」」
小太郎は自らに付き従う風魔の軍団、幻霊なれどその名轟かせし恐ろしき旅団を顕現させ、大炎熱地獄を以て大蛇に飛びかかる!
「総員!主殿の命に従え!!出るぞ──
燃え盛る火炎地獄に対し、それを煽るかのように、静かに両手を、掌を高速回転させ竜巻を、--死の風を。段蔵は吹き荒らす!
「果心居土、起動──カラクリ忍法・呑牛──!!」
文字通り牛を呑み込まんとするが如く。風が、竜巻が巻き起こり。大炎熱地獄と相乗を起こし大蛇を焼き払い、切り刻み、その生命力を抉り取っていく──!
【清姫!あなたの行い、それはそれだけのもの!?もっと何か、してしまったのでは!?】
あえて、あえて最後の一押しを、情報を掴むために会話を促していく。清姫は混乱しながら、たどたどしく悲嘆溢れながらも告げていく
「はい、はい・・・そうなのです・・・私、急いで・・・伊吹の山に、神の山に立ち入ってしまったのです・・・神様の山に、神の領域に立ち入った私を・・・あれ、あれ?私、そんな・・・そんなことは・・・?」
やはり・・・情報の解離が起こっている。もう少し、あと一押しで総てがつまびらかになる!頑張れ清姫、と心の中にて祈りを告げる
「あぁ──私ではない、私ではないのですね・・・これは、これは・・・先祖の罪。遥か過去に犯した、罪が・・・血に刻まれた罪がこうして、こうして!縛る!私を!──【拙者】を!」
ビンゴだ──!そう確信したリッカはすぐさま柳生に合図を送る。彼女は彼女の体験ではない、かのアサシン・パライソの体験に同調し、それを話していたのだ。清姫の体験と違うのはそういうことである!それに素早く反応し、柳生は当て身にて清姫を気絶させ、匿う。素早くバック転身にて立ち上がり、武蔵ちゃんに声を上げる!
【くノ一、蛇、呪い、先祖代々!此で思い当たる英霊、いる!?武蔵ちゃん!】
戦場の、戦国の時代に生きた武蔵に問い掛ける。その答えは直ぐ様返ってきた。それだけ情報があるのなら、それだけ分かっているならば自明の理と言わんばかりに武蔵は告げる
「望月──望月千代女!甲賀の血を引く家系の忍!自らの領域を這い回った伊吹大明神・・・ヤマタノオロチに呪を掛けられた甲賀三郎の系譜!信玄入道に仕えたとされる巫女くノ一!!」
そう、それが真名。かのアサシン・パライソと成り果てた英霊の正体。幾星霜を経てもそそげぬ罪を、呪いを、その体に刻み込みしアサシン──望月千代女・・・!
【────ッッッ!!】
真名、すっぱ抜き開帳を果たせり──!それさえ知ることが出来れば、それさえ把握することが出来たならば出来る、叶う。御前試合の舞台が整う!舞台に引きずり込み、正々堂々と倒すことが叶う!
【将門公!再びの御前試合、貴方の前に捧げ奉る!!かの呪、宿業に苛まれし躯に安らぎを、宮本武蔵の勇姿に祝福を──!!】
二人の忍が大蛇を抑え、柳生が姫に付き添い、武藏がパライソと睨み合う──総ての舞台は今ここに定まる!将門勾玉を掲げ、高らかに今こそリッカは捧げ奉る──!
「決着をつけましょう──パライソ!!」
【ッ、く、くひひひひっ!見破られたか!ならば良かろう!その首、引きちぎるまで!!】
英霊剣豪、二番目──!その曙光の輝きが、パライソを、武蔵を、リッカを包み込んでいく──!!
【いざ!平将門の名の下に!!--出でよ、神気立ち上る彼の守護者の極致!旭照らす日ノ本を見守りし神田明神の仕合舞台!!】
高々と掲げし勾玉より、輝きが溢れ出し一帯を覆いつくし、パライソ、武蔵、リッカを呑み込む。其処より現れしは神田明神の境内。神おわす神社、曙光射し込み、無窮の蒼天広がりし日ノ本が守護神の御前也。再び顕れしその場に、蛇なる呪を宿せし忍、剣豪武蔵を招き入れる
なんの介入もなんの横槍も入らぬ究極の空間、神が在りしその場にて、剣鬼と化した剣豪、二天一流の武蔵が向かい合う!
【我が刃の忌名、アサシン・パライソ!我が骸の真名、望月千代女!】
「我が刃の名、明神切村正!我が魂の真名、宮本武蔵!!」
互いに神たる守護神に名乗りを告げ、伊吹大明神、仁王がにらみ合いし極致を以て刃が振るわれ、合戦の火蓋が切られる!
【いざ、いざ、いざ、いざ覚悟召されよ新免武蔵!!いざ、尋常にィ!!】
伊吹大明神、平将門公、そして藤丸龍華が立ち会うなか--開始の合図が切り落とされる!
「勝負--!!」
【--始めッ!!!】
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