勝負 二番目
仕合舞台 新皇座臨総鎮守 神田明神
立会人
藤丸龍華 御尊神 平将門
甲賀三郎 呪神 伊吹大明神
宿業 一切詛呪 アサシン・パライソ
VS
宮本武蔵 明神切村正 禁手・オーダーチェンジ
いざ、尋常に--!!
幕を上げし御前試合、英霊剣豪七番勝負、二番目。アサシン・パライソと火花を散らす宮本武蔵。片や忍、片や侍。共に日本に文化を根ざすその戦いは、蒼窮の青空、金色の陽射しに照らされ行われる。邪魔立て、横槍は許さぬと黄金の武者鎧の威風を湛えし藤丸リッカがガッシリと腕を組み戦いの顛末を見守る
【──】
神田明神にて行われる、将門公に捧げられる仕合。その一部始終を目の当たりにし、勝ち名乗りを、勝者を告げるのがリッカの役目である。その為に、立会人としての役割を。そして、一人の人間として戦いの全てを見届ける──!
【負けるな、武蔵ちゃん・・・!】
みとどけし いのりをつげし けものかな
「でえぇえぃっ!!」
【くっ──】
緒戦、序の口は圧倒的な武蔵方優勢。逃げも隠れもできぬこの試合舞台にて、真っ向から剣豪に勝負を挑まざるを得なかった戦運気運の無さが浮き彫りにされ、武蔵の一気呵成、怒濤の剣技に凄まじい勢いで押し込まれていく。クナイを投げられれば弾き落とされ、忍刀を振るわばすかされ身体を斬撃される。あらゆる離脱、あらゆる目眩ましが通じぬ小細工なしの舞台なぞ、あまりにも忍たるパライソにはやりにくい空間であったのだから。武蔵方にはそのような意図はなかったとしても、パライソは極めて凄まじいハンデを背負わされた形となる。されどそれでも忍。変わり身、空蝉の術を駆使し、致命的な傷は受けずにかわし、戦い続ける
「目眩まし、小細工かなわぬ忍など!侍ですもの遅れは取らぬ!」
パライソの甘えたクナイ投げをすんでのところで見切り、かわし、素早く懐に潜り込み。逆手の刃でその身体を一閃する。明神切で非ずとも武蔵が手に収まる名刀。鮮やかにパライソの身体が引き裂かれ鮮血が吹き出、辺りに雨のごとく撒き散らされる
【くひ、ひっ。一刀一斬ではなにも変わらぬと理解しておらぬようでござるな新免武蔵ィ!】
斬られながらも嘲笑を止めぬはパライソ。その辺りにばら蒔かれた血より出でしものを垣間見て、武蔵は内心うへぇと辟易する
蛇だ、蛇が生まれたのだ。切り出した体から、大地に滴った血から。水溜まりに沸くボウフラのように、カマキリの卵のように。無際限に蛇が生まれ出ずる。思わず飛び去る武蔵。体勢を取り直しバック転で距離を、間合いを計る武蔵であったがパライソは攻め手を緩めない
【蛇はお嫌いにござるか?そらそら、貴様を貪り食らい、我が身を縛る呪、とくと御覧あれ!】
指の腹を噛みきり、大地に自らの手を叩きつけ。どろりと染まりし血の池より現れしはまた大蛇。大小様々なるオロチの群れが、一直線に武蔵に到来する──!
「────」
そのおぞましき蛇の群れを前にしても、武蔵の心中は穏やかだった。慌てず、騒がず、たゆまず。ただ在ることのみを在ると受け入れ、受け止め、静かに剣に手をかける
『──南無、天満大・自在天神──』
信仰せし仁王に祈りを告げる。神が残せし呪ならば、こちらも一念を仁王に、天神に通じ祓うのみ!そう決断した武蔵は自らの宝具、剣の仁王を顕現させる!
「仁王・倶利伽羅!剣気にて、その気勢を断つっ!!」
顕現し、振るわれる気迫と生涯の剣。四本手の仁王が武蔵の背後に鎮座し、武蔵の意思を思念を汲み取り自在に蛇の群れ共を凪ぎ払っていく・・・!吹き飛ばされ、蹴散らされ、皆殺しにされていく呪を見て、いやさ、神に正しく助力を担われている武蔵、カルデアのマスターを見て憎々しげに歯を食い縛るパライソ
なぜ、こうも違うのか。守護神、平定者の寵愛を一心に受ける藤丸リッカ。一念通じさせ写し身を顕現させし宮本武蔵。二人の恩恵はこのような美しき世界を顕現させ、気迫と神威立ち上る写し身を顕す。・・・それに比べ、それに比類して自分はこのような蛇や血だまりを駆使し、地に這う蛇を浅ましく産み出すばかり。何故だ、何故こうも。何故、何故、何故何故何故!
【貴様らがッ、貴様らが怨めしくて叶わぬ!貴様らを手厚く護る者共が口惜しくて叶わぬ!我が身を、我が身を蝕む呪いは!私が受けたものですらないというのに!その祝福が眩しく--妬ましくて叶わぬッ!!】
それは、目映き光に眼を焼かれる蛇が如く。呪詛と怨嗟を口にしながら二人を睨み付け胸中を吐露しながら、しかして油断なく自らの真義たる伊吹大明神・・・すなわち、邪神・ヤマタノオロチの分霊を顕現させる──!
【ならば見るがいい!──呪え!我が血を!祟れ!我が罪を!甲賀三郎より幾星霜!濯げぬものが此処には在ろう!!】
どぽり、とパライソの影が一際巨大な漆黒の沼と変じる。その産み出された沼にパライソが引きずり込まれ、莫大なる魔力の高まりと共に存在が膨れ上がる──!
それは自らの領域を歩み、汚した者を祟り、怨み、けして許さぬ伊吹の呪い。永遠に続く邪神の呪詛。サーヴァントになれどけして逃がさず巻きつき喰らう邪神が分け身。アサシン・パライソの最大手にして宝具──
【口寄せ・伊吹大明神縁起!貴様らの祝福が勝るか、この身の呪詛が勝るものか──いざ勝負にござる!】
現れしは8メートルはあろうかとする巨大な八叉蛇、ヤマタノオロチの分霊。武蔵の仁王とにらみ合い、壮絶なる斬り合い、噛み砕きあいを此処に披露せしめる!本来ならば口寄せであり転身ではないのだが、莫大なる神気により一時的なヤマタノオロチの顕現となりて死闘を演ずる事となる!
鎌首もたげて仁王食らえば血が飛沫、四つの剣気にて断ち切れば肉が裂け絶叫が轟く。もんどりうてば地震が起こり、ぶつかり合えば天が啼く。剣祓わば呪い切り裂き、呪い噛みつかば仁王が砕ける
驚天動地の取っ組み合い。さながら日本の神話のごとく。倶利伽羅・ヤマタノオロチ絵巻を書き記さんがばかりの大立回りが繰り広げられる──!!
「──・・・」
武蔵はそんな中、ただただ黙考にして冷静に事を考えていた。--無論、かの躯を動かす宿業を如何にして切り裂くか、と言うことに他ならない
ただでさえ彼方にある宿業、それを更に肉に埋め込まれてしまえば切り裂くのは容易ではない。あの狂乱と昂りに叫ぶ大蛇の化身ならば尚更である。如何様に斬り、如何様に断つべきか。明神切村正がやけに冷たく感じられる
「随分と自らのお力を忌み嫌っておいでですが、それに預かるのも貴女のお意志。いっそ開き直り楽になってみては如何でしょうか?」
突破口を見出だすがために、あえて口車を出して見せる武蔵。仁王と大格闘を演じる大蛇を食い止めるため余裕が無いが、あえてそこは魅せるのが芸達者と言うものである
【開き直る、楽になる──だと・・・!笑わせるな新免武蔵ィ!!】
大蛇となったパライソが、耳をつんざく大絶叫を響かせる。その様は心を蝕むおぞましき呪であり、泣き叫ぶような悲嘆の嘆きだった。仁王を締め上げ、悲憤を、此処に謳い示し上げる。逃れ得ぬ、血の祟りを
【英霊となり、英霊剣豪となったこの身ですら呪は私に追い縋る、私を逃がさない!】
蛇はうねり、仁王を叩きつけ締め上げる、消し飛ばし、吹き飛ばし、巻き上げ締め付ける
【一切鏖殺、それもよかろう。おんりえど、それもよかろう。私は、拙者は主命に従い務めを果たすまでにござる!!それが忍、甲賀のならいなれば!だが、逃がしてはくれぬ、くれぬのだ!】
締め上げた仁王を、武蔵を、振り回し叩きつける。神田明神の舞台に傷ひとつつかねど、ダメージは確実に蓄積されていく。武蔵の身体中がアザだらけ、締め痕だらけになるがしかして武蔵は眼をそらさない
【女であろうと妻であろうと、忍であろうと英霊であろうと鏖殺の化身であろうと!私を、誰も赦しはしない!──否!】
その宿業、呪詛に阻まれし在処を確かに見据え、見詰め、見出だすが為に--
【『誰一人として私を罰してくれない!』呪は罰の証左であろう!蛇は罪の顕現であろう!なのに──父も夫も、信玄公も妖術師さまも、誰も!私を罰さない!ならば私は、どうすればいい!】
──在りかが、宿業が、蠢くその業が表層へ出る。そこにある。その慟哭の裏に──確かな、生きるための『宿業』が見える・・・!
【忍の道に没頭すれば逃げられると思ったのに!逃げられなかった、死ぬまで呪は共にあった!宿業に身を委ねれば逃げられると思ったのに!逃げられない、ああして大江の御子に、私は──】
(──見えた!!)
【私は、どうすれば──いいのだ・・・!!】
蛇がうねると同時に、武蔵を天高く投げ飲み込まんと口を開ける。ともすれば一飲みにされるその窮地にこそ、武蔵は活路を垣間見た。──確かにそれが見えた!
(蛇の呪、その悲嘆と慟哭、救いを求めんとする叫喚──其処に『宿業』はある!ならば──それを断ち切るのみ!)
呪いごと、大蛇ごと──宿業を断ち切る!覚悟し、決意をもたらせし一刀三拝にて、仁王を剣に宿らせ、天へと届く柱が如く。──大蛇を断ち切る神剣が如く!未だ至らせぬ『空』の技を宿らせ、力任せに大蛇を吹き飛ばさんとする!
「その言葉、その叫びには刃を以て応えましょう!この一刀!御身の救いとならんことを!──伊舎那!!」
【新免武蔵ィイィイ!!!】
無数に飛びかかる蛇を剣にて巻き込み押し潰し──武蔵はその渾身の一刀を叩き振るう!
「大!!」
振り始めの加速にて、群れの蛇が蒸発せしめ消し飛ばされ
「天────!」
最大限の加速によって、此方を食らわんとしているヤマタノオロチの首が片端から吹き飛び、そして、結びとなりし一撃の振り下ろしに──
「象──!!!!」
空中落下の一刀両断にて、呪にまみれていたアサシン・パライソ、そして躯の霊核たる--宿業を真っ二つに届き両断せしめる・・・!!
【っ、あ────】
その刃、過たず閃き・・・邪神たるヤマタノオロチの写し身が両断され──同時に
ぱりん、と──何かが。生きるために絶対に必要となるものが──確かに断ち切られた音が。神田明神に響き渡った
【──宿業、両断!!勝負あり!!】
それを受け、高らかに──藤丸龍華が、試合終了の名乗りをあげるのだった──
宿業を穿たれ、消滅が始まるアサシン・パライソ。・・・望月千代女
「あぁ、これで、やっと--静かになれる・・・」
安堵と平穏を確信し、穏やかに息を吐く千代女、その懐から、一本のクナイがこぼれでる。それを知ってか、はたまた知らずか。消える瞬間、千代女はリッカに向き直る
「藤丸、リッカ殿・・・」
【・・・】
その末期の言葉を、リッカは静かに聞き届ける
「・・・数々の無礼、まこと--申し訳なき事をした・・・悔やんでも、悔やみきれぬ・・・」
【・・・御身を狂わせた元凶、必ず私たちが倒す。だから、安心して御休みなさい。・・・そして、次があるなら、楽園にて逢いましょう】
その身に、再会を願われし千代女は、静かに涙を流し、頭を垂れる
「--まこと、優しき・・・乙女に、ござるなぁ・・・」
それを最後に・・・アサシン・パライソの躯は・・・世より消え去るのであった--
【・・・勝者、宮本武蔵。・・・将門公、かの魂に・・・どうか、労りを】
「--アサシン・パライソ。成敗」
神田明神の日が暮れ、納刀せし村正を、二人を。静かな夕焼けが包み
【・・・】
リッカが拾い上げたクナイを・・・静かに照らすのであった・・・
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