【ンン、ンン。万事、万事滞りなく。あと【二基】ほど還元されれば問題なく起動なされるでしょう。将門公が祓ったもの、それから溢れた欠片たち。その無念と屈辱は確かに、確かに!【常闇空亡】に組み込まれ、おんりえどを彩る真なる闇をもたらしましょう!】
【--左様。討ち果たされようとも、生きていようとも。英霊剣豪は益しかもたらさぬのだ。カルデアなど、好きに泳がせておけ。・・・いや】
【--【欠片】を持たせるもよろしいかと】
【左様--】
アーチャー・インフェルノに続き、巷を騒がせしアサシン・パライソを討ち果たせし武蔵、リッカ。その活躍により英霊剣豪は討ち果たされ、順調に数を減らし、武蔵の剣の腕前は極みに、空に近づいていく。同時に、その剣技は確かに人を救い、人の世の泰平に指針と道標を示していく。
先んじて配布され送り付けられていたゴーレムの交換警備により、家中、家臣の人命は只の一つも奪われず、落とさず。城の風通しはいくつか良くなったものの、確かに姫君は無事に元気に過ごしている。操られた記憶は残っていないようなので、皆口裏を合わせ言わないことにした。怖い夢を見たならば、夢で終わらせておくのが一番である。何処ぞのエンディングが如く、夢で終わらせないなどとは言わないのである。故に、確りと清姫の無事を確かめる二人
「ご無事で何よりでございます、清姫様。巷を騒がせていた、アサシン・パライソ。確かに討ち果たせし事を御報告させて頂きます。宮本武蔵、風魔小太郎、だんぞーちゃん、柳生さまと共に」
「好き!!(感激)」
見事護り抜いた事、誰も欠けなかった事。そして何よりも賊を華麗に討ち果たした事に益々もって感銘を受け、なんだ口から危うい恋の炎を吐き出し始めた清姫に弱冠危機を感じながらリッカは告げ、帰ってきたのはあまりに絶望的な身分による求婚であったのだが丁重に柳生さまにスルーパスして事なきを得た。此処で所帯を持つわけにはいかない。自分等は異邦の者、根付くわけにはいかないのだ。帰る場所はきちんと、カルデアにあるのだから
「姫様、お戯れを。この者らは一旦拠点に戻られますゆえ」
「あぁ、それは残念です・・・ずっと此処にいてくれても宜しいのに・・・分かりました。封いっぱいの褒美を持っていってくださいね」
「ありがたき幸せェ!!!」
即座に土下座にて顔面を叩き付ける武蔵ちゃん。別名恋愛物欲糞雑魚女郎。そのあまりにもなブレなさに苦笑を浮かべながらリッカは頭を下げる。無事で良かった。それが一番なのだから、何も気にする必要はない。蛇にうなされた悪夢も、刃を向けたことも、何もなかった。何も無かったのだ。だから、あの夜の事は、何も思い出さなくていいのである。少なくとも、自分はそう思う
「・・・その、リッカ様。去り行く貴女に、お願いがございます」
家中に恭しく振る舞われるのがそろそろむず痒くなってきたので早急に退散しようとし、小判にヨダレを垂らしながら頬擦りにチューをかます武蔵ちゃんの脇腹を蹴り上げ俵様抱っこにて下がろうとしたリッカの後ろ姿に、清姫が声をかける
「昨日は、本当にありがとうございました。本当は、別れたくはないのですが・・・私は我が儘を申しません。別れを長引かせるのも、けして宜しくないのだと言うことも分かっています。でも、でもこれだけは・・・言わせてください」
「・・・?」
切なげに視線を泳がせながら、それでも告げるその声音に熱を乗せ、リッカに告げる言葉は・・・再会の願いであった
「──また、我が身が脅かされた時。あなたさまは・・・私の呼び声に、応えてくれますか?」
「勿論。何処にいようとも、必ず助けに参りますよ」
背中越しに、サムズアップを清姫に贈るリッカ。そんなもの、問いかけられるまでもない。問われるまでもない。困ったなら、苦しいと願ったならば。必ず助けに来る。だから、安心していいのだと。それだけを背中で告げ、ゆっくりと天守閣を後にする。悶絶している武蔵ちゃんを抱えて。
・・・背中の向こうから、安らかに息を引き取る音が聞こえてきたが。それは柳生のじいちゃまがなんとかするだろう。そう信じるという名の丸投げを任せ、リッカ達は城を後にするのだった──
ひめにあい さいかいねがう けものかな
城を飛び出し、駆け込むようにゴージャス御殿『ぷれしゃす』に帰還する武蔵に、リッカ。其処にて、武蔵ちゃんとリッカは、ゴージャスにより報奨を戴くために転がり込んできたのだ。英霊剣豪を討ち果たすためにゴージャスの、英雄姫の『きびしいさてい』を乗り越え・・・報酬を戴くために。なお武蔵ちゃんは目が血走っている。強欲さがとどまることを知らない
「ふはははははは!!御苦労であった!アーチャー・インフェルノとやらに続き、アサシン・パライソとやらも仕留めるとはでかしたぞ!やはり首は大将格に限るものよな!まっこと気分が良い!閉じた島国にまた我の財が伝説を残したようだな!」
金子の団扇を仰ぎ、『両儀式』に舞を踊らせながら上機嫌に高笑いを響き渡らせる英雄王、クラス・ゴージャス。ギルガメッシュの哄笑を聞き、二人は安堵する。こうやって笑ってくれる事が、期待に応えられた事が何よりも嬉しい。実家のような安心感というやつであろうか
「それはもちろん、財たる自覚と矜持あってこそ!この身はカルデアにおわすあなた様と言う存在があってこそ!十全万全に剣を振るうことが叶うのです!そうっ!!総ては!天下泰平御機嫌王様の為にございまする~!」
全力にて畳を自らの額で掃除する武蔵ちゃん。見える、見える、千切れんばかりの尻尾が見える。そんな本心からのおべっかにますます御機嫌王の機嫌は御機嫌王となり、もはや都に届かんばかりの大笑、哄笑となる。『痛快な笑いで福が貰える』と城下でもっぱらの名物扱いとなった、ギルガメッシュの高笑いである
「ははは!こやつめははは!!ならば前書きはいらぬ!──歓喜せよ!褒美の時だ!」
パチリ、と指をならし。オイデヤスと現れたマリーとネフェルタリが小包を持ってくる
「持っていけ!!アサシン・パライソを討ち果たした給付金!『百八十五両』よ!!」
封に包まれた二人分の褒賞金に、武蔵は目とヨダレが酷いことになる。のを無視し、そしてリッカは驚愕しながらそれをみやる
「こ、今回はどのような御査定で・・・?」
「気になるか?ふははは気になるか!何、それほど難儀な対応ではない!極めて自然な成り行きと裁定だ!そら、其処の現金侍は査定など気にしてはおらぬようだぞ?」
ふと見ると、満面のにへら笑いにて懐におさめんとする武蔵ちゃん。またおぬいちゃんたちの輝きにて浄化されたいのだろうか。現金な事である。ある意味強さの原点、源はこれなのかもしれない。自分達の活躍をこんなに評価して貰えるのは、嬉しい
──今回は城の防衛戦、要人警護という難しい戦い、攻め込まれるという戦場を選べぬ戦いといった不利をはね除けた事。清姫様を、家中を皆護り抜いた事。アサシン・パライソの首を鮮やかに断ち切った事。そして洗脳された清姫様を華麗に取り返したこと、令呪を躊躇いなく切った手腕・・・夜明け待たずこの数々の偉業を打ち立てたこと。同じ王の財として心から誇りに思います
白金色の着物、虹色の帯とかんざしをさした大和撫子モードのエアがパチパチと算盤を叩き、それに相応しき報奨を差し出していく。きびしいさていな為、まだまだ千両箱には届かないが・・・それでも、六十五両も増える奮発ぶりだ。それをリッカと武蔵の称賛として、確かに渡していく
──あ、日本昔話はシリアスブレイク気味という判断なため、厳しめに五両マイナスとなります。次なる奮闘、次なる戦いの期待、敢闘を祈るものとしていただければ幸いです
エアの言葉は聞こえないが、その評価の高さはけして誤解なく伝わったようだ。懐に詰めるだけ詰め込む武蔵、誇らしげな顔をしてくれるリッカを見れば、そう信じられる
どうか、またこうしてあなたたちの元気な姿を見せてほしい。王の高笑いを聞いてほしい、沢山の報酬に喜んでほしい。また、明日に希望を持ってほしい。辛く険しい道筋だけれど、決して皆は一人じゃないと知ってほしい
『そんなにもらって、持ち歩いて大丈夫かい?貯金なら僕が預かろうか?』
「お年玉貯金勧めるお母さん!?ダメ!勝手に使うでしょ!」
『いくら貰っても、生命を落としては一両も使えないわ。くれぐれも無理をしないでね、二人とも』
「えぇ~?なにかいったでござるかぁ~?うっへへへぇ、もう私に怖いものは無いですよぉ?」
『先輩!物欲にまみれた侍様より頼れる後輩は如何でしょうか!』
「よろず屋手伝ったら何か食べに行こうか武蔵ちゃん!」
『先輩!?』
戦の後の団欒と触れあいを楽しむ武蔵とリッカ。その笑顔、その歓喜こそが、ワタシと王の報奨・・・愉悦なのだから。それが見えるなら、それが見れるなら。いくらでも、財をあげても惜しくないと言うものだ
──と、思っていても口にしないのが華、ですよね、王よ
《そういう事よ。紙幣や通貨は流通だけが能ではない。こうして人心を煽り焚き付け、労働力と意欲を扇動する。それにて導き出される戦果。それもまた財なのだ。これを形在る紙幣や財宝ばかりをかき集める下等を拝金主義者、という。努、忘れるなよ。エア》
──はい!
『そうそう。頑張った人間には羽振りをよくしてあげなきゃ立ち居かない。ちょっと奮発してまた大健闘をしてくれることを祈る。それを、先行投資というんだ。忘れないでね、エア』
──ありがとう、フォウ!
王と、フォウと共に。はしゃぐ二人を見つめ、顔を綻ばせる
・・・英霊剣豪との立ち合いにて荒んだ心が、どうか此処で癒されますように。僅かなりとも、その真っ直ぐな生が、悪辣なる企みと目論見に歪められることの無いように。いつまでも、笑顔を浮かべていられるますように。それを祈り、エアは二人の元気な姿を見て愉悦を堪能するのだった──
よろず屋・あまてらす
「ワッフ、ワフ」
「今日も頑張ったねぇ、しらぬい!ごぉじゃすさまにほめてもらおうねぇ!」
「ワフ!」
仕事を終え、意気揚々と報告に歩くしらぬい、おぬい、田助。お栄もまた、大通りにて華麗な絵を描き、活気を賑わせている
「こわいのは、たくさんだけど・・・りゅうじんさまや、おさむらいさまがいるから・・・大丈夫だよね」
「ワフ!」
もちろん、と言うように声をあげた、瞬間--
【ほう。我等も随分と侮られたと見える。貴様らの叫びと嘆きが紡がれるのは、これからなのだぞ?】
即座に戦闘体勢を取るしらぬい。笛の音と共にあらわれたのは、警戒な鎧、白い肌を露出させ、殺気振り撒く美少年がごとき・・・
【久しいな、獸畜生。随分と子守りがうまくなったと見えるなぁ?】
「ガウッ、ガァアッ・・・!」
歯をならして威嚇するしらぬいを、肩をすくめて挑発し、そして--
【屋根の上に上るがいい。さぞかし面白いものが見えるだろうよ】
ははは!と笑い、誘うように跳び跳ねる。当然のように追いかけ、屋根の上に到達するしらぬい達に--
【さぁ、見るがいい。そして戦け。貴様らの快進撃も此処までだ!】
--始まる地震、そして地響き。地鳴りが都を襲い、そして、遥か彼方の空が漆黒に染まっている
「あ、あそこ・・・!じいちゃまの裏山・・・!」
おぬいの目が、遥か彼方の異変を捉える
「ワフ--」
・・・その時、見えていたものは誰もが戦慄を覚えた
【黒き空】より、凄まじき【ソレ】が現れ、次々と全容を顕し、ソレに--山に、巻き付いていく
それほど大きくはなくとも--山を囲んで七回り。そして、瞬く間にその山を支配領域とす
その足は無数、頭の部位にはぎょろりとした眼。牙を光らせ、都を睨む
【さぁ、絶望するがいい!これこそ、真なるおんりえどの礎の一手!--顕現せしは近畿の妖、一欠片!】
吼えたけ、戦慄の絶叫はその魂を震わせるものとなる。山に巻き付き、おぞましく身を震わせたるは・・・
【--龍を喰らう、大妖!!三上の大百足也!!!】
その百足が叫びだす、絶望の慟哭が、都へと響き渡る
「--・・・」
「し、しらぬい・・・?」
それを見据えるしらぬいの顔は・・・静かなる決意を湛えていた--
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