人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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二月ほど前の事だ

かの守護神は再び訪れるであろう災厄を、再び来たるであろう惨劇を防ぐために、自らが出来る総てを成した

集落に結界を張り、怪異による被害を未然に防ぐ試みと目論見を成し遂げ

下総の龍脈を滝夜叉姫・・・娘に秘密裏に掌握させ、同時に召喚の術式を組み込む

そして、縁となり対抗として召喚が叶うよう・・自らの霊基の一部を大怨霊と変換し残し敵側に供するよう下総の地へと浄化せず遺した。

そして怪異の再発、カルデアの介入起こるまでの自らがいない間、下総にて最も清き者達を護る英霊、慈悲深き同胞を求めた

強大な英霊では排除に走られるやもしれぬ。日ノ本にて強大な格を持ちながら、その力を振るわず在る事が叶うような者が望ましい。だが、そんな者が都合よくいるものでは無いということも理解していた。英霊は自我にて世界に召し上げられし者だ、世を忍び幼児らに使役されるものを喜ぶものはおらぬだろう

自らの退去も近い。どうしたものかと悩んでいた守護神に声をかけるものがあった

--私が行きましょう。人の世を走るのは慣れております

その者は現界において、あらゆる力を不要とし、よりしろだけを用意して欲しいとだけ告げた。召喚の際の楔だけあればよいと

理は、無いと。守護神は予め伝える。これには英霊としての誇り高き戦いは無い。悪鬼外道を討ち果たす血腥き戦いであると。それに弱体を成してまで参ずる事になると。それで構わぬのかと告げ・・・『彼女』はこう答えた

--人の世を照らすに、庇護するに理由など不要。未来なき世であれ日ノ本、かのマスターに縁が結ばれるなら十分でありましょう。あなたと同じですよ

その答えに、守護神は感じ入り・・・そして告げた。必ずやまた現れ、共に戦おうと。轡を並べ、日ノ本を守護せんと。それまで、かの二人をよろしく頼み申すと。確かに日ノ本の希望を託した

--お任せを。必ずや、人の営みを護り抜きましょう。例えそれが・・・剪定される世界であろうとも

そして、かの守護神の退去と入れ替わりに、かの者は顕現した。分霊を、石像に宿らせ。マスターなきサーヴァントとして、霊格を最低限のものとし、人の世へまろびでた狼として

少女と子を、来るべき時まで護り抜く者として。いつかカルデアが訪れる間隙を守護する者として、秘密裏に接触を果たす

「ワフ!」

「まぁ!まっしろないぬだよ田助!珍しいねぇ!」

「きゃいー!」

出逢い、護らんと声を上げる。下総の希望に寄り添うために、自らを晒す

「名前は・・・うぅん。ぬいがみつけたしろいいぬだから、しらぬい!しらぬいね!」

「ワフ!」

「気に入った?よろしくね!しらぬい!」

「ワン!」

・・・何れ来る。【闇】の対抗召喚として。かの狼は召喚に応じたのだ

自らが召喚に成功した理由、自らが召喚に応じた理由・・・それを噛み締め、決意しながら

分霊・⬛⬛⬛⬛⬛は・・・人の世へと顕れたのである

そして--


普遍昇陽--新皇降臨

・・・その者。ただの一人、虐殺と粛清に居合わせ生き残りし者であり、重んじ、慈しみ、信奉せし総てを踏みにじられし者なり。此処ではあらぬ何処の世界にて、我等の知る世界の惨事を経験せし奴輩なり

 

総てを分け隔てなく殺され、焼かれ、地獄の只中にて生き残りし者。島原の切支丹の大討伐、大粛清を受け、ただ一人生き延び、落ち延びた者。女、子供、分け隔てなく殺められ、害され、ただの一人も残さぬと時の治世に否定され踏みにじられし首魁、御輿が一人。その境遇とその理不尽、その虐殺、その粛清を心の風景とせし男は、総ての世界、総ての人間――自らを、自らの総てを害せし世界のあらゆるものを極限を越えて憤怒し、憎悪し、決意した。あな憎しや徳川の者共よ、あなうらめしや我等を害せし世界よ。必ずや我等の慟哭にてその世を覆さんと血涙を流しながら空に吼えし怨念は、その身を先行きの見えぬ剪定の世からあらゆる世界へと渡り歩ませし力を手に入れ、様々なる世界を怨念と憤怒と共に漂流した

 

本流とさして変わらぬ世界があった、光が射さぬ世界があった。穏やかなる世界があった、楽器の音のみが響き渡る世界があった、狂気に満ち溢れし世界があった。そして彼はやがて二つの人の世を覆す因子に出逢う

 

一つは、朽ち果てし【皇】。ただ其処にあり、ただ其処に成すだけで闇を生み出し世界を包むもの。最早意義も出せず朽ち果ていくのみであった、桜が舞い散る世界にて拾い上げし機構を・・・その有り様に意味を見出だしたその男に拾い上げられ、憎悪と怨念を再び食らわせ再起動を目論まんと静かに回収される。それらは正しく、人の世を終わらせるに相応しきモノ。かつて討ち果たされたのか、それとも目覚めることがなかったのかは。その男にはどうでもいいことであった

 

そしてもう一つは・・・神でありながら、ただ人に殺され続ける神であった。その狂気と在り方に感銘と感動に打ち震えしその男、その神を崇拝し、畏敬し、そのこの世ならぬ存在に心酔とこの世の総てをかのものの贄とする事を誓う。そして、その闇の力と――【サタン】と喚ばれし神の洗礼と宣告を受け、その男は最後の扉を自らくぐりこの世界へと降り立ったのだ。上総が下総となりしこの世界、剪定なりし治世たる世に、人の形をした怨念と狂気と成り果てし男の望むままに。いよいよもって世界を、怨嗟にて塗り固めんとするその目論みは大詰めと成就を迎えんとする

 

英霊剣豪達の無念の内に果てた魂、そして二ヶ月前により討ち果たされし無数の妖怪、怨霊の数々。倒されることにより還元されし魂を燃料とし、一夜城の伝説等及びもつかぬ早さにて・・・その偉容、正しき世を覆すおぞましき城を其処に顕現させる

 

辺りに漆黒の蕀、脈動する黒漆の外装。生きているかのごとき鼓動を顕す、見れば正気に支障をきたすおぞましきその穢れきりし魔城。正しき世の終焉を告げ、ありとあらゆる憎悪と怨嗟を吸い上げ屹立し天下を睨むその具現。その男が望みし現世転覆の象徴――名を、『厭離穢土城』と呼ぶ!

 

【我が聖杯、空想の根は此処に成った!後は無数なりし溢れ返る愚昧どもを残らず供物とするのみ!おぉ、サタンよ!我が意、我が贄を受け取りたまえ!さあ、貴様も本来の役割を果たすときだ!無限に、無繆なりし闇を吐き出し続けよ!【大怨霊】よ!】

 

それだけに非ず。かの男は更なる悪辣の手により磐石を期していた。その入念なる手練手管には、かのおぞましき闇の皇と、最悪の大怨霊を掛け合わせる暴挙へと踏み切った

 

【――ォオ、ォオォオォオォオ・・・!!】

 

二ヶ月前に、平将門が討ち果たせし下総の大怨霊。それらは完膚なきまでに叩き斬られ霧散していた筈であったが――その欠片とその凝固せし塊を、彼等は秘密裏に回収していたのだ。消滅を果たす前に、その核を回収し、保管し、そして、絶好の器にへと押し込め、人の世の転覆を成し遂げる究極の機構へと、全く新しい覇者へと姿を転じさせた

 

其処に在るのみにて世を闇に閉ざす【常闇皇】。そして世界を憎み、時の朝廷を怨み、憎みつづける大怨霊【平将門】。それらは調和し、混ざり合い、この世の総てを終わらせ滅ぼさんとするおぞましき機械、そして世界を滅殺する【反英雄】としての再顕現を成し遂げた

 

【あな憎し、時の朝廷――あなうらめしき、我を認めぬ世界よ――今こそ我、新たなる肉体を得て新生し、この欺瞞と愚昧に蔓延りし世界を一掃せん・・・【新皇】の名の下にィイィ・・・!】

 

その憎悪と憤怒、狂気は機構であり肉体である常闇皇を介して世界へと流出する。その滲み出溢れ出す負の覇気は瞬く間に天を覆い尽くし、正しき太陽を堕落させ反転させ、真っ当なる人の世を喰らい尽くす

 

漆黒の太陽があまねく世をおぞましく照らす。その光が降り注ぐ場所の総てに妖怪、怪異、おぞましきこの世ならざる怨霊、悪霊、怪異が沸き出生まれ出ずる。それらは核と成されし平将門の大願。自らが治め、自らが手にする世界の理の具現。アヴェンジャーたる彼の宝具の顕現

 

【新皇・怨恨呪詛顕現祟禍々臨界(えんこんじゅそけんげんたたりかかりんかい)】――魔の者のみの存在を認可、無限生成せし日ノ本総てを塗り潰す大怨霊たるモノの具現と君臨を成し遂げる終末の怨業也。アヴェンジャーたる彼が存在する限り終わらぬ、果てのなき魔界転生――

 

黒き触光有る限り、その輝き有る限り闇は生まれ、怪異は生まれ、ありとあらゆる総てを喰らい尽くす。闇の世が、自らが世界を手にするその日まで。無限の憎悪を魔力に変え世界を祟るその大威霊――それらを手にしたその者は確信する

 

【かの虐殺を認めし世界どもよ!徳川の治世を甘受せし民草どもよ!貴様らの世、貴様らの治世は今此処に終末の福音にて砕け散る!恐れ、嘆け、赦しを乞え!それら総てを供物とし、サタンは微笑まれよう!世に救いなどない、あるものか!!】

 

怪異に見るまに押し潰されていく風景を目の当たりにし、高らかに、狂い果てた笑いを上げるは--人理に刻まれし少年と瓜二つ。だが彼は英霊

に非ず。肉と魂持つ真っ当な生命である。たとえ捻れ狂い果てていようとも、生命在りし人であることには相違ない

 

【総て、総て!!サタンに、かの皇に捧げ奉らん!!ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!!ハハハハハハハハハ――!!】

 

その名――天草四郎時貞。異なる剪定事象の世界にて、決意と憎悪と憤怒に猛り狂いしヒトガタの怨念。この下総を地獄に変貌させしおぞましき首魁なり――!

 

「随分と上機嫌なことよ。目論み通りに事が運ぶ事が痛快なのは否定せぬがな。だが――それは我ならぬ身には毒となるぞ、怨霊」

 

その確信に、その嘲りに、闇に微塵も揺らがずに輝く黄金の王。真紅の瞳、黄金の着物、傍に至尊の獣と至宝なる魂を侍らせし森羅万象を手にせし英雄王が、都にて嘲笑う時貞を、ゴージャス御殿の屋根より厳かに見下ろしていた

 

【英雄王・・・フン。事の情勢が定まった今、貴様に何ができる。自慢の財宝であろうが、この場における我が勝利を覆すことは叶わぬわ。我が闇、我が憎悪はやがて――】

 

「我等が編纂せし事象へと進行し、正しき歴史を終焉に導く。それが貴様の狙いであろう」

 

さも当然のように目論見を言い当て、下らぬと鼻を鳴らす。王にとって、この程度は取るに足らぬ些事ではあるが故に。その望むところ等頭を悩ます程度でもなき容易き論理の帰結であった。その噂に違わぬ真理を見抜く慧眼を前にし、沈黙する時貞

 

「好きにせよ。我は手を出さぬ。この有り得ざる場所にての動乱・・・どちらに転ぼうとも我は愉しむのみだ。精々、我がマスターとあの侍めに立ち塞がってみせよ」

 

――大百足の助力は・・・

 

 

《フッ、此処は会話の流れとして黙認しておくべき場所だぞエアよ》

 

――そ、そうですね!俗に言う『記憶にございません』ですね!

 

(政治家の常套文句。病院に行こう!)

 

世界が閉ざされようと微塵も揺らがず変わらぬそんな三人の変わらぬ会話と同時に・・・

 

【――!】

 

都にて離れた箇所。遠目にて垣間見える其処に起こる変化を、時貞は訝しげに、王は愉快げに見やる

 

――この閉塞、この暗雲をもたらせしものが人の情、怨念であるならば。それを払い光をもたらす者もまた人の情。人の輝きは昏も曙も兼ね備えるが故に・・・王が総てを定め、蹴散らす必要など何処にもない。何故なら・・・人は自らの手で、どんな困難も打ち払う事が出来る力を・・・祈りを胸に宿しているのだから

 

姫は謳う。人の想いを。人の情念の在処を。其処に生きる人々は、けして無慈悲に害される存在ではない。一人一人が、困難にて輝きを喪うことの無き、大切な人類史の宝なのだ。故にこそ――

 

――陽は、必ず昇る。闇は必ず払われる。それが人の強さと美しさなれば。この世に乗り越えられぬ試練は存在しない。・・・剪定により迷い込みし漆黒の魂なる人よ。あなたを打ち破る輝きは、皆が導くあの光そのものです

 

エアは指を指す。憎悪に満ちた視線が、王の傍らに在りし人のカタチ・・・狂気と怨嗟に曇りし瞳ではまともに捉えられぬその魂、魂に澄み渡る忌々しき清らかな声音が指し示す光を目の当たりにし、忌々しげに目を細める

 

――祈りは力、力は祈り。王が愛する者達を、けして侮ることのなきように――

 

王、姫、其処に、下総の輝きの総てが集う――

 

 

――曙光を 望みたまいし 人の魂――

 

「さぁさぁ!暗がりだろうがなんだろうがかまいやしねぇ!こいつを見て、陰気な気分をぶっ飛ばしてやろうじゃないか!」

 

都の人々は、この危機を前にし在る場所へと集まっていた。其処はかつての騒動にて皆を輝かしく照らしあげた輝きの平定者。藤丸リッカが建て直し、絢爛なる場所へと蘇りし、将門公への首塚であり。其処の場所であり・・・其処に祈りを捧げに、ほぼ総ての人々が集結していたのだ

 

葛飾北斎は、其処にて筆を振るう。その筆さばきにて再現するは・・・大百足の討伐に挑み、そしてよろず屋として働く、しらぬいたち。そして、それを照らし輝く『太陽』の絵であった

 

「意外や意外!あのよろず屋にて働いていたとぼけた犬コロ!これの正体は――平将門公の呼び掛けで招かれてくださった『天照大御神』ってんだから驚きだィ!かの将門公!俺たちを見捨てた訳じゃあなかったのサ!きちんと考え、きちんと見守り、きちんと皆の祈りに応えてくれたってんだから義理堅いったらありゃしない!」

 

勿論、これは北斎のでっちあげた関係のこじつけである。だが、それは決して的外れではなく。その筆さばきにて確信を持たせる凄味と説得力を醸し出しているのだ

 

「そんなアマテラス様や将門様が護った世界がどうだいどうだい、辛気臭いもやに閉ざされちまってまぁ。これじゃあまともに絵もかけねぇ昼寝もできねぇ、引っ越しだってできやしねぇ。陰気臭くてやってられないってなもんさァ」

 

北斎は描き上げていく。しらぬいたちがよろず屋として行ってきた日常を空に描き上げ、おぬいや田助と共に走り回ったその風景を。そして、リッカから伝え聞いていた将門公の活躍を

 

「何より・・・こんな暗くちゃ、子供が過ごして育つにゃ不釣り合いにも程がある。田助やぬい・・・皆様を助けて笑っていたがきんちょが生きる未来がこんなんなんて、誰も望んじゃいないだろ?」

 

鮮烈な筆さばきにて、ぬいと田助の笑顔が記される。しらぬいの惚け顔が写される。それらを見て、依頼を果たしてもらい感謝を捧げた者達が一人、また一人と手を合わせていく

 

「それならどうだぃ、もう一度二柱サマに頑張ってもらうための、御機嫌とりと行こうじゃねぇか。なぁに簡単な事さ。手を合わせて、ありがとうーって天に御祈りすればいいのさ。いあ・・・じゃないじゃない。『神様、いつもありがとう』ってなもんさ。こうまでやってもらったんだ。ちょいと感謝を捧げるくらいわけはないだろう?」

 

その筆が描くは太陽。人々の心を照らすもの。それに重ねるように・・・しらぬいの姿を描き上げていく

 

「皆の心を届かせて、もう一度お日様に照らしてもらおうじゃないか。もう一度、守護神サマに頑張ってもらおうじゃないか。神様は、一人だけじゃなんもしてくださらねぇ。俺たち人間のお祈りがあって初めて・・・そのありがたいお力を貸してくれるってなもんさ」

 

同時に、雄々しく立派、堂々としたその姿――『平将門』の姿を、鮮烈かつ荒々しく描写し、神の御前に捧げ奉る。民草の祈りを乗せ、平和の願いを込めて

 

「皆の気持ちが届いたら、皆の気持ちを分かってくれたなら・・・必ずまた、元気でポカポカな未来を届けてくれらァ。だってそうだろ?大神アマテラス様は、頼んでもねぇのにポカポカおれらを照らしてくれるお調子者で・・・将門公は、そのお力を護るためだけに使ってくださる・・・何より立派な神様なんだからなァ!」

 

皆の祈りが、願いが、心が光となって連なり、天へと登り、また・・・輝かしい幸となって庵に在るしらぬいへと降り注ぐ

 

(あんたが大神サマなんて気付かなかったよ、俺ァ・・・ありがとうよ・・・)

 

(お願いだよ、こんな辛気臭いのは勘弁さ!ぬいちゃんや田助くんが生きる世の中、もっかいぽかぽか照らしてやっておくれよ!)

 

(いつもありがとうよ、しらぬい・・・いや、大神サマ。今度はちゃんと、もてなさせてもらうからなぁ・・・)

 

(将門公、私達を見守って下さったこと・・・まことに感謝感激でさぁ!)

 

(ワガママばかりで申し訳ねぇ・・・!せめて精一杯祈らせてくだせぇ!将門公!)

 

(たのんます!生きていてほしい子らがいるんだ!ぽかぽかした御天道様の下で生きていてほしい子がよぉ!)

 

(将門公、ありがとう・・・アマテラスさま、ありがとう・・・)

 

その、祈りと輝きが。北斎の筆にも集まっていく。その輝きが、その煌めきが確かな力となりて北斎の霊基に共鳴していく

 

「へへっ。呼ばれた訳がようやく解ったってなもんサ。粋なことをするもんだい――じゃあ、最後の大仕上げといくかぃ!」

 

その輝きを確かに認め、空に、社に、輝きの筆を走らせる。その口にするは冒涜的な言葉に非ず。真っ当な、神へ言祝ぐ祝いの祝辞――

 

「高天原に神留(かむづまり)坐ます

 

神漏岐(かむろぎ) 神漏美(かむろみ)命以(みこともちて)

 

皇親神伊邪那岐乃大神(すめみおやかむいざなぎのおおかみ)

 

筑紫(つくし)日向(ひむか)(たちばな)の 小門(おど)阿波岐原(あはぎはら)

 

禊祓(みそぎはらひ)(たまふ)時に 生坐(あれませる) 祓戸(はらへど)大神等(おほかみたち)

 

諸々(もろもろ)禍事罪穢(まがことつみけがれ)を (はらへ)(たまひ) (きよ)(たま)ふと (もう)(こと)(よし)

 

天津神(あまつかみ) 地津神(くにつかみ) 八百万神等共(やおよろずのかみたちともに)

 

聞こし()せと (かしこ)(かしこ)みも()をす――!」

 

口にし、感謝を告げながら。それを描き上げ、天へと神へと捧げ、その祈りを天へと奉り筆を振るわせ走らせる――!

 

「さぁ、御膳立ては整えたッ!こっから先はあんたさんらの仕事だ!こんだけ祈られたんなら、派手にやらなきゃ、おどらにゃ損ってなぁ!」

 

今こそ天に突き付け、その在り方と守護に、渾身の一筆を奉り願い納め申し上げる――!

 

「日ノ本の守護者だってンなら!よろず屋『あまてらす』だってんなら!景気よく日ノ本まるっと救ってみせろぃ――!!」

 

声を張り上げ、筆を振るいしその叫びと一筆は、今――

 

 

『――――確かに、聞き届けたり――』

 

その暗闇と暗雲を切り裂く光となりて、確かに天へと届く――!

 

 




その祈り、天へと通じ。その願い、確かに届きせしめる--

各地の龍脈総てを励起させ。空を覆いし漆黒の太陽に組み込まれし【モノ】を縁とし、民達の願いを楔とし。その姿を現し、顕現を成す

首塚、リッカにより紡がれし平行世界なる坂東坂。其処を基点、首塚を要石とし--その者が姿を顕す

『我が身、日ノ本の守護を司るものなれば。未曾有の危機に祷りを捧げし民の懇願を聞き届け、再び身を顕せし者也』

黄金の武者鎧、真紅に浮かび上がりし眼。総てを見守り、総てを平伏させし圧倒的な威厳。金色の輝きが柱となりて暗雲を切り裂く。その輝きは都に在りし者にも正しく目の当たりとなる

【あの、輝きはッ--懲りもせず、有象無象の囀ずりに!徳川の治世なんぞを守護するが為に、顕れたと言うのか・・・!】

「フッ、当然であろう。自らの根城に狼藉者を看過する神などおるまい。それが外道ならばなおのことだ。さぁ、最期の見せ場だぞ」

その者、今更名を告げるまでも無し。日ノ本に在るならばその誇り在る名、痛感し魂に刻むべし

『日ノ本軍勢絵巻--無尽守護無辺覇陣』

無尽蔵に現れる怪異に立ち向かう、彼に連鎖召喚されし日ノ本の英霊達。古きは神代、新しきは近代。分け隔てなく日ノ本の地へと招かれ、日ノ本の地総てを守護せんと立ち向かうための超弩級連続召喚。それを成すものなど、ただの一人しかおらぬ。日ノ本の頂点、紛れもなき日ノ本最強にして最高の一角たる英霊--

『るぅらあ・平将門。此処に顕現を果たせり。我が身総てを以て、この動乱に終止符を打つ礎とならん』

ルーラー・平将門。此処に降臨を成し遂げ--再顕現を果たしたのである!そして--

『長らく待たせた、我等が慈母。今、その身に真髄を宿らせん』

庵に在りし『慈母』に、自らの魔力と民の願いを込め--真なる力を取り戻させる

そう、『慈母』より預りし『鏡』を--力の源を。かの大神へと返還せしめるのだ--




「ワォオォオーーーン!!!」

しらぬいの身体に、そしてその身より変化が巻き起こる。遥か天に、太陽に。そして--城に。真っ直ぐと続く山吹色の道が、光の道が伸びる

「この光・・・!まさか、将門公!?将門公なの!?」

その光と輝きに興奮の絶頂となるリッカ。同時に、無数の魂と輝きを受け止め、『霊基再臨』を果たす

隈取りは荘厳かつ凛々しく、美しく。背に装着されし『ヤタノカガミ』は七色に光る。神威を現す神気は常に身を纏い立ち上ぼり、空に輝かしき光明たる『太陽』を暗雲切り裂き顕す

「わ、わ、わぁ・・・!」

「きゃうー!」

--もはやその身、非力なる獣に非ず。人が願い、人が望み、人が顕せしその身に宿る真名を秘匿する必要は無し

太陽は昇る。しらぬいは人の世を忍ぶ仮の名。顕れしは日ノ本にて、最も有名な神格の分霊--

「アォオォオォオォーーーン!!!」

基は総てを普遍にて平等に照らしせしめるが故に・・・クラス・ルーラー。--天照大神。此処に本領を発揮せしめる顕現を果たす--!

「わぁー!しらぬい、神様みたい!すごーい!」

「きゃうー!」

『ワフ!!ワンッ!』

「張り切りやがって。どうやら大一番は此処のようだぜ、リッカ」

「うん!!道は開けた!--行こう、皆!!」

いよいよ、決戦の幕が開く。全ては、日ノ本を平和に導く為に--!

「しらぬい・・・ぬいたちもいく!」

『ワフッ・・・!』

「・・・最後まで、いっしょ?ありがとう!しらぬい!」
「きゃうー!」

『ワンッ!』

天照大神は、空へ。リッカ達一同は魔の城へ。共に一直線へと駆け抜ける--!


・・・そして、それを眺めるは英雄王。全ての顛末を楽しまんと、闇と太陽、混沌と光明入り交じる日ノ本の空を、地平を見つめている

「励むがいい。我等はその奮闘を最期まで見届けてやろう。さて--有り得ざる世界にて覇を掴むのはどちらになるのやら」

--都部分に現れし怪異、135、大型エネミー25。財、対妖怪浄化装備選別装填。並列発射。跳弾、反射角計算。家屋世帯数把握、ルート選定。自動発射。--皆様、どうか無事で!帰る場所、この都はワタシ達が護り抜きます!笑顔と、元気な姿を見せてくださったなら・・・それだけで査定はどーんと上乗せしますから!

(ボクとしても憂いなく街を遊びたいんだ、へまはしないでくれよ!皆!)

街に蔓延る怪異のみを財にて冷静に的確に、手当たり次第に殲滅しながら。王達は研鑽の成就を願い、愉しみ。一切完勝の結末を掴むか否かを見定めるのであった--

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