人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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--この音は・・・!

《気付いたか、エア。これは練鉄の音。かの愚か者が生涯を重ね収斂し、象を成した決算を象る音よ。いよいよ以て土壇場に奥義を振るうとは。戦いの盛り上げ方と言うものを心得ておるではないか》


都に蔓延る妖怪を串刺し、皆殺しにしながらゴージャス御殿の屋根に腕を組み城を見上げるは英雄王ギルガメッシュ。傍らにエアを侍らせ、獣を肩に乗せ城を見届けている

--ワタシ達が送り届けた手甲、着用してくださっているでしょうか・・・

《さてな。我等を信頼、信用せぬかどうかよ。その手甲がどのような物かは口にはしておらぬ。かの身が生きるか死ぬかは、その心構え一つであろうさ》

--犠牲を看過してしまえば、例え勝とうとも敗北と同義。村正おじいさま、どうかワタシ達の願いを受け取っておられる事を祈っております・・・!

(日本の財なんて蔵の下の下の方にあるものをエアが全身全霊で選別した逸品!腐らせてたら許さないからな士郎モドキ!しっかり着けてしっかり帰ってこいよ!)

《どのみちアレの回収は不可能であろうが・・・まぁよい。一切完勝の為ならば、代えの効かぬ財の一つや二つ気前よくくれてやる。さぁ鍛冶屋よ、示すがいい。貴様の業を断ち切る研鑽と人生の決算、このゴージャストリオが見届けてやる!》

(その括りやめろ!なんか致命的にダサいから!)

《む、ゴージャスと愉快な仲間達が良いか?》

(プレシャスにしろ!プレシャスに!)

--ぬいちゃん、田助くん・・・まだ離別を味わうには早すぎます。これより泰平の先も、あなたの存在が彼女達の心には必要な筈です。仮初めの顧客だとしても、別れが訪れるとしても。其処に紡がれた絆は真の宝であり、生ある皆の中で息づくのですから。・・・--どうか、御身の健在を・・・!そして、ぬいちゃんと田助くんの下への生還を、心から祈っております・・・!

(老兵は死なないんだろ!そのしぶとさで帰ってこーい!別れの運命なんて、悲しいだけなんだからなー!)

《さぁ--見せてみよ!我に煮え湯を呑ませた忌々しき雑種と生を似通わせし刀鍛冶!その究極をな!》


剣の鼓動、此処に在り--穢士の終焉・悪の栄える試し無し

 ――地獄を見た

 

今ならぬ過去。戦乱の時代。誰も彼もが天下だの、武勲だのを求めて日本を騒がしていた時代。日本が震えていた時代だ。なんのことはない、どうと言うことはない。掛け値無しの戦の連続により紡がれる地獄。その場所に、今のように神はいなかった

 

せまっくるしい国に群雄割拠する殿様、大名。国を広げるために、統一を成すために、自国を護るために毎日毎晩、戦いと余所様の国の進行、侵略に明け暮れる。そうしなくちゃあ、自らが滅ぼされると分かりきっているからだ。あぁ、そうだ。あの世界は、あの時代には個人の思惑なんぞ挟まる余地はねぇ。『生きる為には、戦わなければならなかった』

 

だが、殿様や大名なんぞ、隣国遠国関わらず強い国に攻め込まれちまえばそりゃああっけないもんだ。あっさりと死ぬ。いくら耳心地のいい御託を並べようと、名君だろうと。終わりはそりゃああっけないもんだ。そしてその死んだ後の後釜が名君とは限らねぇ。そうして戦乱は続いていく。何処までも、いつまでも戦乱は続き、屍は積み重なっていく

 

 ――地獄を見た

 

そうして割を食うのは、今日を食うにも困り果てた下々のもんだ。必死になって生きていくために田畑を耕し、糧を得て生きなきゃならねぇってのに、お上様は全てを国に寄越せと言いなさる。武器を、兵を、生命を寄越せと捧げろと宣って、無理矢理無いものから奪っていっちまう。そうして、若い命は、糧を産む筈だった生命はあっさりと戦場で散っていく

 

村なんてのも、敵からしてみれば絶好の場所でしかねぇ。敵国の領土の村には食い物も女もいる。侵略に打ち克った国が敗北した国にする仕打ちなんて、一つしか有り得ねぇ。情けなんぞかける物好きは、何処にもいねぇ

 

誰もそれを責めなかった。それがあたりまえだったからだ。何処まで行っても、それが当然。勝ったものが覇を掴み、弱者は何処まで行っても弱者でしかなかった。それを、時代が良しとしていたのだ

 

 神も仏もいなかった。いや、今はこうして戦ってるし肩を並べてはいる。だが・・・儂が生きていた時代に、戦乱を終わらせ、ひもじく震えるガキどもに粥をくれるような神様は何処にもいなかった

 

儂も同じく。空腹の中寒空をみあげ、寝る場所も見つからねぇまま風に吹かれ死んでいくものとばかり思っていた。だが、そうはならなかった。たまたま備わっちまったもんのせいで儂は生き残った。儂は『生き残っちまった』

 

 ――終わるとも知れぬ、地獄を見た

 

自分は、人より刀を上手く作れた。戦乱で強い刀ってのは武勲に繋がる。その右手に握られる刀で敵を倒し、殺し、自分の武勲を上げ、立身出世に繋がるからだ。刀を、人はひたすらに欲した。護るために、成り上がるために、覇を掴む為に、人をただ斬るために

 

あの時代に、刀ってのは強すぎた。誰かを斬ることも、戦を進めることも、人を殺すことも思いのままだった。手にした刀の強さはてめぇの強さだ。だからどいつもこいつも、こぞって刀を欲しがった

 

で・・・そんな世の中で儂は、刀を作れた。作れちまった。その手先で造り上げられる人を斬る包丁やら肉斬り。そんなろくでもねぇものを作れちまった儂は、そりゃあ大層に重用され、飢え死に討ち死にが当たり前の世の中で、のうのうと刀を作り続けてた。何処ぞの大名に抱えられ、斬った張った殺した殺されただのとは無縁の世界で、なんの不満もなく生き延びた。――生き延びちまった

 

鉄を打つ。――飢えて死んでいく奴等を横目に見ながら。鉄を打つ。――時代に殺されていく奴等を横目に見ながら。儂は死ぬ筈だった。死ぬ筈だったのに、生き延びちまった。たった一人、せこっくさい小手先の技術で。生き延びるべきではねぇ時代を、みっともなく生き延びちまった。飢えも、渇きも知らねぇまま。ただ刀を打てるそれだけの理由で、数多の生命と同じ様に死ぬことができなかった

 

赦されねぇ、認めねぇ。そんな道理は赦されねぇ。だからこそ、儂はひたすらに刀を打った。そうしなくちゃあ申し訳がたたねぇと思ったからだ。飢えも知らねぇ、人の殺し合いも覚えがねぇ。そんな甘ったれた自分が、刀を打つってだけで生き延びたんなら、極みに、究極の一に達しなきゃいけねぇ。そうしなくちゃあ、死んでいった奴等に、死んでいった魂達に申し訳が立たねぇ

 

数多無数の生きたい生命がくたばって、ただ取り柄のあるってだけのつまらん儂が生き延びた。なら――失った全ての生命が納得できるような場所へ、境地へ、領域へ。到達しなきゃ何一つとして生きた甲斐がねぇ、だからこそ・・・生涯の全てを懸けて、儂は刀を打ち続けた

 

孫も、家族も、もう何も思い出せねぇ。浮かぶのは炉心の火、熱せられた鉄。ただひたすらに鉄を打つ、槌の音。それが徹頭徹尾自分の風景にして光景。人並みの幸せなんぞ過ぎたもんだと、ただそれのみに没頭し、打ち込み、振るい続けた

 

肉を斬るなら包丁でもできる。骨を断つなら斧でもできる。そんなもんで――納得していい筈がねぇ。形あるもののみを斬れる刀なんぞ、刀剣なんぞ、のうのうと生き延びたてめぇが満足していい境地な筈がねぇ

 

無念を、願いを、業を。生きたくても生きられなかった生命達に捧げられる一刀を。そいつら全員が『あぁ、これなら死んでもいいな』と思えるほどの、至高の一振りを。それを打ち、初めて儂はようやくてめぇの生命に決着をつけられる。業、定め、縁。それら全てをひっくるめてたたっ斬れる領域――『剣の鼓動』に至るために

 

その瞬間まで、儂の生涯に意味は要らねぇ。ただひたすらに(いろり)の前で鉄を打つ。誰にも理解されねぇだろうし、してもらう必要もねぇ

 

打ち手は此処に、唯一人。故にこそ、村正の名は後世に残ったのやも知れねぇ。――ほとほと、呆れ果てる

 

・・・刀鍛冶の、そのてめぇが。極めに極めた先に神仏に至るなんぞ。かつての儂ァ、阿呆を極めたもんだ

 

――そして、今。その阿呆が、その無様が。その生涯が此処に身を結ぶってんなら迷いはねぇ。儂の全てを懸けて至った領域で、また新しいもんが見れるのなら。――あいつらの未来を『斬り』拓けるのなら。振るうことに一切の躊躇いはねぇ

 

馬鹿で上等、狂人御覧あれ。こいつが儂の総決算。今を生きる奴等の未来に捧ぐ、生涯全てを注ぎ込んだ、儂の研鑽にして練鉄の境地也

 

 

――ついてきやがれよ、妖術師。事此処に至って、泣き言なんぞ聞く耳持ちやしねぇぞ――!!

 

 

 

――その倒錯 鬼神に通じ 一を成す 数多の研鑽 この刻にこそ――

 

 

 

 

 

「――かつて求めた究極の一刀。其は、肉を断ち骨を断ち命を断つ鋼の刃に非ず」

 

鉄を打つ。自らの魔力の全てを注ぎ叩き込み、周りの紅蓮すら及びも付かぬ、真紅の刀身。其処に

ひたすらに自らの槌を打ち付ける。一つ叩き込まれる度に。その神々しき紅蓮は、神威となって立ち上る

 

「我が()が求めるは怨恨の清算。縁を切り、定めを切り、業を切る。――即ち、宿業からの解放なり」

 

その意を顕し、その意を示し。立ち上る輝きの刀。鍔もなく、柄もなく、ただの裸身の刀でありながら其はただひたすらに雄々しく、神々しい

 

轟音と振動が固有結界を揺るがし震わせる。その右手に握られし刀剣の質量、それと同時に輝きを放つ真紅の手甲が共鳴し、紅蓮と真紅の紅さが交ざりあい、雑じり気のない神気が凄まじき勢いとなり立ち上る

 

其は人の身にて辿り着ける境地に非ず。其は人の身に手にすることが叶う刀剣に非ず。其は正しく、まさしく。――神の握りし刀剣。その手に宿りしものは正しく、幻想の全てを置き去りにする究極の一

 

まさにそれは――人の産み出した究極。遥か狂気の領域にまで到達した事により到達せしめた・・・真なる『神』の境地なる産物――神の握りし、神仏に至りし剣なり――!

 

「・・・・・・其処に至るは数多の研鑽。千の刀、万の刀を象り、築きに築いた刀塚」

 

ありとあらゆる刀を打った。ありとあらゆる刀を魂の形とした。時代を喰らう名刀すらも産み出した。だが、それらの全ては村正の求める物では、辿り着くべきモノではなかった

 

明神切ですら遠かった。その切れ味では、持ち手担い手の意志と尊重ですら断ち切ってしまっていた。人と刀の合一に、どうしても辿り着けない刀であった

 

龍哮村正ですら遠かった。その分け隔てない狂気と邪気は、振るうものすら見繕うことが出来ぬ筈であった。斬るのではなく喰らうなどと言う領域に至ってしまった業の刀。刀の形をしたおぞましき怪物。担い手が現れた事そのものが奇跡に他ならなかった

 

――だが、その二刀は。運命と出逢い、自らの担い手と共に究極の一に至った。宿業からの解放を、その身に宿し到達せしめた。故にこそ、あれらはもう失敗作ではない。自らの手を離れた、至高の逸品の太鼓判を押すに相応しきものである

 

・・・故にこそ、此より振るわれるは自らのみの唯一無二。正真正銘、正しく魂を顕し写した自らの一にして、究極の一刀

 

「――此処に辿るは、あらゆる収斂」

 

自らの研鑽の果てが、此処に集う。自らの人生が、渇望が、願いが、信念が。この一刀に収束する

 

「――此処に示すは、あらゆる宿願」

 

かつて夢見た至高の一刀。至高の無二を、自らの業を、打ち続けた是非を、散っていった名も無き魂への黙祷を。この刃に、この一刀に注ぎ込む

 

「――此処に積もるはあらゆる非業」

 

狂わされし英霊、狂わされし泰平。踏みにじられし平穏。真っ当に生きる筈だった者達の歪曲。生き残った、無様を晒した自分自身の生涯。これ等の全てが、すべからくこの真紅の刀身に宿る

 

「――我が人生は、この一振りに至るために」

 

――体は槌を振るうが為に。血潮は溢り、心は(いおり)

 

幾度の研鑽を積み重ね至らず 

 

只の一度の妥協も無く

 

只の一度も 振り手は躊躇(とまら)

 

打ち手は此処に一人 宿願を切り裂く 無二を打つ

 

故に、我が生涯の意味を此処に

 

この剣は――無二の一にて出来ていた――

 

「――剣の鼓動――此処に在り!!!」

 

 

その赤熱せし刀身を振るう。熱せられ封じられた神威が洩れだし。それだけの余波にて固有結界の全てに亀裂と斬撃の爪痕が穿たれる。その剣を阻めるもの、最早非ず。真紅の手甲が握りたまいし神の剣が、その果ての研鑽と魂の到達を高らかに謳う

 

否、それらは固有結界を斬るものに非ず。その銘を賜りしが故に――その名を懐きし者を過たず両断する!風が唸りを上げ、憎悪が片端から打ち払われ、大地が激震し崩れ崩落し、天が泣き叫び慟哭しながら引き裂かれる

 

「受けやがれ!こいつがオレの――!!!」

 

今こそ、答えを此処に。平穏の礎となるために。幼児が、笑って、笑顔で美味しい飯にありつける世界を繋げるために

 

斬り、殺すばかりであった自らの剣にて。初めて――『活かして』『繋げる』為に。神仏に至りし刀匠は高らかに、手にした神の剣の真名を謳う!

 

 

固有結界の全てを切り裂く紅蓮の刃。邪悪と怨嗟、怨恨をもろともに叩き切り裂く其の剣の名は――!!

 

「都牟刈――村正だぁっっっっっ――!!!!!」

 

気迫の咆哮と共に打ち振るわれる渾身の一刀。その宿業を片端から両断し、世界を切り裂き、そしてその刃は固有結界の彼方から――

 

 

【都牟刈――とはっ――!!!】

 

その名を聞き、その名を聞き及び。妖術師はその結末に合点が行き血を吐くような慟哭と共に呻き叫ぶ。

 

都牟刈とは、須佐之男命が八岐大蛇の尾から見出した剣。神の手により握られし剣。なんの雑じり気の無い、神代の領域にして産物そのもの。

 

すなわち――またの名を。天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)也――!!

 

その因果に、その思し召しに妖術師はやがて思い至る。望月千代女。そして酒呑童子。それらは全て伊吹の縁。――思い至る。自らのバテレン妖術は既に――

 

【かような、結末は、既に――定まっていたと言うことかっ・・・!!は、はは、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!】

 

その天啓と全く同じ瞬間にて・・・――此処に妖術師の企み、目論みは完膚なきまでに潰える

 

遥か固有結界の彼方より打ち振るわれし都牟刈村正により・・・城は天守閣から石垣の真下にまで。真っ二つにて両断せしめられたが故に。その紅蓮の一閃が、城の鼓動と脈動を、活動を一網打尽に叩ききったが故に

 

大一閃により、城は死に果て。神の一撃による強大極まる一閃により――真っ二つにされし城より。魂の具現のごとき灼熱の火の手があちらこちらで吹き上がる

 

――最強の剣豪、柳生十兵衛でもなく。隠密大名、服部半蔵でもなく。噂のキャスター、阿倍清明でもなく。何故刀鍛冶たる村正が喚ばれたのか思い至らなかった時点で――否。それらより根本的な問題が、妖術師に戦う前より敗北を宿命付けた

 

・・・守護者があり。太陽が登りし人の世を害そうと思い至った時点で。日ノ本を害そうと決議した瞬間に――その妄念は、破れる定めで在ったのだ――

 

 

 




燃え盛る城の天守閣に舞い戻り、やがて全てを決した二人は相対する

【・・・--何故だ。何故その一閃が、固有結界の彼方より此処に届いた?】

理解が出来ぬとばかりに茫然と告げる妖術師に、村正はさらりと告げる

「そりゃあおめぇ、相手がエド城だからだよ。村正の名前はしってんだろ。あな憎しや徳川、あなうらめしや徳川・・・ってな。そいつが江戸城だってんなら叩き斬れない道理はねぇ」

徳川に類するものを害する。徳川に名を連ねるものを斬る。それのみに、それのみを成し遂げる刃。--例えそれが『穢土城』という語呂合わせであろうとも。江戸であるなら、村正は切り裂くのだ

「よっぽど憎かったんだろうなぁ。--だが結局、お前さんを滅ぼしたのはお前さん自身の業だ。自業自得、因果応報。--じゃあな。妖術師。テメェの目論みは、御破算と相成ったぜ」

【お、おぉっ--】

瞬間。妖術師の胸を何かが貫く。貫通せしそれは・・・刃。鉄の刃であった

【な--なんだ、これは・・・?我が胸を貫く、この刃は・・・】

「--間に合ったか。キチッと〆は飾りやがれよ」

ふぅ、と息を吐き、後の作業は任せるとばかりに目を閉じる村正

【それはパライソの・・・千代女さんのクナイだよ。思い知れ。狂わされた者の哀しみを。狂わされた者の無念を】

【ふ、じまる--リッカ・・・!】

「怨霊の塊、人であったもの。その身・・・地獄へ案内つかまつる」

二人が、今までの研鑽の果てに極みに至った少女二人が天守閣へと辿り着き、外道に相応しき不意討ちのクナイにて動きを止める。此度に勝負など求めぬ。道理などは求めぬ。外道に相応しき結末を、狂わされた者達への鎮魂を此処に

【雷位・奥義開帳。龍哮一閃--】

「此ぞ、我が空道、我が生涯--」

左手の【龍哮怨獣斬村正】を引き抜き、自らの全てを結集させた神雷の一閃を

自らが到達した空を『明神切村正』に乗せた零の一閃を。過たず振るう。この元凶を過たず断ち切る為に--

【お、おぉっ--斯様な・・・小娘ども、ごときにぃっ--!!オォオオォオオォオオォオ--!!!】

【雲曜--神雷!!!】

「『伊舎那・大天象』!!!!」

放たれる、憎悪と宿業を駆け抜け斬り捨てる一閃
放たれる、始まりを、無念無想を叩き斬る一閃

【「--成敗!!!」】


その二つの極みに切り裂かれた妖術師が、この世にあれる道理はなく。瞬きの瞬間の内に。二人の剣の極みに至りし少女によって--この動乱の元凶は完全消滅と相成るのであった

・・・そして、運命の瞬間を覚悟した村正の右腕が、着用していた手甲に変化が起きる

「・・・!」

紅く輝いていた手甲が、粉々に砕け散る。バラバラと、役目を終えたかのように。神なる刃と共に消失する。・・・エーテルの崩壊が、何故か起こり得ない。神ならざる身で、神たる刃を振るっておきながら

「--あぁ、成る程。そういうことかい。御大尽さま、随分と気を利かせやがって」

何故、あれほどまでに力を発揮することができたのか。何故、あれほどまでに豪腕を振るうことができたのか。自分の腕前も多少はあるが、この手甲の加護があってこそのものだと理解した

此は--『神の甲』。かつての男神が着用せし、正しき都牟刈の持ち主のもの。着用せしものに、かの神がごとき力と加護を与え、ただ一度だけその神剣を振るいし者を守護せし手甲

「もらいもんだと敬遠しねぇで命拾いしたってもんだ。--心残りがあんだ。死んでる場合じゃねぇってことかい。・・・--ありがてぇこった」

最早唯一無二の、現存品。砕け散るその手甲は・・・『須佐之男命』のものだったのだ

・・・犠牲の容認はしない。只の一度、条理を蹴散らし曲げる

王と既にこの結末を読み切っており、姫はその全身全霊にて、日ノ本の神威という蔵の深遠に在りしその財の在処を見出だし、届けていたのである--

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