人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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下総・山頂にて


山とは神々ですら立ち入ることの出来ぬ神域

日ノ本において山とは不吉の象徴であり、
同時に不死の霊薬が有るとされる未開の地

その山の天頂にて、一人の男が仁王立ちしていた。

その男の名は日本武尊――日ノ本が誇りし象徴に名を連ねし者

日ノ本の誇る大英雄が一人である

空が渦巻いている

雷鳴が轟く

風が吹き荒れる

男は見上げている

今ある山よりも遥かに高き地を

其処には山があった

いや山などではない

山の如き巨大さを誇る八つ首の竜だ

その名、堕ちた竜――――伊吹大明神、またの名を、八峰大蛇。憎悪にて歪められし形堕ちなれど、その偉容はまさに邪神が如く―――


竜は咆哮を上げる。
その感情は怒りだ。
見れば竜はその身に多大なる負傷を負っていた。胴体である山の如き肌に、余りにも鮮やかな斬痕が刻まれているのだ。
八つの首には焼かれたような焼き傷があり
頭の半数は眼が瞑れていた。

『どうした、貴様は仮にも“あの”伊吹の神なのだろうよ。覇を謳え、三郎にしたように吾を呪殺せしめるがいい。高々その程度の傷、当然のように再生して見せよ。それとも・・・紛い物である貴様には酷な申し出であったか?』


竜は咆哮を上げる。

いま、目の前にいる男を滅するために。

日本武尊は微かに笑みを浮かべる。

『そうこなくてはな、伊吹の神を名乗るだけはある。だが――貴様は相手取るべき者を見誤った』

日本武尊は剣を天へと掲げた。
紅き剣から蒼き奔流が迸る。
竜はその光を見た途端動きを止めた。
その余りにも眩しき光に――――。
日本武尊は祝詞を告げる。
それは誰にも理解できぬ、されど魂に響く言ノ葉。


其は、龍の尾、亡骸より出で、太陽に献上され、
その名を変え、廻り廻りて日ノ本全土に轟く
我等が神ノ剣

『今一度眠るがいい。そして、悪に属す限り、貴様に真なる勝利は訪れぬと心得よ。--草薙麗閃(くさなぎはらい)大蛇断(おろちだち)--』

村正とは異なる、しかしてけしてひけを取らぬほどに鮮烈な蒼き極光が、伊吹の姿を形取りし竜を断ち切ったのであった―――

『・・・さて、後は・・・』

山より、英雄たちの奮戦を。空に在りし、慈母と将門公の戦いを見上げる

『・・・まだ、出来ることはあるようだな』

空を見上げながら、自らの役割を悟り微笑んだ--



天照・新皇・尊

 【オォオ、オォオオォオオォオ!!!】

 

空の果て、空の彼方。黄金の道筋を駆け抜け。アマテラス、ぬい、田助、そして将門公は辿り着いた。太陽を覆い隠し、闇を産み出す根源にして原因足る首魁。【常闇皇】の本体。闇を産み出せし人工的な黒き太陽。その恐ろしくもおぞましき偉容を前にし、真っ当な存在であれば即座に狂い果ててしまうほどの濃密な闇を、混沌を吹き散らし産み出し続け日ノ本を覆い尽くしている。それの偉容は・・・

 

【此処に来たか、此処に至るか狼藉ものどもが・・・いや、其処に在るは間違いなき、紛れもなき・・・我が身体!!】

 

『・・・――』

 

【さぁ、此処へ来い!この首を繋ぎ、此度こそ我等が世界の覇を握るのだ!そしてこの世を終焉へと導くのだ!我等を望まなかった世界を!我等が在らぬが故の腐り行く世界を!我等を選ばなかった蒙昧なる世界を必ずや討ち滅ぼさん!そして、そして、紡ぐのだ!新たなる世界を!我が--【新皇】在りし世界をこそ作り上げるのだ!それより他に道はない!この日ノ本が新なる覇を掴みとるのはそれしか有り得ぬのだ!】

 

その呪詛は、その決意は怨嗟は闇となりて日ノ本を覆い撒き散らされる。そのおぞましくも激烈な使命感は濃縮極まる憎しみとなりて叩き付けられる

 

自らを望まなかった絶望、自らを選ばなかった憤懣。それら全てを【常闇皇】の力にて変換せしめる。その魂を、霊基を。全てを世界を呪い死に至らしめる【祟り】へと変換しながら・・・浮かび上がる巨大な首として、その姿を顕現させている。アマテラス、将門公。その偉大なる二柱でなくては到底太刀打ちできぬ強大な存在である新皇が、その負の情念が叩き付けられる

 

アヴェンジャー、平将門の前に立ってはならぬ。魔術回路、はたまた霊基を祟られ末代まで呪詛を受けるか、座の本体に記録として祟りが刻み込まれ最早真っ当なサーヴァントとしての召喚は叶わぬ。憎悪と狂気に飲まれし者としての召喚を強制されるのだ。強弱、格、共に無意味。かの怨霊を調伏叶いしものは彼より格上の神霊そのものか、抑止力に選ばれしもの。そして・・・平将門公本人のみしか有り得ない。故にこそ、この混沌溢れ行く場所にて、力と手を合わせ此処まで辿り着いたのだ。アマテラス、将門公は顔を見合わせ頷き合う。そして・・・

 

「だいじょうぶ、怖くないよ・・・!ぬい、田助も一緒にいる!」

「きゃう!」

 

その決意を示す幼児二人を、静かに光にて包み込む。かの二人を護る絶対防御。――この戦いの、最後の鍵を確かに背後にて護る。そして――その絶望に二人は望む。

 

『ワフッ!!』

 

『我が半身、我が怨霊、我が情念。最早この場に、この日ノ本に・・・貴様(われ)の居場所は無し。疾く、調伏を受け入れるが良し』

 

【認めぬ!認めぬ!認めぬ!不要であるのはこの世界そのもの!無用であるものは我を望まぬこの世界そのものよ!オォ、オォ、オォォオオォ!!風よ逆巻け、地よ割れよ!!空、張り裂けよ!!我が名を受け入れ、平伏するが良し!闇の黎明は来る!我が名!!平将門なるぞ――!!】

 

放たれる、闇そのもの。最早その存在そのものが闇となったその闇の新皇・・・【常闇新皇】に、輝けし太陽神、そして日ノ本の守護神、平将門が全身全霊を以て望み行く。今あるこの日ノ本を護るために。今あるこの日ノ本を照らすために。今あるこの日ノ本を平定する為に。その元凶に今、持てる力の全てを懸けて立ち向かう・・・!

 

『慈母。必ずや生還を果たす。欠けてはならぬ、失ってはならぬ。不肖の身の鎮魂・・・その輝きを我が身に』

 

『ワフッ!!』

 

言葉は無用。無粋な気遣いは無用。我等心は一つ。託されし祈りを力に。力を祈りとするために。慈母と守護神は、厳かに闇の首魁へと挑む――!

 

【ォオオォォオオォォオオォォオオォ!!!】

 

・・・その戦いは、まさに物理法則と常識を完全に無視した戦いであった。その規模、その攻防はまさに世界を害し、そして世界を引き裂くかのような壮絶という言葉も生温い激闘、激戦、大決戦であった。まさに、日ノ本の興廃をかけた、世紀の対決と呼ぶに相応しいものであった

 

将門公の首となりし常闇皇はその視線のみで遥か地平線の彼方に届く光線を放ち、その口から放たれる咆哮にて万物を吹き飛ばす。その鼻から放たれる息は竜巻と台風を巻き起こし日ノ本に在りしものを全てを吹き飛ばすに余りある勢いの風量を叩き付ける。その言葉は呪詛となり魂を腐敗させ大地に永久の干魃を強いる。その慟哭は万物八百万を闇へと引きずり込む祟りとして放たれる。どれもが地上へと届き、日ノ本へ着弾を許せば即座に滅亡が確約される終焉と滅亡の化身。その霊基が振るわれ、その常闇の器が無くば即座に自壊するほどのおぞましき終末の装置。サーヴァントなどいとも容易く砕かれん事を正しく認識せし、平将門の荒御霊。その偉容、その光景。正しく神の怒りが如く。神の祟りが如く。顕現せしは日ノ本が誇る三大怨霊の一角なる呪詛を司りし伝説の具現――

 

それに、全身全霊を以て抵抗と対抗を行う二柱の神。真っ正面にて巨大なる大怨霊の首を、刀剣と武力にて食い止め顕現と降臨を阻む将門公。その真っ正面からの激突と拮抗は隕石の地表への激突がごとき迫力と威光と威厳を以て辺りの全てを吹き飛ばし消し飛ばす。地力と勢いとは互角。光と闇の激突は、互いに譲らず拮抗を続ける

 

その日ノ本を犯し吹き飛ばす攻撃の全てはアマテラスが吹き晴らす。摩訶不思議なる通力により、光線をかき消し、一閃にて風を切り裂き、呪詛を塗り潰し祝福へと変貌させる。大怨霊が行いし国土を害するその数多の怨恨と呪詛を、闇を祓い打ち消していく。将門公の支援と、日ノ本を守護する難題を難なくこなし、その瀬戸際にて拮抗させ互いを護る。その通力を以て将門公に万の力添えを為し遂げ。その果てに日ノ本を護る戦いを行いし二柱の神

 

絶え間無く大陸が割れ、日ノ本が吹き飛ぶがごとき規模のやり取りをぶつけ合う。それはまさに神々の衝突。人間や英霊が立ち入るべくもなき・・・世界の命運をかけし決戦の正しき大一番である――!

 

「・・・!」

 

「きゃう・・・」

 

その戦いを、二人の幼児はみやる。目をそらさず、目を背けず。世界のために、日ノ本の為に戦う二柱を見続ける。その光景を、確かに焼き付ける。風が逆巻き、嵐が吹き荒れ天地万物が灰塵と化するような事態となれども、其処から目をそらすことはない。なぜなら、何故ならば。その為に自分達は来たのだから。神様が、いなくならないように。はなればなれにならないように。しっかりとこの目で、見届けるために此処にいる。一生懸命戦う神様を、見失わないように此処にいるのだ

 

「あっ――!」

 

そしてその瞳は捉える。この戦いは・・・こちらの不利であると。子供心でありながら、確かに悟る

 

【ォオオォ、ォオオォァアァア!!!】

 

『――・・・』

 

『ワフッ・・・!!』

 

此は腕前や技術の問題ではなく、心構えや対処、先攻や後攻の問題であった。攻めと護り、侵攻と防衛。それ故の意識の違いであった。だからこそ、故にこそ。けして攻めきれぬもどかしさがあった

 

大怨霊はたたひたすらにその怨念、情念を叩きつけ、破壊を繰り返せばよい。無慈悲に、際限なくその力を振るえばよいのだ。その無配慮と躊躇いのなさは、そのまま怒濤となりて二柱を打ち据える

 

それに対し、二柱は徹底的な防衛を強いられる。一つ間違え、一つ取り零せば致命的な損害を下界たる日ノ本に与えてしまう。ただの一つであろうとも、失敗と失策は赦されない。全てを吹き飛ばし、防衛し、守り抜かなくてはならない。その配慮と防戦が、大怨霊の優勢に繋がっている。それは、この極大の決戦の前に致命的な遅れ、隙となってしまう

 

【滅びよ!滅せよ!痴愚溢れる国よ!語るもおぞましき愚者の国よ!粉微塵に消えるべし!最早それ以外に道はなし!】

 

『・・・・・・』

 

【天地万物!その全てが無意味にして愚昧!我が身を認めぬ愚かしき繁栄など滑稽の一言!!照らされる価値などなきものよ、全てが消えいくものよ!!】

 

『グルルゥ・・・!!』

 

【貴様らが信じ、崇め、認め、奉ずるものは全てが塵よ!!貴様ら無知蒙昧にはお似合いに過ぎるが故に嘲笑抑えきれぬ!あな恨めしき世界よ!あな憎らしき日ノ本よ!滅べ、滅べ、滅べ、滅べ滅べ滅べ滅ぶべし!!万象一切悉く!塵と還る他に道など在らぬ――!!!】

 

闇が深まり、二柱の動きを強く縛る。その微塵の揺らぎもなく讃えられる暗黒の呪詛、万象を呪い殺さんと吹き散らされる。その絶望の波動に押し返される・・・!

 

「ああっ・・・どうしよう、どうしよう・・・!」

 

「きゃう・・・!」

 

その劣勢に涙を流すのではなく、耳を塞ぐのではなく。打開の手段を模索せんとするぬいと田助。その精神と心は、数多の死線によりすっかり鍛え上げられたが故に動じない

 

護られてばかりではない。自分も何かをしたい。故にこそ。何かを考えずにはいられない。どうする、何をすればいい、何を行えば力になれる?真剣に考えを巡らせるぬい・・・その時であった

 

『それで良い。困難より道を反らさぬ者に、活路は生まれる』

 

頭に直接響き渡る、威厳ある謎の声。その声に覚えはない。その声に既知感はない。だが、その声音には揺るぎない確信があった

 

『幼児よ。この混迷、切り開くのはお前達だ』

 

「だ、誰・・・?」

 

『誰でも構わぬ。――(タケル)、とでも名乗っておく。今は吾の事などどうでもよい。よいな、我が言葉を聞き届けよ』

 

その声音が伝えんとすることを、静かに聞き及ぶ。その声は告げる。この世界を進むべき道に導くこと、選ぶこと。自らが・・・決断を行うべきである、ということを

 

『お前達は何を望む。光ある世界か、暗闇に閉ざされた世界か。それとも――――暗闇を太陽が照らす世界か』

 

それらは、今目の前にて広げられる戦いの果て。どちらもまた、目の前にて繰り広げられし戦いの縮図。どちらも目の前に在りし、その未来。その眼で垣間見よと、尊は告げる

 

 

『何時の世も、今と言う世界を切り開くのは

今を生きる人間達だけだ。苦しいこともあろう、辛いこともあろう。そのようなときは―――祈れ。絶望に屈する事なく、自らを護り、先に進む者達を頼るのだ。助け合い、支え合うことこそが。不可能を可能にし、絶望を希望に変える真理である』

 

なればこそ――他者を信じ、人を信じ、神を信じよ。それらは必ず、真理となりて道を示す

 

『譬えお前達が独りでも、祈りは必ず届くものだ。力は祈りなり。そして・・・祈りは力なり。――故に。“信じて祈れ、其が信仰である”。・・・そら。かの二柱は、お前達の祈りを待っているぞ――』

 

それだけを告げ、静かにその声音は消え果てる。神の力は、確かなる祈りにて紡がれる。それ故に--自らのすべき事はおのずと垣間見える

 

「--うん!ありがとう、たけるさま!」

 

「きゃう!」

 

故に、活路を見出だすために・・・!その全てを懸けて。ぬいと田助は、魂を、生命を燃やす・・・!!

 

「まさかどさま!しらぬいー!きいてー!」

 

『――!』

 

『ワフッ・・・!』

 

「私は、まっくらな世界より!みんなとぽかぽかできる世界が、みんなと一緒にいられる世界が好き!だからふたりを!一生懸命応援する!」

 

その叫びもまた、祈りである。その願いは、確かな夢であった。暖かな陽射しのなかで過ごしたい。柔らかな光の中で遊びたい。健やかな未来が、明日が欲しい。それであるが故に、暗黒に閉ざされた世界を否定する。子供達の無垢なる願いにして祈り

 

「だから・・・勝って!ぬいも、田助も、泣かないから!一生懸命応援するから!だから、だから・・・」

 

【貴様も、我を否定するか――ッ】

 

その憎悪が向けられる刹那、その動作は一瞬ながら停止する。闇の理を、闇の到来を今を生きる者達にはっきりと否定されたがゆえの僅かなロジックエラー。強大きわまりないその機器が起こした、微かな動作不良。――その隙こそが、致命的な隙となった

 

【!!!?】

 

地上より、遥か彼方を目掛けて飛来した『勾玉』が、大怨霊の眉間を巻き付き縛る。それは紛れもなき三種の神器であり、紛れもなき助力と助勢であった

 

『さぁ、決めるのだ慈母、新皇。子の祈りを無下にするな。こやつの動きは、吾が止める』

 

【オォ、オオッ――このような、このような・・・ッ!】

 

現在を生きる者の祈りを託されし神、闇の到来を否定されし怨霊。どちらが優勢なのか、勝利を掴むべきなのかは明白であった。神のみでは覇を掴む事はできぬ。神は人と共に在る存在である。それであるが故に――

 

『ワフッ!!ワォオォオォオォオーン!!!』

 

祈りは力なり。力は祈りなり。その子供の力を受け取った神に敗北などは有り得ない--!アマテラスがその身の力の具現である『鏡』を力の限りに空へと投げ付け、今在る天空の更に上にて鎮座せしめる。そして渾身の雄叫びにて、秘められた力の全てを解放する

 

【グオォオォアァアァアァ!!!】

 

それと同時に現れ、雲を引き裂くは『光明』。犇めきぶつかり合っていた太陽が今、渾身の祈りにて鏡を通じ、闇の全てを吹き晴らす神通力となりてあまねく全てを照らしたもうたのだ

 

これこそ、対闇宝具『光明・天照坐皇大御神』。あらゆる闇と邪気を祓い、打ち消し、空と世に太陽を昇らせし究極の昇陽にして太陽神の力の顕現である。闇を吹き晴らし、完全に無防備となる大怨霊。太陽にとって闇が反存在であるように、闇にとっても太陽は反存在であるが故に。その宝具は致命的な痛打と成りうるのだ

 

『ワフッ!ワン!!』

 

止めを。そう促し、将門公は『剣』を取り出す。それはアマテラスより返還された『将門宝剣』。正しく祈りを受け、正しく顕現を果たす威光と威厳を束ねた一撃と一閃を放ちし至高の調伏

 

『――何者にも、我が子らの紡ぎし未来と明日を否定することは赦さず。日ノ本の未来は、其処に生きる総ての者の手中にあるが故に』

 

 

自らの神威と霊威を総結集させ、天に届く旭光と共に放つ空前絶後にして万物調伏の一刀。その威力は日ノ本の魔力を総て束ね、同時に現在人口総数を直接変換したものとなり、怨霊悪霊には威力が更に跳ね上がる。この世に蔓延る魑魅魍魎、悪霊、悪鬼羅刹を消滅させ、輝かしく、穢れなき明日を守護せしめるその在り方の具現

 

 

この一撃を受けた霊は強制的に調伏され、怨みと祟りを残さず消え去る。迷える霊への最後の救いにして慈悲。例えそれは、自らの怨霊であろうとも変わらない。物言わぬ機械ではなく、己が半身たる大怨霊を取り込んだが故に、最早この一刀から逃れることは叶わない

 

【認めぬ!赦さぬ!我が身、我が身はけしてこの日ノ本全てを赦さぬ!呪いよ、呪詛よ、この地に満ちよ!あまねく全てよ、闇に堕ち果て――】

 

『堕ちるのは貴様(われ)の妄執のみである。――消え失せるが良し、我が怨念。かの者らが望みし物は闇に非ず。希望に満ちた、曙光の世界に他ならぬ。ならば我は――その路を、切り拓く者とならん』

 

三種の神器を結集し、その全てに決着と終焉を告げる一刀が厳かに振るわれる。日本列島と同じ刃渡りを持つ、その刃を立ち上らせる宝具。その銘は――

 

将門司刀(まさかどしとう)――新皇顕現(しんのうけんげん)

 

その、日ノ本を平定するその一撃を結びとし・・・

 

【ォアァアァアァ、ァアァアォオオォォオオォ――――――】

 

残骸、怨霊の存在は――完膚なきまでに消え去る。闇は祓われ、その確かなる輝きが空を満たし、真なる青空と太陽が顔を出す

 

「わぁーい!!ぽかぽか!やった!やったぁー!!」

 

「だぅー!きゃいー!!」

 

はしゃぎ、喜び、歓喜する二人を穏やかに見守りながら、慈母たるアマテラスに言葉をかける

 

『――天晴れ、日本晴れ也。慈母よ。この戦いを決定付ける名乗りをあげるべし』

 

『ワフッ!』

 

その総ての締めくくりを現す、一件落着の咆哮を、日ノ本全てに響き渡らんが勢いにて放つ

 

『ガウッ!!ワォオォオォオォオーン!!』

 

その咆哮は勝ち名乗り。この雄叫びを以て――光と闇を巡る戦いは、日ノ本を脅かす戦いは・・・決着を迎えるのであった――

 




そして、戦いを終えた者達を襲うものがある

『ワフッ--!?』

『--道理である』

「わ、わ、わぁ--!?」

「きゃいー!」

遥か天空にての落下。その果てに、その下に落ちていく。倒したことにより力場は喪われ、ただ落下を残すのみとなったのだ

「しらぬいー!まさかどさまー!」

『ワフッ!ワン!ワフッ!』

必殺の空中犬かきにてやっとこさ田助とぬいを回収するアマテラス。不動のまま腕組みで落下する将門公。この高さでは、落ちれば只では済むまい。が--

『--最後まで気を抜いてはならんと言うに。締まらぬぞ、それではな』

皆を柔らかく、美しき体躯が受け止める。それらは美しき身であり、巨大な白鳥であった

「わぁ・・・!?」

『ワッフ・・・』

『驚いたか?だがまぁ、この程度は大目に見よ。俗に言う・・・あふたぁさぁびす、というやつだ』

『--感謝に堪えぬ。誉れも高き、日ノ本の大英雄よ』

その麗しき、巨大な鳥。日ノ本の大空を優雅に飛翔する、その化身

それこそは--

『--見るが良い。この眼下に広がる世界こそが・・・我等が生まれ、そなたらが育ち行く・・・『日ノ本』であるのだ』

「わぁあぁ・・・!」

「きゃーう!」

ヤマトタケルノミコトが変化せし・・・美麗なる、白鳥であったのだ--

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