人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

413 / 2536
エピローグとなります!長いので一括ではなく、キャラサイドごとに区切らせていただきます


長い長い戦い、お付き合いありがとうございました!どうか最後まで、よろしくお願いいたします!


終幕・壱 さいごのさてい

全ての戦い、全ての決戦、そして──全ての研鑽を終え、遂に平穏に辿り着いた日ノ本。本来の活気と平穏を、天下の泰平をついに取り戻す

 

 

最早蔓延る怪物はおらず、暗雲、血染めの月も最早在らず。ただ、平和と平穏を取り戻すことができた安心と安寧こそが日ノ本の地へと満ちる。それらは誰もが望んでいた宝物、誰もが望んでいた未来、誰もが望んでいた明日だ。皆が奮闘し、一致団結し、立ち向かい、挑み、そして至った世界の結末に他ならない

 

民は神と全てに祈りを捧げ、英雄達は役目を終え帰還していく。日ノ本にて奮闘し、戦い、そして護りきった魂達。その顔には、穏やかな達成の爽やかさを称え、遥かなる座へと帰還していく

 

その平穏なる街の最中にて、民達は城を含めた破損、損壊の町を復興──する筈であったのだが。それらは町に帰ってきた者達の予想を大きく超越する形となり目に飛び込んでくることになる

 

怪異が蔓延った後だと言うのに、どの家屋にも損壊と倒壊が見られない。平和であった最中と同じ・・・いや、更に言えば平和であった以上に完璧に補修と補強、そして改築が施されている。火事、地震、それらにも容易く負けはせぬような徹底的な改築・・・それらが例外なく行われていたのだ。民達が帰ってくる間に

 

城もまた、例外ではない。厭離穢土城と成り果てた土気城、真っ二つと成り果てた廃城も、何故か、真っ二つとなる前以上にきらびやかな存在へと変化している。黄金を惜しみ無く使われ、金を贅沢に振る舞い、破壊される前よりも絢爛に。御払いを終わらせより雄々しく、より輝かしく、よりゴージャスに城が生まれ変わっている。さながらそれは一夜にて立てられた安土城がごとき衝撃夢か、自分達は夢を見ていたのだろうか?そんな錯覚にすら陥り首を捻る民達を、御殿の屋根にて見据える絢爛なる豪奢王が一人。その紅き眼にて晴れ渡る空と土気の城を見定めている

 

「我ながら完璧な戦後復興よ。天守閣に在りながら、国を荒らすばかりが能の殿や首魁とは存在の格と豪気さが遥か隔たっていることを再び証明してしまったか。ふははははは!御大尽の戦い、御大尽の振る舞いとはこう言うものよ!」

 

その様相を作り上げたのは当然、ギルガメッシュである。着物に身を包み全てを手にせし黄金の王。所持せしは無限、使え切れぬ財にして全てを納めし蔵。それを解放し、勝敗が決した瞬間に復旧を財の力にて瞬時に終わらせたのだ。損壊させ、崩壊するものが常ならば。それを甦らせ復興させるのもまた常。今回の戦いは民草が勝ち取った勝利でもある。神頼みというのが些かイシュタルを思い出し癪ではあるがそれはそれ。勝者には報酬が与えられるのが常である。義理人情が根付くこの時代にて必要なのは衣食住と考えた二人は、直接的な財ではなく復興という形でその蔵を解放したのだ

 

土気城も同じく。見るも無惨に破壊されはしたが、勝利に繋がったのならば無惨に打ち捨てさせるわけにもいかない。仮にもゴージャス御殿が居を構える場なのだ。象徴があのようなザマでは客足が遠退くというもの。自分達が不在の際の店の運用を任せ、君臨するものの格の違いというものを見せつける、という意味でもついでに補修を終わらせておいた。時空歪曲、時間加速、自動建築の宝具を応用した一時間城である

 

──これで、民の皆様を支える家屋は元通り。ゴージャス、跡を濁さず。その徹底ぶり、そして妥協の無さ。本当に・・・流石です!流石、ワタシが何よりも敬愛する英雄王!凄いです!まさに、その威光に並ぶものなし、ですね!

 

その仕事の迅速さと方針の徹底さに目を輝かせ王を見つめる白金姫エア。自らが王の振る舞いを垣間見せれば、至高の憧憬と賛美が自らに注がれる。その様が愉快にて、心地好い。当然の事を行う度に、偉業を成したかのように己を賛美する無垢にて敬虔なる魂の頭を満足げに撫でながら王は高笑いを途絶えさせぬ。この澱みなき賛辞、澱みなき賛美が在るのならば。如何なる雑事、出費など痛打にも疼痛にもならぬ。いくらでも、我が威光と財の加護を与えてやろうと言うものだ

 

「ふふはははははははは!!褒めよ褒めよ、我を愉快にさせよ!我の気分は自然の流れが如くよ!世界に恵みをもたらさんとするならば!我の傍に在り続けろよ、エア!」

 

その敬愛、その憧憬。その敬虔。それこそが自らがゴージャスたる所以。その至宝がある限り、我に慢心、油断、怠慢は無縁にして無用。それを贈りながら全く自覚のない姫の声音を聞き、満足げに笑う

 

──はいっ!偉大なる王!ずっとお傍に!

 

その解りきっていながらも、揺るがぬ返答に、満面の笑みに。己の行動の徒労や疲労などを彼方に吹き飛ぶ感覚を確かに懐くゴージャスであったとさ

 

(ゴージャスプレイはある意味オンリーワンってね。そら、査定が待ってるよ。そろそろ行こうじゃないか!)

 

エアの肩に乗る美しき獣もまた、王を促す。すべてが終わった後の・・・『きびしいさてい』が待っているのだ

 

「うむ、良かろう!勇者どもの帰還、厳かに華やかに迎えてやろうではないか!」

 

変わらぬ三人の語らい。それを続けながら。王は王室へと足を運ぶのであったとさ

 

 

こともなし へいわをのぞむ けものかな

 

 

そして、これより紡がれるはそれぞれの閉幕。何よりも待ちわびし、平穏の平定である

 

 

「「・・・・・・」」

 

ゴージャス御殿の最上階にて、静かに正座をする二人の少女。二人の前に在りしは、虹色の帯と簪を差し、白金色の着物に身を包み、肩にフォウを乗せ、金色の絹がごとき髪をたなびかせる英雄姫ギルガシャナが眼前に構える。その穏やかな雰囲気と佇まいに安らぎを覚えながら。しかと無礼の無いように振る舞う

 

そう、これよりは『きびしいさてい』。行われしは、報奨と・・・反省である。静かな雰囲気の中、エアは二人に口を開く

 

「二人とも、まずは本当にお疲れ様でした。並みいる強豪、襲い来る怪異。それらを全て討ち果たし、こうして再会を果たし労いが行える事・・・心から喜ばしく思います。本当に、本当に・・・善く、頑張りました。貴女達が生きていること。ひいては貴女達がきちんと此処に戻ってきてくれたこと。それこそが、何にも勝る偉業にて・・・何にもかけがえのない成果であると信じております」

 

その暖かな言葉に、自然と二人は頭を下げ、平伏を行う。その言霊に宿る労いといたわりに、今までの疲労や困憊が消え去るかのようだ。言葉に、所作に、それら全てに癒しが、安らぎが。柔らかな肯定が満ちる。その在り方こそ、彼女が王と共に在るが由縁なのだと・・・心で感じとる

 

・・・だからこそ、リッカは・・・次に訪れる処罰から、言葉から。目を逸らす訳にはいかなかったのである

 

「・・・マスター。貴女の戦いの中に、一つ・・・言わなければならないことがあるのは、御理解いただけますね?」

 

「はい、姫様。私は・・・」

 

顔を上げ、告げるその言葉を優しく制するエア。ゆっくりとリッカを落ち着かせ、告げていく

 

「母の為、母の尊厳の為に猛り、振るい、戦ったことは大変素晴らしいです。愛がなくば、堕ちる程の深淵の憎しみは見えぬもの。ワタシは、貴女の感情の深さと激しさ、そして優しさに心から敬意を表させていただきたいと思います」

 

「──え、でも、私は・・・」

 

「悪い、不味いとするなら・・・キャスター・リンボさんに『好きにしていい』と言った事。『憎しみに堕ち果て』る事を良しとした事。──自らの価値と存在を軽んじた事です」

 

ピシャリ、と。はっきりと。エアはリッカに告げる。何を告げるべきか、『罪の在処と罰の重さ』を告げる

 

「貴女の身は、最早貴女だけのものではありません。カルデアの皆様の大切な仲間であり、家族であり、同胞であり・・・『王の財』であるのです。そんな貴女が敵を討つためとは言え、皆様の想いを振り切って自らの憎悪に堕ち果てる。それは・・・『貴女を想う全ての方への裏切り』となってしまうのです」

 

「・・・・・・」

 

憎しみに堕ち果てる。誰も手の届かない場所に堕ちてしまう。王の財・・・一人の人間として、自らを軽んじる真似を容認するわけにはいかない

 

「だからこそ、貴女に告げます。マスター、藤丸リッカ。・・・自らの存在を、自らが貶め、軽んじてはいけません。貴女の変わりなど何処にもいない。貴女を犠牲にした勝利は、誰も笑顔を浮かべない。貴女の存在を失ったワタシ達は・・・無限の喪失に、哀しみに未来永劫苛まれる事になる」

 

それは、絆を深める者が多ければ多いほど尚更に強く、残酷に別離の哀しみをもたらす。だからこそ、此処で告げる。痛感してもらう。自らの重さを、自らの大切さを

 

「だからこそ、ワタシは貴女にお願いいたします。・・・あんな戦い方は、もう・・・行わないでください。かけがえのない貴女がいなくなってしまったら。・・・ワタシは、二度と。『マスター』と呼ぶことが出来なくなってしまうではないですか・・・」

 

その言葉。責め立てるではなく、糾弾されるでもない、純粋な心配と自戒。その優しくも、毅然とした物言いに、リッカは何も告げられず、目を滲ませる

 

「・・・・・・はい・・・・・・二度と、二度と・・・自分を軽んじたり・・・しません・・・・・・」

 

顔を上げられず、静かに嗚咽を漏らす。その自らを心から重んじた言葉に、包み込むような優しさに。自らのした愚行の重さを、何よりも痛感する

 

「──はい。信じます。そして・・・罰もいくつか。反省文、レポート五枚を王に提出する事。カルデアの皆に、きちんと対面しお話をして『フォウ君スタンプ』を貰うこと。そして・・・一週間、じゃんぬさんのスイーツの禁止。再発を防ぐための処罰、次に活かすための処置。・・・受けて、もらえますか?」

 

「・・・はい、甘んじて。本当にありがとう・・・ちゃんと叱られるって・・・ちゃんと怒られるって・・・本当に嬉しくて、暖かい・・・」

 

どんな傷よりも、どんな刃よりも届く痛み。この痛みを忘れないための処置を・・・リッカは甘んじて受け止める

 

「リッカさん・・・ありがとうございます。お姫様。打ち首、獄門、叱咤ではなく・・・穏やかな諭し、尊重の自戒。感服いたしました」

 

押さえ付けるでなく、怒鳴り付けるでなく。一つ一つ、情と心に問い掛ける言霊。これは覿面だ。逆らえる筈がない。誰が──心から自らを案じてくれる言葉を拒めるというのだろう。その、親身に迫り、他者を慈しむ言葉に感銘を示す武蔵

 

「武蔵さん。本当にお疲れ様でした。その人生の答え、そしてマスターの相棒としての奮闘・・・掛け値なしに、素晴らしいものだと信じております」

 

武蔵にも等しく言葉をかける。手は出さなかったとは言え、瞳は全てを見ていた、目の当たりにしていたのだ。彼女の輝きを、彼女の敢闘を。二人の間に、優劣はない。だからこそ──

 

「ですが、マスターの呼び掛けがなければ無限の交錯に浸り続けていた・・・と言うのは危ない判断でした。性質が極まっていたとはいえ、単独では敗北、引き分けと同義。だからこそ・・・他者の声を、傍らに在る者の大切さ・・・かけがえのなさを忘れないでくださいね」

 

「──はっ。私の生、これより王様、姫様、そして・・・リッカさんの為に振るいたく思います」

 

恭しく、礼を尽くす。自らの成果を、矜持を尊重し諌めてくださった彼女の言葉を深く受け止める

 

「はい。──では、辛辣な物言いは此処まで。手落ちや問題があろうと、その成し遂げし功績が無くなることはありません。では──」

 

立ち上がり、自らの友達と目線を交わし、静かに黄金の波紋を展開する。その中より、奮闘し、敢闘し、健闘した二人の成果を祝う現物を取り出す

 

「英霊剣豪、完全討伐。大百足の退治。妖術師の打倒、大怨霊の調伏。・・・空位、雷位の到達。その功績と偉業を、心から祝福し。王の了承を得、フォウの肉球スタンプを認可の証とし──」

 

取り出したるは、それ自体が黄金に輝きたる箱。その輝きと煌めきは、部屋の全てを輝かせ、武蔵ちゃんの目を眩ませるに余りある輝き。それらは無事に生還を果たし、無事に旅路を駆け抜けた二人に与えられる、最後の報酬──

 

「「わぁあ──!!」」

 

「マスター、500両。武蔵さん、500両・・・合計、千両。──どうか、この旅路の総決算として、お受け取りください」

 

マリー、ネフェルタリ、『式』、[アルクェイド]。それら全ての舞と豪華絢爛の中、渡されるそれは──

 

「「──やったぁ──!!!」」

 

輝かんばかりの大判。煌めくがごとき財宝。それらは正しく、二人への祝儀と祝福の証--千両箱が与えられたのであった・・・──




「・・・ふぅ・・・」

《御苦労であった、エア。これで再発は防がれようよ。己の生命に価値を見出ださぬものの生は、見ていて面白いものではないからな》

「・・・はい。かなり厳しい罰を課してしまいましたが・・・必ずや乗り越えてくださると信じ、同時に想いが伝わってくださると信じております。何故なら・・・リッカちゃんは王のマスター。唯一無二のかけがえのないマスターなのですから・・・」

「でも、憧れてしまうわ。友達二人の旅なんてとっても素敵!ねぇエア、私たちもやってみない?フランスの二人旅!きっと素敵よ、楽しいわ!だって私が楽しいと想うのだもの!」

「エジプトも良いですよ。ラーメス、モーセもきっと喜んでくださいます」

『あら、なら私とも・・・空の旅、彼岸を歩いてみる?涙が出るほど綺麗で、きっと忘れられないわ』

[そろそろ星のみではつまらなかろう?お前が望むならば、我が城に招くのもやぶさかではないが?]

「みんな・・・うん!いつか、絶対にしようね。必ず!」

(・・・退屈とは無縁そうだね、ボクたちの姫様は)

《フッ、無論だ。さて、フォウよ。手配をするぞ。そのわざとらしげな可愛らしさを存分にアピールしてやるがいい》

(手配?)

《決まっていよう--城を巻き込み、帰還する前の宴の用意だ!あの蛇姫に打電せよ!城を貸しきってくれるわ!》

(まだ散財するのかよオマエ--!?)


・・・そして、報奨を手に入れた二人は、その財を惜しみ無く使う

「たまには、物欲を忘れるくらいできるのですよ?私だって!」

「えぇー?本当にござるかぁー?」

「本当ですぅー!ほらほら!行きますよリッカさん!」

二人は話し合い、協力し。共に合意し・・・

土気城

「まぁっ・・・!そんな、こんなに松平家に寄進を・・・!?」

武蔵の五百両は、これより更なる統治の困難を乗りきれるように。活性化するように姫様に渡し

「欲得も、煩悩も・・・あなたの無事には敵いません。どうかお受取りください。あなたの無事と、健勝を祝って--」


「--好き!!!」


リッカと武蔵の輝きの前に倒れし清姫を見届けたあとは--

将門塚

「これで、よしと!」

「バッチリですね!リッカさん!」

リッカの五百両を、躊躇わず将門公の首塚の補修に。そして--


「「かんせーい!」」

そして・・・惚けた顔の『天照大神』を奉る、絢爛豪華な社を、王の財を借り受ける代金に注ぎ込み共に建築するのであった--

「財は消えてなくなれど、紡がれし縁と信仰は無くなりません!」

「私達がいなくなった後のこの世界を、どうか・・・」

「「見守って、くださいますように--」」

二人は、静かに。祈りを捧げたのであった--

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。