人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「御老人」

「--遅いわ。遅かりし我が運命。随分と・・・血化粧が濃いな」

「かたじけない。しかし、間に合ったようで何より」

「・・・--間に合った、などと。儂を見よ。最早、満足に剣も握れぬ。この身は老い、ただ死を待つのみだ。--此処が、別の舞台ならば。あるいは地獄であるならば・・・鬼の肉を食ろうてでも、立ち上がるものを・・・!」

「・・・」

「すまぬ、すまぬ・・・赦せ。赦してくれ・・・」

「案ずるな、御老人。つい今しがた、私は確かに『武蔵と立ち合った』。まことの二天一流がいかなるものかを見た」

「!」

「故に御老人、案ずるな。--新免武蔵は、我が前にて。零の地点に到達し申した」

「----------」

「・・・」

「--嗚呼。お前がそう云うのであれば、信じよう。武蔵は空の座へ至って、零を知った。そうなのだな。そう--なのだな。我が運命。佐々木小次郎」

「然り」

「--それは・・・良き、話だ。--儂の魂を鎮めるに相応しき・・・よき、話であるな----」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・さらば。新免武蔵。一度も見える事など、なきはずの。我が生涯、再興の宿敵である者達よ」

--さらば

???

【--死んだ、死んだ、死んだ。下総に集った刃の者共。これにて総てを死に果て申した。英霊剣豪七番勝負、これにて仕舞い。それにて--天下泰平、日本晴れ、などと・・・フゥウゥウ・・・】

その笑い、その陶酔を知っている

【・・・--様々な言葉はあります。様々な想いはあります。様々な無念はあります。だが今は、ですが今は、ただ一つだけ】

その言葉を、その結末を見つめる者は、ただ一つだけ、言葉を遺す

【実に、実に--見事な勝利でありましょうや。藤丸龍華。えぇ、えぇ。貴女が掴んだのならば、臓物を吐くような無念すらも、焼ききられる憤怒すらも心地いい】

故に--彼はただ消える。彼女の勝利を、汚しはすまいと

【また、御会いいたしましょう。貴女が貴女で有る限り。--私は、貴女をお慕いしておりまするが故に--】

その者は嘘偽りにまみれていれど、その情念のみは--狂おしいまでに真実であり

【さようなら、藤丸龍華。--心地好い時間でございました。必ずや、再会を御祈りさせていただきます--】

・・・人を想う、情念は尽きまじ--




終幕・黄金大尽・天下泰平--総て世は、事も無し

「ふっ──!!」

 

 

平和と平穏にたどり着き。活気に溢れる下総の最中。その穏やかな平安の中に、打ち響く硬質の音色が一つ。都市や都を離れた庵にて、その空と大地、空気を震わす怒濤の槌捌きが一つ

 

赤毛の青年、しかして中身は老成せしもの。その者、隠居隠匿とは無縁とばかりにひたすらに、ただ鉄を打つ。その様は、何者が垣間見たとしても神業の域にある腕前。されど──打ちしものは、刀に非ず

 

「──・・・ふう。よし、一丁上がり、と」

 

その見事なまでに修復果たされた鍋・・・、そして鍬。それらを冷やし、完成させ一息つくは・・・穢土の城を叩き斬った千子村正である。泰平となりし世界にて、里や庵にある生活用品を打ち付け直し、汗を拭う

 

「こいつで仕事は終わらせたか。なら、飯の頃合いってェもんだ」

 

手拭いで汗を拭き、膝を叩いて立ち上がる。予期もせぬ所で生き延びた手前、やることは読めているし解っている。また、いつ消滅するかは解らない。いつまで世界に在れるかどうかは、神ならざる身には解らない。だからこそ、今できること・・・鍛冶に全力を尽くし、今生きる人間の連中の助力のとっかかりくらいはこなすこと、やぶさかではない。もう刀は価値が低くなったと言うもんだ。人を殺すでなく、生かすために槌を振るうも悪くはないと言うものだろう。誰かを幸せにする事の手立て、手助けが出来るというんなら・・・サーヴァントという存在も、なるほど悪かねぇと笑みを村正は溢す。何せ──『鍛冶屋は人殺しの道具をつくらなけりゃならん』という取り決めは何処にも無いのだから

 

「村正殿。奥の山と河にて鮎と兎を取りたてた。皆で食べられよ」

 

庵を護り続け、奮闘し続けた胤舜殿の言葉に頷く。彼も召喚された身ではあるが、まだ消滅の気は見えないらしい。ならば最後まで、とこの庵に在り、少しでも何かを残し、槍を振るう事を決めたらしい。自分も人の事は言えやしないが、随分と世話焼きな事だ

 

「おう。ンなら、昼飯といくかい。胤舜殿は精進料理なんだよな。まったく求道ってぇのは果てしねぇ」

 

「ははははは!肉は無用、薙ぎが鈍る。酒は不用、突きが濁る!我が身に必要なのは槍の冴えのみ!いつか宿業を突き穿つ境地を召喚の最中にて掴みとるまで、精進あるのみだ!」

 

「・・・宿業、か」

 

思い返す。二本の失敗作であった刀。持ち主など不要とばかりにすべてを切り裂く跳ねっ返り。刀の領分を外れて総てをくらっちまう馬鹿。産み出したときはどうしたもんかと頭を悩ませたもんだが・・・それらは立派に主の役に立ち、この下総を救う手立てとなった。解らないものだ。妖刀が世を救い、神剣が未来を斬り拓くなんて事ぁ、大層な笑い話で・・・鍛冶屋としちゃあ、むず痒くなる想いである

 

「──元気でやりやがれよ、馬鹿ども。てめぇらを握る奴等なんぞ、もう二度と現れやしねぇんだからよ」

 

青空に。暗雲切り裂き広がりし天下泰平の空に──村正は、笑みを浮かべながら言霊を空に溶け込ませるのであった──

 

 

・・・そして、同時に。庵の屋根にて、静かに空を見上げる影があり。それもまた赤髪である、混血の少年。鼠色の装束に身を包みし・・・風魔小太郎である。彼は、とある人物を待っていた。悪辣なる者に壊され、その存在を歪められていた者の・・・再起の時を

 

「・・・──」

 

自分は、何を話すべきなのか。英霊に召し上げられ、最早真っ当な人ではなき者である自分に、今を生きる存在である彼女と会話することは・・・あるのだろうか。もしかすると、気まずい沈黙が関の山かも知れない。こう言うときに、マスターの社交性が羨ましく感じる。言葉があるなら、意思があるなら誰とでも。それは刃に意味がなく、対話を重んじる世にて生まれた確かな強さだからだ

 

「うぅん──ハロー・・・?」

 

「はい、こんにちは」

 

予想外の返答者に、危うく屋根からずり落ちかける小太郎。その傍には麗しきカラクリ、加藤段蔵が無表情でピースサインを行っている。その変化が読み取れぬ表情にて、小太郎が疑問を呈すまえに・・・

 

「自分はこの下総の観測の楔として、ゴージャス様に引き取られる事になり申した。此方としても、身体を余さず直していただいた恩に報いたいと思っていましたので、二つ返事にて了承にございまする。『上質な人形を労せず拾うとは、足を運んだ甲斐があったというものよ。我ながらコレクタースキルの完璧さに目眩がするぞ』と仰っておられました。段蔵を高く評価していただき光栄の至りでございまする。サンキューです」

 

「は、はぁ・・・」

 

その滑らかな言葉遣いに流されかけた小太郎は思い至る。そうだ、修復。記憶、記録の回路はどうなったのであろうか。かの王に限って、失敗や誤作動など有り得る筈はないと思うが・・・

 

「修復ですか。勿論お受けいたしました。完全復活でございまする。しかし、はて・・・?完璧に直していただいた結果の副作用と申されますか。実は私には、『物忘れ』という機能が搭載されておりまして」

 

「えっ!?」

 

「コタロー、コタロー殿・・・うーむ、思い出せませぬー」

 

そんな、そのような機能は聞いたことが・・・!?もしや新たなるリンボの質の悪い妨害機構か!リンボ殺すべし慈悲はない!と、ダークニンジャめいたニンジャソウルにナラクの闇を懐きかけたフマー=ニンジャに、アンブッシュめいて段蔵が笑う

 

「うふふっ。冗談ですよ。──『小太郎』」

 

その名前、その呼び方。──その柔らかな目線と視線、立ち振舞い。それらは小太郎の遥か過去、確かに在りし平穏を甦らせる言葉であった。

 

「私は、大丈夫です。あなたには、遥か過去の話ではありますが・・・私は貴方が貴方であるのなら・・・常に、共に在りますとも」

 

その穏やかな声音に・・・小太郎は王の仕事と処置の完遂を知る。かつて、触れ合った者。かつて、在った記憶。そして──これから紡がれる記憶

 

「これからも、よろしくお願いいたしまする。・・・最後まで、共に」

 

その言葉に、その彼女に。かつて告げていたように、かつて呼んでいたように。目を潤ませながら、小太郎は告げる

 

「はい。どうか、よろしくお願いいたします。──『母上』」

 

・・・ゴージャスなりし王は、確かに。一つの縁と絆を掬い上げ、また・・・救い上げていたのであった──

 

 

・・・そして、人の交流を・・・見据えるものが人ばかりとはけして限らない。その存在そのものを以て、確かに見守り、見届けるものがある

 

「ワンッ!」

 

リッカと武蔵が補修し、補強し打ち立てた社に、白き狼が走り・・・その領域に帰参する。口には・・・『黄金の杯』を加えており、それを同じく・・・黄金の甲冑に身を包んだ武者に手渡す

 

『──かの妖術師が振るい、触媒として使用していた杯・・・何故、この場に在りや?』

 

「ワフ、クーン」

 

それは、英雄王がしらぬいに渡し・・・譲渡せし物である。城の修復の際、それを見つけ当然のように回収した英雄王ではあったが・・・『わざとらしく』顔をしかめ、あっさりとしらぬいに渡したのである

 

『血腥く、穢れが溜まり、膿まみれのこのような器、我が蔵に入れるどころか見るのも穢らわしい。酒の味を血錆の味に染め上げる欠陥品など要らぬわ。欲しければくれてやる。貴様らは名の知れた神なのであろう?次に我等が此処に訪れる日まで、その穢らわしい器を浄めておけ。それまでその器は好きに使うがよい。──何、心配するな。願いを叶える杯などは有り余っている。たかが一つや二つ、くれてやった所で我等は微塵も揺らがぬわ』

 

そんな言葉と共に・・・しらぬいへとこの器は譲渡されたのだ。そんな事を言っていたが、王の真意などしらぬいはお見通しである。背後の姫とウィンクと笑顔を交わし合い、意気揚々と帰ってきたのである

 

この聖杯があれば、自分達の現界はほぼ問題なく保たれる。この夢と狭間の世界、確かに存在せし世界。見守り、また害あらば立ち向かうことが可能になる。言うなればかの王は、地方の基地の設立に此を使ったのだ。自分達を、この世界の守護者として用立てたのだ。自らの財を用立て、労せず警備部隊を取り立てる。その無駄の無い合理的な判断に、しらぬいはふるふると身体を震わせる

 

『──未だ、真なる脅威の姿は見せまじ。ならば、この世を暫し見守るもまた、顕現せし者の勤めであるならば。この身、引き続き顕すに異論なし』

 

「ワフ!」

 

『──共に在ると応えてくれるか、慈母』

 

「ワン!」

 

『・・・我、万の味方を得たり。ならば常世、この身を以て見守らん』

 

その期待に応え、その願いに応え。将門公、そしてしらぬい・・・『アマテラス』は、社を居住とし、引き続き現界を保ち、日ノ本を見守る事を決意する

 

しらぬいは引き続き、ぬいや田助と『あまてらす』を行い、世の為人の為を以てその力を振るい続ける

 

平将門公は、リッカと武蔵が建てたこの、神田明神にも劣らぬほどに巨大化した『天照・新皇殿』を、そして王より預かりし聖杯を守護する為に鎮座する

 

人の世を護るため、人を助けるために。この数奇な召喚は始まったばかり。そしてそれらの終わりは、何者にも読めぬ未来にまで続くのである──

 

 

──・・・そして。この天下泰平を、豪華絢爛に彩る最後の締め括り。全員の・・・土気の城下町の総てを巻き込んだ、最後の大宴が幕を開けるのだ──

 

──豪奢なり その旅立ちすら 彩りし 別れの涙は 笑顔に変ず──

 

 

「さぁっさぁ!皆様お立ち会い!これより行われますは!城も城下も巻き込んだ大宴!呑めや歌えの大騒ぎ!遠いんだったら音に聞き!近くば寄って目にも見よ!ってなぁ!おれの摩訶不思議な筆捌き!ちょいっと見てくだされば幸いだぁ!そぉら、騒いだ騒いだぁ!」

 

大判小判、そして、酒や食事が無限に振る舞われ。お栄の手により桜が咲き乱れる驚天動地の大宴。猫も杓子も踊り出す大層な催し。黄金の波紋が空を満たし。極上の酒や食料、紙幣などが無制限に降り注ぐ。それらは気前よく、出し惜しみなく老若男女に振る舞われる。此度は無礼講、天地も引っくり返る大騒ぎである。御大尽により振る舞われし黄金の花吹雪、そして・・・

 

「ワフッ!!」

 

しらぬい・・・アマテラスもお栄の傍にて神通力を振るう。華が咲き、水がほとばしり風が吹き、その下総を華やかに彩り続ける

 

人々は知る。自らの所作が正しく祈りを告げれば、未来は必ずより良き場所へと導かれるのだと

 

人々は知る。大切な者達と過ごす平和な日々こそが、かけがえのないものであると

 

人々は知る。自らを見守り、見定め、見つめてくださる神がいると

 

人々は知る。──世の中には、天下に並ぶものなき気前の良さを持つものがいると。他者に振る舞い余りある、空前絶後の御大尽がいると

 

 

「ふふははははははははは!!崇めよ、讃えよ!辺境の島国には収まらぬ輝き!それがこの天下泰平御大尽王!ギルガメッシュである!!涙を流し、全霊の感嘆と憧憬にて!!この豪奢なる宴を讃えるがいい!!!ふふははははははははは!!はははははははははは──!!!」

 

土気の城、天守閣の頂上にて腕を組み、城下総てを見下ろし高笑いを響かせる楽園の王、ギルガメッシュ。一人一人の大好物と世帯数に合わせた食料と飲み物、怪我をしないように選別し振る舞うエアを傍らに、至尊の獣を肩に。その黄金の威光と哄笑を響かせる

 

人々は忘れないだろう。この高笑いを。人々は忘れないだろう。この大盤振る舞いを。人々は、けして忘れないだろう。あらゆる幸福と快楽を満たし尽くす、この黄金の王を

 

そして──エアとフォウも、その光景を忘れないだろう。──民の全てが、皆一様に膝を折り、余すことなく頭を垂れ──

 

──皆様。どうか・・・素敵な日々を。幸福に満ち足りた日々をお楽しみください。ワタシも、王も。あなたたちの総てを目の当たりにし、心から愉悦を堪能する者です──

 

(義理人情。人の信仰──確かに見せてもらったよ)

 

王に、感謝と歓声の祈りを捧げる光景を。──事此処に至り。『黄金御大尽』の言葉と光景は。夢の狭間の世界にて未来永劫語られるものとなったのである──

 

そして、城には・・・皆がいる。共に戦った皆が、思い思いの宴を楽しんでいる

 

 

「はい、リッカ様♥あーん♥あ~~ん♥」

 

「まま、待って!大丈夫です畏れ多いです!立場が、立場が・・・!首が飛んだりしないこれ!?」

 

リッカは清姫にぴったりと寄り添われ、身動きとれず共にご飯を食べている

 

「わぁーい!鮎ゥ!!肉に味噌汁一杯食べれておいしぃー!生きてて良かったぁー!」

 

武蔵は、村正の作ったご飯を、満面の笑みにて食らう。庵で食べたかった物を、存分に口にする

 

「へぇ・・・こりゃあ最高じゃあねぇか。どいつもこいつも希代の姫様、絶世の美女に違ぇねぇ。其処の黒髪さん、名前教えてくれやしねぇかい」

 

村正は、ぷれしゃすの豪華絢爛な美女達の極上の舞を目の当たりにしながら絶世の美酒を飲み続ける

 

「あーもう!私はなんで此方なんでしょう!?私だって踊ったらスゴいんですよーだ!」

 

おたまは右へ左へてんてこまいの大労働。あちらやこちらへ食べ物を運べや頼まれやの大騒ぎにて目を回す

 

「はははははははははは!では、我が術技をお見せしよう!とくとみよ!!」

 

宝蔵院胤舜は見世物として槍の演舞。後にリッカと最後の槍の冴えを堪能し合う

 

「母上。身体は問題ありませんか?」

 

「ふふっ。王に怒られますよ?小太郎」

 

小太郎、段蔵は静かに寄り添い、共に互いを思い遣りながら天守閣にて風景を眺める

 

そして──

 

『・・・幼児よ、よくぞ奮闘した。その気概、その意志。誇りに思う』

 

将門公の膝の上にて、舞を見るぬい、田助。その表情は・・・とびきりの笑顔である

 

「うん!これからも頑張る!しらぬいやみんなといっしょに!いつか・・・」

 

『・・・』

 

「いつか!絵がじょうずなおさむらいさまになる!にほんをまわって、みんなを助けるおさむらいさまになる!かみさまがいる、このにほんを護る!」

 

「きゃーう!」

 

その幼く、強い決意を。喧騒にて聞き及び──

 

『──良き決心なり。その身、その未来に、永劫の祝福は在る。揺るぎなく進むべし』

 

「うん!ととさま、かかさまを大事にして、生きていくよ!ぬいも、田助も・・・みんなに会えて!本当に良かった!」

 

──日ノ本を守護せし、平定せしもの。平将門は・・・穏やかな笑みを浮かべ

 

『──ぬいよ、田助よ。総ての民よ。──健やかに、日々を生きるべし』

 

日ノ本の世界の、旭の輝きの健在を確信するのであった──

 




そして・・・全てが片が付き。カルデアの帰還を残すのみとなった、武蔵・・・そしてリッカ。その最後の別れを粛々と迎えるかと言えば・・・否である

「「んー!うまーい!!」」

二人は、二人きりでうどんを食べながら空を眺めていた。武蔵は特盛きつねうどん。リッカはうどんに豚肉と卵を加えた、『塩豚温玉ぶっかけ』を啜りながら、青空を見る

ようやく下総で食すことが出来た・・・初のうどんに舌鼓を打ちながら、二人で・・・なんとなしに、所感を告げる

「綺麗な空!日本晴れ!其処で啜るうどんのなんと美味しいことかッ!」

「そだねぇ~。生きてるだけで最高だねぇ~」

「ですよね!・・・私、本音を申しますとですね?本当は・・・リッカさんや皆がいなかったら、誰も助けず、誰も救わず。きままにふらふらとさ迷ったままだと思うのです」

うどんを啜る手を止めながら。澄んだ空を見上げながら。自らを振り返る

「リッカさんや、皆が・・・皆がいてくれたから。自分は自分として、最後まで戦い抜けた。--私は人でなしで事なかれ主義。風の向くまま気の向くまま・・・だけど。リッカさんと一緒に、こうして最後まで戦い抜けた事は。戦い抜いた自分は・・・好きよ。大好き」

「・・・」

「だって--『貴女と戦う私は、間違いなく--弱きを助け、強きを挫く正義の剣士』だったのだもの。黒く輝く龍の隣で、懸命に戦う一人の女として・・・眩しくて尊いものを、護るために戦って」

だからこそ。その全てが嬉しい。だからこそ、その全てがいとおしい

「宿命の剣士とも戦って。御機嫌王様に御祭りをしてもらって・・・もう、何も。やり残しも、悔いもありません。私は、此処に来て・・・最後まで、全力で。--だから・・・だからね?」

その横顔を、見つめるリッカに。武蔵は告げる

「私は--やりきったよ。ありがとう。藤丸龍華。私の総てを見届けてくれた、唯一人の親友」

その言葉に、リッカは静かに頷く。その言葉に込められた感謝と、思いを受け取り・・・そして、告げる

「--うどん、伸びちゃうよ。武蔵ちゃん」

「ふぁっ!?ダメダメダメ!!せっかく特盛にしたんですから!!」

ずるずる、と慌ててすすり上げる武蔵ちゃん。その様子を見て、リッカも倣い、すすり上げる

そう、もうやり残しは無い。帰るだけ。そう--


「「--ご馳走さまでした!」」

ただの一つを、除いては

「--ふふっ、では。リッカさん?」

退去が始まる身体。いつ帰還するとも知れぬ中・・・にんまりと満面の笑みで『明神切』の鯉口を、チリチリと鳴らす武蔵

「--いいよぉ?カルデアに帰るまでの、短い間だけどね?」

【アンリマユ】を構え、その誘いに答えるリッカ

・・・--そう。これより互いに『位』へと辿り着きし者。空と雷、共に抱きしもの

なればこそ--今まで叶わなかった、『真剣勝負』を・・・僅かな時間であれ、行う事に異論はない

「リッカさんの槍が何処まで高まったか、見せてもらいます!今まで避けてしまっていた分、全身全霊でお相手つかまつる!!」

「何処かの帝国軍人の言葉を借りるなら・・・--『位を得た貴女の始まる瞬間を見せてもらうよ』、武蔵ちゃん!!」

それらは時間にして、五分、三分にも満たない時間。だが--零の剣、あらゆる総てを駆け抜ける槍には、なんの問題もない

立ち去る前に、消え去る前に--互いに笑顔で、友情と絆を。そして・・・刃を交わし合う!

「いざ--!!」

二つの剣にて、かけがえのない親友に挑む武蔵

【尋常に--!!】

おぞましき槍にて、獰猛に受け止めるリッカ

この二人の、誰も目の当たりにせぬ極限のぶつかり合いをもって--

【「勝負----!!!」】

二人の、研鑽の旅。--下総における旅路は、幕を閉じる

迅雷がごとき閃光。澄み渡る剣の音が響き渡る、下総の一角

--英霊剣豪、七番勝負--

「伊舎那!!大!天!象--!!!」

【無間穿槍!!天魔鑒通--!!!!】

此にて幕引き。その結末にて--

『---フ』

『ワフンッ!』

日ノ本は、変わらず。普遍に健在なり--

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