ノットプリティードラゴン「人聞きの悪いことを言わないでくれる!?もっと長くするために!思案しているんですー!」
キボーノーハナー「はいはい、図書室ではしゃがないの。ギルに見せるのだから、文字もしっかりね。あ、そこの言い回しはきちんとストレートがいいわね。捻らずに告げた方がいいわ」
「はーい。マシュ、喉乾いたナー。おやつほしいなー」
「はい、先輩!持ってきますね!任せてください!ナンバーワンサーヴァントの私に!ナンバーワンサーヴァントの私に!」
「まだ言うのかなすびぃ!!」
「騒がないの。ほら、あと二枚なんだから集中なさい」
「はーい。いつもありがとね、オルガマリー」
「・・・まぁ、これくらいは・・・ね?友達、バディ?として・・・」
「うん!これからも」
「お持ちしましたー!先輩!誉めてください!三個!金平糖をくださっても構いませんよ!」
「空気読まなきゃダメだよなすびぃ!ありがとう!」
「ええっ!?」
「ふふっ・・・」
漂う加齢臭?「――いいナー・・・」
召喚、改築を終えて。再び平穏な日々が訪れしカルデア。それぞれが日々の安寧を甘受し、思い思いの時間を過ごす。戦いを望むものはシミュレーターに。語らいを望むものは互いに大切な存在と共に過ごし、自らを高めることを望むものは個室や施設にて思うままに振る舞う。楽園に仇なす、誰かを明確に害する事がなければ、大抵の事象は寛容され許される。それが楽園であり、それが招かれしものへの歓待であり。それが世に生きるものとしての当然の義務や責任であるからだ。自由とは、万全の環境にて輝くものであるがゆえに
サーヴァント、人間の分け隔てなく。等しく日々を過ごす権利を謳歌している。それらが赦されているがゆえに。完全なる自由が容認される絆が紡がれているがゆえに。王や神、隔絶している立場の者への敬意を忘れなければ・・・英雄王と言う頂点を旨として全てが平等であるがゆえに。明確な争いなどは起きはしないのである
・・・そして、その平穏と安寧に満ち足りながらも。そんな中でももう少しだけ、もう少しだけ待遇の改善を望むような者がほぼ一人、存在する
それは蜘蛛がごとき者。自らは動かず、罠にかかり破滅させる、悪行を良しとするもの。楽園にて飼う、唯一無二の劇薬にして癌細胞めいた存在。善き人々を護るため呼び寄せ、そして奮闘させし・・・まだ真名すら明かしておらぬある意味楽園ののけもの
眩しい笑顔に満ち溢れ、心から幸福に満ちた生活を歯軋りして眺めながら、1+1の計算より容易く導かれる、騒動を起こした際の自らの処遇を鑑みて無念と共に溜め息を流すもの。楽園の磐石さを誰よりも称賛しながら、その磐石さに挑みたいと願いつつ・・・それを果たせぬ者
此度における焦点は、その者へと当てられる。計算高き謎のアーチャー。その悪辣にて狡猾な思考回路を余すことなく受け取った生徒との、叶わぬ対談・・・それが、楽園の一室にて静かにやるせなく木霊するのである――
わるだくみ のりこえつぶす けものかな
「やぁオルガマリー君!待っていたよ!私の事を敬愛と親しみを込めて『パパ』と呼んでくれても――」
総てを言い切る前に、サイレンサーを起動したオルガマリーのオレンジ色に輝く愛銃『アニムスフィア』が火を噴いた。完全な密室におけるスナイプショット。世が世ならビューテフォーと称賛されるになんら違和感と躊躇いなき速撃ちが陽気な五十代の要求を迅速にお出迎えする
「何をしているのですかパパ。私の部屋にて対面せし因果関係を迅速に説明していただけると幸いです」
太股のホルスターにゆっくりと手を伸ばしセカンドショットを撃とうと身構える無表情なオルガマリーに汗を垂らしながら弁明を告げるアラフィフことMr.ダンディ
「待った待った!娘の反抗期にしては物騒すぎやしないかナ!?いや、もう少し可愛らしいリアクションを予想ないし期待をしていた私が可笑しいのだろうか!?」
「人の部屋にて不法侵入を犯しておきながら悪びれずパパ呼ばわりを強要する変質者には相応しい対処法ではないでしょうか。ちなみに二つ目は外しませんよ」
「怖い!私の教え子が冷徹になって怖い!心と引き金を切り離す術を覚えるとは流石だねオルガマリー君!解った!落ち着いて話をしようではないか!私が悪かった!ほんのジョーク、冗談だとも!」
その合理的かつ論理的な振る舞いに真っ当な謝罪の意を表した事で、オルガマリーは息を吐きホルスターにアニムスフィアを納める。突然の死を免れ、息を吐くMr.ダンディ。オルガマリーとしても世話になっている彼を射殺などしたくないので望むところではあったが、押し掛けパパなど御免被る。リッカと頼光さんのような清らかな関係は彼とはなんとなく想像できないが為だ
「はぁ、そういうことにしておきましょう。それで、どうしましたMr.ダンディ。返答と回答如何では冷静にナイチンゲールさんか王を呼びますが」
コーヒーを二人分淹れながら、呆れ混じりの溜め息にて歓待する。どうしても非情になりきれないのが自分の悪い癖だ。治したいとは思っているのだが、起源なのだろうか・・・全く改善の兆しが見えないのが嘆かわしいものである
「殺意にまみれた二択ありがとうねオルガマリー君。成人病か裁定か。怖いナー。怖すぎるナー」
コーヒーを嬉しそうに飲みながら、Mr.ダンディはその胸に懐きし感情と感傷を、芳醇な香りと共にかき混ぜ、そっと、優しく囁くかのように告げる
「そろそろ――皆と仲良くしたい」
その心からの要望に、オルガマリーは眉を上げる。彼が仲良くしたい、何かをしたい、つまり・・・
「犯罪教唆は速やかに反乱分子として報告いたしますが、それでもよろしいならば」
「違うヨ!?余すことなく私を理解してくれるのは嬉しいがその式に私の心と言う変数を計算に入れてほしいのだがネ!?」
慌てて否定したついでに指をコーヒーに突っ込みアウチッ!とばかりに悶絶を繰り返すMr.ダンディ。その様相を静かに見下ろしながらオルガマリーは想いを馳せる。彼は私の最高の講師の一人なんだな、あぁ、なんて変人なんだろうと感銘を隠せずにいる
「あっつ、あっつ・・・!いやね?そりゃあ私は悪の親玉だし、犯罪界の偉い人だとの自負はもちろんあるとも。指一本動かさず誰かを陥れるの大好きだし、そんな在り方に誇りを持っているとも。だが、しかしだ!!」
「・・・――」
「私だけリッカ君との絆レベルが0なのをどーにかしたいのだよ!私もリッカ君と怒ったり怒られたり絆を深めて背中を合わせる関係になったりしてみたいじゃないか!最近改めてそう感じるともそう思うとも!怒られロードを歩んで甘酸っぱい関係を再確認している彼女を見ていると尚更そう感じるのだ!仲間外れよくない!私もそろそろ、お目通りをしてもいい頃なんじゃないかと思わないかね!オルガマリー君!」
なるほど、とオルガマリーはコーヒーを口にし足を組み替える。彼の事だからまた何かしら企むのかと思っていたが、純粋に今の秘匿に秘匿を重ねた状況に限界が来たらしい。サーヴァントとして、カルデアのマスターであるリッカとのコミュニケーションに飢え始めたと言うことだろう。複雑怪奇な思考回路と神経を所持する彼らしからぬ、単純な解に些か毒気を抜かれてしまう
「聞いただろうか・・・!ダビデ君は当然のようにリッカ君に添い寝を申し出、パラケルスス君は謎の使命感にて怪しげな薬を制作中、カエサル君はリッカ君にローマ料理を振る舞い天草君は共に鎮魂の祈りを捧げたと言う!黒幕LINEで楽しげに私に送りつけて来やがった際の私の憤りと言ったら!ライヘンバッハの滝すら登れる気がするほどに中身が逆流しそうだったとも!おのれ黒幕連盟ども!!」
羨ましいッ!と突っ伏しメソメソと泣き始める我等がアラフィフ。どうやら昨今の暖かな絆の再確認にて果てしない疎外感を味わってしまったらしい。確かに彼にはスタンプも渡されていないし、リッカの謝罪巡りには含まれていない。完全なるシークレット、Mr.Xなのだから全くもって妥当と言わざるを得ないので些か反応に困るのだが
「オルガマリー君がいてくれただけでとてもとても助かってはいるがそれでも辛い・・・皆が穏やかに平穏を甘受しマスターと気心を育むなか変装してカルデアを歩いて『あんな人いたっけ?』的な視線を送られるのが本格的に辛さを感じるのだよ私は・・・この暖かみに包まれ満ちたカルデアだからこそ抱く悩み・・・私は私の危険さが恐ろしい・・・!」
自慢なのか自虐なのか判断に困る台詞を宣いながら突っ伏すMr.ダンディ。・・・その発言には共感できない事が無いことも無いので、静かに聞き及んでいる
要するに、そろそろ秘匿ではなく・・・サーヴァント、楽園の一員として皆と触れあいたいという衝動が首をもたげてきたと言うことだろう。確かにそれは計算や合理的では計算しきれない人の情、心と言うものだ。彼もまた人間であるが故に、その感情を否定すること、無かった事にすることなど・・・抹殺することなど出来ないだろう。故にこそ・・・その感覚は理解できると言うものだ。油断ならないのは、約束に約束を重ね、信頼を築いた裏に懐に銃を隠し持つような真似を平然とやるのが彼の美徳であると理解しているが故に、手放しで称賛できるものではないのが残念だが。試しに異世界に在りし銃を拾わせたいような感覚を覚えながら、思考を巡らせる
「あぁ・・・孤独の寒さが腰に響くよオルガマリー君。ヘルニアや腰痛が悪化しそうだ、私もじゃんぬ君のように唯一無二の関係になりたいじゃないか。あ、オルガマリー君は私の最高の生徒にして最高傑作である事は事実だ、其処は理解してほしい。しかしモリ・・・Mr.ダンディとしてではなくサーヴァントとしては私は
「・・・――」
・・・そろそろ、頃合いなのかもしれない。外的要因をもれなく排除した今、彼の存在をカルデアの一員として迎え入れるに相応しいタイミングは、今この瞬間なのかもしれない
だが、ただ真っ当に紹介し、ただ真っ当に邂逅をさせても今更感が否めない。「なんだか私が期待していた反応と違うナー、おかしいナー」などと宣われたら笑顔で紅いフリージアが咲きかねない。何よ、結構綺麗じゃない・・・
「・・・そう、ですね」
何より、これまで真摯に、真面目に人を動かす技量を、仕組みを、人を操るノウハウを教えてくれた大恩ある彼だ。邪険に扱ったり、ぞんざいに扱うような真似は出来る限り、出来うる限り控えたい。彼もリッカに、皆に。教えてあげられることがある筈だ、ある筈なのだ。極めて危険かつ極めて悪辣な重犯罪者を解き放つ心地ではあるものの・・・リスクを背負う覚悟なくば、決して大成は有り得ないのだから
「分かりました。なんとかしてみせましょう。王に直訴し、あなたの存在を公にする算段を取り立てて見せましょう」
それを告げた瞬間のMr.ダンディの動きは驚愕すべき俊敏さだった。座ったままの姿勢で跳躍し、空中で体勢で整え。そしてそのままコーヒーを優雅に飲み干す体勢を取る
「――信頼を預けてもいいかな、我が最高傑作よ」
「喜んで。期待は裏切らないと告げましょう。恐らく、考えた通りの要望が罷り通るならば、きっと忘れられない・・・楽園初の試みとなるはずです」
その言葉を聞いたMr.ダンディははしゃぎ回り、飛び回り歓喜を全霊で示し出す。縦横無尽に部屋を疾走したり喜び非情にアグレッシブに動き回る
「ヤッフォーゥ!これで私も皆といい感じに語り合えるぞぉ!さようなら黒幕ポジションウェルカムバディポジション!全てのサーヴァントを過去にする――完全アラフィフ体験計画、始動――!」
「喜んでいただけたようで何よりです。頑張って自らを売り込み、年の離れた娘に対する接し方を学んでおいてくださいね」
さて、どのような体験プランを練ろうか。コーヒーに含まれたカフェインを頭に取り込み、思案を恵まれしとき・・・部屋に、凄まじい崩壊音が響き渡る。その枯れた大木がべきりとへし折れるような音を聞き及び、おもわずコーヒーカップを手放してしまう
「あっつぃ!――――」
そして、ぐったりとしている・・・Mr.ダンディを見てオルガマリーは、総てを察する
「・・・整体が必要ですか、Mr.ダンディ」
「・・・・・・お願い・・・・・・鳴ってはいけない音が身体中から鳴ったヨ・・・おかしいネ・・・」
「了解しました」
「あ、待って、待っ――」
暫く、オルガマリーの完全防音の部屋にて。誰にも聞かれぬ断末魔が響き渡ったとさ――
ゴージャス王「成る程な。ヤツも辛抱の限界、か。まぁよく保った方よ。しかして、我に唾を吐くほど愚者ではないのが賢しいところよな」
『報告書を見ながら』
キボーノーハナー「突発的にクーデターを企てられると非情に困ります。適度なガス抜きをさせて差し上げた方が・・・」
「ふむ、そうさな――目下の障害もおらぬ。・・・いや。『無ければ作る』も一興か?」
「・・・?」
一途スケベビースト(なにする気だお前)
《ん?無論、オルガマリーを仕立てた褒美を賜すのだが?エア、解っているな》
『白金の姫』――はっ。行わんとすることを理解致しました。これは・・・恐らく好機なのでしょう
「・・・王?」
「フッ、進言は聞き届けた。ならばこれを渡しておけ」
『投げ渡す』
「さぞ有用に使うだろうよ。どのような手練手管で我等を愉しませるか・・・心待ちにしてやろうではないか」
「・・・これは・・・ッ」
『聖杯』
――オルガマリーちゃんにレイシフト適正が無いのが無念です・・・共に戦えたなら、心強いと言うのに・・・
《・・・いや、問題はそう難しくないぞ?いるではないか。魔術を自在に操る、気の抜けた男がな》
――・・・あっ!
《フッ、魔神が潰えた中で、如何なる悪性の都を作り上げるか・・・楽しみにしておこうではないか》
(・・・趣味の悪い世界になりませんように!)
そして――
アラフィフ「――」
『宿敵を越えてみせよ』
「・・・成る程。よいオーダーだギルガメ君。無論――そのつもりだとも!その為には・・・」
「・・・?」
(彼女の力も必要だろうネ・・・)
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