人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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教授「交戦するも、取り逃がす・・・か」

狼王【⬛⬛⬛⬛⬛】

・・・侮っていたわけではない。油断していたわけではない

正しく彼女は、自分の牙を食い止めた。食いちぎるはずだった一撃を受け止めた

人間など容易く殺せるもの・・・その慢心を衝かれたのだ

その力、その強さ。正しく評価すべき――否、何を言っている

【⬛⬛⬛⬛⬛⬛】

殺す、殺すのだ。殺すのだ。次はない、殺す、殺す、殺す。ぜったいに殺す、必ず殺してやる

差別はない、区別はない。必ず、必ず殺す。ソレ以外を、持ってはならない。人間を称賛するなど、在ってはならない

「奇襲の一つや二つで死ぬならば、我が宿敵など100は葬っている。彼女を侮ってはいけない。ゲーティアの産み出せし癌細胞、楽園の希望、相反する善悪。・・・解るかね。『彼女は我等を打倒する悪』なのだよ。そこが我等と違う、彼女と我等を分かつ点だ」

【⬛⬛⬛⬛】

悪、それはつまり・・・

「なればこそ、全てを振るうのだ、あらゆる手を尽くすのだ。・・・ストレス解消に行ってきたまえ。あとはこちらでやっておく」

【⬛⬛⬛⬛】

何かを考える時間が惜しい。それを聞くが早いか――この身は、外へ飛び出した



言霊(突っ込み)使い――何を読書なされているのですか?王よ

『シートン動物記』

キアラとマナカは割とNG(え、今更妙なの読んでるなぁ。オマエケモナーになるの?)

深刻な雑種不足《貴様を従えている時点でケモナーの様であろう。何、とあるものを招こうとしているのでな。・・・憎悪の獣。人と人の軋轢に対する番犬には最適よ。取り零すには惜しいのでな》

――あ、この綺麗な狼はなんと言うのでしょう?

《やはりお前はそこに注目したか。何、問題はあるまい。・・・読むか?エア。これより行われる召喚の縁結びに、知恵は必須となろう。・・・人に靡かず、人を拒絶し続けた狼・・・ではなく。お前が注目するは、その傍らに在る者よ》

――白狼、ブランカ・・・誇り高き、狼王・・・


邪悪娘ガールズトーク

夜の新宿、現れし魔狼。それらの襲撃・・・絶体絶命の状況を切り裂き現れた麗しき少女。風を斬り、景色を置き去りにする速さにて駆け抜けていく。その速度は・・・やはり200㎞。生半可な人間ではまともな気概を保てはせぬだろう

 

 

【ギルギルマシンを思い出すー!ひゃっほー!!】

 

「アンタ!ちょ、ヘルメットは!?交通法違反よ!最近そういうのすっごい厳しいんだから!」

 

「気にするな、此処では悪徳こそが法だ!ヘルメットなど付けていると逆に目立つ!」

 

「notモラル!アンタが暴れるに相応しい場所なのね!痛感するわ!」

 

「何を言うアヴェンジャー、貴様こそ真面目に不真面目がモットーだろう!そこは剣でアスファルトを傷付けるぐらいやったらどうだ!」

 

「マスターの品格が疑われるでしょーが!!サーヴァントの不始末はマスターに管理責任問題が問われるんだからするわけないでしょ!!というか何処向かってんのよ――!!」

 

「ククッ、叩けば響く楽器ほどいじりがいがある物はないな・・・!」

 

三人の少女は笑い合い、いがみ合い、そして会話を交わしながら国道を疾走し、駆け抜け、一つの店の眼前で停止する。其処は・・・

 

「待たせたな。此処が私のアジト、ねぐらだ。此処は新宿のアジト、オアシスと言ってもいい。これより我がマスターとその忠犬に、足を踏み入れる栄誉をやろう」

 

【・・・バーガーSHOP?】

 

そう、それは何処から見てもジャンクフード店、ハンバーガーSHOPである。あの無性にときたま食べたくなり、割りに合わない値段で食べてみると物凄く美味しく、そして費やした値段でもっと美味しいの食べられたな、と思い返すあの・・・

 

「随分脂ぎったオアシスね・・・パティシエとしては舌をブッ壊すジャンクフードなんて御断りなんだけど・・・贅沢は言ってられないか」

 

「物分かりがいいな、突撃女。不満を垂れるならケツ聖剣にて強制退去させてやろうと構えていたのだが」

 

「地獄よりマシです。貴族令嬢じゃあるまいし、リッカと一緒に休めるならなんでもいいです」

 

「ね!地獄を思い出すよね!ゴキブリとかウジとか出ないならへーきへーき。出ても潰すけど」

 

「殺菌消毒します?確実にオアシスは燃え落ちますが」

 

「止めろ、衛生面は問題ない。・・・たくましいな貴様ら」

 

その少女・・・アルトリア・オルタに連れられ、導かれたオアシスの地下へと。死地を切り抜けた二人は向かう。それは、この新宿の悪意を切り抜ける中での、確かな心の拠り所となる場所であった――

 

 

ライバルが ふえてびくびく けものかな

 

 

 

「わん!」

 

ハンバーガーSHOPの地下。自販機、乱雑な資料や机、パイプ椅子やソファーベッドなどのなけなしの生活器具をかきあつめた雑な生活基準が伺える部屋に二人は足を踏み入れる。そしてその二人を迎えたのは・・・白き犬、人懐こそうなわんこであった

 

「ちょ、食事店でなんで犬なんか飼ってるのよ。衛生的にどうなのよ」

 

「わん、くぅーん」

 

白き犬はじゃんぬに大した警戒も寄せず、尻尾を振り近付いてくる。彼女が目を輝かせ手を差し出すと、嬉しそうに掌を舐め、無警戒の様子を見せる。ほっこりしていた様子をリッカに見られ、咳払いを一つし、調子を戻す

 

「・・・こんなゴミ溜めみたいな都市には珍しい素直な犬ね。アンタの?」

 

「成り行き上な。カヴァス二世だ。野良ではあるがついてくるのだ。御機嫌王に打電し全てが終わったら引き取ってやれ」

 

「・・・ふぅん。名前もつけて可愛がってるのねぇ?」

 

「リッカに可愛がられる貴様のようなものだ」

 

「よーしよしよーしよし。カヴァスには私がいつも持ち歩いてるビーフジャーキーをあげよう」

 

リッカにも尻尾を振り、恭順を示すカヴァス二世。アマテラスのたゆまぬ協力に撫で方を熟知したリッカは容易く動物とコミュニケーションを取ることができる。アマテラスが可愛すぎて13回ほど討伐されたが些細なことだ

 

『ハンバーガーSHOPには地下アジトがある・・・勉強になります!』

 

『ないからないから。・・・さて、では情報交換と行こうか、騎士王?』

 

場の緩んだ雰囲気を適度に引き締め、次なる話題へと進めるダ・ヴィンチちゃん。その言葉に答え、こほんと咳払いし騎士王が言葉を紡ぐ

 

「では改めよう。我が名はアルトリア・ペンドラゴン。この新宿にて召喚された元孤高のサーヴァントだ。クラスはセイバー。・・・かつての特異点Fの私の記録によれば、御機嫌王をあと一歩まで追い詰めた最強のセイバーと言うことだな」

 

リッカも把握している。鎧を砕かれ、あと一歩までギルは追い詰められ、死を覚悟したものだ。・・・なんとも、紙一重の天の鎖にて切り抜けたわけだが

 

「う・・・あのときは凄かったなぁ・・・」

 

「ハッ、まだ姫サマもリッカも未熟だからの話でしょ。過去の栄光にすがるのはみっともないわよ、騎士王サマ」

  

「流石、ジャンヌ・ダルクに渾身の鉄拳をかまされた女は言うことが違うな。自分の鉄拳はさぞや痛かっただろう」

 

「なんでルーラーって高倍率で拳で殴りかかってくるの!?将門さんとかアマちゃんとかの慈悲深げな面子は除いて!」

 

『痛みは万物平等也』

『ワフ』

 

「そういう!?」

 

二人のジャパンルーラーに頷きながら、リッカは話題を提示していく。自分達を逃がしてくれたあのアーチャー。彼を助けるためにも行動を起こしたい、と

 

「身を張って庇ってくれたし、彼をなんとか助けたいと思う。彼は仲間だと信じたい」

 

「・・・完全なる味方と言う確証は無いが、良いのか?」

 

「恩はある」

 

「借りは返す、助けられたら助ける。基本でしょう」

 

「――ふっ、その通りだ。だが、私は未だにその新宿のアーチャーという男が解せん」

 

二人の覇者たる所感に笑みをこぼし壁に寄りかかり、コーラを飲みながらアルトリアは告げる。その新宿のアーチャーの所感、得体の知れないその男への不信を

 

「実はな、以前私はそのアーチャーと戦った事がある」

 

「えっ!?」

 

「うそ、あいつグッジョブ・・・でもないか。なに仕留め損なってんのよ使えないわね」

 

「あくまで偶然の遭遇ではあった、が。恐ろしく強い男だった。そして、『全く面白味のない男』でもあった」

 

「「・・・面白味のない?」」

 

微妙に、いやさ盛大に噛み合わない。面白味のない男?自分達の仲間であった彼はむしろ、面白味しかなく頼れるか頼れないかギリギリのラインを行き来する人だったような・・・

 

「武装を把握し、的確に追い詰め、不安分子を潰し、部下を使役し。徹底的に合理性を突き詰めた男だった。少なくとも・・・生命の危機に身を呈して誰かを庇い、戦うユーモア溢れる男などではなかった。・・・一芝居打たれたか?」

 

『んー、残念ながら私もそちらに賛成だ。なんというか芸術審美的に、あの造形は悪役であるべき、といった感じがひしひしとするんだよねー』

 

アルトリアの推論に、ダ・ヴィンチちゃんもまた賛成を示す。今までの彼より、そちらの方が『らしい』とも。万能の人の直感が告げているというのだ

 

「私はノーコメントよ。人を見る目なんて無いし、大切なのはリッカの敵か味方か、どちらかだけです。拝まれる聖人であろうと敵対したなら焼き殺し、疎まれる悪人であろうと味方であるなら共に戦いましょう。・・・要は、役に立つか立たないかの線引きさえはっきりしているならそれでいいのです」

 

リッカの髪をとかしながらじゃんぬはきっぱりと告げる。素性はどうあれ、相対的に気が合うか、仲間であれるかが重要だと。最終的に、マスターの判断に委ねると、彼女は決めているのだ。其処に、主観の意見は申し立てないよう接している。マスターの決定を尊重し、支えるために、と

 

『先輩、貴女の意見を聞きましょう!』

 

何処かノリノリで意見を乞う後輩。言ってやったと言いたげなその顔にスパンキングの火を燃やしながら、リッカはリッカにとっての当たり前を告げる

 

「直接聞くためにも、助けよう!まずはそれからだよ!」

 

そう。疑問を晴らす鍵は本人に訪ねることだ、直接聞いてみることだ。その疑問や真偽が正しいものか、間違いなものかという確認は、助けてからでもきっと遅くない。何より・・・

 

「助けてもらったから、御礼も言いたいしね!」

 

その、単純にして明快な帰結にして、失われない行動の指針に、一同は挟む議論の余地もなく頷く事となる。そう、御機嫌王の戦いとして、罠や困難は恐れるものではなく、踏み砕き乗り越えるものなのだ

 

「そうそう、迷うことなど無いのですよ。進むのみです。止まらなければ辿り着くのですから」

 

「貴様がその手の理論を展開すると実にしっくりくるな」

 

「どういう意味よ!?」

 

「言葉通りだ。・・・王の教育が行き届いているようで何よりだとしておく。ならば、そのように動くとしよう。・・・そして覚えておけ。私が戦い、お前たちを助けた新宿のアーチャー、そして新宿のライダー。その他にも在る、いくつかのサーヴァント。それらを纏めた呼称は・・・『新宿魔人同盟』だ」

 

その意見には賛成だと。暗に告げ笑みをこぼしながらアルトリアは告げる。この新宿に蔓延る悪の連盟・・・その恐ろしき者達の姿、その倒すべき者達の呼称を

 

『おおっ・・・秘密結社めいた呼称ですね、先輩!』

 

「悪の組織かぁ・・・!うん!早く新宿駅にXYZって書きに行かなきゃ!」

 

「待て、今日はお前達も疲弊しているだろう。一旦休息を取り、しかるのちに新宿駅に向かうぞ」

 

「賛成ね。リッカを休ませる事に異論はないわ」

 

「マスターの事になると気味が悪いくらい物分かりがいいな、お前は」

 

「ベストパートナーとはそういうものよ、客寄せパンダ・オルタさま?」

 

「・・・ほう?」

 

「はいストップ!じゃあハンバーガー食べようよハンバーガー!知ってるじゃんぬ、ジャンクフードは女子の語らいにも最適な食べ物なんだよ!」

 

「ウソ!?知らなかったわ・・・栄養価とかまるで考えられてないソレってコミュニケーションツールだったのね・・・」

 

「また一つ賢くなったな突撃女。マスターと私に感謝しろ。その霊基に刻むのだな」

 

「リッカは兎も角なんでアンタに感謝!?」

 

「ところでマスター、新宿駅と言ったが、それは何処の新宿駅だ?」

 

「・・・・・・あっ」

 

「?何よ、新宿駅は新宿駅でしょ?何かあるの?・・・え、どうしたの?」

 

『とにかく広くて複雑なんだよ。一日に三百六十万人が行き来し乗り降りする大都市の駅だからね!ナビ通りに動いても迷う!必死になってたどり着いたら違う駅!バスターミナル!東口と西口がくっついていないから出たら戻るのも億劫!百貨店を突っ切れと出る!もう更地にするしかねー!!』

 

『現代のラビリンスなのですね!マシュ・キリエライト!覚えました!』

 

「・・・リッカの時代に一緒に行くとき、手は離さないようにしなくちゃ・・・」

 

 

「・・・とりあえず、有名どころから・・・」

 

「長丁場になりそうだな・・・だが今はいい。兎も角休息と腹拵えだ。ライダーと競り合って高ぶった身体と心を癒すがいい。この味気のない事務所めいたセーブポイントでな」

 

言葉通りに、リッカとじゃんぬは女三人の集いにて、肩を並べ共に過ごすこととなり鋭気を養う

 

「これがハンバーガーの味・・・脂っこくて舌がバカになりそう・・・だけどなんというか、クセになりそうね・・・」

 

「そうだろう。全くもって栄養や食べるものの健康など知ったことではないとの雑アンド雑なる暴君の食事だ。また一つ食の深奥を極めたな、突撃女」

 

「厨房の赤いのやキャットが聞いたら卒倒するわよね、これ。・・・食べ過ぎないように、リッカ」

 

「ビッグマックうめぇ!ビッグマックうめぇ!」

 

「デカっ!?だ、ダメよリッカ!年頃の女の子がこんなのドカ食いししちゃ!」

 

「やるなアジ=ダハーカ。龍の名を持つだけの事はある。ゾロアスター教は日本ではマイナーかもしれんがな。王は王の食事を知る、か」

 

「ただの不摂生をカッコよく言っただけよソレ!?あぁもう、エミヤ呼びなさいエミヤ!あいつ中庸なんだから!多分行けるでしょ!」

 

「これがいいんだよ、これがね!ジャンクフード頬張って楽しくトーク!それが、ジャンクフードの楽しみ方!」

 

「な、なるほど!解った、解りましたからおかわりやドカ食いは控えなさい!ビョーキするわよ!ビョーキ!」

 

「リッカ、ここに肉増し5パウンドバーガーがあるわけだが」

 

「いただきまーす!」

 

「悪の道に囁くなー!!」

 

笑みと怒号が飛び交う女子の語らいの後、休眠と休息が訪れる

 

「私は上の階にて眠るとしよう。ソファーはお前たちが使うといい」

 

それだけを告げ、アルトリアは部屋を後にし・・・二人きりとなった部屋にて言葉なく寄り添う

 

「リッカ、このファーにくるまって眠りましょう。風邪を引かないように」

 

普段のドレスめいた鎧では纏わぬファーを魔力で大きめに編み上げ、二人でくるまりソファーに座る。暖かな魔力が伝わり、安らかな眠りを醸し出す素敵な代物だ

 

「ありがと。優しいね、じゃんぬ」

 

「・・・こんなゴミみたいな都市で、リッカの心が擦れたら大変です。誰か一人くらい、裏表なく貴女に献身するサーヴァントがいてもいいでしょう」

 

「ん・・・じゃんぬがいてくれてよかった。明日も頑張ろうね」

 

暖かく、そして優しい気遣いに、心の奥底から安らぎが湧いてくる。まぶたを閉じ、意識を手放しても絶対大丈夫だという安心から・・・安らかな眠けがやってくる

 

「当然です。あなたのサーヴァントとはそういうものなのですから。・・・そしてリッカ、貴女に伝えておきましょう」

 

「・・・?」

 

「あのライダー、情け容赦なく命を奪うこと。それがリッカができる、彼への対話です」

 

その言葉を聞き、じゃんぬの顔を見る。ぼんやりと、天井を眺めているじゃんぬの横顔を

 

「憎悪や憤怒で生きている生命体は、その心が軋むことは避けられない。それは良心や気持ちの問題ではなく、疾走する故の問題なの。・・・究極的に、復讐しか無い生物は、その復讐心が満たされることは永遠にないのよ。・・・私みたいな幸せ者(かわりだね)を除けばね」

 

「・・・・・・」

 

「殺せば殺すほど、害せば害す程に大切なものが抜け落ちていく。何を願っていたか、何を思っていたか。復讐に走った理由すらも忘れ去っていく。・・・そして、気付くのよ。もう二度と止まれない自分に」

 

その言葉に、リッカは思い至る。先程感じた違和感、あのライダーの感情。『何かのために殺す』のではなく『殺すため殺す』という感情そのものに

 

「・・・じゃあ、あのライダーは覚えてないんだね、きっと。何のために憎むのか、何のために恨むのか。それすらも、憎悪にくべちゃったから」

 

自分が何処へ行きたいのか、自分が何をしたいのか。それすら分からないまま、誰を殺せばいいのかわからないまま、ただ殺す。その行為が、いつか帰れる道だと信じて。・・・もう分からない、その故郷への道を

 

「えぇ、きっと。・・・だからリッカ。彼に尽くすのは言葉ではなく、容赦ない断絶よ。飛べない鳥が懸命に羽ばたくのを、解放してあげるように。情け容赦なく、彼を仕留めるために戦いなさい」

 

それが、憎悪に堕ちた者への礼儀。いつか、この復讐が果たされる。望んだ結末がやってくる。そんなうたかたの夢にて死ぬことこそが・・・復讐者に堕ちた者への救い

 

「・・・解った。ありがとう、じゃんぬ」

 

「ん。・・・私も、精一杯あなたを助けますから」

 

「・・・じゃんぬは?」

 

「?」

 

「じゃんぬは・・・もう、違う?」

 

マスターの返答に、じゃんぬはきょとんとした後に、笑みをこぼし、晴れやかに答える

 

「――えぇ、違います。あなたから貰いました。憎悪より、憤怒より尊いもの。かけがえないものを。だから・・・私は負けないわ。貴女が傍にいてくれる限り」

 

・・・――あのとき、世界の誰もが魔女の失墜を喝采しただろう。魔女の絶命を歓喜しただろう。それが当然。願われただけの私は消えるはずだった。そんな中・・・

 

「あなたの魔女は、負けないわ。だから信じて、任せなさい。・・・ほら。眠るわよ、リッカ」

 

「・・・ん」

 

――いつか、あのジャンヌも召喚したいな。とってもカッコ良かったから

 

憤怒を喚いただけ、憎悪を植え付けられただけの私を、求めてくれた貴女。愚かな魔女に相応しい、お馬鹿なマスター。どんなによわっちくても、どんなに足手まといでも、見捨てないでいてくれたマスター

 

・・・そんな貴女の役に立てることが、何より嬉しい。もっともっと、役に立ちたい。この気持ちに比べたら、憎悪などにかかずらう暇などない

 

それが、それだけが。贋作でしかなかった自分だけの宝物。それだけが――私という存在の、かけがえのない核。私だけに与えられた――

 

「おやすみ、じゃんぬ」

 

「はい、おやすみなさい。リッカ。これからも頑張りましょう」

 

私が、私である意味なのだから。その言葉と、確かな絆を胸に。じゃんぬとリッカは、静かに眠りへと落ちていった――

 

「・・・フッ、確かにお前は違うようだ。ならば見せてもらおう。復讐より一歩先に進んだお前の力をな」

 

その誓いを聞き、アルトリアは楽しげな笑みをこぼす――

 




オルタのカッコいい方「よし、朝バーガーは食べたな。新宿駅に向かうぞ!用意しろ、きびきび動け!」

オルタのかわいい方「ん・・・そんな時間なのね。リッカ、行くわよ。リッカ?」

つがいがどこにもいない「ふぁーい・・・ん、抱き枕があったお陰で気持ちよかったぁ」

「ほう、抱き枕」

「い、いいじゃないそれは!さ、歯を磨いて顔を洗って・・・!」

「あぁ、それとだ。新宿駅にもよさげな服屋を見繕っておいた。マスター、オルタ共に着替えるがいい。在るべき姿に、らしくな」

「着せ替えイベ!!やったねじゃんぬ!!」

「え、えぇ!・・・此処で着せ替えなんて、中々ロックじゃない!そういえばあんたも・・・」

「フッ、黒のホットパンツ、ジャケットにインナー。中々なコーデだろう。・・・お前はドレスを着て戦うのだな」

「なっ、違うわよ!こういうデザインなのよ!」

「ベルゼブモンみたいなカッコいい衣装あるかなぁ?可愛い服は、パーティーとかに着たいよね!その時に備えて頑張るぞ~!」



???「セイバーオルタ、そしてジャンヌ・オルタ。そしてマスター。新宿を生き抜くには問題ない戦力が揃ったか。・・・かの楽園の主要戦力の大半が善なのが惜しい。中庸にもクー・フーリン等の戦力は在るが、中庸であるが故に弱体化は避けられまい。この新宿に、悪以外は赦されぬのだ」

(・・・かの者は、何を企んでいるのか。かの者は、何をしようとしているのか。それを掴まなくてはなるまい)



男のツンデレの成功例「えぇい、二次創作は一から作らなくていいが縛りがあるのが面倒だ!キャラ崩壊、アンチヘイト!読ませるに気を遣わなくばならんというのは面倒極まる!」

『『『『~♪』』』』

「だが良かろう、マネキンどもと戯れるよりはいくらか健康的だ!書き上げてやろう、なにに役立つかは知らんがな!」

謎のKHHマン「それでいい。我等の戦いは、必ず後に繋がるものだ」

「で、お前はどちらだ。新宿か、カルデアか」

「さてな。共犯者と後輩を陰ながら助けてやるも、先達の勤めだろう?それに・・・此処で俺は、とあるものを護っているのだ」

「ふん、甲斐甲斐しい事だ。復讐者とはやはり、情深くなければなれんようだな――!」

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