人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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教授「何・・・?正気かね?更なる幻霊を?・・・あの能力は確かに厄介だが、俗物なだけで人を恨んではいない。それでも・・・いや、すぐにでも召喚、準備させよう」

【⬛⬛⬛⬛⬛⬛・・・】

「そして、手術の間・・・けして恨みを忘れないことだ。それが、君を人間殺しの怪物に昇華させた要因なのだからね」

【⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!】


謎解き以外は割りとどうでもいい「成る程、フリージアめ。この様な簡単な問題、ではなく、簡単な問題は解かせて次なる行動をこそ試してくるとは。相当に人を動かすのが上手い人材と見た!」

(アルセーヌはアサシン、探偵が我々とするならばバスカヴィルは・・・当然彼となる!備えをしておかなくては、誰かが犠牲を被るだろう。彼女の助言を、活かさなくては取り返しのつかぬ事に為りうる・・・!)

「全く、女性に振り回されるのは好きではないのだが・・・善意ならば、無下にするわけにもいくまい。突破は任せたぞ、諸君・・・!」




『いとしいあなた!いとしいあなた!』

カルデアバースデーケーキの火灯し係「何がいとしいあなたよ!恋愛模様で周りを巻き込むなっての!燃え上がりたいならやってあげるわ、私の炎でね!前からやってみたかったのよ。道理を弁えずイチャイチャするノータリンのうざったいカップルの丸焼きをね!!この旗に懸けて、害を撒き散らす愛を思いっきり否定してやるわ!」


御機嫌王への心証はそんなに悪くない「・・・今の私は機嫌が悪い。死にたい者から前に出るがいい・・・!!」

『『『『・・・!!!』』』』


分裂苦悩バガボンド

「そらそらそら!どうした!そんな亀みたいに縮こまってちゃ何もできないんじゃねぇのか!」

 

梁山泊の108星、天巧星燕青。その架空でありながら拳法流派の名前にすら掲げられた伝承に残すその拳法の絶技が、徹底的にリッカを打ち据える。単純な速度と歩法にて繰り出される電光石火にして変幻自在の拳法。四肢を奮わせ五体を躍動させた肘、掌底、蹴り、拳がリッカの鎧の五体に対して無慈悲な迄に叩き込まれる。人類悪の鎧が軋み、衝撃が重く鋭く伝わり、鎧の下のリッカの表情を歪める

 

壁を三角飛びし跳躍からの肘。ほぼ垂直に直立しながらの前蹴り。流麗な水がごとき華麗なる連撃。それらはまさに人々が夢想し昇華した伝説の業にして絶招。影が写らぬがごとき、速さにて分身が産まれるがごとき身のこなしにより放たれる数々の必殺拳。水許伝に伝わりし星が一つの拳が脚が、リッカをひたすらに撃ち抜いていく

 

リッカは・・・防戦一方であった。身体を丸め、急所を外し、ただ一つ一つを捌いていく。鎧の強度は魔力を極限まで圧縮したものであり、対城宝具クラスの直撃でなければ破壊はされない程の強度を持っているため、それに加えパンクラチオンの技術を転用すれば・・・如何な攻撃も、リッカの生命を脅かす事は叶わないのである。故にこそ、リッカはただただ防御に、防衛に徹した。これから先の為に、戦い抜くための技術を磨くために、そして――

 

「千山万水、語るに及ばず‼そんなもんかカルデアのマスター!!!」

 

彼の一挙一動を、余さずその目に写しながら戦っていたのだ。必殺の両掌の一撃を受けながら、ビルの一角の部屋を破壊し砕き散らし後退し踏みとどまる

 

【・・・――】

 

確かに彼は強い。拳も速い、体捌きも尋常じゃなく速い。その一撃は、影すらも置き去りにしているかもしれない。本来ならば捉えきれるのにはもっともっと打ち込まれなくてはならないだろう。もっと打撃や攻撃に晒されなくてはならないだろう。両手を×の字に組んだ防御の態勢から、静かに息を吐き、かのアサシンと向かい合う

 

「随分と睨み付けて来るじゃねぇか。そんなに愛しの後輩ちゃんに化けたのが許せねぇかい」

 

【・・・】

 

「悪いねぇお嬢さん。自分で言ってなんだが・・・もう誰や誰になるかなんて、自分で一々考えたりはしなくなっちまったのさァ!」

 

疾風のように駆け抜け、怒濤の波のように無数の乱打がリッカを貫いていく。リッカは手を出さずただひたすらに受けている、耐え抜いている。ただじっと、彼の攻撃を受けている。傍目から見れば手が出せず防戦一方、アサシンが圧倒的に有利な状況に見える。実際に攻めているのはアサシンであり、リッカはただの一度も手を出せていない。そんな状況で、リッカの攻勢を考えるものはいないだろう

 

だが――精神的な優位、精神的な有利は彼女に軍配が上がっており、実質的に焦燥を感じ、攻撃が通らぬことを気付くはアサシンの方であった。それは信念や侮りといったものではなく。単純な事実を確認したものであったのだ

 

いくら打てどいくら蹴れども、この者を砕く一撃には届かない。全てを阻まれ、受け止められてしまっている。何故だ?何故小娘一人討ち果たせない?自らの拳は、其処まで弱かったものか?迷いや疑問が脳を支配し、同時に、彼の中に・・・混濁した記憶が去来する

 

無慈悲に死んだチンピラの記憶、他者を食い物にしたヤクザの記憶。母を殺した子の記憶。子を売り飛ばした母の記憶。それだけに留まらず、霊基に溜まりに溜まりこんだ・・・今までの変化した者たちの記憶が、混濁せし記憶としてアサシンを狂騒に駆り立てていく

 

「はあぁあぁあぁぁっ!!!」

 

狂犬じみた迫力に対し、リッカはただ静かであった。静かに、冷静に、その攻撃、その叫びを捌ききっていく。まずは受け止める、次は払う、その次はかすめ、その次はかわしていく。少しづつ、少しづつ、その拳法を認め、見据え、見切っていく

 

「くっ・・・!何故だ!?こんな小娘一人何故推しきれねぇ!」

 

焦りは拳法を鈍らせ、頭に堪えず去来するその記憶はアサシンの思考を掻き乱す。身体に空いた大穴は消滅を加速させ、アサシンに激痛を刻み退去を早めさせていく

 

リッカは無理をせず、無茶をせず、一つ一つを完璧に捌いていく。鎧は凹み、一撃を食らえば多少損傷するが・・・中身のリッカには大したダメージは適応されない。その上に・・・

 

「ぐぅおぉおぁあぁあ・・・!!」

 

腕が、脚が黒く焼け付いていた。打ち込んだ拳が、脚が、エーテルが泥に侵食され焼き付くされた証である。リッカの泥は全てを浸し犯す、虚数悪性の泥。エーテルで形取られしサーヴァントには致命的な損害、おぞましき破滅をもたらす泥となるのだ。身体が侵食されていき、最早取り返しのつかない程染まりきったアサシンを前にし、リッカが冷然と歩み寄る

 

「っつ・・・バカみたいに頑丈だねぇ、あんた・・・まさか殴ってた方がこうなっちまうとは・・・その鎧、伊達や酔狂じゃなかったわけかぃ・・・」

 

【私が固いんじゃない。貴方の攻撃が芯に響かないだけだよ】

 

「何・・・?」

 

【見ていて分かったけど・・・貴方、幻霊を宿してるでしょ。誰かをそっくりに・・・ううん、全く同じになれるレベルの変装になれるようなの】

 

リッカが護りに、見に徹していたのはそれが理由だった。アサシンから感じていたのは混雑、混濁による心技体の分離と乖離。身体は逸り、心は乱れ、技は鈍い。いくら速くとも、全く脅威にならないと感じるほどの乱雑さ。故にこそ防いだ。故にこそ防げた。消滅寸前とはいえ、全くもって脅威に感じることが無いほどに

 

そして――リッカの目論みは正鵠を射ていた。彼が宿していたのは【幻霊・ドッペルゲンガー】。都市伝説として伝わる、自らと同じ容姿にて出逢った者を死に至らしめる伝承の妖怪。それをアサシンは取り込んでいた

 

故に・・・完璧な変装の実現と引き換えに。彼は変装した相手の記憶を宿してしまっていた。数多の存在を、数多の人間の、その人生の記憶を。自らに混ぜ込んでしまっていたのだ。狂乱と、支離滅裂な勢いは、その混濁が原因であったが故であったのだ

 

【今の貴方には、変装した何人もの記憶が混ざっている。――有象無象を取り込んで濁りきった武術なんて、何も怖くない】

 

ただの一度も、その拳が芯を捉えることはなかった。ただの一度も、自らが死に至ると感じた事はなかった。澄み渡る拳とは全く以て程遠い雑念と成り果てた痛め技に、倒れる理由は何処にも無かった

 

【貴方が宿した幻霊は、強化と言うより・・・私には呪いに見えるよ。誰かを取り込む前の、誰かの生きざまを模倣する前の貴方はいったい何処にいるの?その拳に宿した筈の誇りは、一体何処に無くしてしまったの?】

 

「・・・俺の、誇り・・・誇り・・・」

 

譫言のように呟いても、それは思い至らない。自らは誰なのか。自らは何のために戦い、何のために振る舞ったのか。それらの答えを考えても考えても、頭には思い浮かばない

 

思い浮かぶのは、ただの誰とも知れない記憶だけだ。違う、自分ではない。誰だ、俺は、誰なんだ。何のために拳を振るい、何のために戦い、何のために生きていたのだ?

 

「・・・誇り、誇りかぁ。そう言えば・・・俺の誇りは、何処に置いてきちまったんだっけなぁ・・・」

 

そんな呟きを、ゆっくりと吐き出す。他者を欺いてきた報いか、他者を殺めてきた応報か。最早思い出せない。自分が、主に、何を告げて来たのか――

 

「――・・・あぁ、そういや・・・」

 

そんな中、思い出した事がある。『あの方』より教えてもらった、マシュ・キリエライトとかいう女の記憶だ。あの女の記憶の中に、自分が求めてやまないものがあった気がするのだ。自分が求めたもの。自分が欲しかったもの。それは――

 

【まぁ、それはともかく】

 

がしり、とアサシンを掴み、ゆっくりと息を吐く。貴方の在り方や迷いは、今は解き放ってやることは叶わない。ただ、自分には落とし前をつけなければならないことがあるからだ

 

【自壊や消滅何て許さないし、穏便な解決も望まない。・・・私は、自分が大切にしているものを踏みにじった者を、絶対に許すつもりはない】

 

「へっ、へへへ・・・要するに、だ、俺が借りたツケは・・・」

 

【うん、貴方のツケは――】

 

がしり、とホールドロックを開始するリッカ。当然、この出逢いでの決着を開始する。自らの意思を、意地を、大事なものを汚された怒りを、その技の総てに乗せて叩きつけんとする――!

 

【誇りや和解では返せない――!!!『地獄の九所封じ』、その一!!】

 

開始される怒りの地獄巡り。アサシンはその体、五体隅々に至るまで破壊の嵐に晒され粉砕が行われるのだ――!その苛烈さ、逆鱗に触れられし龍が如く。無慈悲な迄に執り行われるツケの回収・・・!

 

【大雪山落としぃいぃいっ!!】

 

「ぐぁはぁっ――!!!」

 

その一から始まり、背中を手始めに破壊される。そして両腕をクラッチして投げるスピン・ダブルアームソルト、膝を折り畳み自らの膝に叩きつけるダブルニークラッシャー、脳天を地面に叩きつけるカブト割り、腹を砕くストマッククラッシュを叩き付け、徹底的に五体を粉砕していく。勢いと気迫を叩きつけたその一撃一撃が、アサシンの身体を徹底的に打ち付け、入念に五体を破壊する必殺となり浴びせられる

 

【その八、ガンド】

 

無理矢理助け起こし、身体中をスタンさせ拘束させるガンドを握手の形で流し込む。最早満身創痍となったアサシンをスピンダブルアームソルトにて捕縛し、高く高く回転させやがて、天井を突き破るほどに勢いを増し、アサシンを放り投げる。ビルの上層にまで放り投げられたアサシンに羽ばたいて即座に追い付き、首にガッチリと膝のホールドをかけ、最後の一撃のセットアップを完遂する

 

【地獄の九所封じ、ラストワン。――獣の・・・!!】

 

始まる加速。ブーストによる超加速にて叩きつけられんとする最後の一撃。二人は加速による加速にて、20階建てのビルの階層を真上から真下まで超速の速さにて砕きぶち抜きながら一階のエントランスホールの中心に、アサシンの首に添えたニードロップを渾身の力にて叩きつけ――

 

【断!頭!台――――ッッッ!!!!】

 

ビルもろとも崩落させる勢いの一撃をアサシンに叩きつける――!それは後輩を侮辱した者への断罪、大事なものを汚された怒りと、このアサシンへの別れの歌。微塵の容赦もなく、そして次なる出逢いの禍根無く。渾身の奥義にて奉る葬送の一撃・・・!

 

「・・・・・・そう言えば、思い出した。思い出したよ、何が羨ましかったのか」

 

完全に消滅が確約され、総ての階層が砕けビルか崩落を始めるなか、技を解き立ち上がるリッカに、アサシンが声をかける

 

「マシュって、女の子がさ。あんたを先輩、先輩って、慕ってよ。あんたはそんな後輩と、しっかりと、主従関係を築けてた。先輩は後輩を助け、サーヴァントはマスターを助ける。・・・はは、は。羨ましい、話だねぇ。あれこそ、理想的な主従ってやつだ。・・・俺は、俺は違ったんだ」

 

全てが崩れ、消えていくなか、悔やむように、苦悩するように、絞り出していく独白。それを、リッカは聞いていた。ただ、静かに

 

「俺は止めた、何度も止めたんだ。危険だと。頼むから止めてくれと。だが、あの愚かなる主はこう言った。『大丈夫だ。自分には、栄華が約束されている』と。・・・全く、バカな主だ。本当に愚かなる主だった。・・・だが」

 

自嘲と共に、消えていく。何も止めてやれなかった、自らの至らなさを、その無念を吐き出し・・・

 

「本当に、バカだったのは・・・そんな主を、お止めできなかった自分なんだって、よーく分かってたよ。最後まで止められなかった俺に引き換え、あんたらは最後まで、支えあって、助けあって・・・」

 

【・・・――】

 

「『羨ましくって、やりきれねぇ』さ。・・・あぁ、無頼漢の最期にはぴったりだ・・・誇りを踏みにじり、護りたいもんを護れなかった自分には、こんな、終わりが――」

 

それを最後に、限界を越えたアサシン、燕青は消滅する。崩落したビルよりリッカは脱出する・・・その前に、さらさらと、一枚の紙に何かを書き記し

 

【・・・ツケの、領収証だよ。今度の生はカルデアに来てね。あそこは、何も偽らなくていい場所だから】

 

ビリ、と破り。アサシンに向けて切り捨てる。そして、リッカがビルを出るのと、完全にビルが崩落したのは――全く同時であった

 

闇の侠客、此処に潰える。願わくば、新たなる主との主従では、その献身が報われることを。一人の少女が胸に懐いたまま――戦いは終局を迎えるのだった――




対話がメインウェポン武力はサブウェポン【・・・・・・】

決意の篝火「リッカ!」

【あ、じゃんぬ】

秩序の暴君「雀蜂、ロミオとジュリエット。共にあのビルの下敷きだ。逃げ遅れた輩もいたが・・・」

「こんな都市でパーティーなんかやってるんだもの。自業自得よ。そんな事より、倒したのね、アサシン」

【ん。何とかね】

加齢に胡散臭いパパ「よぉし!アサシンは打倒した!いよいよ悪の私の打倒が近付いてきたな!今夜はゴールデン街で飲み明かすとするか!」

「ほら、帰りましょう、リッカ。今度はしっかりドレスを着ましょうね」

「・・・お前が望むならば、また、エスコートされてやるのも吝かではない」

「あらぁ?骨抜きにされたのはあんただったわね?でも残念、リッカは私の大事なパートナー!あんたなんかに渡しませーん!」

「フン。よく喚く猫だ。いや、パンダか」

「誰がよく喚くパンダ・・・パンダ!?」

「・・・あれかい?若い子には、アラフィフと飲むの苦痛だったり?」

「未成年です」

「そっかー。法律は守らなきゃだネー・・・」

先輩大好き『あ、先輩!その・・・!』

「?」

『・・・あ、ありがとう・・・ございました!』

「・・・ん!じゃ・・・帰ろ――」


【⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!】



「「――!!」」

「・・・この声、まさか・・・!」

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