人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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じゃんぬ「配達!!これ持っていって追加注文!」

アキレウス「命懸けで突っ走れ!!消費期限は流星の如くッ!!」

ヘラクレス「生地をもっと早くもっと逞しくーー⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

「クサントス!バリオス!ペーダソスッ!ケイロッ、じゃねぇじゃねぇ!」

ケイローン「さて、何を言いかけたのか後でじっくり話し合いましょうか、アキレウス?」

「あぁいや、誤解!誤解なんだ先生ェ!!」

アルトリア・オルタ「随分と忙しそうだな」

じゃんぬ「忙しそうじゃないのよ忙しいのよ!とてもじゃないけど店を開いてる場合じゃないわ!製作に本気出さなきゃ間に合わない!」

「ククッ、そんな中訪れる私を有り難がるがいい。まぁ冷やかしな訳だが」

「とりあえず何か出すから黙っててくれない!?ていうか暇なの!?あんた暇なの!?」

「うむ、別に私は恐れられてもいないのでイメージアップを考える必要もないのでな。リッカもリッカで反省巡りに忙しいらしいようだ。まぁつまり暇だな」

「リッカが・・・」

「そんなわけだ、さぁ早く私にうまいケーキを寄越せ、早くしろ、食べたい」

「ああっもう!ホントめんどくさい王様ね!!ケイローン、お願い!」

「承知しました。では、こちらのチョコレートケーキを・・・」

(・・・クリスマス、リッカは誰と過ごすのかしら。・・・気になるわね・・・)


毎日日間!サンタ・コンラ・マーニュ!
おぞましき漆黒のトナカイ


楽園、時間神殿カルデア。南極に聳え立つ純白の神殿。其処は黄金の王、白金の姫が立ち上げた至高の場。其処にて、また更なる活気と愉悦が招かれる

 

 

 クリスマス。かの神の子、その生誕を祈りし聖なる行事。ジングルベルを鳴らし、ターキーや美味しいケーキをたくさん食べ、感謝を捧げる聖なる夜。素敵で無敵な奇跡の一瞬。其処に人種や信仰の分け隔てはなく、等しく聖なるあの人・・・立川にいそうなあの方を世界規模で祈るのだ。それはそれは神聖な夜であり、またカップル間の輝きが最高潮に高まり、人口低下に男女が一致決断し立ち向かう日でもあり、怨霊が更なる悲しみと憎しみを募らせる日でもあったりする。そんな催しも、当然カルデアでは騒がない理由がなく。カルデア一同も、思い思いの準備を進めていたのだ

 

 詳しい説明はまたの機会となるが、クリスマスは七日前から始められ、生誕日となる日に最高潮に高まるように催される。だからこそ、カルデアもまた七日前である今日からサーヴァント、職員協力してカルデアを飾付けていたのだ

 

「フッ、パーティーや食材の負担は無論我だ!ローマや海賊など及びもつかぬ散財ぶりを見るがいい!」

 

 それら全てのグッズや料理を取り出し提供するのは我等が王、ギルガメッシュに他ならない。美味なる料理、バズーカクラッカー、エレシュキガルの鈴やイシュタルから強奪した七つの権能を大判振る舞いで皆に渡し、華やかかつ豪華な催しを彩っていくのだ。散財など全く痛打にならぬ。使いきれぬ財という前提、人類の総資産たる蔵があるのだから何の問題もなく財を撒き散らせるのである。財が底を見せる時。それは人間が夢と可能性の底を見せたときに他ならぬが・・・そんな事は、万に一つも有り得ぬと。王は信じているがゆえに

 

 一同はそんな王の健在に頬を緩めながら、思い思いに準備を進めていく。激動の一年、駆け抜けるような世界の動乱を偲び、また来る年に思いを馳せる為に。はたまた、愛するものと日々を過ごすために

 

「ムニエル?ちゃんと予定はある?」

 

「大丈夫か?ムニエル?家族に会いに行くんだぞ?」

 

「意地はって一人とか・・・良くないぞ?」

 

「こういう時に限って皆俺を労ってくれてありがとうなぁ!!どうせ彼女なんかいねーよクソァアァアァア!!」

 

 ・・・怨霊の叫びもまた風物詩として、一同は懸命に日々を労り、それを想い、手にした平和を確かに噛み締め、自分たちが手にした平穏を噛み締めていく

 

『ねぇオルガマリー、クリスマスにオペラとかどうかしら?楽しいと思うわ』

 

「アイリーンさんのオペラ・・・それは確かに、聖夜には相応しいわね」

 

「僕としても、ターキーとか沢山食べたいし!楽しみだなぁ今から!何も考えないで楽しめるって最高だよね!」

 

「はーい♥同意でーす♥こう言う催しに金勘定は無粋ですよね~♥」

 

「七日前から準備・・・!とても大変なお祭りになる予感です!・・・ところで、先輩は何処に行ってしまったのでしょうか?」

 

 ・・・そう、此処にリッカ、最後のマスターの姿はない。準備とパーティーの催しに、姿を見せていない。一同は顔を見合わせる。また特訓でもしてるのだろうか?と

 

・・・そう、彼女はこれから更なる試練に見舞われる。楽しくも波乱な、愉快なるイベントに巻き込まれていくのだ。それは、マスターであるがゆえに。そして彼女であるが故に

 

愉快で楽しいクリスマスの催しはけしてリッカを逃すことはない。邪龍は、失墜を知らず、聖なる夜を疾走する宿命なのであるーー

 

わたしつつ えがおをもらう けものかな

 

「コンちゃーん、コンラちゃーん。うー、何処に行ったんだろ?おーい、コンちゃーん」

 

 件の藤丸リッカは、楽園の廊下・・・きらびやかな黄金の壁と天井、シャンデリアが照らし真紅のカーペットが敷かれた廊下を走っていた。沢山のフォウスタンプが押されているスタンプカード・・・そのあと一ヶ所が押されていないそれを、貰えていない人物を走り回り探している

 

(このままクリスマスを迎えるわけにはいかないよね。キチンと反省した証を完成させなくちゃ!)

 

無茶をしたことにより、沢山の人に心配させた罪の証、そのスタンプカード。まだそれは完成しておらず、押して貰えていない人物がいる。それは兄貴・・・クー・フーリンの息子にして、今は娘となっているコンラちゃん。幼児にして一流サーヴァントに匹敵する強さを持ち、同時に無邪気かつ快活、マシュ☆コンとしての活躍目覚ましい特殊な女の子である。まぁライバルはネロとエリザベートなので余程の事がない限り負けはしないのだが

 

その彼女から、まだスタンプを貰えていない。そんな中新宿が始まってしまったので後回しになっていてしまったが、貰わなければスタンプカードは完成せず、まだ自分は反省しましたと言える状態にない。だからこそ・・・自分はコンラにどうしても謝り、スタンプを貰わなくてはいけないのだが、どういうわけか姿が見えないのである。下手な宮殿より膨大な広さとなっているカルデアをあてもなく走っているせいか、未だに誰にも会えないのだ

 

「まさか避けられてるとか・・・ううっ、コンラちゃんに嫌われちゃったのかな・・・無茶ばっかりしたから・・・」

 

反省の色なし!リッカさんなんて嫌いです!と想像しただけで砕け散りそうなイメージ。幼児の言霊は破滅的に心に響く。そんな想像に膝を付きながら、それでも逃げるわけにはいかないと顔を上げる。辛いからと投げ出すわけにはいかない。そうやって自分は立ち向かってきたのだから!反省をうやむやには絶対に出来ないのだ、乙女として!

 

「諦めるな!私!・・・それはいいんだけど、まずはコンラちゃんを見付けなくちゃ始まらない訳で。・・・コンラちゃーん!出てきてよ~!リッカさん反省を示したいよ~!」

 

気持ちを新たに、もしかしてお部屋にいるかも?との帰結に思い至り、コンラの私室の扉をノックする。此処にいてくれるならよし、いなくてもケルトの誰かがいてくれれば、何か知っているかもしれない。そんな思いを込めて返答を待っていると・・・

 

「・・・!」

 

内側から開けられ、ゆっくりと開いていくドア。コンラちゃんがいてくれたのだろうか?やっと巡り会える、灯台もと暗しとは正にこの事!と言わんばかりにリッカが笑顔にて扉を開く

 

「会いたかった、会いたかったよ!コンちゃん!さぁ観念して私の全身全霊の謝罪を受け取ってもらーー」

 

・・・その扉を開き、リッカが浮かべたのは・・・笑みではなく、顎が外れんばかりの驚愕に他ならなかった。常識を根底から覆されると人は思考が停止する。『其処にあるはず』のものが『ない』と、人は思考に空白を生み出すのだ

 

「・・・北の、国から?」

 

いつものキャンプ場が其処にはなく、あったのは一面の雪景色。針葉樹や大地を白く彩る降り積もる新雪。オーロラがゆらめき、夜空に星が瞬く素敵な光景。あぁ、いつかカルデアの皆と見てみたいなぁと思わせてくれる幻想的な景色に、リッカは暫し目を奪われーー

 

「トンネル・・・あ、扉!扉を開けたら、其処は一面の雪国でした!えっと、これでいいのですか?シャルルさん!」

 

「あぁ!バッチリだったぜコンラ!導入部ってのは何より大事だ、物語のカッコよさは大体導入で決まるって言っていい!その点!最高にカッコよかったな!なぁリッカ!」

 

響き渡る、凛と芯の通りつつやや舌足らずな声。陽気で軽快な少年のごとき声

 

「ようこそいらっしゃいました『トナカイ』さん!あなたは名誉と誉れある『サンタ』の相棒に選ばれた最高のマスターなのです!あ、ちょっと待ってくださいね。姿を見せます!とう!」

 

上から来る二人。アグレッシブかつ軽やかに現れしその二人の姿に、リッカは思わず後頭部をぶん殴られた衝撃に目眩を起こしたたらを踏む

 

「メリーだリッカ!よく来てくれたな!これからクリスマスまでの六日、いや七日か?ちょっと俺達に付き合ってみちゃあくれねぇか?」

 

シャルルマーニュの格好は・・・黒いサンタクロースそのものだった。プレゼント袋を左手に持ち、シャルルマーニュ十二勇士のエンブレムを刻印したダークでノワールなフォーティーン的カッコよさを突き詰めたサンタクロース・シャルル。印象的には・・・『クリスマスシーズンでアルバイトしている爽やかお兄さん』と言ったところだろうか

 

「カッコいい・・・!!」

 

「だろぉ!?俺がデザインしてヴラドおじさまに拵えて貰ったんだ!分かってくれると信じてたぜ!だけど、俺はサブだ。メインはこっち!」

 

脇をひょいと抱えられ、自慢気にどや顔を行うコンラは、それはそれは可愛らしい姿であったのだからたまらない

 

ミニスカにして、胸元と鎖骨を大胆に見せる動きやすくもセクシーな赤サンタ。ちょこんと頭に乗せられた小さいサンタ帽子と胸元の鈴がチャームポイントである特注のサンタ服。赤色と金色のオッドアイたるくりっと丸い目が輝き、青色の腰まで届く長い髪は兄貴をリスペクトしてポニーテールに結われている。こちらは『御遊戯会のサンタ役』といった印象を強く受ける。マスコットめいた愛くるしさを兼ね備え非常にーー

 

「マスター・リッカ!私はまだまだ半人前、カルデアのサーヴァントとしては未熟な存在です。お父様のように強く、ギルガメッシュさまのように皆を笑顔にできる強い勇士とならねばなりません。そんな訳で私は、皆にプレゼントを配るサンタとして特異点に挑み、勇気を身に付けたいと考えています」

 

「協力します!!コンちゃんカワイイヤッター!!」

 

「其処でマスターにはトナカイさんとして私を見守り、時には強く・・・はへ?もう協力してくれるのですか!?」

 

「もちろん!!カワイイは正義!むしろさせてください!もう私トナカイになっちゃう!ソリをバリバリ引いちゃう!トナカイのように!トナカイのように!!私、どっちかっていうと爬虫類だけど!」

 

二つ返事で協力を決意して手を強く握るリッカに、コンラはぽかんと口を開けて呆然としている。たくさんお願いの作法を試すまでもなくOKしてくれたマスターに意表を衝かれながらも、サンタたる威厳を取り戻そうと、幼児体型な胸を張る

 

「あ、ありがとうございますトナカイさん。これから私達は沢山の恵まれない子供たち、チビッ子の為にプレゼントを配る戦いに身を投じるのです!あ、カルデアのサーヴァントとは別人ですよ、お便りを沢山送ってくださった、野良サーヴァントの皆様です!」

 

どや顔と共に、コンラは沢山のお便りをリッカに見せ付ける。確かに其処には、カルデアにいないサーヴァントの名前も見受けられる。本当にこれは、サンタとしての形を取った特異点解決の手段のようだ

 

(プレゼントは俺の方で用意出来たからさ、コンラは挨拶して手渡すのをやってもらう・・・そういう割り振りで担当することになったわけだ。やるからには全力でやりたいってなもんだからプレゼント選びに妥協は無いぜ?)

 

(シャルル・・・ところでなんでシャルルもサンタに?)

 

(コンラに声をかけられたのもあるが・・・決まってるだろ!サンタはカッコいいからだ!武器も使わず、戦争もせず、血の一滴も流さずに世界中の子供達を笑顔にさせる!最高だ!最高にカッコいい!俺もリスペクトしたくてな!んでどうせやるんならコンラのサポートとしてもやってみようと思ってな!コンラもコンラで、マスター。あんたに・・・)

 

(?)

 

(うおっとあぶねぇあぶねぇ、ネタバレ厳禁!まぁとりあえずコンラが何を考えているのかはお楽しみだ!今は、素直に付き合ってやってほしい。ほら、コンラは生前・・・)

 

それ以上は、二人は口にしなかった。彼女のはしゃぐ理由、楽しい思いの未知たる理由を、思い至ったが故に

 

「・・・うん!よし!じゃあ私はこれからトナカイとして二人をサポートするね!任せて!本来マスターってサポートポジションだし!ここら辺で初心に返るのも悪くない筈だから!」

 

特異点解決、そして指揮と交渉。それが自分のトナカイさんとしての役割と定義し、力強く頷く。サーヴァントの要望を聞き、叶えるのもマスターとしての大事な役目の一つだと、リッカは信じているが故に。こう言った催しも大歓迎であるのだ

 

「わはーい!ありがとうございます!ではこれから、私達の修行!サンタ巡りを開始いたしましょう!コンラは未熟なサーヴァントから一皮剥け、お父様のような大英雄に近付いて見せます!さぁ、私達のソリに行きましょう!」

 

こっちですよー!とぱたぱた両手を振りジャンプするサンタコンラに、シャルルとリッカは頷き合い拳をぶつけ合う

 

「よろしく頼むぜトナカイ様!あ、じゃあアレやってくれよ!ヨロイ!あれすっげぇカッコよくて大好きだからさ!」

 

「おう!!でも煙突から入るときにはね、絶対適さない見た目だからね・・・じゃぁ、ほいっと!」

 

指をパチンとならし、ジャンプして浮遊する鎧に両腕、両足、胴体、兜と装着し降り立つ。白雪の銀世界に際立つ漆黒のじゃりゅ・・・トナカイ。翼にマント、金色の瞳。両手の龍の子供が見たら大号泣必死なその凶悪な面構えを、シャルルが用意してくれた赤鼻とトナカイの被り物、金色の鈴でチャーミングに飾っていく

 

【どう?カワイイ?】

 

「んー、なんつーか・・・気持ちは伝わる!だな!邪悪なドラゴンの意外な趣味にクスッと来る、みたいな」

 

【くっ、赤鼻と鈴!被り物、で何処まで誤魔化せるか・・・!まぁいいや、行こう!皆を笑顔にする特異点へ!】

 

「おう!!さぁ、始めようぜ!名付けて!『シャルルコンラ英雄サンタ英雄譚』!開幕だ!」

 

【おーっ!!】

 

割とツッコミ不在なこの組み合わせにより、七日間におけるサンタの活躍が幕を開けるーー!




コンラ「此方が!私達が夜空を駆けるソリ!『マハ・セングレンmarkⅡ』です!」

シャルルマーニュ「推力浮遊その他もろもろはルーンでなんとかしてるんだってよ!すげぇよなルーン!」

リッカ【便利!スゴイ便利!】

「そしてこちらが、ソリの護衛を申し出てくださった素敵な牽引トナカイさんです!」

アマテラス「ワフ」

【トナカイ!?え、オオカミだよね!?というか大神だよね!?あっちこっちで大丈夫!?疲れてない!?】

「ワフッ」

「見ろよこの自信に充ちた顔を!アマテラス!彼女はやるかもしれねぇ!赤鼻とトナカイの被り物も付けてヤル気満々じゃねぇか!カッコいいよなぁ!」

【トナカイだけどドラゴンに大神・・・トナカイとは・・・クリスマスとは・・・定義的にはドラゴンってイエス様を思いっきり冒涜する側・・・】

「まぁ細かいことは気にすんな!さぁサンタコンラ!発進しようぜ!」

「ルーンかきかき・・・よし!行きますよー!まずは・・・成層圏まで飛び立ちまーす!!」

【何故ーー!!?ほわぁあぁぁあぁー!!?】

「はしれソリよ~!犬のように~!特異点を~!ぱどるぱどる~!」

「ワフゥ(暖かく見守っている)」

【ハッ!?まさかアマこー、見守るために・・・!】

「よーし待ってろよチビッ子ども!シャルルお兄さんとチビッコンラ!そして悪いことしたら頭から噛み砕くトナカイが煙突からお邪魔するからな~!!」

【トナカイさんごめんなさ~い!!】

騒がしくも楽しげなサンタ達は、プレゼントを求める子供たちの煙突へと駆け付けるーー

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