人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
「・・・本当に激辛で良かったのか?辛さは抑えられるが・・・」
「ハム、ハフハフ、ハフッ!」
「・・・そうか・・・」
「ハム、ハフハフ、ハフッ」
「逃げなさい!」
ワイバーンに襲われた兵士達を、旗で守り声を飛ばす
「あ、あんたは……!」
「ここは私が!逃げてください!はやく!」
兵士達に激を飛ばす。かつての生前のように
旗を振るい、ワイバーンを食い止めながら叫ぶ
「に、逃げるな!そいつは魔女、竜の魔女だ!」
心ない弾劾が飛ぶ
「討ち果たせ!故郷の仇をとれ!」
「くっ――!」
飛来する弓矢から身を守る。味方であったものたちの攻撃に、うめきをもらすジャンヌ
「……護っている存在に散々な言われようね、白い聖女」
血の池より振るわれる爪、すんでの所で身体をひねり逃れるジャンヌ
出でるは吸血鬼。カーミラが嘲りと共に姿を表す
「ワイバーン。やりなさい」
兵士達に向かわんとするワイバーン
させない。フランスを護る、フランスを救う
――拳の聖女の祈りの下に、今、ジャンヌは告げる
「――我が故郷を踏みにじりし邪悪なる竜よ!我が声を聞くがいい!」
旗を高らかに掲げ、竜に言霊を叩きつける
「我が名はジャンヌ!ジャンヌ・ダルク!フランスを救うため、旗を取った者!」
――――告げる。迷いを裁ち切った聖女が吼える
「主の願いは此処に、揺らがぬ願いは此処に!お前達の爪も牙も通さぬ誓いが此処にある!!」
飛来するワイバーンを、次々と仕留めていく。頭を穿ち、振り回し、蹴散らしていく
「――我は英雄王に『城塞』の名を賜ったもの!生半可な責め苦ではこの心身、けして崩せぬものと知るがいい――――!!!」
旗を持ちかえ、左腰の剣を抜き放ちワイバーンを切り裂いていく
「……なんで、ジャンヌが竜と戦ってるんだ?」
「知るかよ。精々共倒れしてくれりゃいい」
憎々しげに吐き捨てる兵士達。背中越しに困惑と憎しみを受け止める
「俺達の故郷を焼き払った魔女なんざ、くたばっちまえばいいんだ……!」
「たぁあぁあぁあぁあぁあ!!!」
剣を持ち、カーミラに斬りかかる
「雄叫びで耳を塞いでも、貴方の立場は変わらないわ。白い聖女」
持った鉄の杖で受け止め、カーミラは嘲る
「彼等が呑気に見物できているのは貴方がワイバーンを蹴散らしたからだというのに」
「……!」
「貴方はこんなにも足掻いているのに、もがいているのに――滑稽ね」
押し返される。威圧と共に
「あなたは今度こそ――救うべきフランスに敵と見定められているのですから!……ふふっ、今の気持ちを教えてくださらない?彼等を殺したい?それとも死にたい?」
膝をつくジャンヌ。重圧が、更に高まる――
「その旗を槍のように、突き立てたいのではなくて?ワイバーンではなく、彼等に――!」
「――理解されないのは慣れっこです!」
素早く剣をカーミラの足の甲に突き刺す
「っつ――!」
隙を見逃さず蹴り飛ばし体勢を逆転させる
「彼等は大丈夫。誰かを恨み、憎める気概があるならきっとこれからも生きていける。心はまだ死んでいない」
「――恨まれているのは、貴方でしてよ?」
「当然でしょう!だけど――私が恨まれたからという理由で、彼等を恨む理由にはならない」
旗ごしに拳を握る
「私はフランスを救う――!彼等もまた、私が救いたい者達です!彼等が私を憎むことで生きる活力となるならば、私は喜んでこの身体を捧げましょう!」
「――正気、貴方?」
呟くカーミラの声音にすら、困惑が浮かぶ
もう逃げない
もう迷わない
もう、救える命を前に迷いはしない
私はジャンヌ・ダルク
――祈りを胸に立ち上がった、一人の人間――!!
(そうですよね、聖マルタ――!!)
「そう――狂っているのは白も黒も一緒なわけね――!ワイバーン!」
更に追加されるワイバーン。不味い、手が足りない……!
――そのとき
「彼女を援護しろ!ワイバーンを撃て――!!」
放たれる大砲、炸裂する轟音
「何――!?」
「彼等は――!」
「ジャンヌであろうが無かろうが関係ねぇ!『あの旅人』の連れなら俺達が助けるのに十分だ!」
――彼等は、はじめて出会った砦にいた兵士達……!
「撃って撃って撃ちまくれ!命を救われた恩を返すんだ!ぼさっとすんな!」
「こっちは任せろ!旗の嬢ちゃん!!」
「――はい!」
増援はまだ途切れなかった
「砲兵隊!撃てぇえぇえ!!」
統率された兵士の砲撃、規律正しい攻撃が別方向からワイバーンを穿つ!
この声は――!!
「ジル……!!」
「手を休めるな!一人の娘を死地に立たせるな!ありったけの弾を使え!――放てぇ――!!」
爆音の連鎖、爆音の連鎖。ワイバーンが吹き飛ばされ数を減らして行く
「――今だ!!」
旗を地面に突き刺す
――聖マルタ、貴方の祈りを――!
拳を握りこみ、深く体勢を落とす
「――たぁあぁあぁあぁあ!!!」
「ち――」
拳を振りかぶり放つ――かつての聖女と同じ様に――!
「たぁあぁあ!!!」
眼前に設置されたアイアンメイデン――構わず振り抜く!
爆音、そして炸裂音――拳を受けたアイアンメイデンが粉々に粉砕される
――いい筋してんじゃない
そんなマルタの声が、聞こえた気がした
「何てバカ力……腐ってもルーラーというわけ――!!」
「田舎娘――――!!」
戦場を切り裂く異様が彼方から飛来する
輝く船、ギルガメッシュのヴィマーナだ!全員を乗せ、低空ギリギリで飛行する――
ジャンヌを迎えるために――!!
「英雄王!!」
「撤退するぞ――!!」
――手を伸ばす――届け――!!
「――っっ!!」
呼応して手を伸ばすジャンヌ
「随分と荒事になれたものよ!船に乗り込む者としては落第だが貴様であれば別に構うまい!」
「じょ、女性扱いされないのは心外です!人を貨物みたいに!」
「その胸にぶら下げたものを貨物と言わずなんと言う!」
「え、英雄王あなたは――!!」
王の軽口は留まることを知らない。だが今は――!
「ふはは、これで荷物は拾った!収穫は上々、帰還といくか!――ヴィマーナ!上昇せよ!!」
――果たして、器たるギルガメッシュとジャンヌの手ががっしりと繋がる
そのまま急加速、急上昇。万物を即座に振り切り、ヴィマーナは空へと消えた……
「……ここまでね。アイアンメイデンを壊すなんて……野蛮にも程があるのではなくて?」
フッ、と消えるカーミラ
「気を付けていけよ――!!旅のお方――!!」
「助けてくれて、ありがとうな――!!」
「元帥……」
「――解らぬ。彼女がジャンヌなのか……シャルル七世を討ったのがジャンヌなのか。悪質な偽物なのか」
「彼等からも話を聞け。――黄金の船を駆り、戦う彼等は何者なのかを」
――黄金のエーテルの残滓が、空の彼方まで尾を引いていた――
「ハム、ハフハフ、ハフッ」
「――ご馳走さまでした!(ガクッ)」
「おぉじゃんぬ、しんでしまうとはなさけない」