人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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アタランテ「これで、よし」


『サンタのコスプレ』

「楽園の子供たちに、夜にこっそりプレゼントを配るぞ。じゃんぬやギリシャ組に負けてはいられん、私もやるのだ、子供達の為に!」

(私もじゃんぬのように・・・毎日子供たちに群がられるようになりたい・・・じゃんぬすっごく羨ましい・・・聖女?麻婆などしらん)

「よし、よし・・・行くぞ・・・!まずはジャックやナーサリーに・・・」

廊下

式「(-_-)」

アタランテ「(゜ロ゜;」

式「・・・・・・」

「d( ゚ε゚;)」

式「・・・・・・(許可証を見せろ、とジェスチャー)」

アタランテ「(何それ、というジェスチャー)」


式「────────!!」

アタランテ「~~~~~~~~~!!」

『鬼ごっこ開始。アタランテ用の黄金の林檎を持っているためアタランテ速度ダウン』





頑張り続けたあなたへ

「?あれ?おーい、皆ー?」

 

クリスマスを控えた24日、クリスマスイブ。全てのプレゼントを配り終えたサンタ一行の仕事は、クー・フーリンへのプレゼント渡しを以て閉幕を告げた筈だった。夜明けを迎え、解散し、そして朝を迎え・・・クリスマスパーティーを迎えんとする夜に、リッカの身柄は自ずと招かれていた。彼女の目の前に広がるは、白銀の世界。雪がしんしんと降り積もり、静けさに耳が痛くなるような穏やかな空間。目の前の空にはオーロラが。白く空に浮かぶ月が、幻想的な空気と雰囲気を彩りリッカの心を穏やかに、そして確かに沸き立たせてくれる。

 

自分は役目を終えたトナカイだ。何故此処に?そんな疑問を浮かべながらも、その澄み渡る静かな夜空を、一人でなんとなく堪能する。こんな景色を、じゃんぬやマシュ、そして皆と見たいと想い・・・もう二度と逢えない彼にも見せてあげたいと考えてしまう。彼は真理を巡る旅がしたいと言っていた。それなら、人並の寿命さえあればいつか彼は・・・

 

「ワフ、ワンッ」

 

そんなしんみりとした気持ちを、吹き晴らすような透き通った鳴き声がリッカの耳に入ってくる。雪を踏み鳴らし振り返ると、其処にはイチオシのもふもふわんこ、アマテラスが尻尾を振りリッカを待っていたとばかりにヘッヘッと舌を出す

 

「あ!あまこー!こんばんは、あまこーも呼び出されたの?」

 

同じトナカイ仲間。トナカイの麗しい方を目の当たりにし、テンションが上がるトナカイのおぞましい方。駆け寄り、ポカポカとした体温を堪能しお腹を撫で撫でしもふる。まさか一人きりでラスボス挑戦かなと考えていたリッカの不安は晴れた・・・その時

 

「わひゃっ!?おぉおぅっ!?」

 

撫でられ気持ち良さそうにしていたアマテラスが一転攻勢、ぽいっとリッカを持ち上げ投げ飛ばし。自分の背に軽々と乗り込ませる。アマテラスは大型の大神、人一人乗せるなど造作もない。・・・ちょっと顔をしかめたのは、リッカに搭載されている筋肉量にちょっとおののいただけで重いわけではない。重いわけではないのである

 

「どど、どうしたのあまこー?いきなり乗っけてくれるなんて・・・何処かに行くの?」

 

「──ワフ!」

 

その言葉に応えるように、アマテラスは駆け出す。陸を走り、雪を掻き分け、白き体と真紅の模様を疾走させ、そして・・・

 

「わぁあぁ!飛んだぁ~!!」

 

アマテラスの走る道、それは空を流れる天の川。駆け抜ける先より夜空に掛けられる星々の海が、大神の疾走する光射す道となる。リッカを乗せたアマテラス、その駆け抜ける先は宵闇の絵巻。オーロラと星が瞬く戯画がごとき幻想の風景を雷鳴の如くに疾走する。降り頻る雪が置き去りにされていく、地上がみるみるうちに離れていく。風を切る音がしているのに、まったく寒くない。むしろ、ぽかぽかと心も体も暖まるようだ。アマテラスの力に違いないと、リッカは静かに感謝し夜空の景色をただ楽しみ、凍てつき殺された童心を甦らせるように笑顔を浮かべる

 

「ワフ、ワンッ、ワフ」

 

「すごーい!きれーい!星がちかーい!オーロラとか一杯ある~!」

 

無邪気にはしゃぐリッカの様子を声で把握し、嬉しそうに笑うアマテラス。こうして誰かを乗せ、走ることは嫌いではないし、むしろ好きなのでアマテラスも愉快で嬉しい。たまにジャンプしたり、ジグザグに走ったりする事も忘れず、リッカを飽きさせないよう疾走を続けて行い、夜空の星空たる道を駆け抜ける

 

「このまま走るとどうなるんだろう!何処に行っちゃうのかあまこー!大丈夫!?空で遭難したりしない!?大丈夫!?」

 

「ワンッ!」

 

その心配はいらない。もう向かうべき場所は分かっているし、見えている。そして、それはリッカにも直ぐに解る。そこには有り得ぬ、けして見付かることはなく、目の当たりにすることは叶わぬであろう・・・有り得ざる建造物が見えていたのだから

 

「──な」

 

それは、空に浮かぶ幻想の栄光。夢に、幻想に生きた者の儚き、しかして確かに造り上げられ積み重なったもの。幻想でありながら宝具に昇華されし、空中の移動要塞──

 

「なんじゃありゃあーー!!?」

 

目の前に現れ全てを圧倒する巨大な要塞・・・その名も『我が儚き栄光よ(シャルル・パトリキウス)』なる空中の建築物。その威風と威容を誇る巨大な要塞が、景観の所々が、クリスマスを示すような催しと飾り付けを付けられ

 

「ふぁっ!?」

 

巨大な垂れ幕が降りる。『ようこそ藤丸リッカ』と巨大な筆で書かれた習字の一筆で描かれ、歓待と友好をカッコよく表していることが見てとれる。頭に?マークを浮かべているリッカを見て、アマテラスは唸りを上げて駆け抜け空中要塞へ乗り込んでいく

 

「ワフ!ワン!」

 

「行くのあまこー!?なんだか私、状況把握が全然上手くいかないんだけど~!?」

 

「ワフ!」

 

考えるな、感じるんだ。それだけを簡潔に告げるように一つ鳴きながら、アマテラスは大ジャンプし機動要塞の来客空間へ脚を踏み入れる──

 

──らちられて よぞらをたのしむ けものかな──

 

「よう!待ってたぜわんこにドラゴン御両人!驚いたかリッカ!こいつは俺の内緒の宝具、移動要塞パトリキウスだ!カッコいいだろ!カッコいいよなぁ!カッコいいだろ!」

 

アマテラスとリッカを迎えたのは、爽やかかつ春風のような風格の陽気な王、幻想の騎士シャルルマーニュ。いたずらっ子のような屈託の無い笑みを浮かべ、ぱしぱしとリッカの肩を叩き友好を示す。その変わらぬブラックサンタに、苦笑しながらも軽く腹パンをかますリッカ

 

「オグフッ!?」

 

「こんな立派な場所なんて用意してどうしたの・・・って大丈夫!?」

 

「き、効くな、リッカの腹パン・・・軽いじゃれあいでも身体に要訣が染み渡ってるからかマジで響くぜ・・・」

 

「ワッフ・・・」

 

ぷるぷると震えるシャルルだが、すぐ調子を取り戻す。やだ、私の拳凶器すぎ・・・?と愕然とするリッカの手を引き、要塞の内部へと導き軽やかに歩く

 

「ま、まぁそれはともかく。サンタとトナカイの最後の〆を始めようぜ、リッカ。あと一人、受け取ってもらわなきゃいけないものがあるからな」

 

「?まだ誰か残ってたの?シャルル側?」

 

「あ、まぁ俺はリスペクトとして渡したい相手はいるが・・・それとは別だ。どーしても、リッカに渡したいものがある、渡したい人が待ってるんだよ」

 

「??」

 

「ははっ、会えば解るさ。さぁ、『玉座』でちんまい『王さま』が待ってるぜ!」

 

小さい?王さま?それって・・・それを考える前に、いいからいいからと手を引っ張るシャルル、背中をドムドムと押し込むアマテラスに圧しきられ、リッカはあれよあれよというまに身柄を運ばれるのであった──

 

 

リッカが招かれた場所。そこは豪奢に飾られた玉座の間。王が鎮座せし玉座が在る空間に、シャルルとアマテラスに引き寄せられたリッカ。まさか、また新しい王キャラと対面させられてしまうのかと心臓を畏怖で躍らせながら、厳かな雰囲気にて剣を抜くシャルルの行動を固唾を飲んで見守る。アマテラスはいつものように、のんびりと欠伸をして流れを見詰めている。神の威厳と超越者としての余裕が慈愛と暢気さに現れており、大神信仰を原典として大元に編み出されたアマテラスは、基本的にのんびり屋な御調子者であるのだ

 

「さぁ──日夜一時の幻と言えど、我は儚き栄光にマスターを招いた!舞台と準備は整ったぜ!」

 

ジュワユーズを引き抜き、騎士の如くに構え、王たる者の謁見を彩る騎士として振る舞うシャルルマーニュ

 

「此より・・・マスターへの『授与式』を行う!さぁ現れろ、出番だぜ!──王よ!」

 

ジュワユーズを高く掲げると共に、威風と威厳が高まっていき場を満たす。その風格はまさに形ある暴風となりて・・・というか物理的な巨大な扇風機の暴風となりて、くす玉が割れ、祝砲が打ち鳴らされる

 

「王・・・!まさかの新キャラ!私は試されている、新たなるコミュ力を!王とやっていくための心構えを!」

 

「クゥーン」

 

荘厳ながら何処か抜けたような雰囲気に、燃え上がる決意。決して退かぬ、退かぬと決意し。確かに踏ん張り玉座を睨む。其処より現れしは、威風と威厳、風格に満ち満ちた圧倒的な王気を兼ね備えし王が降臨──

 

「はーい!」

 

すると思った?残念、コンラでした。ひょこっと玉座の後ろから姿を現す、王の装いに身を包むコンラ。大急ぎかつ大慌てで作った急造の王の衣装なので、左胸に『キングコンラ』と書かれた自己主張が激しいワッペンと引きずったマントが微笑ましいが、それでも気品は感じる出来映えである。シャルルは片膝をつき、王に仕える騎士の礼を尽くしコンラを出迎える。アマテラスはお座りして合わせる

 

「王よ、マスターをお連れした。式はいつでも始められるぜ。あとは貴女次第だ」

 

「ありがとうございます、シャルルにーさん!アマママさまも!」

 

「ワッフ」

 

会話の感じから、皆で取り組み考えた目論見だと言うことは理解できた。自分もなんとなく襟を但し、そそくさと王に対する礼を取る

 

「では、これより・・・世界を救ったマスター、藤丸リッカへの『感謝状』の授与式を執り行います!」

 

コンラが杖を高々と掲げ、リッカをぺしりと叩く。面を上げていいですよ、といった合図で、片膝をついたリッカが顔を上げる

 

「感謝状・・・私に?」

 

「はい、マスター・・・いえ、リッカさん。半年の出来事でしたが、険しく辛い戦いを乗り越えたあなたに、全身全霊の感謝を込めて・・・コンラが最後のプレゼントを、あなたに捧げたいと思います!」

 

そうしてコンラは、懐より一枚の羊紙を取りだし、ルーンを描き。その紙をリッカに向けて、静かに渡し上げる

 

「辛いことも、楽しいことも。逃げずに取り組んで、毎日毎日頑張って。本当にお疲れ様でした。リッカさん。その頑張りを・・・コンラは深く深くお祝いしたいと思いました。それが始まりで、サンタとなって一緒に頑張りたいとも考えたのです。『どうせなら、楽しい思い出も』とコンラは思い立ち、アマママさまとシャルルにーさんが快く協力してくれて・・・」

 

「ワフ」

 

「ま、王様の中じゃ俺が一番気楽で気さくで、フレンドリーな自覚があるからな。サンタも労いもカッコいいからな、断る理由が無かったわけだ!」

 

三人で考えたサンタ計画。それは、頑張り続けたリッカに、頑張り続けたリッカへの、細やかなご褒美としての楽しい時間を捧げたいと考えた三人の取り組み。そしてそれは、此処に結実する

 

「いいですか、リッカさん。自分の命を投げだしたり、無茶な事をするのは・・・悲しいことで、悪いことです。だって、『残された人は一生辛い』のです。いなくなってしまったら、帰ってこれないのです。ずっと、ずっと哀しい想いをさせてしまうのです」

 

「コンちゃん・・・」

 

「忘れないでください。自分を犠牲にしいくら功績と偉業を積み重ねてきたとしても、いえ、積み重ねたとしても。あなたを失った哀しみと涙は、けして無くならないのです。・・・お父様や御母様を哀しませてしまったコンラだから、分かるんです」

 

親より早く死んでしまった、最悪の親不孝を犯してしまった。その自責を、その後悔を懐いたコンラだからこそ、解るのだ。先立たれ、遺されたものの哀しみや苦しみは、どんな事をしても癒せないのだと

 

「マシュさんや、ロマンさんやオルガマリーさん。生きている人達。コンラ達のようなサーヴァント。皆、心があります。マスターを信じています。だから、だから・・・生きてください。哀しませないように、皆を信じて、生き抜いてください。悔いの無いように生きて、日々を楽しく生きてください。死に勝る栄誉は無くとも、生に勝る娯楽は無いのです」

 

だからこそ、自分を大切にしてほしいと。誰よりも早く死んでしまった、自分だから。早死に、誰かを遺して死んでしまう事の罪深さが、誰よりも理解できるから

 

「生きて、これからも楽しい日々を、思いきり楽しんでください。その命を無駄にせず、その命が尽きるまで。・・・それがコンラの願いです、マスター」

 

それを告げたくて、コンラは今の今までスタンプを押さなかった。言いたいことが長くなってしまうから、言いたいことが上手くまとまる時間が欲しかったから。その言葉に、目を潤ませながら頷くリッカ。自分の行いを、改めて省み反省を自覚しながら深く肯定を示す

 

「・・・それを、開けてみてください。お待たせして、申し訳ありませんでした」

 

その言葉にしたがい、渡された羊紙を開けた瞬間・・・リッカの目は、溢れる涙を抑えることが出来なかった。そこに書かれているものは、かつての友人が遺してくれたような・・・肯定の言葉が綴られていたからだ

 

『つらいときも くるしいときも かなしいときも うれしいときも 。がんばって がんばって がんばった マスターを こころよりたたえ このかんしゃじょうを おくります 。おとうさまや アルスターの みんながいきた れきしを まもってくれて ありがとう』

 

「────」

 

『せかいをすくってくれたマスターが りっかさんで ほんとうに うれしくて ほこらしいです 。でも むちゃばかりするのは よくないです みんな かなしい です あなたのかわりは どこにもいないのです』

 

涙が滲んでいても、しっかり伝わる。感謝の気持ち。与えられた知識を懸命に再現した筆先に籠った心が、胸を打つ

 

『どうか いっぱいいきてください できないこと したいこと たくさんちょうせんして すてきなおとなになってください みんないっしょです りっかさんは ひとりじゃないです』

 

そして──右下にあるそれを見て、堪えきれずに、少女は手紙に、涙をこぼした。其処にあったのは、笑顔のフォウスタンプと・・・

 

『これからも ずっと カルデアのみんなは いっしょです これからも どうか よきたびじを ! コンラ』

 

「・・・ずるいよ・・・こんなの・・・こんなのさぁ・・・!!泣くやつだよ、こんなのさぁ・・・!!」

 

涙を流しているリッカにあたふたしているコンラを、リッカはたまらずに抱き寄せる

 

「ごめんなさい!もう・・・無茶はしないから・・・!絶対死なないし、自分を大切にするからね・・・!絶対、素敵な大人になるから・・・!絶対・・・!」

 

「はい!応援しています、ずっと一緒です!」

 

「うん、うん・・・!でもね、これね・・・」

 

「・・・?」

 

「・・・こんなの泣くやつなんだよこんなのさぁ──!!だってこれ、だってこれ・・・!もう無理、もう無理ぃいぃ・・・!!」

 

熱い、男泣き。おんおんと声を上げ、涙で顔をくしゃくしゃにしながら、ジャイアンがごとき涙を流し続け、リッカはただひたすらに泣き続ける。コンラはわたわたと慰め、励まし、どうにか泣き止んでと宥め続ける

 

「・・・プレゼント、大成功だな。アマ母さん」

 

「ワッフ」

 

その様相を見て。本当の意味でのサンタの活動。そして・・・リッカの反省の旅路が、幕を下ろすのであった──

 




リッカ「もう涙腺が悲鳴を上げています」

シャルル「泣きに泣いたからなぁ・・・だがまぁ、これでサンタ活動は終わりだ。コンラも緊張して寝ちまったからな。本当に、楽しくカッコいい毎日だったぜ。・・・途中参加なのが本当に勿体ないくらい、いい旅路だったもんな」

「うん。・・・楽しいことって言うか、楽しいことしかなかった旅だった」

「そうか。あんたがそう言うなら・・・あぁ。本当に皆も報われるだろうぜ。本当にな」

「シャルルも、ありがとね。・・・多分、コンちゃんの頼みは聞けても、コンちゃん目線になって頑張ってくれる王さまって、やっぱり・・・」

「あぁ、俺しかいないって自負がある。いいんだ、カッコいいなら何でもいい。王には向いてねぇんだしな。・・・ほら、見てみろよリッカ」

シャルルが指差す世界。街灯が、歴史が詰まった世界の火が、絶え間なく輝いている

「これはリッカが、皆が取り返した世界だ。皆で手に入れた未来だ。・・・だから、さ」

「・・・うん」

「未来をほっぽいて自分から死のうとするな。それは・・・最高にカッコ悪い。生きれる未来が広がってるんだ。しっかり脚を踏みしめて、毎日を進んでいこうぜ。無茶や無謀は、絶対生き残るため、勝ち残るためじゃなきゃ絶対にやらないでくれよな。見てる奴等の命がもたないぜ」

「うん。・・・絶対、命を捨てるような真似はしないよ。生きて、生き抜いて見せる」

「・・・ん!それを聞いて安心した!色々やった甲斐があったって訳だな!あぁ、本当に楽しいサンタ活動だったぜ!」

「ワン!」

「ん、アマ母さん。リッカを頼むな。俺はちょっと、用意したいものがあるからな。またカルデアでな!」

「シャルル・・・ありがとね!私も、本当に楽しかった!」

「生きてりゃいつまでもいいこと、楽しいことばっかだ!二度と、自分を好きにしていいとか言うんじゃねぇぞ!」

「うん!ありがとう!本当に──ありがとう!!」


そうしてアマテラスに乗り、リッカは降り去る。それを見送り、シャルルは空を見上げる

「・・・なんの因果か、俺は元気にやってるぜ。日々を愉快に過ごすこと。カッコいい生きざまを貫くこと。全部許してくれる最高の場所だ。・・・幻想の物語、コケるのが通例の第二部としちゃ、望むべくもないいい物語だ。・・・アンタも、何処かの世界で元気にやってくれよな。・・・離れてたって、変わらないぜ。あの日々は・・・ずっとな」

星空が輝く中。シャルルは満足げに頷き、胸を張って歩み出す。かつての日々を、胸に抱きながら──


・・・そして

「送ってくれてありがとう、あまこー。いつもいつも、ごめんね」

「ワン、ワフ」

「気にするな・・・って言ってくれてるのかなぁ。あまこーの言葉が分からないのがもどかしい!」

「ワッフ」

「・・・ま、いっか。兄貴は解ってたみたいだけど、分からないなら分からないで、態度とかを見るだけだもんね。・・・下総では、本当にありがとうね、あまこー」

「ワフン」

「・・・ん。じゃ、戻ろっか」

伸びをし、カルデアに戻ろうとしたとき・・・

『──本当は、ちょっとズルいのですが』

振り返るリッカ。頭に響く、何者かの声

『今回は特別に。・・・藤丸龍華』

「あ・・・あまこー・・・?」

お座りをし、優しげな目線を送り・・・リッカの心に巣食った、最後の闇を吹き張らす光明を告げる

『──貴女に、期待して良かった』

「──!!!」

それはアマテラスが渡す、唯一のプレゼント。そして・・・リッカに渡す、大切な言霊

『産まれてきてくれて、ありがとう』

慈母の祝福。頼光とは違い、あまねく全てを照らす愛を形にした、最後の言葉

「・・・あ、ぁ・・・あ・・・」

かつて言われた呪いとは正反対の、祝福と暖かさに満ちた言葉。存在の全てを肯定する、その穏やかな言霊と

「──ワォオォオォーン!」

高らかに告げる、リッカの生誕を祝う遠吠えに、リッカの涙腺は再び叩き壊され・・・──

「──あまごぉおぉおぉお~!!!」

アマテラスにすがり付き、またひたすらに涙を流し、リッカは泣きじゃくる。それをアマテラスは、静かに受け入れ、ただ穏やかに見守り続ける

・・・それは、リッカが幼少の頃に剥奪されし当たり前の行為。母に甘える。ただそれだけの当たり前の行動

その奪われた感情と行動を、慈母は奪い返しリッカに取り戻した。──それが、アマテラスのプレゼント

・・・聖夜に、少女の心に太陽は昇るのである──
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