ヴィマーナを停滞させし天空。ジークフリートをカプセルから引き出し、その身を癒す手段を一通り試していた
『リッカ、アトラス院の服を使用しなさい。イシスの雨と言う解呪のスキルがあるはずよ』
オルガマリーがマスターに指示を出す
「はーい!フォームチェンジ、アトラス!」
掛け声とともに姿が変わる。魔術制服とはまた違う独自のデザインの制服だ
「ついでだ、カルデアのジャンヌも呼び出せ。あれはネジが緩んではいるが、遊ばせておくよりかはマシであろうよ」
「カルデアの私、ですか……不思議な感じです。ちゃんと元気にやっていますか?」
「言った筈だ。ネジが緩んでいるとな。……まぁ百聞は一見にしかずだ、呼んでやれマスター」
――所感だが、カルデアのジャンヌは朗らかで快活な印象を、こちらのジャンヌは落ち着いた印象を受ける
不思議なものだ。呼ばれる場所が違うだけで、こんなに変わるなんて。でも、どちらも可愛いのは変わらないと思う
「サーヴァントならではなのね、そういうの!素敵です!私も、私とお話ししてみたいわ!」
「僕もあったりするのかな。……うん、くずっぷりに辟易しそうだなぁ」
「よーし!『ジャンヌ・ダルク』!」
右手を光らせ、カルデアに接続する
「――こんにちは!カルデアジャンヌ・ダルクです!皆さんお元気ですか?はい!」
「貴方が、カルデアの私……」
相対するジャンヌとジャンヌ
……同じ顔だ、いや、当たり前か
「我も呪いに関わる宝具をいくつか見繕おう。解呪させ万全にさせねば真価を発揮できまい」
「すまない……いや、悪くはないのに謝っては無礼であったな。すまない」
「あれか?貴様の魂の起源は『謝罪』か?」
~
解呪に二人の聖女とマスターが奮闘する最中、ジークフリートの召喚された身の上話を聞かせてもらった
召喚された時期が早く、またマスターもいないジークフリートは暫く放浪を続け、そして襲われていた街を見かけ助勢をしたらしい
バルムンクを振るえれば問題ない、とは言うもののサーヴァント複数に追われては厳しくなり、しかし敵のサーヴァントに匿われあそこで途方にくれていたようだ
「俺を庇ってくれたサーヴァントは、君……君達に?雰囲気が似ていたな」
「聖マルタ……!」
「さすが私たちの魂の先輩です!彼女も竜を扱う以上、魂がこう、グッと惹かれあったんですね!まさに運命(フェイト)!」
「竜……竜?あれがか……あれは亀……亀?いや、亀竜……いや、そういうのもありか……」
――本当に。マルタさんはこの旅の正しい道に導いてくれたのだ
そして、ジークフリート。当たり前のように危機に対して剣を取り、当たり前のように弱きものの楯となりし英雄
頼まれずとも、万全でなくとも――誰かの守護たらんとしたその生きざまに、魂が熱く震えるような感覚を覚える
――自分も、そう生きてみたいと願う。解らないなりに、悪か善かを選ぶのならば
――自分は、善である側を選びたい。自分の決めた矜持と責務に殉ずる、この王のように
――きっと、善なる視点で見るものだったからこそ――世界はあんなにも綺麗だったのだろうから
「――どうした?英雄王」
「いや。――酔狂よな、竜殺し」
「すまない」
「謝るなと言うに。腰の低い男よ」
「――大体の解呪は終わりました!」
元気よくカルデアのジャンヌが声をあげる
「報告します!9割の呪いは解けましたが、霊基にかけられた竜殺しの機能にかかった呪いはあと一人聖人が必要です!」
「貴様と貴様……えぇい、ジャンヌと田舎娘、マスターでも解くに至らぬとはな。念入りに祟ったものよ」
『必要とされているのは洗礼詠唱ね。あと一人、どうしてもサーヴァントが必要ね』
「そう都合よく聖人が転がっているものか?そこのセイバー擬きでもあるまいに」
「もう、英雄王!」
「そうですか?聖人は一人いたら30人はいると思いますが?」
「そろそろ描く神の暴走を止めねばならんな。――いや、セイバーが増えるのは良きことだが」
――聖人を増やす神は、いい神だと思うのだが
「ふふ、カルデアのジャンヌさん?あなたとのお話は、カルデアに行ったときにとっておくわね?貴方、とても幸せそうな顔をしていらっしゃるもの!」
「はい!私は幸せです!」
にっこりと笑うジャンヌ
「よし、用はすんだな?下がってよいぞ」
「はい!……英雄王!」
「なんだ、報告か?」
「……貴方が無事に帰ってきたら、食べてほしいものがあります……!一生懸命作りますから、是非食べてくださいね!」
ジャンヌの手料理か。……楽しみだ。どんな味がするんだろう?
「ほう?田舎娘なりに気が利くではないか。良かろう、特に許す。王の名にかけ、完食してやろうでないか」
尊大に語る王
「嬉しいです!では皆さん、幸運を!私も頑張ってください!」
「はい。あなたも、御体に気を付けて……」
カルデアに帰還するジャンヌ
「ふっ、素朴な田舎料理もたまには良かろう。パンとスープ。金箔が欲しいところだがな」
……ふと足下を見ると、フォウがこちらを見上げていた
「む、どうした珍獣」
「フォウ(ご愁傷さま。オマエのせいで、キミは墓穴を掘ったんだ)」
その瞳には、憐れみと……同情が浮かんでいた
「よーし作りますよー!」
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