人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「――チ。短期間に強引な運用を連発したツケか。エーテル自動生成装置のエーテル錬成が消費に追い付いておらぬ。――一度下ろして休ませねばならんか。鉄馬も今はオーバーホール……仕方あるまい。余裕があるうちに調整しておくか……」

 

 

器の見立てでは、ヴィマーナもギルギルマシンも休ませねばならないらしい。……無理もないか。発進と停止とあれほど酷使し、舗装されていない道を爆走していたのだから

 

――なら、その旨を伝えねばなるまい

 

「面倒な事よな――まぁ仕方あるまい。一時の辛抱よ――聞け!一行よ!」

 

 

声を張り上げる

 

「ヴィマーナと鉄馬はこれより調整に入る!面倒だが少しの間徒歩に甘んじる事になる!文句を言うな、我もつらい!だが好都合だ、侵略され狭まった矮小なフランスの町のいずれかに聖人がいよう!西側と東側、手分けをして探すぞ!」

 

 

「はいはい!チーム分けは籤引きがいいわ!ゴージャス様、幸運に自信はおありでして?」

 

 

「ハッ、侮るな王妃よ!我はコレクター!無類の幸運と勝負運には自信がある!だが物欲感知器は赦さん!」

 

セイバーの事、気にしているんだな……

 

 

「よい!籤引きといこうではないか!音楽家、籤引きを作れ!」

 

「君達が引きたいだけだよねそれ……はいはい、作りますよ」

 

 

「久しぶりの徒歩ですね、先輩」

 

「バイクも歩きも好きだよー」

 

 

「よし……!ヴィマーナ、着陸するぞ!」

 

 

王命を受け、ヴィマーナはゆっくりと高度を下げていった

 

 

 

「私が、マリーとですか」

 

「ゴージャス様、アマデウスをお願いいたします。誤解されやすいから」

 

 

出発の準備を整える一行。ヴィマーナは、蔵へと回収した。修理は自動で行うらしい

 

「うむ。せいぜい王妃を護れ、田舎娘。くれぐれも猛進は控えろよ?」

 

「解っています!もう、貴方は一言多くさえなければ接しやすいのに……!」

 

「ははは、いじられがいがあると誇るがいい。なぁオルガマリー?」

 

『わ、私はいじられやすくなどは……!』

『解る!』

『ロマニ!』

 

 

くじの結果は、ギルガメッシュ、マスター、マシュ、アマデウス、ジークフリート。あちらがマリー、ジャンヌだ

 

「偏りすぎじゃないかとは思うが、くじは運命。変えたら余計まずそうだ。……気を付けてくれよ、二人とも」

 

「何、身体も頭も堅い輩が向こうにいる。こちらも護りは一人前がいる。問題はあるまい。未だ不調な竜殺しが懸念と言えば懸念か」

 

「すまな……申し訳ない。すまない」

 

「レパートリーを増やすな。一芸を磨け」

 

「すまない……」

 

口を開けば謝るジークフリート。……古今無双の竜殺しなのだから、もっと自信に溢れてもいいと思うのだが

 

 

「それと、マリー……」

 

「ん?」

 

「……いや、お腹がすいたからって、洋菓子屋によったりしないでくれよ?」

 

「あはは!マリーならやりそう!」

 

――今のアマデウスの言動には、一抹の不安が読み取れた。……心配しているのだ

 

「うふふ、いじわるなマスターさん。でもビックリしちゃった!私、またプロポーズされるのかと思ったわ!」

 

……なんだって?

 

「ほう……?」

 

「プロ」「ポー」「ズ?」

 

「待て、何で今その話が出てくるんだ!?」

 

「面白そうな話ではないか。聞かせよ、誰が、誰にプロポーズしたのだ?」

 

アマデウスをみやりながらわざとらしく聞き返す。……たしかに自分も気にはなるが

 

『結構有名な話だよ?』

『えぇ、ミスター・アマデウスは六歳の時、七歳のマリーにプロポーズしたという話が残っているわ』

 

「成る程成る程……ふはは、なんともロマンチックではないか。我も見習わなくてはな」

 

 

「へー!クズも恋愛なんてしたんだ!」

「先輩辛辣です!」

 

「悪夢だ……後世にまで伝わっているなんて……」

 

がっくりと肩を落とすアマデウス

 

「まぁ気に病むな。英雄になった以上黒歴史との対峙はそう珍しくもあるまい。なぁ贋作者」

 

『何故そこで私に振るのかね』

 

「貴様ほど黒歴史に向き合った英雄はいまい?自分殺しまで為そうとした生き恥を抱えた哀れな男よ」

 

『――否定はしないがね』

 

やけに辛辣だ。やはり性質的に相容れないのか……

 

「うふふ、転んだアマデウスに私が手を差し出したら、目をキラキラさせてこう言ったの!『ありがとう、素敵なお方。僕はアマデウスと言います。美しいお方、あなたに結婚の約束がないのなら、僕が最初でよろしいですか?』って!」

 

「一語一句覚えているだって――!?まさか広めたのも君か!?」

 

「えぇ!王宮中に広めたわ!嬉しかったんですもの!」

 

「君のせいか!君のせいだったのか!断ったって言うのになんて魔性の女だ!」

 

「ほう……長い口上だが悪くない。『セイバーを口説き落とす108のワード』に追加しておくか」

 

メモを取りだし記載する。ワード編もあるのか、それ

 

「嬉しくなると、つい言いたくなっちゃうよね!わかる!」

 

『うっかり機密を独り言で呟いたりした事もあったわね……レフがフォローしてくれた……くれたのよ……』

 

『所長、未来に生きましょう』

 

「えぇ、だって決められなかったんですもの!結婚相手は、自分では決められなかったんですもの」

 

珍しく寂しげに、マリーが呟く

 

「私では、決められなかった。だって私は、恋に夢中だったんですもの。――断ってよかったの。だから貴方は皆に愛される音楽家になって、私は愚かな王妃としてああなった」

 

「だから、良かったの。私は恋に夢中だったんですもの――私はフランスという国に恋していた。国を恋していたばかりに、民を愛さなかった。――だから私は、ああなったのよ」

 

国に恋していたから、愛さなかった。民を愛さなかったから、自分は処刑台に送られたと

 

「マリー……」

 

「そうではあるまい」

 

だが、器はきっぱりとそれを否定した

 

「自らが思うままに振る舞うものを王という。民は王の為に生きるが、王は自らの愉しみの為に生きる。――どんな結末であれ、貴様を廻り国が動いたなら答えは明白であろう」

 

腕を組み、鼻をならす英雄王

 

「王様の言う通りだ。……バカだ、君は」

 

「うむ、馬鹿よな」

 

マリーが顔を赤くする

 

「酷いわ、二人とも!……バカなの、私?」

 

 

「あぁ、勘違いもはなはだしい。―君がフランスに恋した、だぁ?」

 

「事実は真逆。――貴様と言う存在に、フランスという国が惹かれていたのだろうさ」

 

――マリーがフランスに恋したのではなく、フランスがマリーに恋していた……

 

「――――そっか。そうなのね……。あら?じゃあ私は……愛した国に殺されたの?」

 

「然り。愛と憎しみは近しいものだ。恋も愛も、己の人生を担保にした意中の相手との利権の奪い合いを指す。美しきものから生まれる美しきもの等に価値はない。愛だろうと恋であろうと、それは憎しみと共に回る織物であらねばならぬ。醜い憎しみを乗り越え生まれるからこそ、恋と愛は何よりも尊いのだ。故に、愛と憎しみは切り離せぬのだ」

 

「よくわかってるな王さまは。そうとも、君は愛されたから憎まれた。それだけの話さ」

 

二人は語る、愛と憎しみの在り方を

 

「だからこそ尊いのだろうよ、貴様の輝きは。何故だか解るか?――それは、国を愛した恋から生まれ、国の憎しみを越えた愛であるからだ」

 

「――愛されたから、憎まれる……愛は、憎しみと共に回る織物……」

 

二人の言葉を受け止める

 

――綺麗なものから生まれる綺麗なものに価値はない。愛と憎しみは表裏一体……

 

……そうだったのか……愛と憎しみは、そんなに近い感情なのか

 

――ならば、世界を滅ぼす悪、というのは……

 

 

「――ふふ、二人とも!ありがとう!私、わかった気がします!」

 

朗らかに笑うマリー

 

「理解できたか?田舎娘。王の貴重な恋愛アドバイスだぞ?貴様に理解できたか?」

 

「知りません!」

 

「拗ねるな拗ねるな。オルガマリーと似ているな、そういう所は」

 

『えっ!?』

 

確かに……

 

「ふふっ、ありがとう!ゴージャス様、アマデウス!――ねぇ」

 

「ん?」

 

「帰ってきたら、久しぶりに貴方のピアノが聞きたいわ!ゴージャス様にも!いいかしら?」

 

「――君が無事ならね、マリア」

 

――直感する

 

「えぇ!じゃあ、そろそろいきましょうか、ジャンヌ!」

「えぇ……!」

 

――これは、別れだ

 

「――・・・」

 

「ゴージャス様、行って参ります!ふふ、楽しみね?」

「……あぁ、仕損じるなよ」

 

――もう、マリーとは会えなくなる

 

――そう、魂が……感じ取っていた

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