ギルガメッシュ「えぇい、陳列や品並べも愉しむつもりではあったがこうも積みに積み重なると煩わしくも感じるものよ。整理整頓は基本であると稚児でも弁えている事とは言え習慣付けるとなると中々に億劫よな。──・・・」
~
──王、宝物庫の整理整頓が完了いたしました!次は何を行いましょう?遠慮なくお申し付けくださいね!
──王はお休みになっていてください。その威光や輝きが過労や無理にて陰ってしまうのはとても辛いこと。どうか、御自愛なさってください。無礼は承知ではあります。けれど・・・ワタシは、ギルが心配なのです。その気持ちを偽るなんて出来ませんから
──苦難や面倒に思ったこと?はい、一度もありません。どんな些細な事。些細な活動であろうとも。喜びと感謝をもって取り組ませていただいております。なぜか、ですか?ふふっ、決まっています
貴方のおそばにいられることが何よりも嬉しい。貴方のお役に立てる事が何よりも誇らしい。ワタシにとって──
大好きな人を支えられる事そのものが、ワタシのかけがえのない愉悦なのですから!
~
「・・・・・・・・・──離れ、距離をおいてこそ痛感する日々の恩恵、か。フッ、我ともあろうものが、たかが深夜離れるのみでこのような気になろうとはな」
ふじのん「?店長?どうなさいました?」
ギルガメッシュ「案ずるな、物思いに耽っていただけだ。さて──」
(お前に見せる風景、心待にするがよい。お前の日頃の振る舞いに相応しきものかどうかは保証はせんがな。だが──お前なら、必ず何かを見出だすだろうよ、エア)
「うわわわわわ!!うおぉおいかん駄目だ生きるいやいや待て駄目だ生きる死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!!もっと気合いを入れろ!死んじゃうだろ馬鹿!こんな場所で死んだら絶対にまずいぞ死んでたまるかいやでもどうなんだろう死ぬぅうぅう!!」
四階に脚を運んだリッカ達。立ち込める邪気と障気はますます濃密となり最早息苦しく、通路と言う通路にゾンビが敷き詰められる程のおぞましき様相が視界に広がるほどの凄惨な有り様を見せ付けられる。惨状に呑み込まれることなく戦い、切り裂き、打ち貫き爆発させていく。戦い抜き、道を切り開くそんな三人の耳にあまりにも場違いで小物めいた・・・しかして生への執着に満ち充ちた絶叫が届く。小物で浅ましく、自分本意で。それでいて──憎悪や怨嗟に呑まれぬ輝きを持った不思議な声音が、奥の方から聴こえてくる
【誰だろ!?死にたくないなんておっきな声で叫んでるから多分・・・サーヴァントなんじゃないかなとは思うけど!】
そんな自己保身を行うサーヴァント、というのも変な話だが、動体反応しかないということは間違いなく生者ではない筈だ。浅ましく命乞いをするサーヴァントなぞ矛盾もいいところな気はするけれど、そうとしか考えられない。式と頷きあい、接触を提案する。式も同じく、悪いものでは無いだろうと覚悟を決めたようだ
「どっちみち会わなきゃ話が始まらないタイプだろうぜ。死にたくないなんて喚くのは生きてるって事だ。物言わぬゾンビよりかは楽しそうじゃないか」
「イヒヒッ、そうですねそうですね!寒さでプルプル震えるうさぎちゃんに手を差しのべるもまたオツなものですしぃ?崖に掴まるだれかさんのお手手をうっかりずらしてしまうのもまた楽しいでしょう!何はともあれ行ってみなくちゃぁわかりませんわかりません!さぁ向かいましょう!フヒヒッ!」
メフィストも不満は漏らさない。楽しく事が転べば何の不安や不満も漏らさぬ道化体質のようだ。ならば──道を進むに、迷いは無いとリッカは決断する
『ルートは真っ直ぐよ、蹴散らしなさいリッカ!』
【応ッ!!邪魔をするなら打ち貫いてブッ飛ばす!!!】
両腕のパイルバンカーを展開し、駆け抜けながら並みいるゾンビを蹴散らし吹き飛ばしリッカ達はただ進む。その助けを求め、上げられる声へと向かって──
かけぬけて ならくはすぐそこ けものかな
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!」
並みいるゾンビ、並みいる死霊が際限なく湧いて現れるその無作為、その無際限さはそれらを埋め尽くし産み出す根源が近くに在ることを否応なしに示しているのだが、それらの事情などどこ吹く風と言わんばかりに迫り来る障害をひたすらに蹴散らす影がある。その巨大な体躯、そしてその石斧の冴え渡りを顕す者など一人しかいない。リッカは、けしてそれを見間違えない
【ヘラクレス・・・!?なんでこんなところに!?】
その姿はリッカの師匠の一人。毎日組手と稽古を行ってもらい、シチューやスープを作ってもらいながら日が暮れるまで自分を鍛えてくれている大英雄、ヘラクレス。バーサーカーの姿であった。辺りにある障害を無差別に蹴散らし叩き潰し、ひたすらに猛威を奮っている。その姿は、正しく暴風。鬼神が如くの凄まじさを垣間見せている
「ギリシャの三大筋肉の一人じゃないか。こんなところでも黒くなってないとは流石だってとこか」
『それだけじゃない、彼の後ろに反応がある!あれは・・・オケアノスで出逢った・・・!』
ロマンの言う通り、ヘラクレスは誰かを庇いながら戦っている。咆哮で死霊を消し飛ばし、石斧にてゾンビを叩き潰している彼の後ろに、縮こまっている影がある。金髪に、格式高き白き衣装。顔を真っ青にしながらガチガチ寒気に震えているその影は、皆が覚えのある者だった。それは──
「あぁあぁあくそ何故だ何故こんなことになった!?『大晦日に愚痴を吐き出せる素敵な場所がありますよ』なんて誘いがあったもんだからとりあえず色々吐き出すかなんてヘラクレスを誘って一緒に召喚されてみたらこの様だ!美女や果物など何一つなく骨バッたスケルトンだの腐ったゾンビだのどうなってるんだ!詐欺か!また私は騙されたのか!何度目だイアソン!お前は何度騙されたら気が済むんだイアソン!大体おかしいと思ったんだ。恨み辛みを持った貴方にあつらえ向きな会場をだなんてどう考えてもおかしいと!おかしいなら何故断らなかったんだオレ!馬鹿かオレ!!あーダメダメ無理、ヘラクレスも魔力使っていつまでいれるか解らんしそうなったら・・・!あー!!嫌だ嫌だ助けてくれ誰でもいい!!下敷きになるのも、ゾンビだのの仲間入りもまっぴら御免だ!もうちょっと輝かしい二次会を!二次会を要求する!!割りとマジでお願いいたします!!」
アルゴー船の船長、イアソンその人であった。英雄でありながらその末路はあまりにも物寂しく終わった男。どうやら軽い酒を飲んで吐き出すつもりで召喚に応じたつもりが、こんな混沌のマンションに呼び出された現状を嘆きに嘆いているのだろう。口から飛び出すのは弱音ばかりだが微塵も変質していない辺り、筋金入りのひねくれものであると皆に強く印象付けさせる。どうやらヘラクレス頼みで、打開を願っているようであり、その声は情けなくも良く通る
『どうしよう?』
【助けよう!とりあえず変質していないなら大丈夫!】
即座に方針を固め、ヘラクレスに加勢するリッカ達。素早くヘラクレスの死角をカバーするリッカ。イアソンを保護するメフィスト。式も離れた場所で辺りを掃除し回っている
「お前ら・・・!?」
【味方と思ってくれていいよ、下敷きさん!】
「誰が下敷きだ!!その生意気な物言い、カルデアのマスターだな!い、いやだがまぁいい!援軍としては最適だなんとかしなさいお願いいたします!」
「フヒ、いやはや窮地に人の本性が出るのは英雄も同じな様ですねぇ!」
「分かりやすくていい。さっさと片付けるぞ。ゾンビは任せたぞお二人さん。オレは形の無い死霊を始末する・・・!」
「⬛⬛⬛・・・」
【此処では初対面だけど、私は貴方に返しきれない恩がある。御手伝いさせて!ヘラクレス!】
「──⬛⬛⬛!!」
リッカをカバーするように立ち回りを変え、パンクラチオンの要領で穿ち、壊し、砕いていくリッカと共にゾンビを蹴散らしていく。そこに不和や不義は無く、自然なまでの協力体制が整えられ振るわれていたのだ。リッカからしてみれば、最初期にて召喚されたサーヴァントであるヘラクレス。狂乱ぶりも、紳士ぶりも完全に熟知している師匠なのだ。合わせる事になんの支障もありはしない
「アイツ、何故人間の癖にヘラクレスに合わせられるんだ・・・!?いや、あの動きはケイローンのものだ・・・!まさかアイツ、女の癖にケイローンに教えてもらっているのか!?女を捨てたか!?」
【捨ててませんー!!ケイローン先生からはきちんと女性の振る舞いかたやマナー教わってますー!!】
「何言ってるんだ鏡を見てみろ!何処の世界にヘラクレスと肩を並べ武勇を奮う現代少女がいる!どれだけケイローンに仕込まれた!さてはアレだな!蝶よ花よと育てられるべき前に頭と身体に筋肉を詰め込みすぎたな!何故そんなアマゾネスの道を選んだ!そりゃあ確かに強さは必要かもしれんが行き着く先は罷り間違ってもアフロディーテ的な美しさではないからな!アマゾネスだぞアマゾネス!筋肉肉体美と強さのみが判断基準のやべー女に成り下がるか早まるんじゃない!」
「⬛⬛⬛・・・」
【うん大丈夫!後でデコピンしといてね!】
「お前はどっちの味方だヘラクレスぅ!!」
「賑やかな事だ。元気なら少しは働くくらいしてみろよ、な!」
式の軽快な足運びと共に、死した霊もまた殺される。生きた怨霊であるならば、それは生きたもの。生きているならば万物等しく殺すことが出来る式の眼により、瞬く間に漂うゴーストたちは切り裂かれ、突き貫かれ消失四散と相成った。軽く刃を振り、一息つく式。ちらりとリッカ達の様子を見て──
【クロス!ボンバァーッ!!!】
ヘラクレスのラリアットに纏めて絡め取られたゾンビ達。その勢いのままリッカに突進し、リッカもまたラリアットにてゾンビ達を挟み込むように叩きつける。筋肉と衝撃のツープラトン、挟み込まれた剛力による圧迫に吹き飛び両断されるゾンビ達。速やかに絶命し、マンションの廊下はギリシャ・クリアリングされる。安全確保を確認し・・・
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛──!!」
大英雄ヘラクレスは、渾身の勝鬨として高々と吠え狂い。力強くその姿を見せ付けるのであった。そして困惑するイアソンをまずは落ち着けさせ、敵意が無いことを伝え説得に時間を費やし沈静化させる事5分。ようやく会話が可能となりしイアソンに、事の顛末を聞く
『では、イアソンさん。あなたは何故こんなところに?』
「何故もこうもあるかっ!『大晦日に相応しい年越しの空間を御用意しました、入居はお早めに』なんて誘いがあったからわざわざ召喚に応じやって来た!ヘラクレスも連れて、アルゴー船にかけた青春を振り返ろうとな!美女や果物!そんなものも期待していたらな!皆目が死んでいたんだよ!!」
『目どころか生命活動も丸々お亡くなりだものね・・・悪質な詐欺に引っ掛かっちゃったんだね・・・』
「アルゴー船の船長とあろうお方がなんと不甲斐ない!騙した方はさぞや上手いかただったのでしょう!フヒッ、フヒヒッ!」
友達と二人で酒盛りして年越ししようと考えて訪れた場所がホラーマンション。しかも騙され命の危機。ヘラクレスに護ってもらいながら上へとやって来て、そして此処で突如ヘラクレスが停止したらしい。何かに立ち塞がるように
「さっさと帰ろうと言うのにコイツは一向に動かん!上の階に行く階段の前で仁王立ちだ!なんなの!?ここの何が気に入ったの!?わー冥界みたいで落ち着くーだなんて喧しいわ!!ハデスも匙投げるわこんな吹き溜まり!」
「⬛⬛⬛⬛」
「大体お前が此処に留まる理由が何処に・・・あ、おい!?」
ヘラクレスは友の言葉を背に、リッカに目線を合わせ頭を撫でた。言葉は語らず、ただ強く、優しく。この先に在るものに負けるな。そう、力強く告げるように
「ヘラクレス・・・」
「⬛⬛⬛(グッ)──」
リッカにサムズアップを行い、ニッと笑う。そして式に歩みより頭を下げる。そして、そっと・・・式の眼を指差し頷く
「俺の眼が鍵だ・・・そう言いたげだな、お前」
「⬛⬛⬛」
「分かってる。キチンと面倒は見るから安心しろ。・・・ひょっとして、それを伝えるために此処にいたのか?」
「⬛⬛⬛・・・」
リッカだけでは、勝てるものではない。だからこそ、死者や怨嗟を殺せる『何か』が必要だとヘラクレスは待っていたのかもしれない。リッカ一人ならば、此処で立ち去らせていたのかもしれない。それを──語ることなく、ヘラクレスはイアソンを背負い、ズシンズシンと歩み去る
「お、お前!何がしたいんだよ本当に!?番人の真似と思ったら即座に帰る!?政治家並みの掌がえしか!?」
「⬛⬛⬛・・・」
「もう大丈夫って何がだ!?あぁもう!頼むから喋れるクラスで来てくれ!誰だ!!ヘラクレスをバーサーカーにして最強なんて短絡的な考えを普及したのは!!冒険家のアーチャーに決まっているだろう常識的に考えて──!!」
喚き散らすイアソンを背負い、歩き去っていくヘラクレス。その後ろ姿を、じっと見詰めるリッカ。──道は示されている。後は進むのみだ
「よし、皆、行こう!次の階へ──、!?」
・・・決意したリッカの目に、信じられない光景が映る
【・・・──】
影のような、ぼんやりとした不確かなもの。少女のような存在が、手摺の縁に立ち、風に揺れている
「あ、危ないよ!そんなところで・・・!」
「?何かいるのか?」
【・・・】
影は答えず、じっとリッカ達を見つめたあとに──そっと、とある場所を指差す。それはマンションの外。外様にある敷地の一角
「・・・何か、あるの?」
頷く少女。指し示す場所は──マンションの庭。焼却炉がある、土地の一角であった──
ギルガメッストア
ギルガメッシュ「ほう、庭に何かを見出だしたか。構わぬ、ヴィマーナに乗るがよい。下ろしてやろうではないか」
リッカ「ありがと!・・・何がいるんだろ?」
式「お前も解らないのか。・・・だが、あながち間違いでも無いかもな」
「えっ」
「『二つ』だ。この特異点を作り上げてる要因は二つ。多分、その一つが庭にある」
「庭に・・・」
ギルガメッシュ「何、倒すことに変わりはあるまい。変わらずゴージャスに蹴散らすがよい。──それがなんであろうともな」
「・・・解った!じゃ、早速・・・!」
ふじのん「ぶっ飛ばしまーす」
式「運転手お前かよ・・・!」
「ぶっちぎります。
「そろそろ本気でお前が解らなくなってきたぞ・・・!」
ギルガメッシュ「さて、では赴くとするか。何が待つのか・・・いやはや、見当もつかんな?道化」
「いやはや全く全く!イヒッ、イヒヒヒヒヒィ!」
ロマン『君の見当もつかないとかアテにならないんだよなぁ・・・』
オルガマリー『あなたも大分そうよ、ロマニ』
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