人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「そろそろか」
――何がですか?


予兆

「ぉおぉおぉおぉおぉお!!!」

「ふん。見飽きた面よ」

 

 

雄叫びをあげワイバーンを叩き伏せるジークフリートと、指しか動かすことなくワイバーンを撃ち落としていくギルガメッシュ

 

 

「すまないが、彼らはいま素晴らしい話をしているのだ――無粋な真似は止めてもらおう!」

「フッ、貴様らの不運は――上機嫌な我がこの地に降り立った事よ!」

 

背中合わせに、宝具を展開する

 

 

「放て!『王の財宝』――!!」

「撃ち落とす!『幻想大剣・天魔失墜』――!!」

 

 

黄昏の波動に、無限に放たれる竜殺しの財

 

 

竜殺しの原典を持つギルガメッシュ、竜殺しの逸話を掲げるジークフリート

 

――もはや、この二人を止められるものはファヴニールしかいないだろう

 

 

「背中を任せてすまない――何故だか解らないが、貴方になら任せられるという確信がある」

 

「当然だ。我が背中から斬るなど姑息な真似をするものか」

 

 

「そうだな。――心から安心する。英雄王たる貴方が味方であったことに」

 

――それは自分も同感だ

 

この器が、英雄王が。此方を守護してくれるという事実が、とても頼もしく誇らしい

 

「であろうな。我は基本、諦めを知らぬ人間に倒される側であるからな。それがなんの因果か、今では人理を救う者達を治めている。――ふはは、愉快だ!笑いのひとつも起こるというものよな!」

「そうなのか?――フッ、そうだな」

 

 

高らかに笑う器、ニヒルに笑うジークフリート

 

正反対ながら、その光景は、神話の尊さを放っていた

 

 

「いまの状態でも、雑魚散らしはできるようだ。――む。向こうも終わったようだな」

 

 

見ると、マシュとマスターが手を振っている

 

「よし、戻るとするか。――全く、徒歩とは面倒なものよ……」

 

やれやれと肩をすくめる。――仕方無いのだ、ここは赤貧に甘んじる期間だと思おう。英雄王

 

「よければ、俺が背負おう。貴方には返しきれぬ恩がある」

「――何を言い出す!?いらぬわたわけ!確かに我は真の英雄、美しければ男も女もオールオッケーではあるが、あくまで美しければの話よ!貴様が我を背負うだと!?絵面を想像してみよ!マスターとマシュの性癖が歪んでしまったらどうする!そんなおぞましき園はいらぬわ!」

 

申し出るジークフリートを突っぱねる器

    

「すまない。……どのみち俺は、背中は隠せぬのだが」

 

お言葉に甘えればいいのに……王とは気難しいものだ

 

「まったく……竜殺し、いやジークフリートと言ったな」

 

真名で呼ぶ。――器は彼を認めたらしい

 

「ファヴニール、あの邪竜めの躾は貴様にかかっている。――しくじるなよ」

 

「――あぁ。俺は竜殺し。俺ごときに誇れるものはこれしかないが――これだけは、例え貴方にだろうと負けはしない」

 

まっすぐ見つめてくるジークフリート

 

「よくぞ吼えた。卑屈かと思えば頑固ではないか――フッ、我も狂犬めとの戦いにて新たな戦い方に目覚めた故な」

 

うん。器も認めた以上――自分の考えている事は果たせそうだ。波紋に手を伸ばす

 

「これを預ける。ファヴニールとの決戦の際に使え」

 

手渡したのは――掌大の小さな鍵だった

 

「これは?」

 

「我の蔵の合鍵だ。古今東西の竜殺しの武具が貯蔵されている場所に繋がっている。貴様なら使いこなせよう。せいぜい上手く使え」

 

――器が記憶するには、この合鍵は作らせたのはいいものの、そもそも英雄王の蔵に狼藉を働く者など存在するはずもなく、そのまま捨て置いた物らしい

 

――この英雄を呼ぶための触媒としてならば、総てを擲ち手に入れたがる秘宝であるのだが……この器にとっては『不要なもの』らしい

 

「――いいのか?こんな大切なものを」

 

「構わぬ。我は誰かに『頼る』事も覚えた。今の我はいつもの我とは愚にもつかぬ程機嫌がよい。この召喚の間は、出費は惜しまぬさ」

 

そうだ。ファヴニールの相手は、ジークフリートさんしかいない。自分達の敵は、特異点をうみだせし者だ。自分達の旅は、そこがゴールではない

 

英雄王の言葉を借りるなら……『露払いをお願いします』だ。……あれ、もうちょっと偉そうだったっけ?ううん、難しい

 

「――心から感謝する。俺の技、貴方の財。総てを使ってあの邪竜を貫こう」

 

「我の期待を裏切るなよ?」

 

「任せてくれ」

 

笑い合う二人。――これで、あとは呪いを解くだけだ

 

 

「ギールー!はーやーくー!」

「ジークフリートさーん!」

 

「行こう、英雄王。――辛ければ」

「くどい!それは要らぬ!」

 

「すまない」

 

軽い掛け合いをしながら、自分達はマスターに合流した

 

 

 

 

『アントワネット王妃とジャンヌは町へとついたみたい。無事に行けたみたいね』

 

『健脚だなあの二人!こっちより速いのか!』

 

「あの田舎娘め、しっかりと歩幅を合わせたのであろうな?」

 

『合わせましたよ!』

 

「ぬ――!」

 

不意を突かれ、面食らう器

 

『あぁごめん、ジャンヌから連絡入ってた』

 

「先に言えたわけ!」

 

「すまない。代わりに謝罪しよう」

 

「言いたいだけか貴様!……で、なんだ」

 

何か、自分に用だろうか?

 

『はい、英雄王。――解りました』

 

告げるジャンヌ

 

『マリーとの対話で確信に至りました。――やはり、あの魔女は私ではない。あの竜の魔女は、育ての親も、藁の柔らかさも知らないでしょう』

 

簡潔な言葉。自分には解らない言葉だが、器はニヤリと笑う

 

「――気付いたか」

 

「どゆこと?」

「解りません……英雄王の言葉は難解です……」

「王様なんて意味不明なものだよ。見ているものが違うからね」

 

「その確信は決戦にて突きつけてやれ。さぞかし揺らぐだろうよ。――その様を見るのはさぞ愉しかろうな」

 

『はい。必ず。……ですが、英雄王。申し上げますが、人の足掻きを見て楽しむのはよい趣味ではないかと』

 

「仕方あるまい。我は愉悦部部長なのだ、ワインを片手にニヤニヤしないだけ恩情と思え」

 

『もう!貴方は本当に、あぁ言えばこういって……!』

「ははは。電波障害かー仕方あるまい切るぞー」

 

『あ、英雄王!ちょっ――』

 

棒読み演技で通信を切る。本当にジャンヌをいじるのが好きだなぁ……ごめんね、ジャンヌ

 

 

「よし、五月蝿い田舎娘を払ったことだし、行くとするか!刃物の町とやらは目と鼻の先よ!」

 

「おー!」

 

『サーヴァント反応は二体ある。コンタクトを取ってみてくれ』

『……まって、この反応……!サーヴァント二人が戦っているわ!』 

 

 

同時に、見える町から火が吹き上がる

 

「なんだろ、あの焔・・・」

 

「――あの生娘も来ていたとはな。フッ、からかいがいがありそうではないか!さぁ行くぞ!ジークフリート!マスターを背負え!」

 

「解った。……よければ、使ってくれ、いや背負うのは無理か、お姫様だっこで……」

 

「わぁい!」

 

「え、英雄王!先輩のおんぶは私でも!」 

 

「じゃんけんだ、じゃんけんで決めよ!」

 

「嫌な予感がする……すごく嫌な予感がする……!あぁ女神よ、救いの手をさしのべてくれ!碌でもない予感に今から震えが止まらない……!」

 

――先程から、器がこれ以上ないほどワクワクしている

 

――何が、町にいるのだろうか?




「ロマン、できるだけモニターを増やして。映像を正面に。町にいるサーヴァントを映像で解析するわ」
「了解。・・・なんだかさっきからニヤニヤしてるギルガメッシュが気になるなぁ」

「楽しくなってきたな――!」
――だから、何がですか?

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