人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

488 / 2530
下水道

燕青「ウリューリューノスケってやつになりきればいいわけね。COOLが口癖・・・いいよぉ、任せときな」

ジル「ふむ、退治、討伐と言うには悪行を成さねば面目が立ちますまい。幼児達を集めねば注目を集められないでしょう。其処で!!子らを集め、ジャンヌの素晴らしさを説く一夜限りの会合を行いましょう!私のように、聖処女の存在を崇め奉り信仰の種を芽吹かせる試みを致しましょうぞ!!」

ギルガメッシュ「傷ひとつつけるなよ。それを成したならば我等は貴様らを抹殺せねばならぬのだからな。戯れでは済まんぞ?」

「勿論!!ジャンヌに誓いマスターに誓い!傷をつけることなくこの場に子供達を招くと致しましょう!」

──信じています。お二人とも、御武運を!

「心配すんなって。下手こくようなら俺が先んじてシメっからさ!」

「委細は任せる。では──次は妖怪退治と行こうではないか!」

(あっ──未来のきょぬーを護るのか・・・!!)

──?

「エルキドゥ!起きるがよい!清掃の時間だ──!!」




マシュ「要石、粉砕完了!先輩、そちらはどうでしょうか!」

「拳は封印、蹴りも封印・・・女子は淑やかに石を刀でたたっきる!!せぇい!!」

オルガマリー『サークル設置の為とは言え、土地のオーナーに断りなく霊脈を寸断なんてアグレッシブね・・・この手しか知らないと言われそうよ』

「何、この場のオーナーは遠坂家、アーチャーのマスターだ。ハナから敵対が確定している相手・・・騒動の片棒を担いだ責任を取ってもらう。自業自得というヤツだよ。未来の遠坂も、きっと解ってくれるだろう」

ロマン『い、一応僕が霊脈を整えておくね。・・・後々祟らないといいけどなぁ・・・ギルがいなくて良かったかもしれない。下手すると霊脈が吹っ飛んだかもだし・・・』

『貧乏クジね、優雅な御方は・・・』

(リン、お前ならこの苦難も乗り越えられると無責任に信じているぞ!環境と才能に恵まれた者など苦難や逆境くらいが丁度いいんだ、まったく!)

マシュ「エルメロイさんが遠くを見ております・・・」

リッカ「過去にも未来にも禍根があると大変だなぁ・・・」


ACT―2『細工は粒々』

ハサンの襲撃、あまりにも分の悪い憐れな逐次投入を退けた一行。それを切り抜け・・・マシュ、リッカ、そしてエルメロイの三人は次なる戦いの地へと向かう。この地にて起こる惨劇、悲劇を覆すための次の舞台──それは、埠頭であった。コンテナが積み重なり、街灯が立ち並ぶのみの物寂しき無人の空間。軍師が指し示す次なる戦いの会・・・次なる戦場に辿り着き、潮風に吹かれ、夜月に照らされながらエルメロイが口を開く

 

「そもそも冬木の聖杯戦争というのは詐欺みたいなものでね」

 

冬木という舞台を調べ尽くした男の言葉が響く。辺りに人気のない夜空に、かつてその戦争に参加し──望まず、図らずとも切り抜けたエルメロイの口調は、どこか物憂げで自嘲気味だ

 

「願望機を巡るバトルロイヤル、という体裁は・・・他の参加者を釣るための真っ赤な嘘なんだよ」

 

「総て嘘です!聖杯に汲み上げられているのは、アンリマユなんです!」

 

「願いが叶うと言って騙すなんて刑事案件です!訴えられてしまいますよ!」

 

万能の聖杯を求め、殺し合い、破滅の段階を進め世界の滅亡を成果として手にする。その余りの無情な結末にマシュは抗議と弾劾を露にする

 

「全くだ。どこぞの別世界では聖杯戦争が普遍化したというから、その世界でなら訴えられているな。ともあれこちらの・・・いや、私の世界ではそうはいかない。聖杯戦争はここでしか起きなかったのだから。──この戦いは参加したサーヴァントが脱落するにつれ、大災害のカウントダウンが進むという婉曲な罠だ。ここに召喚されたサーヴァントが一定数生け贄になった時点で──【この世すべての悪】が起動する」

 

この世すべての悪。人類を、総てを呪い犯す最悪にして人類一掃の呪い。リッカが纏い、振るい、力とする泥と原理を同じくする・・・ゲーティアが目を付け、再現を図った力。その呼び名に、リッカは神妙な面持ちとなる

 

【おーおーおっかない響きなこって。反則のツケとはいえとんでもないヘマをやらかしたもんだな、参加者もさ】

 

その力の中核たる・・・アンリマユがぼやく。彼女としても願い下げな話だ。この世総ての悪たる悪魔として勘違いされて呼び出されたのだから。あくまで記録であるが──彼は、ぼんやりと覚えている。遠い出来事であろうとも

 

 

「君達が最初に定礎復元した特異点F・・・あれは五度目の聖杯戦争が完遂されたあとの冬木市の姿なんじゃないかと私は見ている。──アヴェンジャーの言う通り儀式の本来の目的は他にあって、それが馬鹿げた人災で変質してしまったのだが。それはこの時間軸においても過去の話だ。問題なのは・・・シバがこの時点での冬木に、聖杯に類する反応を感知したというその矛盾だ」

 

聖杯は汚染されており、降臨すれば大災害が確約されし破滅の杯。それが感知されたならば、都市は無事では済まない。だが、見たところ災厄は起きてはいない。それでありながら聖杯は感知されている。つまりそれは──

 

『カルデアが感知した聖杯は汚染されてはいない別途の聖杯・・・それが、この特異点を成立させている要因であり、回収すべき聖杯という事ね』

 

オルガマリーがコンソールを叩き、そして状況と現状を把握し目標を設定する。どうやら、破壊すべき聖杯と回収すべき聖杯は別途であり、気を配る必要があるが故に──迂闊な破壊や工作は余計に控えるべき案件なのだと入念に職員に把握させる

 

「あぁ、その通り。私の記憶でも四度目の聖杯戦争はまだ序盤も序盤だ。戦局が大きく動くのは今夜が契機。──お喋りの時間が過ぎ、状況に追い付かれたようだ」

 

訪れし来訪者。清廉ながら強大な気配。先程のアサシンとは違う──高貴さと華やかさを醸し出す気位の高き二人組が現れる

 

「そこのあなたたち、一体何者なの?サーヴァントを連れている以上は聖杯戦争の参加者みたいだけど・・・」

 

白き長髪、人間離れした美貌と美白の肌。厚着の白服に身を包んだ、赤瞳の絶世の美女がこちらを睨み、いぶかしむ。──その雰囲気に、リッカとオルガマリーは僅かならず感じるものを胸に懐く

 

(あの雰囲気、ホムンクルス・・・?それにしても・・・マスター、なのかしら?彼女が・・・?)

 

(女子としての・・・女性としてのレベルが違いすぎる・・・!!あの人絶対・・・良きママになる人だ!!)

 

その傍らにある、スーツの・・・女性。辛うじて女性と判別できる程堂に入った男装の従者が一歩前に歩みより、警戒を露にし敵意を示す

 

「アイリスフィール、奇妙です。さっきまで我々を誘っていたランサーの気配がない」

 

彼女等は此処に存在していたランサー・・・召喚された英霊の誘いに応えて参じた一組であったのだが、そのランサーは何故かおらず、対面した者達の奇怪な出で立ちに懐疑を示す

 

『アルトリアじゃないか!ギル歓喜案件じゃないか本当に巡りが悪いなぁ!?』

 

既に他のマスターと契約している状態の、カルデアにて良く見る顔である──アルトリア。カルデア面子では慣れ親んだ顔であるが、その真名を知っている事、そしてそれを告げることは──この聖杯戦争において、絶大な異常を示すことに他ならない

 

「あれは既にマスターと契約した七英霊の一角。セイバークラスで顕現した」

 

『セイバー!!!オリジナル!!』

 

「X!stay!!」

 

「・・・そういう訳で、申し訳無いがランサーに代わり我々がお相手させていただきます。アルトリア・ペンドラゴンに・・・アイリスフィール・フォン・アインツベルン」

 

真名を示す事の意味。素性の看破。ただの一度も顔合わせを行っていないにも関わらず把握されている驚異。それは──美女二人組に交戦を選択させるに相応しい異常性に他ならなかった

 

「私とセイバーの素性を知っている!只者じゃないわね・・・こんな深夜に女の子二人を侍らせてるし!気を付けてセイバー!」

 

即座にセイバーが戦闘体勢を取り、即座に機運が高まる。交戦は避けられない。最優のセイバーたる存在に、後ろを見せ逃げ切る事は不可能だ。最早戦う他はない。そしてそれは──軍師の望むところである状況だ

 

「さてリッカ、マシュ。第二ラウンドだ。今度は先程のアサシンと比べ格段に手強いぞ」

 

「相手はアルトリアだもんね・・・!強い、絶対に強い!だけどマシュ!やるしかないよ!」

 

「お任せください!私と先輩・・・世界を救いし新進気鋭の主従コンビを元祖ヒロインに見せつけてあげましょう!」

 

マシュも鼻息荒く武装し、マスターたるリッカの眼前に躍り出る。巨大なラウンドシールド、光輝く聖剣。──奇しくもセイバーが息を呑み、マシュ達が軍師の献策を受ける

 

「苦戦を強いられるかもしれんが、縛りを一つ。・・・悪いが、今この場でセイバーは倒すな。退散だけに留めること」

 

『ワッツ!?リアル孔明の罠ですか!何を言うのです!セイバーはすべからく撲滅しなくては!!』

 

(何故向こうから私の声が・・・)

 

「立て込んでいると言っただろう!事情は後で説明する、さぁ頑張れ!」

 

「だってさ、マシュ!マシュの得意分野だよ!戦闘開始!頑張れマシュ!私の後輩!!」

 

「──はい!!見ていてください!先輩!」

 

大仰に、大々的に『私の後輩』を強調しマシュを焚き付ける。それに応え、やる気が最高潮となりしマシュが、盾を振るい突撃守護戦法を展開する

 

「やぁぁあぁあぁあぁ!!」

 

「くっ──!?」

 

 

盾は守護するもの、座して構えるものという概念を覆す、勇猛果敢なラウンドシールドによる殴打が振るわれる。内に存在する英霊──ギャラハッドの力を同期し同立させ、誉れ高き騎士王の間合いにて肉薄し聖剣の間合い・・・エクスカリバーを振り抜けぬ近接間合いにて猛追する

 

「それでいいよマシュ!セイバー、アルトリアの必殺技は振り抜きビーム!それさえ封じられればなんとかなる!」

 

「はい・・・っ!見えない剣はアルトリアさんとのシミュレーションの経験でなんとか補います!」

 

「私との経験・・・!?そしてこの清廉ながら、洗練され尽くした骨格に響く盾の一撃・・・貴女は・・・!」

 

打ち合い、火花が散る盾と剣。人気のない埠頭に重い打撃音、アスファルトが砕ける音。人智を越えたサーヴァント同士の戦いが、聖杯戦争の真髄が繰り広げられる

 

同時に──マシュとセイバーのマスター、アイリスフィールとリッカは互いを見ていた。マスターとして戦況を、そして──相対する互いのマスターを見定めていた

 

(あんな年頃のマスターが存在していたなんて・・・それに何かしら、この違和感・・・あの子、普通じゃない・・・)

 

アイリスフィールはリッカを──不気味と捉える。少女の齢もさることながら、あまりにも堂に入った指揮と俯瞰ぶりは歴戦のそれだ。がっしりと腕を組み、サーヴァントを信じきる立ち振舞い。明らかに・・・戦い慣れている。そして何より・・・彼女から滲み出る魔力、感じ取る魔力が余りにも異常に過ぎる。押し潰されるような、呑み込まれるような漆黒の覇気。魔術師どころか人間からも逸脱しているかのような・・・邪気と呼んでも差し支えない膨大な力が、あの小さな身体から溢れ出ている事を否応無く痛感させてくる

 

「『瞬間強化』!『緊急回避』!」

 

攻撃には即座に加勢を、危うい一撃には的確に援護魔術を指揮するマスターとしての手腕と手際。紛れもなく数多くの修羅場を潜ってきたものだと認めざるを得ない。──経験の差を肌で感じ、予感として思考が働き・・・次なる一手を導きだす

 

「セイバー!・・・此処はあまり深追いは良くないわ!敵に対する情報が少なすぎる、態勢を立て直しましょう!」

 

得体の知れない相手に対する一手、それは──撤退であった。鍔競り合うセイバー、アルトリアに退却の意志を告げ、声を上げる

 

「アイリスフィール、しかし・・・!」

 

「まだ初戦、無理をする必要はないわ。大丈夫、最後の勝者となる者は決まっているのだから・・・ね?」

 

その信頼の言葉に、素早く納得と肯定を示しマシュの盾を蹴り飛ばし間合いを取る。敵対するマスターとサーヴァントの追撃に備え、撤退の隙を伺う・・・が。その心配は杞憂となる

 

「撤退?どうぞどうぞ!背中から斬りかかるような真似はしないから、お気になさらずに!」

 

「・・・何が目的か」

 

「初戦は慎重に。同じ気持ちですから。お互い知らないことばかり。また会うときは・・・また尋常に!」

 

その言葉に、偽りと嘘はない。セイバーの直感はそう判断を下した。一度もマスターたるアイリスフィールを狙い打たず、マスターとしての介入以上の横槍も挟むことなく、サーヴァントたる彼女との信頼関係を鑑みてそう確信を果たしたのだ。リッカとマシュを一瞥し、二人は撤退を開始する。倒さずして戦いが終わる。去っていく二人を見つめ、戦闘体勢を解きハイタッチを行う

 

「ナイスゥ!マシュナイスゥ!」

 

「やりました先輩!孔明さん!これで宜しいのですね!」

 

無事にセイバーを倒さず撤退に追い込み、課題をこなし目的を達成した。孔明も微笑み

 

「あぁ、難しい難題をよくこなした。──ここでの本命は、次にやってくる御客さんだ」

 

「次?」

 

「あぁ。本来セイバーに挑戦する筈だったサーヴァントを計略で閉め出しておいた。そろそろ・・・」

 

言葉と同時に、跳躍にて槍を構える美貌の騎士が困惑と憔悴を露に歪め現れる。赤と黄の槍を構えし、ランサーのサーヴァント・・・

 

「おのれ、いったい何者だ!あの妙な石の迷路は貴様らの仕業か!セイバーのサーヴァントはどうなった!?」

 

「あ──最近カルデアに来た・・・!」

 

「落ち着かれよ、フィオナ騎士団の一番槍。我々はアーチボルト陣営の敵ではない」

 

即座に真名を示すエルメロイ。カルデアのアドバンテージを即座に振るい、有能さをランサー・・・そして、背後にいるマスターに見せつける

 

「ふむ、どうやら只者ではないようだな。何故ランサーのマスターが、私と気付いた?」

 

響き渡る神経質気味な声。しかして其処には気品と風格を含み、埠頭一帯に透過する

 

『魔術迷彩。典型的な魔術師・・・いえ、アーチボルト家。当然ね』

 

「オルガマリー、此処は私が。ケイネス卿、我々は御身の支援に馳せ参じた者です。故あって名は秘せざるを得ないのですが、ここは一先ずレディ・ライネスの、名代とだけ申し上げておきます」

 

エルメロイの英語が響き渡り、翻訳にて意味を拾う。家庭、身内のみの情報。そして姪たるものの名前を出し会話を引き出す手腕を清聴する一同

 

「ライネス・・・我が姪の?いったいどういうことだ?」

 

「この場にて説明差し上げるのも吝かではないのですが、あえて明日まで御猶予をいただきたい。ただ、これだけは申し上げておきましょう。『キャスターの居所を御伝えできる』と」

 

「キャスター?それがどうした?」

 

「この言葉、明日の昼頃に改めて吟味していただきたい。その時は改めて、我々の話に耳を傾ける価値を見出だしていただけるものと」

 

「ふむ・・・」

 

思慮に値する知的な提案。その提案を飲んだとし畳み掛ける。未来の介入者のアドバンテージ、存分に生かし手札と為す

 

「明日22時、冬木ニュータワー最上階のスイートをお尋ねいたします。ひとまずこの場は見逃していただけますか?」

 

「ほう?こちらの所在すら把握済みか。・・・よかろう、有能な男は嫌いじゃない。それが礼を弁えた魔術師であるならば尚更だ。少々、田舎訛りの英語なのが残念だがね。・・・いいだろう。先程のセイバーをあしらった手際に免じて、この場はこちらも矛を納めよう」

 

そして、姿を現す。青き高貴な服装に身を包み、金髪をオールバックとした不毛気味な頭が特徴的な男性──

 

「私は逃げも隠れもしない。何を企んでいるのか、聞き出すのが楽しみだよ」

 

「・・・あれが、ランサーのマスター・・・」

 

『ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。・・・何故こんな血腥い戦いに参加したのかしら。あれほどの存在の損失は魔術世界の損失だというのに・・・』

 

「ありがとう。では、お暇させていただきます。行こう、リッカ、マシュ。この場にて為せる策は最早既に総てを打ち放った」

 

それが、閉幕の合図。孔明一同は成果を獲得し──この場を立ち去るのであった・・・




間桐宅

エルキドゥ「ふーんふんふふーん、ふーんふんふふーん」

フォウ(エル!駆除はいい、虫の駆除はいいけどやりすぎは良くないよ!蔵が吹き飛ぶ!吹き飛ぶから!)

肩に乗るフォウが釘を刺し抗議を行う。部屋、そして蔵、庭に蔓延る魔術と虫の在処を割り出し徹底的に駆除と掃除と言う名の殲滅を行い、慈悲なく容赦なく刻印虫を破滅させ抹殺していく

「念入りに始末しておこう。屋敷にしては薄暗すぎる。虫が湧き出すなんて我慢ならない。汚れ、カビ、錆を屋敷ごと清掃いたします、エルキドゥクリニックー」

(しちゃダメだから!しちゃダメだからぁ!程ほどに!程ほどにぃ!)

駆け抜け駆け回り掃除を行い、害をなす存在を徹底的に内部駆除するエルキドゥを屋敷に放ちし間、英雄王、英雄姫の二人は一人の少女を介抱していた

──身体機能の低下と臓器衰弱、精神磨耗が著しいですが・・・生命に別状はありません。カプセルに搭載し、損傷した各部位を治療いたしましょう

《うむ、こやつは虫に純潔も奪われたようだ。そちらもアフターサービスで治してやるとするか。──本体の虫め、心臓に巣食っているか》

間桐桜の身柄を確保し、治療を絶えず施す二人。心身ともに快癒させ、未来を保証する。彼女の傷を、可能な限り彼女の下へ返還するのだ


──透過宝具を使い、心臓に巣食う虫を摘出致します。親指大の大きさなので補足は可能でしょう

《うむ、暫し目を閉じるがよい、エア。ハートキャッチバビロンチョップは些か刺激が強かろう》

エアが言葉に従い目を閉じ、右手に霊体透過の魔術を施し──

「はう・・・っ・・・」

桜の左胸に右腕を突き刺し、一つまみにて虫を摘まみとり摘出を行う

「まったく、我が玉体が穢れるではないか。入念に殺菌せねばな」

その言葉を最後に──渾身の力にて、間桐臓硯の本体たる虫を握り潰し抹殺する

『ぐぎゃあぁあぁあぁあぁ!!』

同時に、本体を抹殺された500年の妖怪もまた消滅し、あえなく霧散と相成るのであった。彼の不運は、悶え苦しむ息子を愉悦にて眺めており外出していた事に尽きる。人知れぬ断末魔を残し、彼は無惨に息絶えたのだ。他者の苦悶を悦とする・・・その悪辣さが身を滅ぼしたのである

《チ、右手が汚れたではないか。エア、殺菌の御絞りを用意せよ、入念に除菌せねばおちおちお前に触れられぬ》

──はい、勿論です!・・・彼女は眠らせ、カプセルの中で保護しましょう。・・・主がいなくなってしまった屋敷はどうなさいましょうか?

《ふむ、そうさな──カリヤとかいうマスターが此処に来るまで事を荒立てるも上手くはない。外装を抜きに手を加え、改築を果たすとするか》

──つまり・・・!?

《しかり!改築、出張編よ!!》

「ギルー、始末は終わったよー」

(裏からひっくり返すレベルだった・・・)

・・・そして、アフターサービスとなり、興が大いに乗った御機嫌王による出張改築にて、間桐邸は豪奢に生まれ変わる事となる

暗がり、薄暗い分厚いカーテンは総て取り払われ、古びて老朽化していた素材は総て取り替えられる。虫や蔵などといったトラウマを思い起こさせるものは総て塗り潰し取り壊し、清涼感と清潔感を重視したものへと取り揃える

「あのカリヤとかいうマスターは法治国家に馴染めぬダメ人間よ。サクラに徹底的に家事をさせねばなるまい」

パールヴァティー「桜ちゃんの守護はお任せください。必ずや護りきります!」

エミヤ「では、栄養食は私が作ろう。カリヤがこの場に来るまで、この家の執事は請け負った」

ギルガメッシュ「好きにするがいい。サクラはカプセルに放り込み安置しておけ。カリヤが再び足を踏み入れるまで、門外不出としておけよ」

──よろしくお願いいたします、皆さん!そして・・・第二拠点、ゲットです!

外部以外はゴージャスに生まれ変わった間桐邸。妖怪は駆除され、清掃が行き届き、桜は身を癒しながら眠りにつく

「さて──次はあの煩悶に生きる神父めを導いてやるとするか」

──煩悶に、生きる・・・?

《破滅を愛し、醜悪を美徳とする天性の破綻者よ。答えを求め益体の無い苦行に身をやつす困窮、我等の手で幕を引いてやろうではないか》

──分かりました。如何なる王の采配も、全霊にてお支えいたします!

新たなる拠点の留守を任せ、王は天空に飛び出し、更なる完全無欠の布石を打つ──

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。