人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ハサン「ぎゃああぁあぁ!?」

「だ、誰だ!?我々に気付くなど・・・!!」


エミヤ「恨みは無いが、これも仕事だ」

「べ、別口の召喚だと!?なんと、悪辣な──!」

「──卑怯と思うか」

「ぐはっ──!!」

「なら、それがお前の敗因だ」

カプセル病室

「あなたはサクラを幸せにするために戦いを?では、聖杯戦争に勝てば即座にサクラは救われますか?」

カリヤ「そ、それは・・・」

「それに、遠坂トキオミを害する事が、サクラの・・・家族の幸せに繋がると確信しているのですか?」

「うぐ・・・だ、だけど俺は・・・」

「貴方のような即席の魔術では、無駄死にが関の山でしょう。許されません。それに──」

「う、うぅ・・・」

「あなたのような浮浪者では、子を養うなど叶いません。聖杯戦争に参加する前に、あなたは働き口を探すべきなのです。甲斐性を持たなくば、あなたが助けたい少女は助かりません。そんなだから──あなたは遠坂トキオミに男として負けているのです」

「がはぁぁっ──!!!」



──ギル。今からワタシは、英雄王対策の戦法を構築したいと思います。どうか、力を貸してください。完全無欠の勝利の為に

《ほう。とうとう本腰を入れた攻略か。良かろう。必要な情報が大幅にあれば伝えるがよい》

──はい、では・・・

(エア?)

──エミヤシロウとの・・・戦闘の記録を

《──ふっ、お前の本腰と気迫が伝わってくるようではないか。良かろう、我が恥辱──祓ってみせるがよい!》

──はい、必ずや!


ACT―7『ケイネス御輿の陣』

「君の提案の通り、マトウカリヤに使い魔を送り交渉を行った。バーサーカーは共闘に応じるそうだ。滞りなく順調に事は進んでいる・・・やはり未来からの介入とは素晴らしき優位性だな」

 

上機嫌に鼻唄を歌うような口ぶりで、ケイネスは朗らかにリアクションを見せる。令呪も貰い、何もかもが順風満帆の展開に頬を緩め、見るからに心を弾ませている様子が手に取るように感じられる。分かりやすい人だなぁ、とリッカ達は微笑ましげに顔を見合わせ笑い合う

 

(一周回って可愛いくらいじゃない?この人)

 

(確実に契約の穴を抜かれて酷い眼にあうタイプだよ、この人。文面や書分を早とちりしちゃうやつ・・・大丈夫かな、悪質な詐欺に引っ掛からないと良いけど・・・)

 

(大丈夫よ、ロードなんだから。なんやかやでうまく切り抜けるわよ)

 

(み、皆さん。思ったことはくれぐれも口に出すことの無いように・・・)

 

思い思いの所感をレイラインで会話しながら、エルメロイ二世の手腕を拝見する。上機嫌さを現し振る舞われた紅茶を啜りながら、エルメロイは気持ち沈痛げに目を伏せ、ぐぐっと嘆きを含ませた言動にてケイネスに告げる

 

「恐れ入ります。しかし残念ながら、その件についてはお手間を取らせるだけの甲斐があったかどうか・・・」

 

「何?どういうことかね?」

 

令呪を手にしておきながら、それを徒労と告げられたに等しいその言動に、疑問と細やかな困惑を表すケイネス。全く予想外の切り口に、え?といった顔をしたリッカをマシュが隠す。エルメロイは自らのペースに持ち込んだことを確信し、言葉を紡ぎ上げる

 

「こちらでも大きく進歩がありました。いや、決定的な成果とも言えましょう。いくつかの不確定について観測がつき、パラドックスを回避しつつ開示できる情報が大幅に増えました。結果──今こそ私は、貴方に全ての真相を語ることができます。この冬木市における聖杯戦争の真意を」

 

「えっ」

 

今それ言っちゃうのですか?と言いたげなマシュのほっぺをむにーと引っ張りつつ進展を見守る。エルメロイは何を考えているのだろうか。まさか汚染された聖杯の所在と事実を告げるのだろうか。そんな疑問を抱きながら、更なる会話が行われていく

 

「な、なんだそれは?」

 

「そもそも奇妙だとは思いませんでしたか?万能の願望機を奪い合うなどという大仰な大儀式が、時計塔を遠く離れたこのような僻地で開催されたこと。七人を募った参加者のうち、魔術協会の為に用意されたのがたった一枠限りしかない点・・・」

 

「う、うむ。まぁ、だからこそ然程のリスクもない、評判倒れの遊興だろうと見越して参加した訳だが」

 

『なんと甘い認識なのかしら・・・戦争を決闘や物見遊山として死地に赴くなんて・・・いえ、ここは御三家の巧妙悪辣さを称えるべき、ね』

 

オルガマリーが頭を抱える。確かにこれはエルメロイを責められない。エルメロイが挙げつらった違和感と問題点は正しく撒き餌、生け贄を招くための布石である。魔術師、いや・・・貴族の観点ならば田舎の祭りでしかないと判断するだろう。其処には一定の理解を示しつつ、やっぱり才能と発展の損失を考慮していない軽薄な振る舞い・・・失われてはいけない人物であるからこそ、その迂闊さにマリーは頭痛を覚えるのだ

 

「評判倒れどころかその実体は有名無実。ここ冬木での聖杯戦争とは、実は虚構でしかありません。・・・全ては我がアーチボルト家の政敵、トランベリオ一派による陰謀なのです」

 

その驚愕の事実(笑)を臨場感たっぷりに伝え、ケイネスを実態なき事実で煽り出す。時計塔に詳しいエルメロイでなければ出されぬ切り口。嘘八百の語り出しに、ロマンはつい驚愕を顔に出してしまう

 

『聖杯戦争って時計塔の陰謀絡む余地なんかあったっけ!?』

 

『落ち着きなさい、嘘よ嘘よ!・・・嘘よね、多分』

 

「ある期間だけロード・エルメロイを時計塔から引き離し、その留守の隙に乗じて一気に魔術協会内部の勢力を拡大しようと言う企みなのです!」

 

「な──なんだとぉ!?」

 

突然の時計塔からの刺客と陰謀。張り巡らされる罠。エルメロイを貶める落とし穴の存在に眼を剥いて仰け反り驚愕を表すケイネス。エルメロイ二世は悪びれもせず眉も動かさず、立て板に流れる水のような滑らかさで言葉を紡ぎ上げる

 

「我々は、御身がトランベリオ派の陰謀で罠に嵌められる、という結果だけを知って過去干渉に踏み切りました。ただし、未然の出来事について警告はできない。未来の知識を貴方と共有するためには・・・干渉先の過去時間で、確かに陰謀が存在するという明確な証拠を観測する必要があったのです」

 

『・・・エルメロイ二世の弁舌は大したものね。カエサルさんもビックリな話術っぷりよ』

 

『口から出任せでよくもここまで・・・』

 

「昨夜ようやくその証拠を掴みました。聖杯戦争の開催者たる御三家の1つ、遠坂家から直々に証言を得ました」

 

最早どれが嘘なのか解らぬ程の嘘の中、一つの事実と真実を混ぜ合わせる。リッカのエッセンスも取り入れ、更なる虚構の陰謀にケイネスを巻き込んでいく

 

「この街の霊脈を手当たり次第に破壊してやったのです。勿論聖杯戦争という枠組みとは何の関係もない破壊活動ですが・・・だからこそ遠坂は音を上げた。狂言の聖杯戦争の為に管理地の支配権を奪われたのでは、たまったものでは無いでしょうしね」

 

(あ、だから霊脈を壊してたのかな!嘘の中にホントを混ぜてるね!)

 

(タチが悪いにも程があります・・・)

 

「遠坂はトランベリオ派と共謀し、四度目の聖杯戦争をでっち上げてロード・エルメロイに誘いをかけたと白状しました。研究者としてでなく実戦『武勲』を求めていたケイネス卿がまんまと誘いに釣られるような絶好の闘技場。それがこの冬木の儀式の正体です。招かれた他の参加者も、監督役として引き入れられた聖堂教会も、全てこの狂言に真実味をもたせるための囮にすぎません」

 

そのあまりにもあまりな物言いの陰謀に、ケイネスの怒りと困惑は頂点と化する。確かにこれはリッカにはつけない嘘である。貶めるための会話は、リッカはしたことが極めて少ないのだから。無いわけではない。心理的カードゲームでは常勝無敗な辺りにそれが伺えるのである

 

「・・・なんと周到、なんと悪辣・・・!だが民主主義に傾倒した愚者ども、トランベリオ派ならやる!確かにやりかねない!私は・・・いったい私は何のために貴重な時間を割いてまでこのような徒労を!!」

 

(釣られ、ちゃいましたね・・・)

 

Any good dream was seen(いい夢は見られましたか)

 

外野の言葉を受けながら──仕上げにかかるエルメロイ。そう、サーヴァントと身柄を、同時に確保するための一押しを

 

「まぁ、とはいえ。キャスターを倒したお手並みは実に見事でしたし。ソラウ嬢も改めて貴方の頼もしさに惚れ直したのではないかと」

 

「そ、そうかね?ふむ・・・」

 

「間違いありません。私はその手の女性の感情の動きには敏感なのです。あれはそう──『今まで全く興味が無かったけれど、今回の頼れる一面がギャップになって嫌いが好きに反転した』・・・それぐらいの心の変化では無いでしょうか」

 

「なんという・・・!いや、その前提はなんという!?まあいい、結果は素晴らしいものなのだからな!」

 

ソラウへの感情は紛れもない事実。それを裏付ける笑顔に、ロマンは無言で目頭を抑える

 

『・・・・・・好きでも嫌いでもなかった、つまり無関心かぁ・・・縁談とかお嫁さん、どうでも良かったんだろうなぁ・・・ちょっと僕、この人に同情しちゃうなぁ・・・』

 

『淡白にも程がありますよねぇ・・・私達のようにバッチリベストパートナーでなくば、人生の旅路は辛いですよ~?♥』

 

『クソァアァアァア!!!』

 

『静かになさいムニエル!あなたはまず相手を見つける事からよ!』

 

(止めてくれオルガマリー、その諫言は私にも効く)

 

なんだか妙なテンションになってきた会談を、エルメロイ二世は勢いにて押し切り後押しする

 

「ともあれ、事は一刻を争います。どうか急ぎロンドンへと帰還し、トランベリオ派の陰謀を阻んでくださいませ!いかにアーチボルト家の基盤が磐石と言えど、御身を欠いては民主派の卑劣なる企みに翻弄されるばかりです。貴族主義──我等家門の存亡は、この一事にかかっているのです!」

 

「──えぇい、小癪なトランベリオめ、バリュエレータめ!眼にもの見せてやるわ!!ソラウ、急ぎ身支度を!」

 

ケイネス陣営、此処に離脱。悪辣なる戦争より無傷にて帰国叶いし瞬間であった。何よりその結末を──エルメロイ二世自身が歓待を持って受け入れる。理不尽に死した師を助ける。大願の一つが、叶った瞬間であったのだ

 

「新たなる戦場は海の彼方。マスター、このディルムッドもお供させていただきます!もとより聖杯に託す願いなど持ち合わせぬ身。主の臨む戦場こそ我が槍の見せ所です!」

 

「おぉ、それは心強い。サーヴァントまで同伴するとなれば、『きっとソラウ嬢もお喜びになることでしょう』」

 

「──う、む・・・」

 

その言葉を聞いたケイネスは、即座にランサーに令呪を発動し、勅令を命ずる。割りと付いてこられたら困るためである。ディルムッドは夫婦には地雷案件なのだ

 

「ランサーよ、令呪をもって命ずる。貴様はここに居残り聖杯戦争を継続せよ」

 

「な、なんですと!?」

 

「いかに狂言と言えど、一度は名乗りを上げた以上形だけでも勝利を掴まなければ私の面目が立たぬ」

 

ランサー、居残りが継続。それは即ち、エルメロイ陣営の仲間が増えたことに他ならない。それはそれで・・・ランサーの不憫さに肩を竦める後衛組

 

『あぁ・・・愛の黒子・・・破局と拗れは眼に見えているものね・・・』

 

『イケメンに魅了の祝福とかちょっとね・・・合体事故だもんね・・・』

 

「流石はロード・エルメロイ!我等がアーチボルト家の在り方を心得ていらっしゃる!」

 

おだてにおだて、持ち上げに持ち上げる。これすなわちケイネス御輿の陣。上機嫌となったケイネスが高々と告げる

 

「諸君らには置き土産として我がサーヴァントを託す。名代として当家の意地を示せ。この馬鹿げた茶番に荷担した連中を一人残らず蹴散らして、真の強者が誰なのかを知らしめるのだ!」

 

「お任せください!」

 

「・・・主がそう仰せなら、私には是非もありませぬ。新たなるマスターと共に、精一杯務めを果たすのみです」

 

『口八丁で再契約。・・・スゴいわね。私もここまでは出来ないわ。見習わなくちゃ・・・』

 

『君ネ!私の可愛い可愛い生徒が詐欺師になったら訴えてやるんだからな!』

 

『モリアーティ教授、おまいう案件なのでどうか黙っていてください』

 

『あー、こいつは幸運Eだわー。ランサーの宿命だわー。すっげぇ可哀想だが今の俺は関係無いわー。おれ幸運Cだわー』

 

(聖杯ブーストでCだなんてっ!平均すらたどり着けてなくない兄貴!)

 

『まぁそう言うなよハハハ。自害が無くなったんだ、Aでもいいくらいだぜ?そちらの若武者さんはよ!』

 

そんなこんなで、ケイネス帰国。無傷にして五体満足にて──才能溢れるロードは冬木の地を後にしましたとさ──




牛丼屋

リッカ「セイバー、ランサーゲットだぜ!サクサク進むね!流石カルデアクオリティ!」

マシュ「後は、いよいよ英雄王と退治ですね・・・!決戦の機運が高まって参りました!」

ロマン『ギルもこっちに合流するみたいだ。バーサーカー陣営も連れてくるってさ』

オルガマリー『アーチャーを倒して、聖杯を回収・・・順調ね、エルメロイ二世。・・・?』

エルメロイ「・・・」



「・・・ああ、最後に一つだけ。君は私の書斎で恋文の下書きを見つけたと言っていたな」

「・・・?はい、それが何か?」

「この私がそんな迂闊なものを残したまま、他人の手で部屋を漁らせるなど断じて有り得ぬ話だ。・・・思うに、君があらためた私の書斎というのは・・・主がついに戻らなかった部屋なのではないのか?」

エルメロイ「・・・はい。仰せの通りです」

「ふむ、その一点についてだけは、礼を言っておくべきなのだろう」

「・・・勿体無い御言葉、恐縮です。我が昔日の師。私が目指したロード、偉大なるエルメロイ。御身の才能は時計塔の誇る至宝です。どうか、御自愛なさられるよう」



エルメロイ「・・・・・・」

リッカ「せんせっ」

「?」

「良かったね!」

「・・・ああ。この世界だけの救済だけだとしても。未熟と不甲斐なさで溢れ落とした命を、救うことができた。その事実は──私にとっての宝だ。ありがとう、マスター。理解ある君に仕える事を誇りに思う」

「いいのいいの!さぁ、腹拵えして決戦に行こう!多分ラスボスは近いよ!ほらほら!」

「・・・うむ、では奢るとしよう。牛丼お代わりを一つ」

牛丼王「ふはははは!良かろう!玉子、豚汁、その他諸々ただでつけてやろうではないか!」

「何ッ──!?」

「ギルぅ!?」

『何してるんだい君!?制服なんか着ちゃって!?』

「見て解らぬか。買い取ったに決まっていよう!店舗を拠点とするならば何故一声をかけぬのだ!磐石のサポートに出費など要らぬ!全て我が受け持ってやろうではないか!と言うわけでいらっしゃいませ我が財よ!チーズ牛丼ゴージャス盛りなどはどうだ?」

「いただきまーす!!よーし、腹拵え腹拵えー!!」

オルガマリー『ふふっ。──全くもう。予測や予想なんてバカらしくなっちゃうわね』

ロマン『ホントにね。一から十まで、愉快な王様だよ本当に・・・』

「アルバイト!キリキリ働くがいい!我等は席を外す、店番は任せたぞ!」

ヒロインX「まかない期待してますからね!らっしゃっせー!」


「では行くぞ!目指すはアインツベルン城、仕留める目標は──英雄王ギルガメッシュ!!ふはははは!慢心の毒、祓ってやろうではないか──!!」

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