人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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森林

「こんな所にお城があるんだねー」


「い、一体三陣営は何をしているのでしょうか・・・?」

「聞いて驚くな、ただの飲み会なんだよ、これが」

オルガマリー『の、飲み会・・・?』

「ともあれ、此処は英雄王に任せよう。アーチャー、どう始末する気なのやら・・・アインツベルン、下手を打つなよ・・・」


ACT―8『その総てを懸けて』

アインツベルン城──この戦争の為に、アインツベルン家が用意していた魔術工房。それは街より離れた森林にあり、一般人の衆目に晒されることはない僻地へと在る。其処に──セイバー、ライダー、そしてアーチャー、英雄王ギルガメッシュの存在があることを確認したカルデアは、其処に殴り込みを掛ける。何故其処に王たるサーヴァントたる面々が集っているのか?その一見不明瞭な会合の正体は何のことはなし、ただの飲み会である。──但し、それは王の格を問うものであり、王の器を図るための剣なき問答に他ならない

 

聖杯問答・・・至宝たる杯に懸ける願いを告げ、王たる大望を魅せ、他者をその在り方のみで下す格付け。それらに王の威信をかけた戦いを繰り広げている三騎の王ら。それらは飲み会でありながら死闘、そして遊興でありながら真理を示す戦いでもある。故にこそ、アーチャー、傲岸不遜たる英雄王ギルガメッシュをも提案を蹴ることなく参加したのだ。其処には、王としての譲れぬ矜持を体現しているが故の姿が在る

 

《フッ、口先で示す王道なんぞになんの価値があろう、なんの醍醐味があろう。総ては在り様、活躍と偉容を轟かし振る舞うことにこそ真理が宿るのだ。ま、酒の余興に苦言はよそう》

 

その上空にて侍るヴィマーナ、艦首にて下界を見下ろすはもう一人の英雄王・・・人類史にたった一人にしてただ一度の顕現を果たせしエクストラクラス・ゴージャスとなりしギルガメッシュが、愉快げに鼻を鳴らす。示すは言葉でなく生きざまそのもの。そも、言葉で示せる程度の生き様などに真理は宿らぬと断じる御機嫌王は、しかしてその遊興を無駄とは断じない

 

《何、所詮我等に御破算と相成る儚き宴よ。──エアよ、よいな》

 

自信と確信に満ちた表情を浮かべながら、傍に侍る至宝──英雄姫エアに視線を送る。この瞬間の為に、この決戦の為に策と手順を練りに練った姫は、神妙な、しかして確信に満ちた表情にて頷く

 

──はい。参りましょう。フォウは待っていて。必ず帰ってくるから

 

月夜に照らされ、息を飲むような美貌が微笑む。フォウは何も言わずに、ヴィマーナの制御に勤しみ、二人に激励を送る。今回は、キミたちの出番だと

 

(心配はしてないさ。キミとオマエの帰りを待っているよ。ボクはキミたちの守護獣なんだからね)

 

《ふはは、みるみるうちに上がる好感度が見えるようではないか。さては貴様チョロインツンデレであるな?》

 

(一年も振り回されたら慣れただけだよ!ギル、ギル吉とはちょっと違うんだから油断するなよ!)

 

《油断?慢心?はっ、たわけ。そのようなモノはイシュタルの神殿にくれてやったわ。──その真意、存分に魅せつけてやろう!往くぞ、エア!》

 

──はい!英雄王!今こそ、アーチャーを討伐する時です!

 

飛び立ち、下界へと跳躍落下を果たす。見る間に地上が近まり、点粒程であった人影が数秒の内に接近し、そして視認できる光景へと切り替わる。セイバーを侍らせた麗しき美女、ライダーの傍にて不安げに顛末を見守る少年

 

──いた!

 

そして──きらびやかな鎧に身を包んだ、黄金のアーチャー、英雄王ギルガメッシュ。ぐだぐだ粒子とは関係のない、無慈悲にして冷酷な英雄王

 

手段、力量、対策、そして突破口。それら全てを鑑み、頭に叩き込み、そして決意する。敬愛なる英雄王との対決を

 

葛藤や思慮が無いわけではない。エアにとってアーチャーの慢心も、キャスターの賢明さも、ゴージャスの御機嫌さも等しく英雄王の一面であり、優劣など髪の毛一本程もつけるつもりはない。叶うなら、敵対などはしたくない相手であり刃を向けるももっての他だ。どんな側面、どんな一面であろうとも。英雄王を心から尊敬しているし、敬愛は尽きない。この魂が擦り切れ、虚無へと還るまで微塵も変わりはしないだろう

 

敬意を持つこと、敬愛する事。そして──対立を選ぶことは両立できる。其処に介在するのは、単純な、稚拙でそれでいて揺るがぬ確信と願いである

 

──ワタシは、御機嫌なる英雄王が大好きだから。ゴージャスたるギルが勝利するためにこそ戦い抜く。その為にこそ、ワタシは全霊を尽くす

 

ずっと傍で見ていてくれた、導いてくれた、支えてくれた。至宝とまで呼んでくださったこの英雄王の力になりたい。勝利してほしい。助けたい。それが、英雄王への対立を選ぶ理由に他ならない。自分には、けして譲れぬ思いがある

 

──その為に、ワタシは戦います。ワタシにとっての英雄王は、ただ一人なのだから

 

意志を貫き、敬愛を示すためにこそ。全力で戦う。慢心を懐く王にもまた、全身全霊を込めて打倒する。それこそが、英雄王という存在へ自らが捧げられる大切な気持ちと、宝物だと信じて

 

尊重、敬意、そして対立。──それら総てを、余すことなくかの王に捧げるために

 

──参りましょう、ギル!この特異点にて、成すべき事を成すために!

 

《ふはは!完膚なきまでに蹂躙するぞ!!かの贋作が果たせなかった自分殺し、ギャグ時空抜きで完遂してやろうではないか!》

 

その決意と想いを以て、御機嫌王は御機嫌王たる由縁を示す。酒蔵、その樽目掛け、王が三者顔を合わせるど真中に着地する

 

「なっ──!う、上から!?」

 

来ることは伝えられていたセイバーは驚愕に目を見開く。予想外の来訪に、アイリスフィールは思考が停止する

 

「むぅん?金ぴかが増えおったではないか!?」

 

ライダーは面白げに頷いた後、砕け散った樽・・・そして酒を残念がる。ウェイバーは英雄王が増えた事実に失神を堪えるのに精一杯だ

 

「貴様・・・!この地を騒がせる輩の首魁が誰かと思えば──我の贋作だったとはな・・・!!」

 

その姿、その存在を許せぬとばかりに怒気をたぎらせるは英雄王ギルガメッシュ。唯一無二たる己の贋作。真っ先に叩き潰すべき案件の刺客に、端整な顔を歪ませる

 

髪を下ろし、上半身の裸体を晒し、原初の姿を惜し気もなく曝す、唯一無二、天上天下に哄笑と威光を輝かせる英雄王──

 

「さぁ、感嘆と驚愕にて我を見上げ、揺るぎなく並ぶものなき我が名を称えるがよい!我が名は絶対にして人類最新の御機嫌王!!英雄王──ギルガメッシュである!!」

 

黄金の覇気をみなぎらせ、王気を充溢させし堂々とした立ち振舞いにて場を一挙に制圧し高々に声を上げる。アーチャー以外の存在は大なり小なり、状況を掴めずに困惑を露としており浮き足立っている

 

・・・今こそが好機にして勝機。徹底的に優位性を取り、アーチャーを封殺する。エアは即座に行動を起こし、そして決意と戦意を高らかに瞳に宿す

 

──今です、英雄王!その威光を此処に!

 

《良かろう!我に見惚れ、下手を打つなよ!》

 

二人の合意と開戦の合図の下──

 

「挨拶代わりに我が威光に平伏すがよい!では往くぞ!──AUO!!キャスト・オフ──!!

 

「なぁっ──!!?」

 

「むほぉっ──!?」

 

「なんだぁあぁ!?」

 

一同が驚愕を露にするなか──御機嫌王は纏う総てを弾き飛ばし・・・至高の裸体を顕現させる──!!

 

「ふふははははははははは!!垣間見たかアーチャーの我よ!!貴様と我ではこの時点で格が違う!足許しか見ず、頭の悪い癖を振りかざし醜態を晒すしか能が無き愚昧なる我よ、この性能差を知り恐れ戦くがいい!!」

 

その光輝く裸体、愉快げに笑う御機嫌王とは引き換えに・・・アーチャーたる英雄王、ギルガメッシュは怒髪天と絶対零度の殺気をたぎらせながら、冷静さを投げ捨て即座に抹殺の体勢を示す

 

「──原初の姿を雑種に曝す愚行ばかりか、我が至高の肉体すらも衆目に曝すか・・・!万死に値するどころか塵に還そうとも贖えぬ罪過を示したな、贋作がッ!!良かろう、我が怒り、我が法にて──肉片に至るまで破砕し尽くしてくれる!!」

 

即座に展開されるアーチャーの王の財宝。怒り狂うままに展開された30門程の射出口。豪華絢爛な数多の財

 

「我が至宝を汚した愚行、深淵にて悔いるがよい!!断じて生かしては帰さぬわ──!!」

 

介入すれば貴様らも殺すとばかりに辺り一面無差別に放たれる財宝の無差別掃射。量にて押し潰す事に長けた皆殺しの財射出。並の英霊ならば、即座に押し潰される圧倒的な財の滝。──だが、それらは何一つ傷付けることはなかった

 

「な、にッ──!?」

 

それら全ての財が、『全く同じ財』にて『同じ軌道』にて叩き落とされる。予め用意されていたかのような手段の速さに目を見開くアーチャー。──だが、衝撃は更に畳み掛けられる

 

「ぬ、ぐっ──!!」

 

光輝く黄金の波動から、躍り出るように輝く存在がある。一糸纏わぬ裸体から、黄金の軽鎧を纏い、両手にトンファー──終末剣エンキを装備し一直線に英雄王へ接近勝負に持ち込む存在を、アーチャーは咄嗟に抜き取った剣にて迎撃を間に合わせる

 

「──その慢心、全身全霊を以て断ち切ります。貴方を、泥になどに犯させはしない!」

 

力強く凛とした宣誓と共に、英雄王と鍔競り合う存在──英雄姫ギルガメシアが真っ直ぐに視線を交わす。財にて筋力をAとし、決して力押しをせぬ程に力を高めたエンキの圧力がアーチャーを押し込み、彼を──更なる激怒に叩き込む

 

「・・・貴様ァ・・・!!何処の馬の骨とも知れぬ雑魂風情が、我が肉体と魂を弄ぶかッ!!赦さぬ、断じて赦さぬ!聖杯など最早どうでもよい!よりにもよって──」

 

「──・・・!」

 

「『我自身』を簒奪した愚か者がこの世にいようとはな!其処な賊よ!最早輪廻の輪より組み込まれると思うな──!!」

 

怒り狂うまま乱雑に剣を振り回すアーチャー。それに呼応し、エンキにて無数の剣戟を捌き続け零距離の間合いのまま保ち、英雄王の冷静さを削ぎ続けていくエア

 

「ら、ライダー、これ・・・」

 

「黙ってみておれ。こればかりは手を出しちゃあ命はあるまい」

 

「・・・ギルガメシア・・・」

 

「大丈夫、なのかしら・・・」

 

その流れるように幕を開けた戦いの顛末を、誰もが見守るしかなかった。その、黄金と白金の戦いを──

 

たたかって けいいをしめす おひめさま

 

 

「大丈夫かな、姫様、ギル・・・」

 

リッカがその戦いを遠くにて見守る。アーチャーの始末は英雄王がやると言われ、機を知りながらも見守っている一行は、始まった戦いを見守っている

 

「此処でアーチャーを倒せなければ総てが御破算だ。信じるしかない。・・・それでいいな、バーサーカーのマスター」

 

「・・・あぁ。サーヴァントがいなくなれば時臣も諦めるだろうさ」

 

木にて寄りかかるはバーサーカーのマスター、間桐雁夜。治療にて頭が冷え、体も楽になった彼の思考は、真っ当を保っている

 

「さっさと、葵さんの下へ帰ってしまえばいい。生きていれば、困難なんて力を合わせて乗り越えられるだろうからな・・・」

 

その言葉は、絞り出したものであり・・・葵、初恋の人の幸福に繋がる道筋であった。バーサーカーも、聖杯戦争も最早重要ではない。生き延び、桜の無事を確かめる。それだけが、彼の一つの信念であるのだ

 

「アーチャーを何とかしたら、その時は・・・」

 

「あぁ、バーサーカーの処分を決めておけ。何をするにも、意識だけは保っておくんだ。いいな」

 

「・・・あぁ。・・・藤丸、リッカちゃん・・・だったか」

 

「?なぁに?」

 

まだ絶対安静ながら、雁夜はリッカに告げる。情けないと思いながらも、大事な後始末を

 

「俺が、失敗したら・・・頼むよ。君のサーヴァントで、バーサーカーに止めを刺してくれ」

 

「任された。安心してよ」

 

即答するリッカに、安堵を表す雁夜。──そして、その決断は、即座に現れる事となる

 

「あ──英雄王が・・・!」

 

マシュの言葉の通りに──三分も経たぬ内に、決着は訪れる事となる。勝者となりし英雄王が、敗者に裁定を下すのだ──

 

 

「おのれ、おのれ──!おのれおのれおのれおのれおのれ──!!!」

 

贋作、雑魂であり紛い物である。自らの手で抹殺し裁定を下さねばならぬ。不純物である下らぬ魂が混ざり混んだ下らぬガラクタなど一息に破壊する、粉砕する。そうあるべきだ、そうある筈だった

 

だが、現実は真逆。片端から手に取った財宝を、至宝の一つたる終末剣に叩き壊され、無造作に引き出した刀剣を片端から砕かれる。苦し紛れに放った財宝の射出は『予め用意した財宝』にて総てが叩き落とされ、なんの効果も示さない。自分もろとも放とうと試み、全方位に、展開しようとも──全く同じ射線に財宝を展開され、その射撃は無為と化してしまう。何百、何千、星の夜空のように、辺りを更地にするがごとき数万の展開を行おうとも同じであった。全く同じ様に、総てを叩き落とされる。──財の一つ一つを、知り尽くしているかのように

 

(おのれ、この様な・・・!何故だ、このような下らぬ転生者ごときが、我が財をこうまで完璧に使いこなす!?認めぬ、簒奪者ごときが盗人猛々しいにも程がある・・・!!)

 

完全に劣勢であり、撤退と退却が最早確約した状況でもアーチャーは引き下がらない、引き下がれない。贋作なる自分に下がるなどすれば、それは自らが贋作以下であると明言するようなもの。断じて認められぬ事であるのだ

 

「何故だ!この我が、貴様のような凡骨の雑種風情に、紛い物の存在なぞに傷の一つも付けられぬなぞ──!」

 

同じ土俵、同じ手段で戦っていながら、一方的に不利となる。その真相は、目の前にいる存在が優位を示している事に他ならぬ事を理解していても、けして認められはしない。慢心とはそういうものだ。格下とみとめ、侮りし存在に最適解など選べようはずもない。慢心無くして、けして王足りえぬのだから

 

「比類なき力と威光を持ちながら、ワタシのような存在にはけして本気を出さない。それが貴方の王道であり、ワタシ達が付け入る隙。予め剣を出しているもの、より本腰を入れているものが一歩先を行く」

 

「──!!」

 

「油断、緩慢。それらを言い訳に自らの全力を尽くさず管を巻きし慢心の徒。それが今の貴方。格下と侮りし者に手も足も出ずに敗北を喫する。──それは王ではなく、道化と言うのです。アーチャー」

 

「貴様ッ・・・!!ほざいたな、雑魂──!!」

 

挑発もまた、エアが考案した戦術にして戦法である。とにかくアーチャーの冷静さを奪い、徹底的に乱雑な戦法を取らせ、本気と全力から遠ざける。無銘の頃の弁舌を敢えて振るう。キャストオフにて裸体を曝す、接近戦にて焦らせる。全く同じ軌道と財にて射撃を撃ち落とし明確に格を示す。それら総てが、アーチャーの慢心と怒りを誘う、エミヤシロウの取った戦術に則ったものであった

 

無論、敢えてギルガメシアの姿を曝したのもその一環。自分の中に不純物が在る。転生者の自分が、我が物顔で財を振るう。そういった風に誤認させ、『英雄王ではない英雄王』を知らしめるのだ。そうなれば最早慢心を捨て去ることは出来ない。贋作、紛い物と定めた存在に本気を出せば、或いは至宝を抜けば、裁定を違えた愚王の烙印を押されることになる。王かそれ以外か。それを重要視するアーチャーにはそれは死よりも忌避する結末であろう。──最早至宝を抜かねば立ち行かぬ程に追い詰められながら、断じて認めぬとばかりに接近戦に拘るアーチャーに、エアは畳み掛ける。──その最後を決める為の一押しを

 

「貴方と戦う前に、ありとあらゆる戦法と戦術を考案し、貴方が振るうであろう全ての財と行動を予測し、貴方が行うであろう全てへの対処を把握し、それを今実行し実践している・・・!」

 

「ぬ、ぐっ──!」

 

「なればこそ、ワタシ達が先を行くのは自明の理一!万の財宝、億の財宝をいくら無造作に振るおうと──」

 

エンキをトンファーとして振り回し、回転し勢いを増し、アーチャーの手にしていた武器を叩き壊す。丸腰となるアーチャーを確認し、エンキを剣持ちにて振るう。穿たれる×字の烙印。砕かれる鎧、ダメージを負うアーチャー

 

「『御機嫌王(きゅうきょくのいち)』に叶う道理などない──!!」

 

形勢を覆され、とことんにまで虚仮にされ、圧倒され撃破の分水嶺にまで押し込まれる。苦渋と辛酸を同時に流し込まれるような忸怩たる屈辱を味わいながら、苦し紛れにアーチャーは決意する。最早認めるしかない。この場において、アレを振るわねば勝ち目はないと

 

「おのれッ!貴様のような雑魂ごときに、紛い物ごときに至宝を見せねばならんとは──、何、ッ・・・!!」

 

乖離剣エアを抜き放ち、この場全ての万象を吹き飛ばさんとした──瞬間。アーチャーの動きが著しく制限される。それは──令呪の効力。これ以上の戦力の浪費、更なる秘奥の開帳。そしてサーヴァントの消失・・・それらを断じて容認出来ぬアーチャーのマスターが、令呪によってアーチャーに撤退を──この状況にて最悪の悪手を取ったのだ。アインツベルンのマスターもいる最中、聖杯の儀式に万が一の支障も起こりうる可能性を見抜いた時臣の、賢明なる愚策でもあり──運命は定まった

 

「貴様ッ、時臣・・・!!貴様ごときが我を縛り、王たる我に退けだと!!弁えよ、いつ貴様が我に物申すほどに躍進したか──ッ!!」

 

「──我が至宝を散々虚仮にしておきながら、自らは飼い犬に手を噛まれようとはな。愚昧さも極めれば笑いを取れるとは初めての体験だ。──無論、乾いた笑いに他ならんがな」

 

勝敗は決した。同時にエアは英雄王に主導権を譲り、再び黄金の英雄王に──御機嫌王に総てを託す。露払い、戦術と戦法にて完封したアーチャーに、今こそ裁定を下すのだ

 

「我がリッカをマスターと仰ぐ理由も此処に在る。我等は何処まで行こうとサーヴァント。マスターという楔の質が最終的な勝敗を分かつ王手となるのだ。腹に一物抱えたマスターなど話にならん。底抜けの覇者であり快活な女傑。我を使役するならばそれくらいでなくてはな」

 

「おのれ、このような──!!時臣、貴様!身の程を弁えよ!!雑種ごときに、貴様ごときに──!!」

 

「──召喚の際にエアの記憶は引きつがなんだか。座の本体め、我が至宝を知覚せぬというならば蒙昧の謗りを免れまい。・・・まぁ今はそれはよい。愚昧なる我への処断が、此処で行うべき事柄だ」

 

指を一鳴らしする御機嫌王。エアが振るうエンキが格納され、右手に乖離剣『エア』が握られる。同時に令呪に縛られしアーチャーを更に縛る戒め『天の鎖』が即座に展開され、憐れなる慢心の王を空中に固定する

 

「・・・我が至宝に唾を吐き掛けた罪、この一撃を以て断罪としよう。今の内に退場しておくがいい。これ以上、無様も恥辱も曝すことは赦さぬ。──いくら我が御機嫌であろうと、泥に塗れ人類を間引く醜態なぞ見せれば、流石にエアめの敬愛が曇ろう」

 

──マリーちゃん!リッカちゃん!お願いします!

 

 

即座に展開される固有結界。吹きすさぶ荒涼の大地、暗雲に包まれし吹雪の空間。『人理に寄り添う、希望の華(カルデアス・アニムスフィア)』が、乖離剣の解放を手助けする

 

切られる三画の令呪。乖離剣の解放が格段に速まり、即座に最高出力となり、荒れ狂う地の理の究極となりて世界を切り裂く一撃を示す

 

──王!止めを!この聖杯戦争の最大の障害の排除を!!

 

エアの祈りに応え、乖離剣より溢れ出す真紅の風圧が虹色となり刀身が白金の輝きと為る。それは全身全霊の一撃。財達の支援、バックアップを受けた御機嫌王のみに許された一撃──

 

「さぁ、真偽の違いを知るがいい!これが天上天下、唯一無二たる御機嫌王の一撃よ!」

 

「よもや、貴様──!お、おのれっ──なんたる・・・!!」

 

世界を切り裂く風圧、時空断層。虹色の輝きが、荒れ狂う世界を、完膚なきまでに──慢心に満ちた王を、一閃する

 

「『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』──!!」

 

暴風雨がごとき怒濤、天地を切り分かつ一撃。数多の財の後押しを受け、世界そのものを断ち切る規格外の一撃。──鎖と令呪にて縛られたアーチャーに、防げる道理などなく・・・

 

「なんたる茶番かッ!!このような召喚に応じた我が、愚かであったわ──!!」

 

最後の最期まで、己の慢心と油断を捨てることなく──アーチャーたるギルガメッシュは脱落となる

 

《フッ、思い知ったか。使うべき際に財を手に取らぬコレクターなど二流も二流。──よし。これでエアを落胆させる数多の醜態は未然に防がれた訳だ。ふはは!我への敬愛は永遠不滅よな、エア!》

 

──はい、ギル・・・お役に立てて、良かった・・・

 

《む。──無理をさせたな、エア。御苦労であった。・・・我が至宝の名を賜るに、相応しき活躍であったぞ》

 

王の腕の中で、エアは静かに意識を手放し

 

──・・・すぅ・・・

 

魂を懸け、御機嫌王へ勝利を献上出来た。その事実に──誇らしげな笑みを浮かべながら──




オルガマリー『アーチャー、消滅を確認!ギルの、私達の勝ちよ!』

リッカ「私達の御機嫌王は最強なんだ!!」

マシュ「わ、私も王に何かしたいです・・・!うぅ、圧倒的では守護の立場が・・・!」

エルメロイ「・・・やったか。これで、最大の障害たるアーチャーは脱落だ・・・!」

雁夜「やったか・・・そうか・・・やったか・・・」

「・・・では」

「あぁ・・・バーサーカーを・・・どうするかは、任せる・・・」

マシュ「あ、意識が・・・!」

リッカ「しっかりー!」

「御機嫌王と合流するぞ。迅速に撤退を──」

バーサーカー「UAAAAAA!!」

「!?」

『あ、そうだった!ランスロットはセイバーを見ると・・・!』

エルメロイ「いかん、セイバーに──!」

オルガマリー『ロマニ!特例よ!早く!』

ロマン『非常事態だからね!雁夜君!令呪を使わせてもらうよ!』

バーサーカー「・・・!!!!」

「・・・セーフ・・・!!」

エルメロイ「・・・たすかった。後は、ライダー陣営がどう動くかだが・・・」


ギルガメッシュ「・・・さて。我は今、限りなく損耗している。至宝が安眠に入った故な。今襲い掛かれば、勝ち目は存分にあるやもしれんぞ?征服王」

ライダー「・・・・・・」

ウェイバー「ど、どうするんだよ、ライダー・・・?」

「さて・・・どうしたもんかなぁ・・・」

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