人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ハサン「ぐっ・・・!」
「アインツベルンに来い。さもなくば、お前達の願いは叶わない」
「舐めた真似を・・・!!」
「──それだけだ。期と状況を覆したいなら、唯一つしか取れる手段は無いと思え」
「・・・最早進退窮まったか。ならば──!」
「さて征服王、そなたはどう動く?此処で世界の果てを垣間見ると言うならば相手をしてやろう。その生涯にて夢見た最果ての海は我が背中に広がっている。その見果てぬ夢を叶えるならばただ一つ、我を乗り越えるだけで良いのだ。そら、単純明快であろう?」
侮らず、傲らず、それでいて何処までも愉快げな少年の如くにギルガメッシュは語りかける。自らと矛を交えるならば受けて立つ。アーチャーを下しておきながら、一夜で聖杯戦争を決着させる規模の武力を振るい抜いておきながら微塵も英雄王は疲弊と疲労、消耗を感じさせぬ威風堂々にてライダーに語りかける
「諸事情が挟み、我の蔵は今閉じている。征服と略奪を良しとするそなたには些か物足りぬかもしれぬが・・・安心するがいい、退屈はさせん。ただの一瞬たりともな」
乖離剣に魂を乗せたエア──宝物庫を司る者が休眠に入っている間、ギルガメッシュは扉を開かない。エアに一任し任せている以上、彼女がおらぬ瞬間はけして財を振るいはしない。それはエアの領分であり、担当であり役目である。それを破り、至宝なくとも闘えるなどといった手段はけして取りはしないのだ。姫と王、二人揃い初めてゴージャスとしての力を振るうに値すると・・・ギルガメッシュは定めているのだ
ただし──弱体化、疲弊と嘯く王の姿は想像を絶するほどに磐石である。左手にエアが振るいし終末剣、弓の形態にて二つを取り纏め黄金の至宝として携える。右手には荘厳と覇気を纏う世界を切り裂きし、天地を分かつ真紅の剣、乖離剣『エア』。虹色と白金の輝きは先程より失われど、その威容は微塵も翳らず煌めきを放つ。王の周囲を守護するように展開する天の鎖。──至宝を囲う霊基を守護するための王の武装。・・・全身全霊を顕現させるその理由は、口にせねど分かりきったものと王は定め、そして征服王への意志を示すものとして──眠りし姫を守護するかのように。原初の姿をきらびやかに誇示してみせる
「さて、どうする?愚問に過ぎるがな。聖杯戦争の覇者を決めるとあらば、どうあっても我等と戦う他はあるまいよ。──かつて理解しておりながら誘いを示したそなたへの、意趣返しと言うやつだ」
だ」
その時空、その次元は王のみが知る出来事。しかして──千里眼にて総てを把握したが故の英雄王の提案にして挑発。わかりきった戯言を、何処までも楽しげに告げて見せる
「ふん、なーにが疲弊しているだ、金ぴか。貴様のその姿、最も本腰を入れたものだろうに」
「いや?我を補佐するものが眠りにつき、我が蔵の扉は開かぬ。手に取れる財がこれしか存在せぬと言うだけのさもしい姿よ。精々世界を切り裂くか洗い流すかしか出来ぬ融通の利かぬ状態・・・戦いになどならん形態よ。ま、ゴージャスの心意気を示した姿と受け取っておけ」
クイ、と首を傾け、リッカらマスター一行を呼び寄せる。人類最悪のマスター、軍師エルメロイ。デミ・サーヴァントのマシュ。ランサーはカリヤの介抱にて待機させている。ライダーの前に立ち並ぶ王の財の面々。ライダー陣営が制覇せねばならぬあまりにも高き、世界に聳える峰よりも高き障害が──彼等の蹂躙制覇を阻む
「・・・英雄王。残るはアサシン陣営のみだ。ライダーと事を構える必要はない。此処は矛を納めるべきと進言しよう」
「ふむ、我もそのつもりなのだがな。何はともあれライダー共の意志を聞かねば始まるまい。あの者共の意志を確かめねば、おちおち撤退も叶わぬだろうよ」
くっくっ、と悪戯げに笑う英雄王。この場での絶対的地位を築きながら、あえて成り行きに任せ過程にて愉悦を味わう。即座に終焉と完結を招く力を持ちながらも──それはつまらぬという理由にて番狂わせや進展を歓迎する御機嫌な彼は、残る敵であるライダーの発言を待ち構えている。敵対、降伏。どちらでも構わぬと鼻を鳴らす。どんな選択にも──価値や意味は存在しているがゆえに
「ど、どうするんだよライダー・・・ギルガメッシュがギルガメッシュを倒して、サーヴァントをあんなに従えるマスターだなんて、勝ち目あるのか・・・?」
(カルデアからしてみれば全然なんだよね・・・ギルいるから文字通り百人力なんだけど!)
小動物のように震えるウェイバーを、生暖かく見守るリッカ。もっと言えば・・・サーヴァントが全くいない状態であろうとも継戦が可能なのは言わない方がいいだろう。ただでさえ顔が真っ青だし
「ここは、やっぱり・・・とりあえず、てった──」
「よぉし!!腹は決まった!!」
弱気に屈しかけたウェイバーの弱音と声音を、覇気に満ち溢れた覇王が吹き飛ばす。音圧で吹き飛び転がるウェイバー、震える大気と空気。並大抵の存在を押し潰し、兵士すら気圧される程の覇者の気迫を──ギルガメッシュは涼しげに受け流す
「勿論余らは貴様らと敵対しよう!聖杯を巡る戦いは、いよいよ以て貴様らと余らの一騎討ちの様相を呈したようだ!」
示した答えは、訣別と敵対。その分かりきった解答と行動に・・・そうでなくてはな、と静かに口の端を英雄王は釣り上げる
「この場は互いに退こうではないか。我等の戦いは大一番も大一番!真なる勝者を決する戦いとなるであろうさ!」
「な、な、な、本気かオマエ!?あの、逆立ちしたって勝てそうにない本気の英雄王に挑むってのかよ!?」
ウェイバーの涙目の嘆願を鼻を鳴らして一蹴し、がっしりと腕を組んで睨み返し視線をぶつける。英雄王・・・ではなく。その傍にある軍師たる者に
「英雄王は本命も本命。挑むは必定にして譲れぬ覇道の決戦よ。そんなものは口にするまでもないわ。我等が戦うのは──あのしかめ面した辛気くさい軍師だ」
「・・・!」
真っ直ぐに見定められたエルメロイは、動揺と困惑を精一杯に取り繕い覆い隠しながら問い返す。──かつて、憧れ・・・今も懸命に目指している存在からの敵視。その意味に、言葉の剣幕に悲痛が宿る
「・・・どうしてそうなる?利害関係には何一つ抵触していないだろう!」
「うむ、別に」
そう、敵対など、敵視など、不敬など働く余地などなく駒を進め状況を整えてきた。王の出陣すらも招き、徹底的に保護と友好を信じてきた。それなのに──征服王は、真っ先にこちらとの敵対を選んだのだ。不明と不可解に過ぎる。だからこそ、問わずにはいられない
「こちらはあなたとの衝突を避けるために細心の注意を払ってきたのだ!なのに何故!」
「なんとなく貴様が気に食わん。唯それだけの話だよ」
「・・・な・・・」
・・・リッカは見逃さなかった。かの王に、『それ』を告げられたエルメロイのその表情を。その顔に浮かべ、読み取れし感情の真意を。何故なら、先程その表情を垣間見ていたからだ。アーチャーに罵倒を浴びせられた際、一瞬だけ浮かべていた姫の表情と──とてもよく似ていたからだ。そして英雄王は、その表情を肴に至高の酒を飲み干している
「何で!?オマエどーして肝心な時に限ってそういうワケわかんない理由で動くわけ!?」
「訳がわからんのはな、そもそもこの英雄王らの存在自体、まるきり訳が解らんからだ」
そう、征服王は見抜いていた。自らの戦いではなく、枠組みそのものを害する敵の存在を垣間見ていたのだから
「大盤振る舞いにして女にも成りうる英雄王、見ているだけで寒気がする逞しくおぞましいマスター、人間とも英霊ともつかぬ奇妙キテレツなサーヴァント、ただの予測にしては不気味なほど的確すぎる先読み。明らかにこいつらはこの戦いのルールの外にいる。それでいて積極的にこちらの戦いに干渉しようとしている。──ただ一つ、間違いないのは。こいつらが我々の聖杯戦争を邪魔しようとしているだけだ」
覇者として、覇道を歩むものとして。道を遮り、ましてや破壊しようとする理屈と道理を看過など有り得ぬ相談である。征服王にとってはそれだけで充分だった。それだけで──蹂躙する理由には事足りるのだ
「目的も何も知ったことではないが、余もまた聖杯を懸けた争奪に招かれた英霊の一騎。勝負の枠組みそのものを破壊しようなどと企んでいる連中は、敵よりさらにタチの悪い障害物であろう?」
「・・・ッ」
「そう言うわけで英雄王。余は貴様に改めて勝負を申し込もう。万全と充実をもたらすために此処は一度互いに退くべきだと、先に伝えた通りだが構わんかね?」
その言葉に、三つの至宝を収納し右手を鳴らしヴィマーナを呼び寄せる。──了承の合図にして、ライダーの撤退を許す行動であった
「構わぬ。──今度こそ万全の様相で挑むがいいぞ征服王。我等の舞台は豪華かつ絢爛でなくてはな」
「わはははは!貴様は真に話がわかるなぁ!随分と豪気なものだ、なんというか今の貴様とは物凄く仲良くなりたいぞ!どうだ、戦い終えた際には余の」
「朋友は要らぬ。後にも先にも友は唯一無二。いくら我が万事を愉快に楽しむ王であろうが──我にとっての友と姫は、天上天下にただ一人のみだ」
あっさりとライダーの言葉をはね除けるギルガメッシュ。断られることなど分かりきった上での問答を、愉快愉快と笑う覇王は戦車を召喚し颯爽と飛び乗る
「そりゃあ残念!では互いに鋭気を養いし後にこの戦争の覇者を、雌雄を決するとしよう!では、さらばだ御機嫌王!そして財宝達よ!我等の勝利の暁には、一人残らず略奪し制覇してやるから覚悟しておけ!──さらばっ!!」
「うわわわわわぁ──!!」
神威の車輪を天空に駆け上がらせ、アインツベルン城を後にするライダー陣営。変わらぬ破天荒さ、無軌道にして豪放磊落な振る舞いを愉快げに見上げながら、杯を放り投げる
「さて、行く末はどうなる事やら。我等の戦いは番狂わせか王道か・・・フッ、心待ちにしているぞ。征服王」
遥かな時空にての決戦。それをなぞるか全くの未知か。そのどちらをも等しく歓迎を示し・・・御機嫌なりし王は何処までも表情を楽しげに崩さぬのであった──
エルメロイ「あのライダーの性格が破天荒なのは分かっていたつもりだったが、まさかここまでデタラメだとは!訳がわからないから敵だと?いったい何を言ってるんだアイツは!あぁもう頭に来る!」
マシュ「やはりライダーが絡むとロードは感情的になってしまいますね・・・」
リッカ「言わないであげて。自分が仕えると決めた相手の不興を知らないうちに買ってた訳だから冷静になんていられないんだよ、解るよぉ・・・」
「私は冷静だ!ただストレスに防衛的反応を示しているだけだ!」
オルガマリー『ロードは冷静。マシュ、いいわね?』
マシュ「アッハイ」
ロマン『・・・これからどうするんだい?ギル』
ギルガメッシュ「何、我等のすべきことなど変わらぬ。聖杯戦争も大詰めよ、このまま本丸を攻めるのみだ」
『そっか。──じゃあ、ここから聖杯のルートを・・・』
アサエミ「すまない、少しいいか?」
リッカ「わぉ!?アサエミさん!?」
『あ、抑止力のエミヤ君か。ギル、君の雇用かい?』
「そう言うことだ。──アサシンの始末はどうか」
「全体を此処に集結させるつもりだ。──全員で来るぞ」
アイリスフィール「・・・あなた・・・」
エミヤ「・・・」
「ふむ。一息つくにはまだかかる、か。──ヴィマーナにて我は仮眠を取る。処理は一任するぞ」
(エアはまだ眠っているのかい?)
《あと30分は寝ているだろうよ。至宝同士の共鳴は強力無比ではあるが隙となるな。ま、必要経費と言うやつよ。──常日頃の休暇には、些か短すぎるがな》
──ぎる・・・ふぉう・・・
エルキドゥ『ギル、もっかい言って?唯一無二の?唯一無二の~?』
「たわけ!虫駆除に戻れエルキドゥ!」
『ちぇー。なんてね、ふふっ。・・・ギル』
「ん?」
「・・・唯一無二が、また増えたね」
「──フッ。この我のみの特権だがな」