ちびハサン「・・・」
エア「ここにいて。大丈夫だから、ね?」
「・・・ありがとう」
(エアにだけなつくよね、この子。退去まで安全を保証しなくちゃね)
──うん。保護、だもんね!さぁ、行きましょう二人とも!・・・ギル?
ギル(・・・ふむ。些か何かを見落としているような気がするのは気のせいか?何か我にまつわるものであったような・・・)
──ぎ~る~?笑いすぎてお腹が吊ってしまいましたか?
《フッ、それでは考え事どころではないぞ、エアよ。案ずるな。まぁ、気に留まらぬとはその程度なのだろうよ。うむ、ゴージャスはポジティブでなくてはな!》
──???
(さぁて!ボクも見に行ってみようかな!汚染された聖杯ボクにくれ。マナカに叩きつけてキアラに飲ませよ)
《ふはは、洗浄するに決まっていよう。破壊を選ばなくば、の話だがな!》
「ふふふふはははははははは!!どうやら真相に至ったようだな者共よ!そうだ、結論は其処な人形よ。そやつの比類なき完成度が破滅を確約させるがゆえに抑止が顔色を変え、特異なる染みとなった!愉快よなアインツベルン!貴様らの王手は虚しく空を切るばかりとは!まさに道化、骨折り損のくたびれ儲けよな!」
絶好調、普段の倍ほどの大爆笑が聖杯へと向かう一行、そして代々維持されてきた洞窟へと響き渡る。一同はこの特異点に埋め込まれし爆弾、世界を犯す呪いを汲み取った聖杯へと歩を進めているのだ。目指すべき目標、そして思い至ったこの特異点の成り立ちを理解し、その全容を把握、そして全員に開示しながら
「確かに先入観によって数多の見落としがあった。──未来を把握するも良し悪しか。確定した未来に縛られ、真実と全容を見落とすとは・・・」
「は、話が見えないのだけれど・・・どういうことなのかしら?」
アイリスフィールはその観点、聖杯戦争の内部に在りし者であるがゆえに理解が及ばない。眉間を抑えるエルメロイ、笑い転げるギルガメッシュ。頷いているロマンなどといった真相を把握する面々に微妙においてけぼりを食らっているのである。──この儀式を確定させる揺らぎにして決定的な要因。その鍵を握る彼女の重要性を彼女等に理解させよと言うのも酷な話ではあるのだが
「説明プリーズ先生!マスター組がピンと来てないよ!私も含めて!私も含めて!」
「先輩はステータスの振り方を間違えたエディットキャラみを感じますね!戦闘力も大事ですが技能と知恵に振りましょう!」
「なにおー!だれが誘惑01かなすびぃ!!マーシャルアーツ&キックで大体なんとかなる!あ、料理や園芸も大事だけど!」
『はいはい、脱線してる脱線してる。・・・すみません、御説明をお願いいたします』
「・・・うむ。最早これ以上の闘争に意味はない。勝負と結果は既に導かれているようなものだからだ。抑止力の使者、世界と契約した英霊が在る事が何よりの証拠だ」
アサシン、エミヤの介入こそが証拠。この戦いは因果が確定しているがゆえに起こり得た事象であると宣誓するエルメロイ。人智を越えた存在、マスター無きサーヴァントである彼に、エルメロイは確信を込めた視線を送る
《寝起きに改めて補足してやろう、エア。抑止力には二つ種類がある。人類を存続させる意志であるアラヤ、星を延命させるガイア。これらが世界を破滅から防ぐ防衛機構の仕組みだ。こやつは人類を存続させる意志、アラヤの窓口から派遣された掃除屋であろうよ》
──人智を越え、世界を護る為に現れる・・・それはまさに正義の味方に相違ない存在なのですね!心強いです!
(・・・誰かの為に動くのはまさにその通りなんだけど、型月時空は正義の概念やそれの遵守をすっごくひねくれて解釈してるからなぁ・・・)
エアの穢れない解釈に、フォウは哀しげに耳をしゅんとさせうずくまる。本質はそれで間違いない。──掃除屋と呼ばれる、崩壊事象に関与せし存在の全抹消などといった実力行使は王は語らない。語るまでもない事だからだ
「冬木の聖杯戦争の決着、それは世界の破滅に繋がる。・・・そして今回の儀式は過去や未来のそれと違い、まず間違いなく成功し大聖杯を目覚めさせるだろう。──確約されし破滅、確定せし終焉。特異点、そして我等の介入が必要になったのもそれが原因だ、アイリスフィール」
「そ、そうなのかしら?・・・破滅を防ぐとはギルガシャナさんから聞いていたけど、それは聖杯と関係があるの?サーヴァントの保護もそれが原因?」
未だに全容を、漏洩を怖れ全て開示していないが故の不理解。慌てることなく、エルメロイは言葉を紡いでいく
『──そう言う事ね。破滅の儀式を確約させてしまうから・・・抑止力の使者、アサシンはアイリスフィールさんを始末するために・・・』
「・・・察しがいいな。その通りだ」
「三度めまでは話にならず、四度、五度目は半々。六度目は私達が解体を果たした。その知識との違いを考慮した結果──答えはあなただ、アイリスフィール。聖杯の器の担い手でありながら、サーヴァントを統べるマスター」
そう、『アイリスフィールがマスターとして活動している』。聖杯の器、端末でありながらもマスターとして活動できる完成度、究極にして最高のアインツベルンの傑作、第二のユステーツァとすら言える存在が──この特異点を作り出したのだ
「本来ならば第五の戦争に鋳造される筈であった最高の出来映えたる人形、猛威を振るう筈であったホムンクルスの完成を10年早めた。──勝負を確約させるにはなんら不足も懸念もなき優位性を示すには相応しき程の、な」
「10年?それはつまり・・・」
「そう。英雄王の言う通りだ。──第四次の時点でアインツベルンは姑息なゲリラ戦ではなく、正攻法に勝利を見出だすことが出来たのだ。・・・魔術師殺しを雇う必要も無く、自らの手で悲願の成就を掴める程、な」
そう──アインツベルンは成功し、そして王手を懸けた。外様から呼ぶ必要などなく、真正面から制覇を、勝者と成りうるスペックと優秀さを把握した。──破滅への引き金を確実に引きうる存在として世界に介入される程に
「成る程!腹立たしい程に優秀だったんだね!」
「マスターとして望み得る最強のスペック・・・リッカは除外するとして。さらに最優のサーヴァントを従え、かつ小聖杯の優先権も手中にある」
『やはり、セイバーこそ最強!セイバーこそ無敵!世界よ、これがセイバーです!!』
『・・・かの小さきものは産まれぬ世界か。・・・アインツベルン、命拾いをしたな』
外野のヒロインX、憂い、寂寥を示すヘラクレスの声も上がるなか、それは決定的な事実だった。──アインツベルンは、勝利を手にしているのである
「私の世界の第四次におけるアインツベルンの研究成果は一世代遅れており、ようやく完成した第五次では戦略を誤った」
「無様に狂わされたな、大英雄?」
『裏切りを懸念したとあるが、それは聖杯の汚染にてセイバーのマスターが破壊を決断したからであり、巡りに巡り聖杯が汚染されたのは自らの反則だ。アインツベルンの自業自得のとばっちりを私とイリ・・・こほん、バーサーカーのマスターは受けたことになる』
ヘラクレスは遠くを見るように目を細める。──自らではなき自らが、駆け抜けたいずこかの記録を、霊基に刻まれた記憶を辿るように
「──正直、ここまでアインツベルンが聖杯戦争に王手をかける特例的な状況があるとは驚きだったよ。要約すると──」
『・・・・・・もしアインツベルンがもっと優秀だったら、というifをもとに結成された特異点と言うことになるね』
「無情よな!アインツベルンはアレか、骨折り損のくたびれ儲けの体現者か!どう足掻こうと勝利にたどり着けぬとは恐れ入る!この我も涙を禁じ得ぬわ!そして腹が痛い!報われぬアインツベルンを思うとな!ふふはははははははははははは!!」
腹を抱え笑い転げるギルガメッシュ。徒労であると伝えられなかった事が心残りよ!と愉快さを全面に押し出しローラーを展開させ遊興を堪能しきっているのだ。何より傑作なのは自らの因果が全てを狂わせていることに尽きる。磐石とは程遠い茶番の果てに勝利を掴んだその滑稽さは、ギルガメッシュ本人の愉悦に存分に貢献しているのである
──これも王の財を穢してしまった報い、なのでしょうか。何事も、抜け道やズルは良くないのですね・・・
『それはつまりアレですか!世界と言うかウロブチに『お前がいなければ死人も増えないし皆ハッピーなんだよ』と宣告されたのですか!だから出番が無いのですか!キリツグざまぁwwww』
『狼に襲われるイリヤはいないのだな。あぁ安心した』
思い思いの感想を漏らす一同。だが、笑ってばかりもいられない。──それほどまでに、皮肉なまでにアインツベルンは磐石なる王手を振るっているのだから
「カルデアが検知した聖杯も、恐らくはアイリスフィールの魔術回路そのもの。ここまで完璧に仕上がりしアインツベルンの成果は、まさしく疑似聖杯と呼ぶべき代物だ。・・・だからこそ、次に取るべき手段も見えてくる」
炉心に近付く度に・・・邪悪と混沌を孕んだ魔力を肌が打つ。その生誕を望む呪いの杯が、胎動を行っている。アインツベルンに鋳造されたのがアイリスフィールならば、ゲーティアに鋳造された存在とも言えるリッカが、自らの同類たる呪い・・・第三魔法に達している自らの力を感知する
「・・・回収は無理っぽそうだよ先生。粉々にぶっ飛ばした方がいいんじゃないかな」
肌に感じる悪意の発露。眼に共鳴の紋様が浮かび上がりながらリッカは問う。指向性はまだないが、これは世界にて産み落とされるべきではない類いのものだ。即座に断定せしリッカに、エルメロイは頷く
「あぁ。樽にたっぷりと詰まったニトログリセリンを除去するのは骨が折れるが、ニトログリセリンの爆発を押し込める火力があるならいっそ樽ごと吹っ飛ばしてしまうのもアリだ。楽園のカルデアの戦力ならば実に容易い。儀式の起動さえ阻めれば解体か破壊かは選択できる。──それでいいな、英雄王」
「構わぬ。どのような結末であれ、我等が愉快に笑みを浮かべるような顛末と終幕であるならば財などは一任しくれてやる。──終わりよければ総て良し。退屈させるなよ、軍師」
「期待に添えられればよいが。──着くぞ。此処が大聖杯の鎮座する最奥だ」
一同の所感を合わせ、そして最後の決戦の舞台となる大聖杯の眼前へ──胎動と鼓動を繰り返す、汚染されし聖杯へと立ちはだかる・・・
「・・・セイバー」
「はい、アイリスフィール」
「最後まで、力を貸してね。・・・願った聖杯は、無いかもしれないけれど・・・」
「勿論。私は貴方の騎士です、アイリスフィール」
・・・Zeroへと至る戦いは、すぐ其処に迫っている
大聖杯・前
マシュ「ここは、特異点Fにおいても決戦の舞台となる場所ですね」
フォウ(うぇえ、リッカちゃんと違って気持ち悪い!リッカちゃんが黒曜石ならヘドロかコールタールだ!マナカか!)
エア ──世界を、ギルの庭を穢す呪い。確かに、此のままにはしておけませんね
ギル《フン。このような下らぬものを口にするから下らぬ選択を取るのだ愚昧な我め。泥で魂は染まらねど、余すことなく玉体は穢れるであろうよ》
アイリスフィール「・・・ギルガシャナちゃんが言っていたのはこのことだったのね。これは我々の悲願とする聖杯とは程遠い。──なんて皮肉。ようやく勝利に手が届いたら、既に勝ち取るべき悲願が潰えていたなんて・・・」
エルメロイ「・・・敗北したサーヴァントはキャスター、アーチャーの二騎。アンリマユの覚醒には至っていない。中身が溢れ出たとしても、今は指向性のない曖昧な呪いの塊だ。此処に揃った戦力だけで充分に対処できる」
ギルガメッシュ「──・・・」
──ギル?
《すまぬな、エア。笑ってはいたが・・・我はもしかするとまたごめんなさいねをしなくてはならぬかもしれん》
──え?えっ?
オルガマリー『待って!凄い勢いでサーヴァントが突進してくるわ!ライダー・・・征服王よ!』
エルメロイ「──来たか・・・!」
ライダー「よしよし、まだ間に合ったようだな!いよぅ御機嫌王!悪いが、邪魔立てさせてもらうぞ!」
ギルガメッシュ「構わぬ。邪魔が叶えば、な」
「・・・分かりきった問いを敢えてしよう。アレはあなた方の求めていた聖杯ではない!いい加減騙されたと気付け!」
ライダー「うむ。まぁそんな事はどうでもよいのだ」
ウェイバー「いいのかよ!」
「勝ち逃げを阻みに、番狂わせを演じにやってきたのだ、理屈はどうでもいい。分かりきった結末、筋書きを追い求める味気ない軍師を──覇道の影を追い求め、余と悦びを同じくする猛者を楽しませるために此処にいるのだ」
エルメロイ「・・・なんと・・・い、いや!貴方とて状況判断は得意だろう!世界の危機、大災厄をもたらす呪いだ!なのにそんな、遊び半分な動機で──」
「ま、四の五の言っても貴様も好きだろ?ゲーム」
「──な」
「何を背負い、何を賭けるにせよ。挑むとなれば楽しまずして何のための人生か。もっと熱くたぎるがいい。策士。その掛け金に我が覇道も積んでやる。さぁ、勝負だ」
ギルガメッシュ「覇道を賭けるとは大きく出たな。──だが、やはりそなたは見る目があるな。こやつはそれをするに相応しき・・・」
イスカンダル「然り!是非とも制覇せねば気が済まぬ猛者である!」
エルメロイ「──・・・」
戦いの機運が高まる中──数多の生け贄に反応したか、あまりにも物足りぬ空腹に堪えかねたか
リッカ「うっ──!?」
アンリマユ【あー、あれだ。リッカー。どうやら一致団結のために空気読んだみてー。うわー気が利くなー】
「アンリ・・・!?」
【腹が痛いし、腹が減ったとさ】
その言葉の意味を理解する前に──聖杯より、何かが現れ出でる
【──フゥウゥウゥウ・・・】
巨大にして偉大なる──漆黒の巨人。見上げんばかりの逸者、禍々しき気迫をもたらす、黒と赤の泥にまみれし・・・サーヴァントが姿を現す
(ファッ!?)
──あれは!?
《だから言ったであろう?ごめんなさいね、と。・・・ふはは、自らの死で場を整えるとはやるではないか、愚昧な我よ》
それは、聖杯から溢れ落ちた呪い。儀式を成就させるための手駒。──人類を滅ぼす、死の王
ダレイオス【オォオオォオオォオオォオオォオオォオーッッッ!!!】
最後の障害が、高らかに咆哮を成す──
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