人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
(俺は・・・確か、気を失って・・・)
「・・・桜ちゃん・・・桜ちゃんは・・・」
(死ぬ前に・・・なんとしても・・・桜ちゃんを)
間桐宅
「ゾウケン・・・必ず、お前から・・・桜ちゃんを・・・」
桜「あ、カリヤおじさん。お帰りなさい!」
「!?」
エミヤ「む、ようやく帰宅か。──安心したまえ、桜は無事だ」
村正「ったく。命の賭け時を間違えるんじゃねぇや、馬鹿野郎」
「え、あ、その・・・どちらさ」
パールヴァティー「お話は後です。まずはお休みになってください!まだまだカプセル案件なのですから!」
「桜ちゃ──!?」
桜「うん、大丈夫だよおじさん!みんな、好い人だから!」
「・・・そ、そう・・・そうなのかい・・・?」
(・・・あの英雄王・・・まさか、こんな事までやってくれたのか・・・?)
「・・・桜ちゃんは・・・助かったのか・・・?俺の戦いは──報われた・・・のか・・・?」
【⬛⬛⬛⬛⬛⬛──────!!!!!】
天と地を震わせる咆哮を轟かせし巨大なる王。三メートルもの偉容を示し、辺りにあるもの総てを見下ろし吼え猛るその存在は、黒き聖杯より出る存在であった。身体に紅き紋様、黒く染まりきった巨体は、あまりにもおぞましく禍々しい。その反応は──泥に、悪性の情報に汚染されしサーヴァント。カルデアにも登録されし、覇者を名乗るに相応しき王──
『霊基パターン、バーサーカー・・・ダレイオス三世!聖杯が呼び寄せた英霊のようね。反転しているけれど間違いないわ!』
オルガマリーの言葉と同時に、一同は等しく戦闘体勢を取る。しかし、釈然とせぬ思いもまたエルメロイは懐く。ダレイオス・・・イスカンダルの終世のライバルが、ライダーの縁を辿り招かれるは不思議ではない。問題は何故、そんな召喚が叶ったか、その一点に尽きる。脱落したサーヴァントはたったの二騎。新たにサーヴァントを招けるほどの容量など望むべくもない。ならば、何故このタイミングにて彼は招かれたのか?その疑問は──かの聖杯が取り込みしアーチャーにこそあったのだ
「軍師よ、笑顔で聞くがいい。言い忘れていた・・・というか我が優雅をかました故の失態だが。サーヴァントとしての我の魂の量は凡英霊の三騎分に相当する。故にこそ、あの器には今四騎程の中身が注がれているのだろうよ。溢れ出た飛沫に、サーヴァントを見繕う程度は容易かろうさ」
「・・・なんと・・・納得するしかないが釈然としないな!何処まで規格外なのだ、貴方は!」
アーチャー、英雄王ギルガメッシュの魂は文字通りの規格外、その形容に相応しきもの。一般人換算では数万、サーヴァントとしてカウントしても三騎に相当する圧倒的質量。万が一、彼が聖杯に還元されればそれは、サーヴァントが七騎放られずとも完成を成し得るほどの莫大なリソースとなる。アーチャーを倒した時点でこれは避けられぬ事態であり、エルメロイは──心よりカルデアの方針に胸を撫で下ろした
(アサシン、バーサーカーを保護出来たのは幸いだった!アンリマユの覚醒へ恐ろしい地雷があったものだ・・・!)
ゴージャスを責める気になどならない。どう足掻いてもアーチャーは対処を果たさねばならないのだし、どうしてもアーチャーの聖杯の還元は避けられぬ事態なのだ、どのみちといった事で割り切ることは是非もないだろう。指向性なき呪いが、サーヴァントとなった。想定は越えてきたが、それでも修正が叶わぬわけではけしてない
「ともかく、成すべきことは変わらない!あの聖杯を破壊し、この特異点を救い、修正する!此処にいる戦力ならば充分に対応可能だ!」
ほぼ総てのサーヴァントが集結しているなか、相手は一体。圧しきれない相手ではない。全員でかかれば、五分以上に勝ちの目は存在する。──だが、ここでも、とある一人の覇王は計算の上を行った
「いいや、アレは余が相手をする。首魁たるかの存在との一騎討ち、手出しは無用だ!皆のもの!」
待ったをかけ、戦車に颯爽と飛び乗るは征服王イスカンダル・・・聖杯に招かれしライダーである。かの者とは自分がけりを着ける、横槍は許さぬと高らかに告げたのだ。このタイミングでの独走に、エルメロイとウェイバーは声を上げる
「なっ──!何を言っている!本当の本当に状況が分かっていないのか!あなたは!」
「マジで何言ってるんだよ本当何言ってるんだよオマエぇ!あんなおっかないのいくらお前でも一人で・・・!」
「わはは、そう言うな。アレはダレイオス三世、余の最大最強の仇敵だ。──汚染された聖杯とやらも、それが目当てで呼び寄せたのだろうさ。腹が減ったもんで、生け贄を喰らうためにな。そんなわけで、余を選んだと見える」
【イス・・・カン、ダルゥ──!!!】
肯定を示すように高らかに雄叫びをあげるダレイオス。黒化していようとも、その気概は・・・誇り高き意思は汚せない。求めるものは、ただ決着。永遠のライバルとの決戦。それのみなのだ。聖杯はただ寄るべに過ぎず、目の前に在る存在にのみしか、その覇気は向けられぬ。それは、聖杯にとっても誤算と言えるものだったかもしれない
「それに──アイツは貴様らと違い、聖杯が招き聖杯がもたらした障害にして試練だ。ならば、余が高らかに踏み越え制覇せずして何故覇者を名乗れようぞ。──求めし聖杯が穢れ、狂い果てた戦争であろうとも!余はこの場にて招かれ、覇を競う為に召喚に応じし英霊なれば!その願いのまま、たぎる血潮のままに疾走するのみ!!」
キュプリオトの剣を引き抜き、真っ直ぐにダレイオスに突き立てる。決戦を、対決を是とする合図を、獰猛に鮮やかに真っ直ぐに告げるのだ。戦いは、自らの現界はこの為にこそあったのだと、胸に焔を滾らせながらライダーは叫ぶ
「おう、軍師よ!ヤツとの戦いを終えたなら今度こそ雌雄を決しようぞ!わはは、すまんな金ぴか!大将首は貰っちまうが構わんね?」
「無論だ。我は財達が輝き、我が愉快に愉悦を堪能出来るならばそれでよい。この特異点は成り立ちからして腹を抱えた。後は器を壊すか持ち帰るかの取り決めを残すのみ──我が腰を上げる理由はもう無いのだからな」
──英雄王の魂の件は不可抗力と言うことで!英雄王は凄すぎたのです!
(敵にしても味方にしても一筋縄じゃいかないやつだなお前ホント!)
ヴィマーナを呼び出し、一同を乗せ、宙に浮く。この場は任せ、聖杯を対処するために。その根源を断ち切るために
「最後に確認するぞ。我等が聖杯を手にすればそなたは消滅する。──阻むなら今だが?」
「んー。そりゃそうなんだが言っちまえばこりゃ詐欺の類いなんだろう?泥にまみれた薄汚れた杯なんぞ貰っても困るわなぁ」
ヤツとの戦いを終えたなら──そして、聖杯に向かう彼等を止めない。それはつまり・・・
「ま、生きていりゃあまた巡り会う日も来るだろうさ。余は存分に夢を馳せ、駆け抜ける。あるかないか分からんもんに焦がれ脚を止めるくらいなら、今ある障害に全霊を尽くす道を選ぶ他無かろうさ!」
「ライダー、お前・・・」
「そんな訳だ、坊主。お前も此処で降りろ。ちぃと困難な道行きだ。護りながらはちと厳しい──」
その言葉を言い告げる前に、エルメロイはウェイバーに歩み寄る。征服王が駆け抜ける道を定めた。その道を走ると決めた。ならば──それは。他ならぬ自分にとってもこの上ない分岐点なのだ
「いいや、ライダー。サーヴァントはマスターがあってこそ真価を発揮する。如何に未熟で愚かであろうと、貴方の側にこいつは・・・彼は必要なのだ」
「!」
「そうだろう、ウェイバー・ベルベット。・・・知っているぞ、お前というガキを」
それは、エルメロイ・・・いや、彼という存在が抱えた感情。かつて遠くの記憶に、そして今も抱えし葛藤と自覚。それが解る。目の前の少年の懐く心根が、手に取るように解るのだ
「無力な自分が疎ましい。自らの無能が、凡庸さが憎い。世に誇れるだけの才がないと、劣等感に凝り固まった、自分好みの肖像画を自画像としていた青臭いガキだ」
「な、なんなんだよ、あんた・・・」
「だが──そんなお前が、今のお前だけが。偉大なる王の蹂躙の傍らに在り、彼を助けられる。その右腕の令呪の示す通り、貴様はライダーのマスターなのだから。──自らの弱さを嘆く。その、甘ったれた青臭い夢から、今すぐに覚める覚悟はあるか?」
それはエルメロイの、王に捧げる献策。未来の彼が、未熟で無力なばかりで──王に勝利を勝ち取らせることが、最後まで傍らに在り続けられなかった自分に託す、最後の一手
「身に余る力を振るう恐怖。重すぎる責任がもたらす戦慄を。──まだ青二才のうちに味わってみるか?」
「──ほう、そうか。・・・霊基の進化が進むと『そう』なる理由に合点が行ったぞ。その姿は未熟と──主役の象徴であったのか」
「僕は・・・」
その言葉の意味、その問いの真意。それを思案する。自分が、自分なんかが、このバカデカい王を、ライダーを支えることができるのか。そんな事が可能なのか。・・・戦うということ、王を助けるということ。自らが脚を引っ張り、王を負けさせてしまうかもしれない。自らのミスが、致命的な破滅を招くやもしれない。傍観では赦されぬ責任を、背負わねばならぬ戦慄を考え、足がすくむ思いを感じながら──
「ウェイバーくん、だっけ?」
そんなウェイバーに、声をかけるマスター、リッカ。力を持つ者、戦うものとして。リッカは朗らかにウェイバーの肩を叩く
「そんなに自分を卑下しないの!イスカンダルのずっと傍にいた君なら、絶対に出来る!」
「・・・お前・・・」
「弱くても、辛くても、弱音を吐いても、ずっとイスカンダルと一緒にいたじゃない!そんな貴方だから、彼は君をマスターとして認めてるんだよ!」
リッカの激励を受け、振り返るウェイバー。ライダー・・・イスカンダルも笑っていた。自らの傍らに在りし、友にして勇者たるマスターを見つめながら
「其処の女傑の言う通りだとも。アレだけ戦場を共に駆けながら今更何を言っておるのだ、坊主。身の安全は保証せぬ。だが、共に戦うと言うならば──貴様は余の友でありマスターよ。拒む理由はありはせん!」
「ライダー・・・」
「さぁ、共に往くならば来るがいい!我が蹂躙制覇、見届ける腹積もりはつくはずだ、ウェイバー・ベルベットよ!」
その言葉を以て──少年は心に覇道を宿す。自らの戦いを、自らの戦場を、自分の力で挑む為に。その為に──目の前の、見知らぬ軍師を真っ直ぐ見つめ返す
「──やるさ。やってやるよ。もういい加減、この征服バカに振り回されるのもうんざりだ。自分の面倒くらい、自分でなんとかしてやるさ!」
「──ふふ、やはり貴様は馬鹿だ。身の程知らずの愚か者だ。全く何も分かっていない。・・・だが、だからこそ。彼はお前のようなガキに目をかけてくれたのだろうな・・・」
彼方にこそ、栄えあり。その未熟な存在も、いつか彼方に覇を示す存在になると信じて。共に轡を並べると信じて。彼は──遠き日の自分をマスターと呼んでくれたのだと。万感の想いにて言葉を呟く
【──⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!】
吠え猛るダレイオス三世。時間がない、最早決戦は秒読みの呈を表している。即座に──エルメロイは策を打つ
「私の手を握り、そして念じろ。それ必勝の術、合変の形は気に在るなり、と」
「・・・えっと、それ必勝の術、合変の形は、機にあるなり・・・」
瞬間、力が流れ込む。ウェイバーの左肩にかかる、覇者のマント。沸き上がる力、──仮のよりしろとして、ウェイバーは力を受け継ぐ
「むほぉ!?坊主、貴様なんか凄いモンを宿しておらぬか!?」
「諸葛、孔明──!?うぇえぇ!?」
その存在を知ったウェイバーは声を上げる。夢見た英雄、夢見た存在に、今成っている。かの征服王に、ライダーに肩を並べる存在へと変化している。その驚愕に、声を上げるが──
「頑張れ!大丈夫、相棒を信じて!軍師なら、自分が武力を振るわなくても大丈夫だから!」
リッカの励ましに、我を取り戻すウェイバー。優秀さを、自分の実力を認めさせるための戦い──それが今だというのなら
「ああ、やってやる!やってやるさ!行くぞライダー!最後まで、お前のハチャメチャに付き合ってやるからな!」
「わっはははははははは!!良い、実に愉快だぞ坊主!まっこと快いマスターを持ったものだ!」
「・・・征服王。この未熟なマスターを頼みます。どうか、かの聖杯の呪いを蹂躙し、彼を偉大なる大王の疾走の傍らに」
「フフン、初めからそう熱くなっておれば真っ先に挑んだものを!──おうとも!!観ているがよい、これがライダー、騎兵として招かれしサーヴァント、征服王イスカンダルの現世最後の疾走制覇とならん!!」
神威の車輪が唸りを上げ、蹂躙制覇の咆哮を上げる。彼等にとっての最後の舞台、勝者なき戦いだとしても──
「彼方にこそ、栄えあり──!!!行くぞ坊主!!」
「あぁ!やってやるよ!僕はお前の──マスターなんだからな!」
傍らに──未熟なれど自らの脚で、眼で未来を見据える、遠き家臣となりし少年を侍らせながら──
イスカンダル「待たせたな我が宿敵よ!この身、最後の戦いの相手に相応しきダレイオス三世!だが──いつの世も覇王は二人と要らぬ!!」
【──!!!!!!】
その言葉を以て──決闘、戦いの合図となる。ダレイオスの周辺に展開されし無数の不死軍団。ペルシャにて彼が指揮し、敵対者を震え上がらせた存在が宝具へと昇華された存在──『
「──さぁ、再び集え!!一騎当千、余と共に世界を駆け抜けし猛者たちよ!!」
キュプリオトの剣を引き抜き、戦車が砂嵐を撒き散らし輝きを増し、世界を塗り替えていく
「遠征は終わらぬ!我等に彼方への野心有る限り!!今宵我等は──終世の宿敵に勇姿を記す!!」
世界を塗り替える大魔術、固有結界。共に最果てを夢見た同胞たちが維持する砂の大地、蒼き空。かの不死兵達を飲み込んで大展開される
征服王の背後に参じし、数多無数の勇者たち。彼等は英霊の座にて召し上げられ、それでもなおイスカンダルに忠義を示す伝説の勇者たち
「此処に懐くは我等の覇道!!彼等との絆こそ我が至宝!我が王道!!イスカンダルたる余が誇る最強宝具!勝鬨を上げよォッ!!」
それら総てが王に魅せられ、王の夢を共に追わんとした者達。イスカンダルの王道を体現し、古今無双の絆を示す生きざまの具現──
「『
「「「「「「うぉおぉおぉおぉーっっっ!!!!」」」」」」
評価規格外、ランクEX。不死軍団に対抗する、超弩級の連続召喚にて──かつての軍勢にて、かの王を迎え撃つ──!!
【イスカンダルゥウゥウゥウゥウ!!】
「Aaaaaaalalalalーーaaaaaaai!!!!」
二人の覇王、二人の戦いが──聖杯戦争の最後の戦いが、幕を開ける──
「ア、アァララララァイ!」
マスターの、頼りなくも確かな覇気を傍らに添えて──