人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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イアソン「いいかお前ら!ヘラクレスやアキレウス、ケイローンが教えられない事を教えてやる!せめて身分にあった尺度の服を着ろ!」

オルガマリー「つまり・・・」

リッカ「着せ替え!!?」

「まず真っ先に教わる事だろうが!とりあえず王族の所作も教えてやるからきっちり身に付けろ!アマゾネスや女傑じゃやってられないぞ!然るべき態度の使い分けくらいは・・・」

アキレウス「王族の所作って、アンタ追放されて国持てずじまいじゃねぇか」

イアソン「そういうとこだぞアキレウス!!」

ケイローン「言動に難はありますが、確かな王族の生まれ。これで王の謁見が磐石となりますね、二人とも」

ヘラクレス「任せたぞイアソン。武力はまるでないお前のカリスマや弁舌、活かしてやってくれ」

イアソン「そういうとこだぞヘラクレス!!」

リッカ「騒がしくなったね!マリー!」

マリー「そうね。そして──」

ケイローン「それでは、メディアを呼びましょうか」

「いい加減にしろお前ら!!俺はギリシャの王だぞォ!!」

アキレウス「(予定)がつくけどな」

ヘラクレス「(未定)だろう」

「よーし!その喧嘩買ってやる!!庭へ出ろぉ!!」

「「ほう?」」

「あ」

このあとメチャクチャパンクラチオンされた




雪の様に積もり、華のように咲くために

「はっ、はっ、はっ・・・」

 

足早に、しかし視線は真っ直ぐに。豪華絢爛の色に彩られた通路を、澱みない足取りで歩む者がいる。時刻は午前七時、早起きにして活動には些か早い時間帯。夜型の人間には中々に辛い時間、規則正しく起きて活動する一人の少女は、みなぎる力をそのままエネルギーとし、迷いなく足をとある部屋へと運んでいく

 

 

(気を抜いたら成長し強くなっていく所長に、先輩・・・私も負けていられません。日常においても自主訓練を欠かさないようにしなくちゃ!)

 

少女──楽園カルデアに所属する職員であり、そして人類最悪のマスターたる藤丸リッカのメインサーヴァントの一角、マシュ・キリエライトは決意を強く示し、鼻息荒く拳をぐっと握りながら、揺るぎない歩をとある部屋・・・会計室へと運んでいく

 

そう、彼女は更なる自らの鍛練、そして力の向上を求め、訓練の為に先達の下へと足を運ばんとしているのである。自分の親友にしてカルデア所長、オルガマリー。そして自らのマスターにして先輩、藤丸リッカの著しいまでの成長に触発されたがゆえの決心であり、向上心豊かな彼女ならではの前向きな決意の発露・・・それを特訓、訓練と言う形で表し、もっともっと自分を磨こうとせんがための特訓を行う為に。自らの師匠、トレーナーに教えを乞うために早起きし、自らと共に修行してもらうための許可を取りに向かっているのである

 

(ますます強くなる先輩達に負けてはいられません。先輩が女子力を磨き、所長が業務に励むなか、私は私に出来ることをしなくては!)

 

マスターたる藤丸リッカの活躍は最早言わずもがな、最近は所長、オルガマリーも疑似サーヴァントとしても奮闘し、楽園における不穏分子たるBBの鎮圧に成功したと聞き及んだマシュの心は自慢と、より励みとなる克己心が生まれていた。最早サーヴァントというだけでは彼女達に並び立つことは叶わない。強く輝かしくなっていく二人の親友に並び、肩を並べて戦うために。より一層自己鍛練や自己訓練に力を入れていかなくてはならないと痛感、同時に確信したのだ。其処に劣等感、焦燥が生まれていない。もう既にそういった感情からは、かつてのオルガマリーとの対話にて振り切っている。──距離を離されたなら懸命に追い掛け、何度だって頑張って、踏ん張って並び立ってみせる。いつか、自分の目標である『世界を切り裂く一撃』を防ぎきる為にも。自分自身の為に研鑽を重ねると言う指標を見付けているのだから。・・・マスターの様に、乗り越えるべき相手は自分自身に他ならないのである

 

「よし・・・!おはようございます!マシュ・キリエライトです!朝早くから申し訳ありません、特訓にお付き合いいただければと!」

 

活発快活なマスターへの影響を存分に受けているのか。一年前の彼女から想像もつかないような積極性を見せ、彼女は、最も尊敬する人物の下へと脚を運ぶ──

 

がんばって ふんばるこがすき けものかな

 

 

 

「それでは!始めましょうッ!レオニダス・教義座学!計算に満ち溢れた──マンツーマン授業ッ!!よろしくお願いいたします」

 

響き渡る怒号・・・ではなく、単に声が大きいだけな挨拶。会計室にてお茶とお菓子、丸い机を挟んで椅子に座った鍛え抜かれし鋼の肉体を持つ男──スパルタの王、レオニダス一世が兜を取り、規則正しく頭を下げ、マシュも倣って挨拶を返す

 

「よろしくお願いいたします!レオニダスさん!さぁ何を行いましょう!兵士100人組手でしょうか!それとも拠点防衛でしょうか!なんでも、マシュっと取り組んで見せます!」

 

リッカやオルガマリーの師匠のように、マシュにとって師匠と呼べる存在が彼、レオニダスその人である。10万のペルシャ兵に300人で立ち向かいし炎の門の守護者。誇り高き理性の人。王にして会計に勤しむ計算を愛せし存在に、マシュは常に教えを乞うているのだ。彼は脳筋、または単純とも誤解されがちな最適化された思考の持ち主であり、誤解する者もいるが・・・マシュにとって、守護に専じた彼ほど『師事』するに相応しい英霊はいないと考えるほどにレオニダスを尊敬し敬愛しているのである

はいないと考えるほどにレオニダスを尊敬し敬愛しているのである

 

「ははは、まぁそう焦らなくてもよろしい。マシュ殿に必要なのは死地への倒置ではなく勇気と決意、そしてちょっぴり(体脂肪率少数点以下基準)の筋肉!!身体の酷使は程々に、常に心を磨きましょう!つぅまり!!──御勉強です」

 

「はい」

 

御互いに頷き、向かい合ってお茶を飲む。クールダウンした後に黒板に向かい、かきかきと文字を書き上げるレオニダス

 

「心構え、士気に・・・笑顔?」

 

「はい。守護の際に必要なマシュ殿専用のファクタァ!!まぁつまりあなただけの心の支えですな。これはとても大事な事なので、きっちり染み込ませて行きましょう。筋肉に貼る!湿布が如くッ!!」

 

しっかりと伝える、要訣──コツと言われる部分。いつも行う身体を動かす特訓とは違う座学にて、彼はマシュを導いていく

 

「はい。まずは心構え。マシュ殿、イメージしてください。今貴方は極限の戦いに身を投じています。自らの勝敗が戦の決定打となる天下分け目の戦い。目の前には強敵、迫り来る驚異。その時に、貴方は如何なる想いを胸に抱きますかな」

 

「極限の、戦い・・・」

 

例えば、負傷したマスターを庇う戦い。小さな農村を護る戦い。背後に護るものがある戦い。そんな際に、自分はどうするか・・・問われたマシュは思い、考える。──そして、その考えをレオニダスは静かに告げる

 

「貴女は恐らく『負けられない』と思うことでしょう。負けるわけにはいかない、ここは通さない、死ぬわけにはいかない・・・優しい者、奮い立つものはこういった思考が多いものです。一つの踏ん張りではありますが・・・些か肩に力が入りすぎており、気持ちでは圧されておりますなぁ」

 

「そ、そうなのですか?」

 

「えぇ。『負けられない』とは即ち『負けるかもしれない』と言い替えてよろしい。敗北のビジョンが頭をよぎっている状態であり、思い浮かぶことも最悪の結末であることが多いです。これはいけません。技体が勝っていても、心では一歩負けているまずい状況。心が屈するのも遠くはないでしょう」

 

レオニダスは告げる。『負けられない』ではなく、『負けるはずがない』『負けてたまるか』といった感情と上手く付き合う事が大切である、とマシュに告げ、イラストを交えた授業を進めていく

 

「慢心や傲慢ではなく、自信と確信を持つのです。窮地にこそ積み重ねが問われます。何万回攻撃を防いだ、何万回シミュレーションに勤しんだ。今までに取り組んできた守護者としての経験。これが背骨、竜骨や支柱になり、窮地を支えてくれる。気の持ちよう・・・後者の二つの心持ちは、その想いを引き出し易くさせ、自らの身体を奮い立たせてくれる勇気の言葉なのです!」

 

「勇気の言葉・・・」

 

「そう。追い詰められた時にこそ、日常や特訓の積み重ねを思い出すのです。自分は存分に積み重ね、奮闘したが為に此処にいる。弱音か奮起か。これが守護と生死の境となります。勇気の振り絞り方はマシュ殿の最優先課題。どうか、忘れないように」

 

その言葉は知恵と理性に満ち溢れし助言。理性を伴う後押しの言葉。汗は流さねど、百の組手に勝る心構え

 

「はい!レオニダスさん!ポジティブシンキング、という事ですね!窮地にこそ、ポジティブに!」

 

「如何にも。盾の固さは心の強さ。どうか、忘れることなきように」

 

リッカやオルガマリーとはまた違う、冷静な座学。心の在り方を問う守護者の会談。それらは続いていく。盾の在り方を、守護の要訣を問い掛けまた飲み込んでいく

 

「守護者の士気の向上の仕方。それはまさに先程の心構えに在るのです。剣を振るう者が求めるのは首級にして名声です。首をとれば自らの覇権に繋がるのですから当然でしょう。しかし、私を含めた守護者が求むるもの、そして護るもの。それは・・・笑顔なのです」

 

「笑顔・・・」

 

「その通り。背中にいる人間、大切な人々の笑顔。それこそが肝要なのです。それこそが盾を構える理由。それこそが奮い立つ想い。盾を振るう者達の士気を最大限まで高めるものなのです。浮かべるもよし、思い出すも良し。万能の特効薬にして起爆剤なのです!そして士気を高める効果もあり、一石二鳥!実に!効率的です!!」

 

その教えは、傷付けるものではなく、護るものが抱く心構え。己を信じ、勇気を絞り出す言葉

 

「はい!笑顔を思い浮かべ、窮地でも笑みを忘れず、自らの積み重ねを信じる・・・!それが、守護の要訣と心構えなのですね!」

 

倒すのではなく、護るための戦い。その為の座学。だからこそ、マシュは笑顔で積極的かつ、自主的な研鑽に励み続けるのだ

 

「その通り!!これらは三位一体!笑顔、心構え、士気!あなたの強さは恐怖を勇気で抑え込める事です。焦らず、見失わずに。己の強さを追い求め、これからも磨いていただければと!」

 

「・・・!」

 

その言葉は、此処ではなく・・・遥か神代、かつてのバビロニアにて告げられた言葉。かの賢王にすら認められし守護者の、決戦の前夜に告げられた言葉

 

「・・・・・・ふふっ」

 

「?おや、早速実践でしょうか!よろしいですよマシュ殿ォ!それではぁ!!朝御飯の時間です!その後に・・・シミュレーションと参りましょう!!」

 

そう、焦る必要はない。護る強さ、戦う強さ。二人とは違えど、確実に身につけるべき強さ。──だからこそ、迷わない。挫けることなく、そして・・・焦らない。自分には、自分が身につけるべき強さ、進むべき道が開いているのだから

 

「はい!裸で豹に挑んだり、狼と戦ったりするのですか?先輩なら確実に裸でやるでしょうが、私はまだその領域では無いので装備はさせてください!」

 

「えぇ、女性には論理的問題が今はありますからな。我がマスターも一回突破した後は、下着を着用しております」

 

「──突破したんですか!?裸で狼と豹を!?」

 

特訓と、自身の研鑽。いつか、先輩と所長に心から頼りにされる自身を目指す為に。雪華の少女は日々を過ごす──




数時間後

マシュ「シミュレーションルームで特訓・・・先輩や所長に追い付くためにも、頑張らなくては!設定はレオニダスさんがしてくださるそうですが・・・」

(どんな難易度になるのか・・・でも、私は負けません!レオニダスさんに恥ずかしくないように──)


「うぉおぉお!死ね!死ねぇえぇ!!」

マシュ「!?」

シミュレーションルーム


「うぉおぉお!!うぉおぉおー!!!」

「レオニダスさん!?雄叫びを上げてそんな狂乱して・・・!」

(な、何があったのでしょう!?そんな、レオニダスさんが!理性の塊のようなレオニダスさんが・・・!)

「死ね!死ねぇえぇ!!」

「レオニダスさん!落ち着いてください!一体何を──」

「うぉおぉお!幽霊こわいー!!!」

「・・・え?」

「なんたる不覚!マシュ殿に触発され弱点を克服しようとしシミュレーションを起動して幽霊を出したはいいが、全く動けないとぅわ!私!実在している相手なら竜すらワンちゃんに見える男ですが幽霊だけは!幽霊だけはダメなのです!!ぬぅう、だが、逃げる訳にはいかない!マシュ殿も戦っているのだ!弱点を!克服しなくとぅわ!!うぉおぉお力を貸してくれ同士達!!テルモピュライ!エノモタイアゥアゥアゥ──!!」

「・・・・・・」

・・・この後、教わった全てを懸けてレオニダスさんを救出いたしました

幽霊がダメ・・・その予想外の弱点を知らされた際のレオニダスさんは・・・どこか小さく見えました

「ゴースト、克服しましょう!」

「こ、克服ですと・・・!」

そうして、一日を懸けて・・・レオニダスさんのゴースト克服訓練を通じ、教えを反復いたしました

ゴーストに震えながら奮闘するレオニダスさんを見たら、なんだか・・・より一層、レオニダスさんを近くに感じられた気がしました

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