人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エルキドゥ「というわけで、シミュレーションルームを壊しちゃったんだ。ごめんなさい」

モーセ「杖を二度叩くつもりはないよ。ごめんね、ラーメス。英雄王」

ギル「──────」

──ギ、ギル?むしろ彼等の激突でシミュレーションルームがひとつだけと言うのは不幸中の幸いであったと提言させて下さい。清掃ならワタシが行いますから、朋友に情状酌量の余地を・・・

「謝罪が出来たのだな、貴様ら・・・」

フォウ(そこ!?)

エルキドゥ「酷いなぁ。僕は品行方正じゃないか。礼儀もきちんと弁えてるよ?普段の君と違ってね」

モーセ「非を認める事こそが贖罪の始まり。罪の浄化はまずは寛容と容認からさ。というわけで」

ネフェルタリ「というわけで、ではないでしょう?ほら、皆で清掃よ。はい、箒を持ちなさいね」

「・・・はい」

「フッ。余は許す。御機嫌の、許す事を許そう」

「なんだその二段寛容は!まぁよいわ、清掃も業務のうちよ。友の不始末は我の不始末なのだからな!ふふはははははは!!」

──良かった・・・万に一つも仲違いなど、してほしくはありませんでしたから・・・

《ふはは、杞憂は心労に繋がるぞ。少し肩の力を抜くがよい。我等のノリに慣れれば大抵の事象は素通りできる胆力を身に付けられるであろう!》

──王よ、それは胆力ではなく諦めの境地と言うのです!でも・・・笑顔はずっと、絶えませんね!

「ギルー、ちりとり出してよー。というか全自動掃除機とか・・・」

「横着するでないわ!地道にやるがいい、地道に!我以外の全てに赦された道であろうが!」

ラーメス「塵取りを持とう!箒を振るうがよいモーセ!」

モーセ「君太陽王的にそれでいいのかい?」

ギルガメッシュ「ふふははははははは!!我等にかかれば清掃も絢爛行事よ!さて、一気呵成にお掃除と行こうではないか!!」

──はいっ!ネフェル、終わったときに食べるおやつを作らない?

「えぇ、もちろん!」




凱旋の宴

「よぉおーし、お前ら、今日は遠慮も敬遠も抜きといこうや」

 

宿敵であったグレンデルを討ち果たし、因縁に再びの終止符を打った理性の狂戦士、ベオウルフ。彼の五体にて決着を果たされた戦いの後、一行は意気揚々と帰還を果たす。本来ならば戦利品を持ち、民達を鼓舞し、そして歓待の中宴を上げるのが相場と決まっており、ベオウルフもそれを理解していた。だが、グレンデルは不定形の怪物であり性質上持って帰れるようなものは乏しく、同時に、あのような邪悪を持ち帰る様な真似もまた憚られた。それが呼び水となり新たな困難や火種、無用ないさかいに発展してしまっては皆に申し訳と面目が立たねぇ、と彼は頭を捻り考えた。ならば、世話になった連中と食い扶持をくれる仲間に振るえるものなど一つしかない。よって──

 

「今日は俺の奢りってヤツだ!どんな肉だろうが焼き加減だろうが思いっきりサービスしてやらぁ!食って食って、もひとつ食っちまえ!ジョッキは持ったな!──乾杯!!」

 

「「「「「かんぱーい!!!」」」」」

 

彼が振る舞いしは商売やコスト度外視の大盤振る舞い。グレンデル討伐キャンペーンと銘打った食べ放題セール。足を運んだ者へ、力を貸してくれた仲間たちへの感謝とこれからの友好を祈った催しは、ベオウルフの監修の下盛大に行われたのである

 

「今回は味付けやメニューのアイディア提供も考案させてもらおう。厨房のヘルプをも担当する。御世話になっているのは御互い様なのでね」

 

エミヤ厨房ともタイアップを行い、武骨な品揃えを彩るサラダやサイドメニュー、お腹を整え食欲を促進させ肉を沢山食べさせるのは勿論、子供たちに合わせたサイコロステーキやお子さまランチなども協力のもと製作された。その手腕は確かな厨房の主、食堂を経営するオカンの名に相応しき気配りの細やかさであったのだ。彼個人から申し出たこの協力は、初見の恐ろしさを緩和する妙案として絶大な効果を発揮する

 

「見てください!旗です!コンラがチャーハン山に勇姿の旗を打ち立てました!これはやはりケルトが、そしてケルトを背負うお父様が一番と言う証明ですね!えっへん!」

 

「コンラはお肉が好きなの?わたしたちも好きだよ。すてーき、はんばーぐ。おこさまらんち!かいたいりょうり、だいすき!」

 

「カロリーもリバウンドも関係のないお話よ。だって王様のパーティーですもの!アリスもジャバウォックも机に座ってたくさんたくさん食べる日よ!皆が仲良く笑う日よ!楽園の皆はいっつも笑顔だけれど!」

 

「うれ、しい・・・おい、しい・・・!」

 

子供達も満足げに肉を頬張り、ご飯を食べて笑顔を振り撒きながら料理を堪能し幸福を堪能している。食事は心身の健康を司るものであり、人間ではなくなりし英霊であろうとも、栄養とはならず魔力へと還元されるものであろうとも遠ざける理由とはならない。こうして世界の中で巡り会う筈もなかった者達が机を囲って共に笑い合いながら食事を行う。その事実こそが・・・激闘と勝利の報酬であり、またそれらの土台を作り上げた者達への感謝にて鉄板から噴き出す火が燃え盛り、同時に辣腕を振るう何よりの励みとなる

 

「遠慮すんなよコンラにチビッ子!食って騒いでの宴に無粋はいらねぇ、相手が喜ぶくれぇに羽目を外しちまえ!」

 

「タン塩は・・・いいな。これだけで閉店までいける」

 

「うむ、ロイグ!それは大分勿体無いし店側にも困惑されるだろうから控えるべきだぞ!もっとバッチリガッチリとだな!」

 

「愛しのフェルディア?私焼き加減とか解らないの。あなたに任せて食べるだけでいいかしら?」

 

「お任せくださいメイヴちゃん最高イヤッホォオォオゥウ!!!さぁメイヴちゃん!食べたい肉はなんだい!?此処に鍛え抜かれた筋肉があるけど食べてみな」

 

「うるせぇ」

 

「オルタアッーーーーー!!!!!」

 

「貴様の女王狂いは直らんのぅ。効率のよい摂取ならササミを喰らわんかササミを。食らったなら即座に腹ごなしを含めた走り込み!これに尽きると言うものだ。ふむ・・・私としたことが絶好の穴場を見落としていたとは。勇士の体力向上に活用しない手はあるまい」

 

「生卵ジョッキはいいぞぅ・・・精が付き、モリモリと高まってくる。何がだと?そうだ、男として濃くなければならんものが・・・」

 

 

「勇士として濃くなければならないもの・・・コンラ、分かりません!フェルグスおじさん、是非コンラに教えてください!」

 

「おぅ、知りたいのかコンラよ。いいぞぅ。ではまずはステーキを平らげてその後成長してからお手合わせをだな・・・」

 

「よし、ならば私も教えてもらうとしようか。コンラよ喜べ。久方ぶりの共闘でフェルグスに槍を見せるとしよう」

 

「わはーい!ババ様と特訓は久方ぶりです!コンラ、頑張ります!」

 

「あはは、ババ様ですって!そんな風に呼ばれるのを許しているなんてお優しいのね、スカババ様?」

 

「フン、コンラには特別よ。お前にはそんなフランクに話し掛けてくる同姓などいはしまい。やーい万年ボッチー。はははは笑ってやれ笑ってやれ!」

 

「ムッカー!!リッカいるし!女友達できたし!私には素敵な勇士に愛しのクーちゃんに女友達いる超絶ケル充なんですけどー!ね、クーちゃん?」

 

「寄んな」

 

「またリッカのヤツ、派手にやったそうじゃねぇか!いいねいいね、オレが惚れた女ってのはそうでなくちゃな!名前はどうかと思うけどよ!」

 

「ノットプリティーとか論外よ論外!メイヴちゃんビーム!とかの方が可愛いでしょう!?リッカ!何処いったのよ私と一緒に蜂蜜酒飲みなさいよー!」

 

「メイヴうるさいです!お父様に近付かないでくださいこのあばずれチーズ性人!」

 

「あばずれぇ!?ちょっとクーちゃん!この口の悪いお子さんどういう教育してるのよ!」

 

「心配すんな、コンラが辛辣なのはテメェだけだ。オレの自慢の娘に文句あんのか!」

 

「自慢の・・・娘・・・!!きゅぅ──」

 

「クー・フーリン!コンラが感激で尊死したぞ!フェルディア的に娘と呼んだのは公認だな!公認でいいのだな!」

 

「あ?娘だっけか息子だっけか?まぁいいや構わねぇ構わねぇ!オレのガキな事に変わりはねぇんだからよ!リッカがこさえるガキはどっちだろうなー!」

 

「・・・これが、アルスターサイクルの勇士達・・・!」

 

「ディルムッド、私も一発芸を見せるときかな?そう!赤ちゃんの真似ッ!!ばぁぶ、ぶー」

 

「気持ちわりぃもん見せんな。死ね」

 

(狂える光の御子、あまりに手厳しい・・・!!)

 

てんやわんやのケルト組に、コンラが子供席に運ばれていく等の大騒ぎの中食が大いに進んでいく。次々と来客が招き入れられ、大にぎわいの大喧騒の呈をもたらしていく。その少し離れた席にて、グレンデル討伐作戦に参加した一行が、ごく一般的なコースを頼み、真っ当に慎ましく食べている。ロマン、オルガマリー、マシュの三人だ。シバ、ダ・ヴィンチ、そして英雄王はとある被害の補修と清算を行っているため欠席である

 

「粗野に見えて気の利く王の歓待だ、慎ましく参加しておくがいい。貴様らのみの報酬に漫遊していた我等が顔を出すは些か筋が通るまい・・・だってさ。律儀だよねぇ、彼。今度シバとレオナルドとギルに奢ってあげよっと」

 

「まぁシミュレーションルームを壊滅させた犯人を諌められるのは彼等だけだし・・・私には出る幕は無いわね・・・」

 

肉を丁寧かつ上品に切り分けながら、レアの焼き加減にて柔らかな噛みごたえと食べごたえ、濃厚な味わいが口一杯に広がる感覚を味わうオルガマリーの頬が緩んでいる様子を、二人は微笑ましげに眺めていながらふと、ここにいるべき人物の姿がいないことにマシュは言及する

 

「そういえば・・・先輩は何処にいったのでしょうか?先輩なら真っ先にステーキ五枚は頼むと予想していたのですが・・・」

 

そう、リッカに招かれて来たと言うのに、そのリッカの姿が見えない。『絶対来てね!』と伝えた彼女が、約束を違えるとは考えにくいが・・・

 

「おう、リッカのヤツならもうすぐ姿を見せるだろうぜ。心配すんな」

 

注文を聞き入れたベオウルフ、その手にサービスのサラダを持ちながら笑みを浮かべ丁寧に机に置く。接客は模範的で、見た目からは連想できぬ程に丁寧な応対が三人を迎える。彼の言葉の真意、『もうすぐ姿を見せる』とはどういった意味なのであろうか?

 

「リッカは別件?それとも皿洗いか何かのシフトか、アルバイトでも勤しんでいるのかしら?」

 

「まぁそんな感じだな。だが皿洗いをリッカに任せるのはセンスがねぇぜ。任せるなら、もっと直接的に集客できる場所だ。そら──」

 

くい、とベオウルフが、店内中央にあるモニターを指差す。モニターに電源が入り、映像が映し出される

 

「えっ!?」

 

「・・・あぁ、そういう・・・」

 

「なにやってるんだい彼女!?」

 

 

其処に映り込みしは、最後の〆を飾る衝撃映像であり・・・更なる発展を願ったリッカの自己志願によるPRであった──




『次々と襲い来る困難に難敵。私はこうして乗りきった・・・!』

ベオウルフステーキ店員衣装に身を包んだオレンジ色の髪の毛の少女が、その映像に合わせてステーキを美味しそうに頬張る姿が臨場感たっぷりに上映されていく

『旨い!ドラゴンの肉を豪快に焼く小細工抜きの一本仕立て!強敵なだけじゃない、あなたの身体を作る心強い味方!焼き加減、自在にオーダー可能!みなぎる力で、並みいる敵を打ち倒せ!』

マシュ「せ、先輩・・・!?」

『良質なタンパク質が、あなたの身体と未来を作る!このステーキを食べて、人類の未来を救う心と身体を手に入れろ!邪悪な巨人を打ち倒せ!』

オルガマリー「まさかの・・・」

ロマン「CMだってぇ──!?」

『良質な肉が、龍の血肉を作り上げる!邪悪な獣に叩き込め!!必殺の咆哮!!』

邪龍が咆哮し、そしてグレンデルを吹き飛ばす瞬間がモニターに写し込まされ、ステーキの断面図をバックにステーキを食べるリッカの言葉で締め括られる

『ボディに自信が無い男の子君も、世界一不幸な美少女も!皆集まれ、ベオウルフステーキハウス!ガッツリ食べて、世界を背負う龍となれ!──それが君への、冠位指定!』

リッカ監修のCMが流れ、ステーキハウスが爆笑に包まれる中、ベオウルフサムズアップにて笑顔を見せる

「な?イメージガールにピッタリだろ?」


・・・その後、CM効果がてきめんとなりベオウルフステーキハウスは幅広い層に足を運ばれる事となる

「やったね!PR大成功!」

シャルル「リッカー!たまにはステーキにも連れてけよー!」

「はいよー!」


・・・ただし、弊害も発生してしまう。リッカの顔を見る度に「あなたの顔を見てるとお腹が空く」とされ、女性職員から苦笑混じりに伝えられ衝撃を受け・・・「ステーキガール」「食欲推進マスター」なる称号を賜ったのだが・・・

「ま、いっか!」

変わらず、ステーキハウスにてステーキを頬張るリッカであったとさ──

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