人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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明日の記念すべき日の導入も兼ねているので、ギルとエアの会話の真意がちょっぴり不明瞭かもしれません

ですが、必ずそれは明かされる、ちょっとだけの秘匿です。どうか微笑ましく見ていただければ幸いです

今は簡潔に──この物語に関わってくださった総ての方に、感謝を!

本当に、ありがとうございました!!


前夜

「ふんふふーん♪ふーんふんふふーん♪」

 

ありとあらゆる製作と構成、改築と対策が成されし南の楽園、壮麗なる神殿の風貌を顕す時間神殿カルデア。豪華絢爛、一人一人の要望に合わせた部屋、万全な厚遇と福祉が行き届く渇望と不満が駆逐されし王の財の在処、第二のウルク。その中でも最も広く、最も豪奢である王の私室。最低でも12LDKはある部屋と言うよりは一室の豪邸とも言うべき、空間歪曲宝具によって象どられたその王、姫、そして獣の共同部屋に、聴くものの心を澄み渡らせ昇華し解きほぐすような、川のせせらぎや春の微風のごとき鼻唄が、平穏と歓喜を宿し美声にて楽園に染み渡っていく。その声の持ち主・・・英雄姫たる彼女の心持ち、気分と機嫌を示すような軽やかで清らかな旋律を奏で、机に届いた贈りもの、バビロニア配達便にて届けられた封をほどいているのだ。

 

 

その差出人の名には『賢王ギルガメッシュ』と書かれ、宛先にはエア=レメゲトンと記された受け取りの粘土版が添えられていた。その粘土版には、先の整体についての感謝と称賛がビッシリと書き込まれており、言霊に無病息災と気運上昇の呪詛、祝の言霊が存分に込められ、読むものの健康を祈る気持ちが込められている。その暖かい気遣いと畏れ多さに頭が下がる想いであったが、自分がしたことが人類の産み出せし最高の王の記憶と心に残り、こうして感謝してもらえたという事実こそをエアは喜び、尊んだ。どんな形でも、やはりギルガメッシュという存在には対立より献身を是としたい。武や覇を競うより、その存在に、総てを懸けて奉仕をしたいと姫はずっと思っている。一日でも許されるなら、英雄王にしているようにずっと寄り添わせて戴き、日頃の疲れを癒し鋭気を養ってほしいと願うばかりである。楽園で、ウルクで。誰よりもその奮闘を見ているエアはいつでもこの身を捧げる覚悟を胸に抱いているのだから

 

そして──そんなエアの敬愛を、在り方をこそ至宝と定めしギルガメッシュもまた寵愛と報奨、祝福を以て応える。封を解かれた箱に収まっていたのは『号砲の粘土版』であった。名前を書く場が空白なそれは、王の名の下にウルクの守護、民達の力を振るう事の許可と認可を記したものである。ウルクにて在住する民達総てのサインと名前が記された粘土版が10枚、王権にて記されし、賢王の統治せしウルクの総力に号令をかける事を赦すと記された黄金の粘土版の合計12枚がエアに託された。これにより、財の象徴、物質的な宝具たる『王の財宝』を司る御機嫌王に対し、王の心、民達の決意を総結集した脅威の砲撃たる『王の号砲』をエアの判断により、同時に発することが可能となった。エアと英雄王の協調と協力は、更に磐石となったのである

 

同時にエアに、自らが振るう神代の魔杖、御気に入りの杖セットが示された石板も渡される。かつてより考案し、自らが行っていた『魔術師の真似事』の戦法の基盤も、賢王はエアに託したのである

 

『お前ならば不馴れな当て付けである我が戦法を昇華できるであろうよ。多種多様な戦法、魔杖の蹂躙たる我の戦術をお前に預ける。愚かな我が一辺倒に傾く事がないよう、第二、第三の戦術を修めておくがいい。戦法は──』

 

「多ければ多いほどいい。ですよね、賢王!はい──あなたの戦術と戦法、御機嫌王の磐石なる防衛として振るわせていただきます!」

 

王の優しき期待と感心に、エアは深々と頭を下げる。王に期待されること、更なる力で王に献身できる事が何よりも嬉しい。賢王の健在、更なる御機嫌王の威光の発展。いつも以上に気持ちが昂るのは当然の帰結と言うべきだろう。大切に大切に保管し、御機嫌王のサインを戴きながら保管を行う

 

《前々から思っていたが、最早弁明の余地がないほどの実家の祖父よな、賢しき我よ。孫を目に入れても痛くない、というヤツよな。全く、愉快な部分は我もヤツも変わるまい。ふはは、麻婆にて身罷った貴様に愚かと言われる筋合いなど無いわ!》

 

──暴君も名君も、勿論御機嫌な王も等しくお慕いしております!御礼の御手紙をしたためてよろしいですか、ギル?

 

《無論構わぬ、が。なるべく簡潔に書くのだぞ。文面を見た我の反応は見るまでもない。半日は感動で動けまい》

 

──はい!では簡潔に、便箋五枚ほどにしておきますね!

 

王たるギルガメッシュと気安く、仲睦まじく談笑する英雄姫。一言一言に込められた敬意、耳に心地よき声音により、対話のみでギルガメッシュの気分は高揚していくのだ。彼が常に笑い、御機嫌である所以であり、またエアを至宝と定める所以の一つであるのだ

 

《──手紙か。思えば、お前が転生し、我等の物語が紡がれし日程は間も無く一年であったな》

 

ふと、ギルガメッシュがエアの頭を撫で、髪に指を通しながらポツリと呟く。かの王が見ている時空と暦は、正しい時間軸では無いのであろう。だが、その言葉が虚言や戯れ言を紡ぐ事はない。理解は及ばねど、確実に真実である事だけをエアは理解する

 

──あっという間だったような、まだ一年しか経っていないというような・・・不思議な気持ちです。王や皆と出逢った日々は、あまりにも鮮烈で楽しくて。宝箱を覗いているような高鳴りが胸をずっと震わせていて・・・

 

瞼を閉じれば総てが鮮明に思い返せる。旅路の中で起こったこと、感じたこと、楽しいことや嬉しいこと。そして凄まじいことに、悲しい事や辛い想い出は必死に頭を捻らなければ思い浮かんでこないくらいである。そんな豪華絢爛な研鑽の旅にて辿り着いたこの今、瞬間が・・・何よりもかけがえなく、素晴らしく。最も尊いことだと疑う余地は無いと確信する

 

《我が在るか不在か、お前が在るか不在か。そんな細やかな違いにて人類の未来を巡る旅はこうも様変わりする。歴史に池に投じられた小石の波紋も侮れぬな。よもや此処まで痛快な心身になるとは我ですら読めなかったわ》

 

──全身全霊、慢心しない王は小石と言うには些か謙遜を行いすぎかと。氷河期を巻き起こす隕石、程の衝撃と質量ではないでしょうか?

 

《ふはははははは!的を射た比喩だ!然り、我を投じれば池が干上がるか世界が進歩するかのどちらかよ!相も変わらずお前の弁舌は衰えぬな!》

 

腹を抱えて大笑する英雄王。他愛のない会話ですら抱腹し、箸が転がれば絶倒する。泥を飲み干し現代の価値観に影響された彼とは真反対、至宝の輝きを受け影響された唯一無二の王の笑顔はけして絶えることは無いのである。時代の果てに、自ら磨き上げられた至宝を手にした高揚と歓喜は、未だ微塵も衰えていないのだから

 

《この旅路には本来有り得ぬものばかりが集った事は明白だ。それらは不確定要素なれど、確かに我等を利する輝きであり財に他ならなかった。認めるのも面映ゆいが、まさに天命であり天啓であったのだろうよ。かの英雄神すらも認めし旅、それらを支えた者達の価値、認めぬ訳にはいくまい》

 

この旅の軌跡は笑顔に満ちたものであり、完全無欠にして痛快なものであった。それらは疑う余地は無く、そしてそれは──数多の支えた者達の尽力であることを、最古の英雄王は認めたのだ。エアもまた、心からそれに同意を示す

 

かけがえのない『宝物』、代えのきかない『財』。それらに支えられ、自らは此処に辿り着けた。その事実こそが、何にも代えられぬ尊き至宝であるとエアは確信する

 

──英雄王。ワタシは一つ、思い付いた事がございます

 

そんな宝に、そんな財宝に示せる感謝とは何か。そんなかけがえのない者達に表せる心の所作とは何か。エアは思い至り、自らの想いを以てそれを象にする事を決心する。その意を、王たる者へと示したのだ

 

《赦す。申してみよ。苦しゅうない、我にかかればあらゆる願いは叶えられるだろうさ》

 

無論その提案を王は受ける。姫とは求めるものである。その嘆願を聞き届けるは王の甲斐性と度量の見せ所であるが故に。滑稽な我欲と欲望など介在せぬ祈りならば尚のことだ。その返答に安堵し、エアは王に耳打ちを行う

 

──というものはどうでしょうか?必ず、ワタシ達の想いは伝わってくださる筈です。ここまで、支えてくださった皆様ならば、その心を胸に宿しているとワタシは信じています

 

その提案を聞き及んだ英雄王もまた、清涼かつ獰猛に笑みを浮かべる。確かにそれは、労いの催しとしては相応しきものであるとするに相応しきもの。何より、この物語のみしか行えぬ手段で在ることは明白であった。その唯一性を、王は大変気に入った

 

《ふはははははは!!お前の言は正しきものだ。それでこそ、記念の祝祭には相応しいと言うものよ!》

 

──それでは・・・!

 

《無論赦す!ならば早速カルデアの者共を招集し作業に移らねばな!実に面白い催しとなろう!エア、機材の選別は任せるぞ!》

 

王の認可と承諾が降りる。彼の王が容認しないもの、それは財への侵害に辛い麻婆のお代わりのみだ。それ以外ならば、愉快であるなら彼は総てを認可する。こうなれば後は実行に移すのみだ。楽しみと期待に胸を踊らせながら財の選別に、エアは取り掛かる

 

──お任せください!今こそ正式に御伝えするときです。共に歩んでくださった方達への感謝、ワタシ達の財たる者達への感謝を!

 

その目論みは正しく象を為すために準備が行われる。此処まで共に歩んだ大切なもの。未だ詳細を伏せられながら進められる、大切な行事と催し、そして祝辞

 

《ふはは、節目と区切りには丁度よい!我等の気概と所感、受け止める覚悟を決めておくのだな!》

 

──伝えたいことが多すぎて、纏めきる自信はありませんが・・・精一杯行う事を誓います。だってこれは、絶対に伝えなければならない、大切な──

 

伝えなければならない事とは何であるのか。伝えたいこと、祝辞とは何であるのか。誰に、何を伝えると言うのか

 

未だ見えぬ王と姫の目論見の全貌は、明日の物語の編纂にて明かされる──




フォウ(もう一年か・・・ボクがボクになって、もうそんなに経ったんだなぁ・・・。)


(最愛の親友に、ギャグがつまんない王様。ゲーティアが遺した忘れ形見に、変わらない善き人々。変わったもの、変わらないもの。たくさんあって・・・今ボクは此処にいるんだ)

「・・・キュー、フォウ」

(ありがとう。本当に。ボクがボクのまま『あそこ』を乗り切れたのは、本当に皆のお陰だよ。ボクは皆に、また救われたんだ)

?『・・・──随分と君も楽しそうで何よりだ。気紛れも、こうまで会心の出来だと嬉しくなってしまうよ』

(御礼を言わせてもらうよ、全能の奴隷。君がしてくれた気紛れは、誰もが笑顔の物語の最初の先駆けになったんだ)

『・・・うん。そうなら嬉しい。僕は最早何も残せないし、何も成し遂げられない。未来永劫、森羅万象を眺めるだけの生きた屍だ。それでも』

(・・・)

『──それでも。君達の笑顔の切っ掛けになれたこと。この物語の最初の興りに関われたことを一生忘れない。無限の牢獄を笑顔で生きていくには、最高の報酬さ』

(・・・あぁ。たまにはエアやティアマトにも会うといいさ。たくさん御礼をいわれるだろうさ)

『いいや、もう要らないさ。もう充分、素敵な宝物はもらっているからね。これ以上は、もう要らない。だって・・・』

(・・・だって?)

『これ以上、君達から貰っては・・・君達と一緒にいたいなんていう願いが生まれてしまうからね。『何でもできる』存在なんて、物語を陳腐にさせる最悪の異物だろう──?』


──フォウ、フォウ?おーいフォーゥ?

(・・・あ)

──どうしたの?ぽわっとして。おいで?大丈夫?

(わぁい!うん、大丈夫だよ。今ね、考えてたんだ)

──考えてた?何を?聞いてもいい?

(うん!この出逢いは──奇跡だって事をさ!)

──うんっ!ワタシもそう思うよ!本当に、心から──!
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