人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オルガマリー「久し振りね。最近の調子はどうかしら?」

オフェリア『・・・あなたは随分と落ち着いたわね、オルガマリー』

「色々あってね。・・・どうかしら。近いうちお茶でもどう?」

『・・・私と?』

「デイヴィットとキリシュタリアは忙殺されていて、ベリルは論外。ヒナコは我関せずでペペロンチーノは出張。カドックには断られて・・・ね」

『消去法・・・?』

「総当たりと言ってほしいわ。・・・どう?『日曜日』は好きになったかしら?」

『・・・!』

「マシュも待っているわ。近いうちにどう?きっと、日曜日が好きになるわ。きっとね」

『・・・』


ゴルドルフ『行っていいのか!もうすぐか!?』

「ひとまず、ドライブの腕前を磨いていてください。必ず迎えを出します。いえ、拉致・・・」

『!?』

「いえ何も。それでは」

『・・・え、得体が知れんな。相変わらず・・・』


不夜城の光

『眠らぬ街』、不夜城・・・其処は光輝と安寧の街。それらを遵守し、守護され、一縷の悪も赦されぬ街。其処には一欠片の不穏も赦されず、一欠片の不義も許されない。泰平にして磐石。永続なる繁栄こそが是であり当然。それこそが何にも替えがたき規律にして思想であり、『それが覆される』事は勿論、『其処に疑問を持つことすら許されない』。安寧光輝の都市、全てを照らす光。それより産まれた闇や影は──断じて許されざる大罪として裁かれ、その罪を告発され痛感される事となる

 

【フシュー・・・聞け。臣民達よ。この者は罪を犯した。この泰平なる光輝の楽園、不夜城からの逃亡を企画した罪である】

 

顔を前垂れにて隠し、巨大な鉈を、金槌を棍棒を所持する、血腥くおぞましき死臭を際限なく放つ女性・・・拷問官にして秩序の番人たる【酷吏】が、街の中心の台にて告発されし罪人を引っ立て、臣民達に晒すように告げる。彼女らこそは女帝の手足。たちどころに真実を吐かせ、望まぬ事実を導き出し、おぞましき制裁を加える醜悪にして番犬。その存在が、罪を告発されし者に身の毛のよだつ行い、贖罪を課そうとしているのだ

 

【つまりはあまねく臣民に向けられる、限りなき陛下の慈愛に背を向けようとした不遜の罪である!】

 

集めた一同に宣言する酷吏。集まりし者達の反応は様々だ。歓声を上げるもの、次は我が身と震え上がるもの。誰が彼等を自分に差し向けるのか、蒼白となるもの。一様に喜んでいるのは、自らの安寧が保証された女性のみである。男性らは──誰も彼もが、気が気ではない。彼女達は、分け隔てなく誰かの言葉を媒介にやってくるのだ

 

「・・・・・・」

 

彼を告発した男性の顔は浮かない。罪を見つけた喜び、裁かれる相手への嘲りなど微塵もない。ただただ・・・己が生き延びた事への安堵と、こうしなくてはいけないといった自己弁護のみだ

 

(くそ、俺は悪くない、悪くないぞ。死にたくない、絶対に。だったらこうするしかないんだ。生きるためには、隙を見せた他人を売るしかないんだ、この街は・・・!)

 

それこそが奨励されており、それこそが慣例となっている。この輝きこそは悪をいぶりだし、悪を見定め裁くためのもの。それを悪用する事などあってはならないし、悪用する輩などいる筈もない。『密告をされる側にこそ、総ての悪と原因がある』。──その理念の下に、この厳令は敷かれているのだ。他でもない都市そのものが、それを推奨しているのである

 

「な、何を、何をする気だよぉ・・・」

 

捕らえられた男の哀願に、酷吏は答える。これより行われる、断罪の概要をつまびらかとする。それらは聴くもおぞましき、正気を疑い想像を絶する所業であった

 

【・・・シュー。罰は決められている。この鉈で貴様の指先を切り落とす】

 

「そ、それだけか・・・!?もう絶対、逃げようなんて思わない!だから、だから・・・」

 

【──次は指の中程だ。その次は指の根本。掌、手首。手首から肘までを十ほどに分けて。それから肘から肩をまた十ほどに分けて。その次は足だ。その次は胴体だ。貴様の身体は端から切り落とされる。貴様の存在が消えてなくなるまで続けられる。緩慢なる解体の刑。すなわち『凌遅』である】

 

死ぬまで、いや死なせずに少しずつ解体を行う。緩やかに少しずつ、痛みと苦痛を味わわせ罪を噛み締めさせる。そのあまりの悪辣さとおぞましさに、顔色が土気色に成り果てる罪人。これこそが、彼女らが畏れ戦かれる所以なのだ。当然のように──彼女らの身体には、血がこびりついているのだから

 

【陛下の慈悲に感謝するがいい。お前は他の罪人達よりも長く自らの罪を悔い、噛み締める時間を与えられた。断首や絞首ではこうはいかん。この他にも様々な最先端の拷問を貴様は味わえぬが、それは高望みと言うものだろう。なればこそ、一酷吏としてその使命を全うする】

 

その確定の処刑にざわめきたつ一同。見せしめとした人員の解体による戦慄。告発による処刑に対し、徹底的に意志をへし折られるのだ。──此処にある、その者達を除いて

 

「──分かってるな、お前ら!」

 

「はい、勿論です!此処で動かなければ、助けなければ・・・!」

 

「勇士どころか腰抜けです!行きましょう!」

 

「そうそう!皆が行かないならボクが行くとこだったよ!」

 

「あぁそうだ。アレは処刑台。そして私は間に合わなかった。王妃、その処刑に──今度こそは違えはしないさ!」

 

「あぁ!リッカならこんな時、真っ先に動くだろうしな!マスターの影響を受けたサーヴァントとしての使命を果たそうぜ!となると、だったら──」

 

何かを閃くシャルル。そして──処刑が始められんとする。鉈が、緩慢なる解体の刑を執行せんとする。眼を覆うような凄惨な執行劇。振るわれる鉈が、その手に振るわれる瞬間──

 

「やらせません!其処までです!!」

 

響く怒声、粉々に壊される処刑台。身柄を取り返されし男、上がる土煙。処刑を行われる瞬間に、色鮮やかな影が割って入り、それを阻み覆したのだ。どよめきたつ臣民、酷吏もまた同じように吹き飛び、その処刑を完全に破壊し、破棄せしめたのだ。女帝の意に真っ向から反逆する意志を示す者達に、あっという間に酷吏達が集結し取り囲む

 

「やっぱりここら辺にこいつらの根城があるわけだな。道理でホイホイ出てくるわけだぜ」

 

【シュー・・・何者。陛下の意志たる処刑の邪魔をするとは、明白なる陛下の反逆行為である。名を名乗れ】

 

「──待ってたぜぇ!その言葉!!行くぜお前ら!」

 

高らかに叫ぶ──念のための変装アマデウス仮面を所持していたシャルルが叫ぶ。真正面から、即興にて考え抜いた、だれもが知らぬ存在として、名乗りを上げるのだ

 

「カッコ良さこそ万物共通!陽気な幻想、シャルルホワイト!!」

 

即興の名乗り、ポーズを渾身のキレで振るい、センターを飾るシャルル。リッカの影響を受けしサーヴァント達が、次々とそれに続いて声を張り上げる

 

「未熟な身体に無限の祝福!光の流星、アーチャーシアン!!」

 

小さな身体ながら、随一のキレとダイナミックなポーズをしっかりと決めるコンラ

 

「雪華の護り、潰えぬ勇気!白亜の守護者、シールダーバイオレット!!」

 

盾を振るい、重厚に振り回し叩きつける、見た目に違わずパワーを感じさせるマシュ

 

「正義の攻め担当!スカポンタン王子!ライダーピンク!!」

 

ヒロインがごとき性別不詳なアストルフォが、あざといとされるほどのポーズにて衆目を集める

 

「白百合の誇り、護り担当!性別不詳、デオンホワイト!!」

 

優雅にて華麗に、高貴さと誇りを示す立ち振舞いにて白百合を振り撒くデオン

 

この場に欠員となるブラックを抜き、その名乗りの〆を成す四人。即興のポーズを完遂し、高らかに叫ぶ

 

「星の光は千変万化!!英霊戦隊ッ!!」

 

「「「「カルデアンッ!!!」」」」

 

罪人を照らす街灯が色鮮やかに四人を照らす。そして、『密告の余地がない』存在として、衆目の全てを、酷吏達に真正面から立ち向かう

 

【フシュー・・・英霊戦隊・・・汝ら、陛下への反逆を明確とする者か・・・!】

 

「おう!!密告やチクリなんかのケチ臭い真似なんかする必要はねぇ。お前らの敵は此処にいるぜ!!」

 

「コン・・・アーチャーシアンが来ました!大丈夫ですよ、此処で・・・皆をやっつけちゃいます!」

 

処刑を防ぎきり、新たなるターゲットとしての役割を果たしたシャルル達。凶器と狂気、死臭を放ち続ける酷吏達と真正面からの戦闘を開始する

 

【フシュー・・・英霊戦隊、カルデアン・・・記録完了。その名は反逆の象徴として永遠に記録される事だろう・・・!】

 

「覚悟の上です。こんな非道、こんな振る舞いを容認する訳には行きません!」

 

【陛下への反逆。死刑、とにかく死刑!栄光の都市の犠牲と礎に、四人追加である・・・!!】

 

そして始まる、真正面からの大乱闘。敵対の酷吏が振るう金槌や鉈を防ぎ、戦い、跳ね返し、走り、駆け抜ける。金属音、同時に際限なく涌き出てくるその拷問官を食い止める

 

「答えろ!お前らの元締め、女帝は何処にいる!」

 

【答える必要はない。直ぐに骸として面会が叶う。陛下へ、その生命を献上すべし!】

 

大乱闘、混乱にざわめきたつ臣民達。処刑を阻む四人のサーヴァント。その戦いは不夜城全体に伝播し、高まっていく動乱と争乱の機運。此処にて処刑される者達を最早消し去る為の戦い。──そしてその動乱を、信頼するマスターへと伝える戦い

 

「もう二度と、私の前で処刑など許しはしない!ギロチンで無くとも、処刑そのものを容認はしない──この戦い、かつての私の無念に捧げよう!!」

 

デオンの気迫、白百合の決意が形を成していく。その伯仲した戦いに──いよいよもって答えが導かれる

 

「探知のルーン・・・、・・・!皆さん!この真下に、沢山の反応があります!この真下です!」

 

「おう!ナイスだコン・・・アーチャーシアン!よぉし、マスターの為に活路を開くぞ!」

 

ルーンを描き、剣と槍を振るい、処刑台の残りを完全に粉砕する。酷吏の群れを吹き飛ばし、そして、この都市の統治者の下へと繋がる道を切り拓いたのだ

 

「階段!?いや──これは・・・!」

 

一同が目にしたのは、再びの驚愕。──其処にあったのは階段や通路・・・ではない。格納といった形で保存されている──

 

 

「「「城ぉ!?」」」

 

 

不夜城の正体・・・その中核を成す豪華絢爛の城。いつか披露する日を女帝が待ち望んだ──『不夜城』の全容である──




男「違う、俺じゃない!俺は知らない!なんで、なんでだ!二人で力を合わせて生きていこうって・・・!」 

男「悪いな、お前が悪いんだぜ?出し抜いて点数稼ぎなんぞしやがるからだ。いやむしろ・・・こうしてお前が消えてくれてホッとしたぜ。やっとこれで上級臣民の足掛かりが出来た!」


「密を告げる!密を告げる!」

「なっ、違う!違うんだ!何かの間違いだ!俺はやってない!犬なんか殺してない!違うんだ──!」

リッカ【・・・・・・】

シェヘラザード【外套で身を隠せたは良いですが・・・それに乗じて、様々な思惑が涌き出たようです・・・】

【・・・】

【この国は、あまりにも眩しい。影が生まれることを赦されず、産み出された影そのものを悪と断じる。疑惑は不満を噴き出させ・・・際限なく友情もなにもかもを捨て去らせてしまう】

【自分が生きるために、誰かを蹴落として・・・誰かを捨てていく国・・・】

シェヘラザード【我が王・・・】

【──行こう。シェヘラザード。この国が一つの在り方だというならともかく。これを理想だと言うのなら・・・】

瞬間、連行せんとしていた酷吏の首が即座に切り落とされる。同時に、売り飛ばした者、売り飛ばされた者の腹を、記憶を無くす勢いにて渾身の拳をめり込ませ意識を刈り取る

【──その認識は、きっと間違ってると思う。この国は・・・凄く脆い】

同時に、街の中央にて喧騒が聞こえてくる。仲間達の活動と戦いの喧騒が、そして──

・・・──先輩!聞こえますか!不夜城の中核を発見しました!今こそ突撃し、女帝に会いに行きましょう!

【マシュ・・・!行こう、シェヘラザード!】

【・・・はい。ダ・ヴィンチさんと共に・・・きっと、真名を突きとめられると思います・・・】


少女達は、そこかしこで行われている冤罪と密告を切り捨てながら駆け抜ける。何故このような政治を敷いたのか。元凶へ問い質す為に



?「には、にはは、くーっふっふっふー!良い、良いぞ!骨のある者達は大歓迎じゃ!いざ来るがよい。貴様らへの刑は決めてあるぞ?くーっふっふっふー!」

女帝は──女帝というには幼き哄笑が、高らかに響きわたった──

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