人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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シェヘラザード「これが、眠っている民達・・・」

乙姫「魔力を最低限抜き取り、仮死状態にしております。・・・こうしなければ、私も現界を保てぬ故に・・・」

シェヘラザード「・・・あなたはなんと、強き方なのでしょう。彼等から貰う魔力は微々たるもの。ほぼ大半は、自らの魔力を使っていますね?」

乙姫「──慧眼ですね。彼等からは、生命が脅かされぬ程度の魔力しか貰っておりませぬ。自らの現界を保てる量のみ。それをやりくりして、なんとかやっているのです」

「・・・矜持、でしょうか」

「それもあります。でも、一番は・・・」

「・・・」

「・・・皆が元気に、また竜宮城を歩く為です。国が果て、王が潰えても。民さえあれば何度でもやり直せる。彼等こそ宝なのです。宝を守護するのは、王には当然の在り方でございましょう」

「・・・我が王が、此処に私を残した意味を理解しました。では、お耳を御借りいたします」

「?」

「民と、儚き王に・・・勇気が湧きいずるお話を。この地底にて奮闘せし、力強き王のお話をお聞かせ致します──」


毒竜攻略作戦

血を流し、総てを懸けて希望を繋いだ竜宮城。その孤高にして孤独なる戦いが終わらんとしている中、ついに間に合ったリッカら一同の到着。この地を脅かす大蛇、概念を付与されし魔獣ヒュドラを討ち果たす為に彼女らは武器を取り、目の前の巨大なる蛇へと全身全霊を以て相対し、立ち向かうことを決意した

 

【今だけは自分達の利益や目的は忘れるよ、皆!乙姫さんとそれを支えた皆のために・・・!ヒュドラを倒す!!】

 

「「「「「了解!」」」」」

 

ヒュドラの毒は不可欠であり、メガロス退治に必須なものであるため、かの大蛇を討ち果たすことはリッカ達からしても必要な事だ。利害の一致と言ってもいい。だが、それ以上にカルデアの面々の心は奮っていた。その背中に、必ずや救い報われるべき存在を背負っているからである。無力で、非力と嘆きながら総てを奮わせ防衛を続けた竜宮城を、これ以上傷付けさせる訳にはいかない。もう、先の見えない戦いにて乙姫を傷付ける訳にはいかない。この場で、彼女らを苦しめている元凶をなんとしても取り除く。その為にも、ヒュドラを倒さなくてはならないのだ

 

【シャアァアァアァアァアッ!!!】

 

咆哮し、襲い来る巨大なる多頭の大蛇。巨大であり、驚異であり、余りにも危険なりし神話に近付きし魔獣。退くわけにも逃げるわけにもいかない。なんとしても、此処で討ち果たす事を・・・竜宮城を救うことを固く誓いし者達が。乙姫の加護を纏い、致命的な毒を阻みし膜を与えられたサーヴァント達が一斉に挑みかかる・・・!

 

 

ねがいとは こころがはぐくむ けものかな

 

 

「行くぜ、デオン!絶対に負けらんねぇぞ!」

 

「解っているさ。崇高なる理念に、今こそ報いよう!」

 

ヒュドラというギリシャ神話に名高い存在。あらゆる英雄を、民草を、直接的間接的に葬り続けてきた最悪の魔獣。神話に名を連ねる不死、そして無限の分裂といった要素は流石に兼ね備えておらぬ、ギリシャにて生きた者からすれば肉体、本体そのものは劣化品・・・デッドコピーに過ぎないものだ。だが、いくら身体が劣化品であろうが吐き出す毒・・・その神毒が真なら他の何をおいてもそれはヒュドラと名乗るに相応しい。不死者すらその不死を返却し介錯を頼むほどの神毒。ギリシャにて比類なき凶器の概念が相手ならば、欠片も油断など許されない。毒を吐き出す前兆に細心の注意を払いながら、二人のセイバーたるシャルルマーニュとデオンが果敢に斬りかかり、ダメージを与えていく。12の勇士を擬似的に再現した輝剣、白百合がごとき剣が多頭の魔獣の首を見る間に叩き落としていくのだ。飛行ユニットのように使用されるシャルルの剣が、ターゲットを散らす役割をも担い毒の発射口たるヒュドラの頭を一ヶ所に留まらせずに動かし続け、その隙にデオンが的確に首を跳ねていく

 

「こっちこっちー!手のなる方へっと!」

 

「せっかくの土地なんだ。汚さないでほしいな!」

 

空中にはアストルフォ、その後ろにコロンブスを乗せたヒポグリフが自在に舞い飛んで牽制を行い、ヒュドラから付かず離れずに飛翔し、万が一にも毒を吐き出されぬような配慮と、そして時には反転し手にした馬上槍にて突撃を行い戦力を殺ぐ。一度しくじれば終わるヒュドラ相手に突撃を行える無秩序さと豪胆さはこの二人にしか持ち得ぬ利点であり、彼等しか無し得ない戦法に他ならず、理性が蒸発した王子と前進思考を持つ二人ならばこその役割である

 

【コンちゃん!撃って撃って撃ちまくるよ!】

 

「了解です!任せてください!」

 

アーチャーたるコンラ、そしてマスターたるリッカは遠距離にて弓矢を、スリングショットの魔力光が的確に喉を、目を、口を貫いていき、援護射撃となって降り注ぐ。コンラはそのクラス上、ランサーの美女ではなく、アーチャーの少女状態にて最適な戦法を取る。そしてリッカも今回は万全を期して、万が一にも毒を浴びぬように遠距離戦を徹底し、援護に専念しているのだ。掠り傷であろうと即死に繋がるが故に、マスターたる自分は徹底的に距離をとっているのである。アルテミス、そして光神ルーの祝福と加護が、明確な威力となりて降り注いでいく

 

「はぁぁあぁ、っ!!」

 

時おり身をよじり、マスターを本能的に狙い来るヒュドラの身柄を、マシュが阻む。盾にてコンラとリッカをしっかりと守護し、身体を踏ん張らせ呼吸を整え、皆に飛来させたシールドユニット、そして盾を振るい決して害がなきように奮闘する。盾で誰かを護る。守護と防衛も、けして譲れぬ戦いであり不可欠の要素であるために。彼女の士気と気迫は凄まじいものであった

 

【グ、ァ・・・ガァアァアァ!!】

 

押し込まれ、そして身体を傷つけられ咆哮をあげるヒュドラ。無数に思える頭が次々と切り落とされていく。放たれ、射抜かれ、切り裂かれていく魔獣。その様相は恐ろしく在れど、けして神代の存在を再現しきった訳ではない。毒こそ脅威であるが、それ以外の要素はウルクに出没した毒竜一匹を下回るもの程度であり。手も足も出ないと言う事ではけしてなく、一騎当千のサーヴァント達なら問題なく闘えるものである。見る間に身体を傷つけられていくヒュドラ。戦況は優勢であったが──その一つの行動が、一同の優位を即座に覆すのだ

 

『特異極まる魔力を感知した!ヒュドラの毒がお目見えするみたいだ!気を付けて!』

 

その言葉とと共に異変が起きる。軽く10を越える切り裂かれた頭の断面図から血飛沫が吹き出し、同時にその断面図から──新しい首が生え出てくる。その受けたダメージを瞬く間に回復させ再生させるその脅威的な回復能力は不死と見紛う程だ。だが、それはあくまで前兆、前触れに過ぎない

 

【ガァアァアァ!!シャアァアァアァアァアッ!!!】

 

【!──退避ーっ!!】

 

ヒュドラの咆哮と、リッカの指示は同時であった。全力で一同が飛び退き、マシュの背後に待避する。乙姫の防御あれど、それを展開する彼女の限界は間近。被弾せぬようにと執り行った指示は、正しく実を結び生存へと繋がる

 

ヒュドラの口から、赤と紫、どす黒く濁った物体が吐き出され放たれる。それらが放たれた瞬間、辺りに存在する総てが濁り、淀み、そしてみるみる間に朽ち果てていく。竜宮城の地表に到達する前にすんでのところで膜がその毒の浸食を防いだものの、その威力とおぞましい迄の危険性は、竜宮城を彩っていた四季の木々が、珊瑚が一瞬で枯れ果てることにて強く痛感させられざるを得なかったのだ。環境を総て侵し抜く毒・・・その破滅的な威力に、一同は戦慄し息を呑む

 

『防御していた竜宮城でこれか・・・!恐らく乙姫がいなかったら即座に終わっていただろう!強力無比とはこの為にあるのだと感じるほどだね!』

 

ダ・ヴィンチの言葉の通り、アレを丸腰で挑んでいた場合勝負にすらならなかった事だろう。吐き出された瞬間に目がただれ、耳や鼻が腐り落ち、魂を浸され即死となった筈である。これほどの破滅的な存在を直撃すれば・・・

 

『令呪の自害すら慈悲になるだろうね。いいかいリッカ君!指揮官としての命令だ、今すぐ此処で決着をつけるんだ!これ以上戦いを長引かせ・・・いや!『戦ってはいけない』!全力を注ぎ込んで決着をつけるんだ!』

 

ダ・ヴィンチの切迫した声音に即座に頷く。最早戦いを成立させていい相手ではない。大切な仲間に、自害と言う介錯を行うような最悪の結末を迎えてしまわぬように、この場で全身全霊を懸ける事を決断する

 

【皆!宝具で一気に倒すよ!『さっき毒を吐いた頭に集中して!』】

 

リッカの言葉に頷くと同時に、その指示に耳を傾ける。リッカは見たのだ。ヒュドラが毒を吐き出したのは『一つの頭のみから毒を吐いた』という事。周辺の無数の首からは吐かれておらず、戦慄の毒は首一つのみから放たれたことを一同に伝える

 

「毒を吐いた首ってーと・・・」

 

「アレだよシャルル!口から煙吐いてる!」

 

首の一つから、どす黒い空気が漏れ出ている。そこから立ち上るものは先程の毒。なればこそ判断は容易い。あの首こそが本体、主格にして主軸の首であることを確信する

 

「それなら、──こうだっ!!」

 

コロンブスが先端に突起が付いている鎖を取りだし、回転し振り回し一直線にその首めがけて放り投げる。二回転、三回転しぐるりと口に巻き付けられたヒュドラの主首は、完全に閉口し開けることが叶わなくなる

 

【!!──!!】

 

「マスター!手を貸して!あいつを封じるための綱引きだよ!僕はほら・・・!チャイルドだからさ・・・!」

 

コロンブスの真意を即座に汲み取り、長く延び巻き付かれた鎖を手に取り引っ張り、強く強く動きを縛る

 

【ふんぬぅあぁあぁあぁ!!!皆!今だぁあ!!!】

 

少女とは口が裂けても言えぬ雄叫びをあげながら、ヒュドラを釘付けにしたリッカが叫ぶ。今こそ勝機。一同はそのチャンスを手にし勝利を掴むため、一気呵成に攻め込んでいき全力を発揮する

 

「デオンさん!私と一緒に先輩のカバーを!」

 

「あぁ!無防備の隙を衝かせはしないさ!」

 

麗しの麗貌にてヒュドラの他の首の関心と興味を惹き付け、攻撃を一気に集中させる。そしてその殺到する首を、スパルタを一転集中させたマシュが食い留め、その総てを凌ぎきる

 

「アストルフォ!!そんで勇士連中!──砲撃開始ィ!!」

 

「君の真の力を見せてみろ!ヒポグリフ!!」

 

デオンとマシュに集中し、隙だらけとなったヒュドラの身体をシャルルの擬似勇士たる輝剣から属性砲撃が放たれ絨毯爆撃が如くに攻撃を行い、同時に延びきった首の中心目掛けてヒポグリフの突撃を行い、その総てを両断し切り落としたのだ

 

 

『──我が愛する孫娘・・・娘でいいか。コンラよ、ヒュドラの首をルーンで焼くのだ。再生を潰えさせる事が叶う。光は熱を産み出す。お前ならば出来る』

 

「!お祖父様!──アンサズ!!」

 

彼の耳に届いた声に従い即座にコンラはルーンを発動する。炎を司る原初のルーンを書き上げた弾を、絶ちきられた首の断面図に放り入れる。鼻を衝く肉を焼くような臭いと熱い熱量、灼熱の火柱がヒュドラを焼き尽くしていく

 

【──!!──!・・・・・・!!!】

 

再生を潰えさせられ、残り一つの首となりしヒュドラ。身を余さず焼き尽くされる想像を絶する苦痛に全身を震わせ身悶えるヒュドラを、歯を食い縛って、コロンブスの鎖にて縛り上げる

 

【大人しく、しろぉお~~ッ!!!】

 

泥の総てを肉体と身体の強化に使い、そしてヒュドラに拮抗するリッカ。全ての手を出し尽くし、あと一手にて打倒が叶う中、この場で取り逃がしてしまえば全てが御破算となる。マスターたるリッカもまた、その命を懸けてヒュドラを押し留める。──だが、その抵抗は余りにも強く、鎖が千切れる寸前にまで負荷がかかり、拮抗はそう遠く無い内に崩れることを示唆する

 

このままでは・・・こうなったら邪龍形態になり吹き飛ばすしか無いかとリッカが考えたそのときであった。ふっ、とリッカの感じる力が優しく緩まり、同時にヒュドラが強く強く縛り上げられ地面に叩き伏せられる

 

「──力の搾り出しかた、姿勢、気迫。うむ、よく教えを護っている。劣化とはいえ、よくぞヒュドラを押し縛った」

 

その声は優しく、また威厳に満ちておりリッカを優しく労る。リッカの力が赤ん坊が如くに感じられるほどの怪力無比が、鎖に伝わる

 

【──ヘラクレス・・・!】

 

そう、ギリシャの大英雄にして最強の存在、ヘラクレス。無敵の御機嫌王と唯一実力で拮抗する力を秘めている無双の英雄にして、リッカの師匠が細やかな助力のために自ら現れたのだ

 

「弟子の奮戦、力添えは許してほしい。さぁ、決めるのだ。かの蛇に不死はあるまい。首を落とせば総ては決する」

 

ヒュドラには最早身動ぎすら許されない。巨体、それも片手にて地面にめり込むほどの圧倒的剛力がヒュドラを完全に制圧する。後は最早、とどめを刺すのみとなった。即座に剣を抜こうとした際に──

 

『ワフ!ワフ!』

 

リッカに声がかかる。暖かく強き声。そして──最後の決着を、乙姫に報いる為の戦いをしたいとする声が上がる。誰かなど、語るまでもない

 

【──解った!頼むね、あまこー!】

 

『ワン!!』

 

そして召喚されるルーラー・アマテラス。召喚された瞬間に傷付いた草木は力を取り戻し、淀んだ空気と穢れが祓われる。それを見越した上で、あえて最後の〆を奪うとする恥すら晒してアマテラスは姿を現した。竜宮城そのものを、癒すために。そして──

 

「グルルッッ!!ガウッ!!」

 

雷を懐く金色の剣『アメノムラクモ』を召喚し背負い、そして奮い起ち跳躍する。完全に封鎖された真なる首を、一太刀の下に断ち切る為に。竜宮城の民達と乙姫に、苦難の終焉を伝えるために

 

「ガァアァアァァアァッ!!!!」

 

そう、それはかつて多頭の蛇を討ち果たした者の剣技。天下無双を名乗りし冴えなくとも勇気を奮ったモノの奥義。今こそこの瞬間、皆が培い掴み取ったチャンス、勝機に捧げる奥義──『七星天衝』。一撃の下に縛り上げられ地に伏せていたヒュドラの首は、真っ二つに両断され・・・絶命を果たす

 

『──ヒュドラ、反応沈黙!やったね、皆!これで後は、ヒュドラの肝を抜き取るだけだ!』

 

竜宮城の危機は去り、そしてヒュドラは絶命し毒を獲得することが可能となる。戦い抜いた乙姫の奮闘は、此処で確かに形となったのだ

 

 

『あぁ・・・皆様。なんと御礼を申せば・・・ありがとうございます。此処に、竜宮城は救われました・・・』

 

乙姫の感極まる言葉を受け、歓声を上げるリッカ一行。ヒュドラを相手にしながら、誰もが失われなかったのは奇跡に等しい戦果である

 

「ワフ!」

 

【やったねあまこー!ヘラクレス!じゃあほら、あまこー!最後の〆をお願い!】

 

「ワフ・・・」

 

自分は美味しいとこを貰っただけなのにいいの?といった視線にはサムズアップにて応える。誰かの戦果は皆の戦果。それでリッカは良いのだ

 

【ほらほら、早く早く!】

 

「ビシッと頼むぜ!アマ母さん!」

 

「お願いいたします!アマママさま!」

 

シャルル、コンラも心待ちに急かす!罰の悪そうなアマテラスも、皆の懇願に覚悟を決め、尻尾を振り──

 

「ガウッ!!ワオォオォオォオーンッ!!」

 

勝利を示す勝ち名乗りが、高らかに響き渡る。苦難の終幕と、一同の勝利を告げる清らかな咆哮が、力強く響き渡った──




シェヘラザード「我が王と仲間達が、困難を切り抜けたようです。流石は、私などを此処まで生かしてくださる良き王・・・やはり、天の宮殿には彼女こそが相応しいと確信いたしました」

乙姫「見ず知らずの私達の為に、此処まで・・・やはり、人という種は・・・義に篤く、素晴らしい方々ですね・・・」

「!乙姫様・・・!」

「だ、大丈夫です。気が抜けたら脱力してしまって・・・報われたという安堵と喜びは、素晴らしいものです・・・」

「・・・はい。本当に、お疲れ様でした・・・」

「・・・本来ならば、何年も何年も宴にて歓待したい所なのですが、皆様は先を急ぐ身分。引き留める訳には参りません。それに、私も民達の快復に竜宮城の維持を行わなくてはならぬ身。・・・ですから、せめて・・・こちらを」

『玉手箱』

「これは・・・」

「御安心を、年は重ねません。私の霊基を削りし魔力を蓄えた純粋な魔力塊です。どうか、これよりの戦いにお役立てを。そして・・・」



ケイローン「さて、細心の注意を払って毒の肝を抜き取らなくてはならないわけですが・・・む?」

リッカ「!ヒュドラが泡に包まれて・・・!」

ヘラクレス「・・・肝が、引き抜かれた・・・?、・・・!お前達、身体が・・・」

『・・・本当に、本当に。ありがとうございました。皆様の目的たる蛇の肝、我が竜宮城に侵入していたお陰で魔術的に取り出すことが叶いました』

「乙姫さま!大丈夫!?」

『はい。ですが今は立て直しを行わなくてはならない身。感謝の宴には程遠い身。ですので──暫し時間をください。総てが終わった際には、もう一度此処へ。その時こそ、竜宮城の歓待にてお迎えいたします』

アマテラス「ワフ!」

『私の力で、皆を地上へ・・・玉手箱はシェヘラザード様に託しております。肝、玉手箱・・・どうか、活用なさってください。叶うなら・・・またの、再会を』

リッカ「だ、大丈夫!?本当に大丈夫なの!?」

シャルル「ちょっとは休めよ!ぶっ倒れちまうぜ!?」

『ふふ、ありがとうございます。ですが、亀は万年生きるもの・・・長寿には、自信があるのですよ』

アマテラス「ワン!ワフ!」

『・・・はい。必ずや、また。我等が慈母よ、その善き仲間達よ。またの来訪を心待にしております。──御安心ください。地上で何百年も経っていた・・・などとはありませんから──』

先を急ぐリッカらを、力を振るい地上へと返し、一睡もしていなかった乙姫は、ようやく自らの安寧を享受する事が叶う

「・・・浦島・・・あなたのように・・・人は、とても善きものたちが・・・こんなにも・・・」



ずっと此処にいたいなぁ。何せ、あなたみたいな美女に会えたんだから

──まぁ。あなたの心ほどではありませぬ。弱きものを見捨てず、護ってくださったその美しさに比べたら・・・。劣化していく美など及びもつかぬその心の美しさこそ、何にも勝る宝物なのですよ

そ、そうかな?そうなのかな・・・

はい。ですがどうか、長居はせぬように──



かつての記憶を馳せ、民達に・・・そしてリッカらに感謝を告げ・・・乙姫は静かに、久方ぶりの安眠を、民達の目覚めと入れ替わりに甘受したのであった──
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