人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

547 / 3000
黄金郷


アマゾネス「リッカ様!お戻りになられましたか!女王は今、国境の付近にて単身かのヘラクレスと死闘を・・・!」

リッカ「分かってる!皆、配置について!セミラミス、行ける!」

セミラミス「当然よ。我はけして約束は違えぬ。恥知らずな者が女帝など名乗れはすまい。黄金郷の一ヶ所を借り受ける。さぞや良き毒の風呂となろうな。あぁ、使い魔を通して見ることは許さぬぞ、眼が爛れる故な」

シバ『ひわっ!?毒風呂・・・スパのアイディアに使えるかとか考えてないですよ?』

シャルル「急げお前ら!魔力は限界まで練っとけよ!コンラ!やるぜ!」

コンラ「はい!アーチャーとしてでもやれるということ、全力で示してみせます!」

フェルディア『記録はバッチリだぞコンラ!!頑張れ!頑張るんだぞ!!』

「はい!フェルディアおじさま!」

『おじさま!?ハハハハ!オレももうそんなポジションかぁ!』

クー・フーリン『かー!ヘラクレスってんならオレも立候補しときゃ良かったなぁ!ま、オレの息子にマスターに、仲間がいるなら心配ねぇよな!』

リッカ「勿論!コンちゃんオールマイティで本当に助かってるよ!」

「えへん!御父様の息子ですからね、当然です!」

「よーし、じゃあマシュ、彼女らを呼び寄せにいこ・・・」

アキレウス『マスター』

「?アキレウス?その姿・・・」

『頼みがある。あのペンテシレイア、んでメガロス・・・囮は、俺に任せちゃくれねぇか』

「!」

『あぁ、死ぬ気じゃねぇぞ?ヒュドラの毒壺にぶちこむ手助けだ。やらなきゃならねぇ。なんせ俺はオルガマリーの師匠で・・・アンタのサーヴァント。英雄王の財なんだからよ』

「・・・」

『──頼むぜ、マスター』

「──解った。その代わり・・・」

『?』

「必ず、生きて帰ってきてね!」

『──任せとけ。まだ、オルガマリーがお前より強いって証明してねぇからな!』


強き国『エルドラド』

其処は、強き国であった。誰もが何よりまず強さを求め、力を求め、ただひたすらに研鑽と努力を重ねに重ねし国。純粋とすらいえるほどの理念の下に、ただただ単純至極に真理を求め続け己を鍛え上げ続け、それより生まれ出る『強さ』こそを絶対の理念、法として敷いた。老若男女分け隔てなく純粋に、ただひたすらに強く在る事をかの女王は課したのだ

 

『強く在れ。それだけが、我が国が掲げる唯一絶対の理念して真理である』

 

そう告げたアマゾネスの女王、ペンテシレイアは言葉通りの絶対的なる弱肉強食の政治と統治を展開した。来るものは拒まず、しかして去るものは許さず。己の改革が叶うまで、いや叶わずとも徹底的な鍛練と特訓、強兵と成すべき政策をただひたすらに行った

 

弱者はただ死に、滅ぼされるのみ。弱者は悪であり、弱さは罪である。他者は自らを強くするための土台であり、自らを磨くための砥石であると。情、心などは屈辱と甘えを産み出す土壌となる。それは我が国には不要であると徹底的に叩き込んだ。友人、親兄弟、恋人に至るまで、生き残るための生存闘争を強いた。敗者は死に、強者は生き残る。止めをさせぬ軟弱者はもろともに葬り去られた。それが当然の帰結にして法であり、従えぬ者は唾棄すべき弱者であり、当然弱者は滅びるものと伝えられたからだ

 

当然生活もまた強さを求める為のモノに終始する。ひたすらに鍛え、高め、ただそれのみのコミュニティは没頭する男女の区別なく、そして差別なく。皆が平等に高め、強くなり、そして一人一人が強き国の礎と土台となっていく

 

互いに想い合っていた恋人は片割れを切り捨て強者となった。人を思いやれる心は敗者を切り捨てる強さを得た。誰かをいたわる心の機微は軟弱と切り捨てられた。子を慈しむ親の心は脆弱と断じられた。ただひたすらに強く、強く。己を高めるために、他の総てはそのためにあるのだと女王は揺るがぬ信念の下にそれを推進したのだ。アマゾネス達に、そして地底に迷い込みし者達に分け隔てなく。それは徹底的した公平、平等でもあった

 

実際に、その国の在り方に迎合した者たちはみるみるうちに強くなった。女は男を捻り潰せる程に精強となり、男は他国に躊躇いなく投入される強き戦力となった。子供達も躊躇いなく死地へ赴き、戦いへ身を投じる恐怖を乗り越えたのだ。力と活力に満ちた強き国。その単純にして明快なる一種の真理は、アマゾネスを・・・ペンテシレイアの国を極めて強固なものにした。事実、イースや不夜城は国土を懸けた競り合いを徹底的に避け、ペンテシレイアの関心が移る【ソレ】が来るまで徹底的に戦闘を避けながら向き合ってきたのだ。単純に武力においては最強にして無敵のその国が、常勝無敗を誇っていたが故に

 

民が強ければ当然求められるのは王の強さだ。その点においてはペンテシレイアは紛れもなく無双、最強と呼んで差し支えないほどに理想的な強さと気高さを持っていた。指示し、統治し、気高く。強さと言う観念の下に分け隔てなく平等であったが故に。国、理に賛同した者達は当然のようにペンテシレイアを敬愛、崇拝した。国の理念を誰よりも鮮烈に体現し、そして理想を誰よりも鮮やかに見せつけるその在り方に、民達は揺るぎなく確信と忠誠を以て付き従っていた。この地底と言う不安定な空間にて、誰よりも強く、明白な基準と輝きを放つその姿に、誰もが魅せられたのだ

 

強く、気高く。そして公平にて禁欲的。堕落の余地なく、そして腐敗の入り込む余地はない。骨太にして強固な国土が形成され、全ての国がペンテシレイアに制覇されるのも時間の問題かと思われた。思われていたのだ。だが──

 

【──⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!!!】

 

その統治と概念を、真っ向から打ち崩す存在が現れたのだ。国を破壊する天災、無差別に国を蹂躙するもの。メガロス・シャフリヤールと名付けられたそれ、大英雄の形を得た嵐が、ペンテシレイアらの理念を正面からねじ伏せに現れたのである

 

・・・強き事が自由であるという。強ければそれらは全てが赦されるという。強きものこそが総てを手に入れ、弱者は総てを喪うのみだと。確かにそれは強固な理であり、強さと言う単純明快な基準は強い。だが、それはけして森羅万象の『真理』ではないのである

 

弱きものは多くを残し、また弱いものは協調し手を取り合う。力が無いものは力の代わりに新たなる概念や思考を生み出し多様化を図っていく。個体を増やし、そして多彩な発想を産み出し、全く新しい未知を生み出す事すらある。弱さはけして切り離せぬ生物の要素であり、新境地、新たなる概念や可能性を産み出す萌芽でもあるのだ。それらを尊び、愛した者が伝えたように。この世の全てには価値と意味がある。一つの生命が不要と断じ切り捨ててしまえるような概念は、今の現在世界には在りはしないのである

 

それ故に、強き国の在り方は自由を謳えど自由はない。老若男女が強くなる為の戦いを徹底され、思考や道徳は唯一つの観念に塗り潰される。人は必ず強さを追い求め、他者と馴れ合い、触れ合うこともない。──エルドラドの民達は、自らの生命一つすら自由にする事は出来ないのだ。躊躇いなく強く、強く在らんとするが故に。そこに迷いや悩む余地など何処にもない。故にこそ、強大にして災厄なるメガロスに『徹底抗戦』を選択したのだ。国の全てが一丸となって

 

そして強さとその研鑽に、終幕と平等はない。誰もが認める最強を名乗るならば、世界総てを打ち倒さなくてはならず。また全ての者が等しく最強、とはけしてなり得ない。だからこそ、強き国は自らの理念と理想を証明するために無限の戦いに身を投じ無くてはならないのだ。逃げることも止めることも叶わない、その永劫の戦いに

 

そして単純にして最大の欠陥は・・・【強さを上回る者に出逢いし時、国の総ては瓦解する】ことだ。理想や理念に失望した民が離反するのではない。単純明快に【皆が死に絶える】のである。撤退や退却は許されず、勝利を掴み手にするまで。相手を滅ぼすまでその戦いは続く。相手の強さを上回るのならばそれは蹂躙であるが、相手が自らを上回る強さならば、それはただの特攻、玉砕である。それらが愚かであると、他の道を探ると考える思考は、既に脆弱と切り捨てられた。民達は、女王は。今この瞬間もメガロスに挑み続けている

 

「アキレウス・・・!!殺す、殺す、殺す、殺すッ!!必ず殺す、殺してやる!故にこそ──!!戦え!私と戦え!!」

 

【⬛⬛⬛⬛⬛!!!!】

 

加えて、ペンテシレイアはバーサーカーであり、アキレウスに対する尋常ならざる執念と気迫を持っていた。その狂化は尋常ではなく、ギリシャの匂い、雰囲気、それらをわずかでも感じれば理性は吹き飛ぶ。現在の彼女はメガロスをアキレウスと『確信』し、『認識』している。其処に、他者の静止や諫言が介入する余地はない

 

「今度こそ戦え!戦士の誇りのみを胸に戦え!私と尋常に戦え!かの屈辱を張らすために!雪辱を果たすために・・・!!戦え!アキレウス!私と戦え!!」

 

【⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛】

 

「戦ええぇえッ!!!」

 

統治も、指示も、総てを投げ出すペンテシレイア。国の統治者が致命的に狂い果てており、苦難と困難と試練の瞬間に国が一つに団結することはないという皮肉。地上から現れた者達はアマゾネスの指示で国土の防衛に回され、生粋のアマゾネスだけがペンテシレイアの下へ馳せ参じ、そして──名誉の戦死を遂げたのだ。だが、それを省みる理性はペンテシレイアには欠片も残っていない。在るのは屈辱の記憶と、それを覆さんと吠え猛る軍神がごとき咆哮のみである。ただ──其処が国境、アマゾネスの密林の最先端であった事は、不幸中の幸いであったのかもしれない。或いは、邪魔立てを嫌った両者が、尋常にして単なる力比べを行わんと其処を本能的に選んだ事か

 

だが、ペンテシレイアとメガロスの決着は未だついていない。どちらがどちらも強力無比であり、その実力は最高峰の境地で両立されており拮抗している。地面が抉れ密林は切り株とクレーターが辺り一面に穿たれ、その壮絶な、しかして理想は果たされぬ死闘が繰り広げられている。真なる願いを、果たすために

 

「アキレウスゥウゥウゥウゥウ!!!!!」

 

その女王の叫び、鮮烈なる慟哭を、悪辣なるギリシャの神々がごとき運命が聞き入れたか。あるいは、楽園の介入が在った瞬間から、それは必然であったのか。──ついに、その瞬間が訪れる

 

「──そんなに叫ばなくても聴こえてるぜ。アマゾネスの女王さんよ。おまけにそっちのヘラクレス擬き。さんざんぱら暴れまわりやがって。ヘクトール引きずり回してた俺がましに見えるとはよ」

 

「!!」

 

【⬛⬛⬛⬛!!!】

 

青銅の槍、そして軽快な口笛。遥か遠方から一瞬で此処へ到達せし俊足。その姿は、ギリシャ最速──いや、人類最速の脚を持つ大英雄

 

「・・・色々と思うことはあるが、今の俺はサーヴァント。さんざんぱら悩みに悩んだが、結局の所、──此処に俺が立つのは道理なんだろうさ」

 

全身に纏うは、母から賜りし金色の鎧。その眼にも、全身の覇気にも。微塵も遊びや侮りはない全霊の境地となり大地を踏みしめ、ギリシャの英雄らに相対し声をあげる

 

「俺のせいで狂いに狂い果てちまったアンタ、なんの因果か暴れまわるヘラクレス。──詫びの為に殺されてもやれねぇし、アンタに対する一騎討ち、なんて申し込みはできやしねぇ。サーヴァントとして、マスターやカルデアを裏切るわけにはいかねぇんでな」

 

神妙にて精緻な顔立ちが決意に燃える。槍を振り、真っ直ぐに狂える二人を指し示す

 

「ペンテシレイア。アンタをカルデアに招く切っ掛けを作らせてもらうぜ。野良のアンタじゃアンタとじっくり向き合えねぇ。だから──」

 

「アキレウス・・・!そうだ、知っている!貴様は速い!ならばその速さで!分身や増えることなど容易かろう!!」

 

【⬛⬛⬛⬛⬛!!!】

 

マスターらが指し示した作戦に、真っ先に貢献するために。今は、恥知らずの汚名も、あえて・・・今は

 

「──メガロスをぶっ倒して、アンタの国を護る。そいつが俺が此処にいる理由だ。俺らの個人的な問題は、全部後回しだ」

 

「アキレウスゥウゥウゥウゥウ!!!!」

 

「楽園の、マスターのサーヴァントとして。誇りを以て戦い抜く。この三つ巴・・・俺にこそ相応しい戦場だッ!!」

 

【⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!!】

 

活路を拓くために。メガロスを討ち果たし、ペンテシレイアの縁を導くために。疾走する金色の英雄は、三つ巴の死地に単身殴り込む。アキレウスの戦いが、このアガルタ最強を決める戦いが今幕を開ける──!!

 

 




オルガマリー「?連絡?」


『よぉ、オルガマリー。そっちは大丈夫か?』


「アキレウス師匠。珍しいですね。何かありましたか?」

『いや別に?単に声が聞きてぇなってだけさ。ダメかい?』

「ダメなわけはありませんが・・・そちらこそ、攻略は順調ですか?」

『当たり前だろ?俺らだぜ?心配すんなっての』

「ふふ、愚問でしたね」

『全くだ。・・・なぁ、オルガマリー』

「?」

『アレだ。悩みに悩んで答えが出ないとき、お前ならどうする?』

「・・・、・・・そうですね・・・」

『・・・』

「原点に立ち返ります。自分はなんなのか、何者なのか。それを感じて、動きます」

『・・・そうか』

「・・・ペンテシレイアの事ですか」

『解るのか?』

「報告されてますから。──今のあなたは、サーヴァント。どんな答えになろうとも・・・楽園の皆を、哀しませることは無いように」

『・・・あぁ、本気でやるから心配すんな。やられやしねぇよ。サンキュな』

「あなたはやらかしが多すぎますからね・・・」

『言うなって。じゃあ解った!姉さんにビンタでもしてもらってくるわ!じゃあな!』

「・・・アキレウス師匠・・・」



セミラミス「さて、とびきりの毒だ。念入りに仕立ててやらねばな・・・」

?「──妾も、手を貸してやる」

「・・・貴様は・・・」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。