人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アガルタ編、エピローグです!最後までお楽しみください!

出来るだけ不快な要素を取り払ったアガルタ、如何でしょうか?正直ジェンダー理論を初めとした問題は素人作ではデリケートすぎるので触れないようにしたつもりです。とにかくストレートで、分かりやすい王道RPGをと執筆してみました!

僅かでも心を動かしてもらえた場面、キャラたちが印象に残ってくださったなら、幸いです!どうか、魅力的なアガルタのキャラクター達を愛してあげてくださいね!

それと、自分はコロンブス大好きです!批評や批判を初めとした挫けそうな意見や窮地も『オイオイマジかよ、しょうがねぇな!』と言えば乗り越えられますからね!

コロンブス・リリィは原作のマッシロイポジとして抜擢しました!原作のマッシロイは自分の答えを放り投げて大人に任せちゃうのが心残りだったので、なんとかメインに据えたいと!

シェヘラザードも、原典の賢く聡明な女性成分を意識しました。死んでしまうネタは抑えめで、パートナーサーヴァントとして味を加えたつもりです。かの女性は素敵な方なので、皆さん是非大切にしてあげてくださいね!

毎日いつも、感想ありがとうございます!メッセージで色々送ってくださる方も、本当にありがとうございます!

どうかこれからも、よろしくお願いいたします!ありがとうございました!


エピローグ──未来への出港

「思えば、私は・・・私の竜宮城はこの瞬間の為に用意されたのかもしれませんね。正しき者達の凱旋を、勝利を。朗らかに、高らかに祝うために」

 

乙姫──イースの真下にありし美しき竜宮城。その主たる女性が告げる。その血色はすっかり健康の艶を取り戻し、絶世の美貌を取り戻している。羽衣、そして豪奢なる着物を召した地底の姫が、竜宮城──そして、天の宮殿に在りし者達を代表し言葉を紡ぐ。聖杯の効力、そして天の宮殿の効果を発揮し、アガルタ全域に音声と映像を送信しているのだ

 

それぞれの都市に、それぞれの催しを展開する。イースは生まれ変わり、華やかな水のテーマパークに。不夜城は食事と豪華なる装飾を施した中華街に。エルドラドはアスレチック&アクションに。それぞれの特色を前面に押し出した国の祭りを開催し、その最後のイベントを飾る

 

「えぇ、不満は無いわ。奪われたものは幸福なのよ。そう・・・勝ち馬に乗れたのなら最上ね」

 

「新しき拷問・・・そう!『食べても食べても食べたくなる拷問』じゃ!妾は諦めぬ。理想の国を、理想の統治を目指す!サーヴァントであろうが、我が努力はけして終わらぬのじゃ!」

 

「・・・全てが終わり、消えいくと言うのも味気がない。凱旋の宴ならば理解しよう。アマゾネスは誇り高き部族だ、礼節も弁えているのだぞ」

 

国を治めていた首脳たちもまた、その方針に賛同を示し協力を惜しまない。勝者に従い、また勝者と肩を組む。それが、この特異点の覇者が目指し、そして導き出した答えであるからだ。その主導は乙姫が行い、そして音頭を取る。征服者の支配を脱した、僅かな一時にして最後の時を、華やかに過ごすための催しにして、その全てを飾る宴会──

 

「それでは──我等が楽園のマスター、そしてその仲間達の勝利と栄光を称えた大宴会を行いましょう。最後の最期まで、どうか悔い無きように!──我等の勝利と生還を歌い上げましょう。皆様、本当にお疲れ様でした!」

 

「「「「「おおぉおぉおーっ!!!」」」」」

 

最も民と力を合わせた国、その乙姫の笑みが民達を、虐げられた者達を癒していく。自らの在るべき場所へ帰れる喜び、苦難から解放されたその清涼感。レジスタンスの完遂。それらが全て集い、天の宮殿を・・・地底の全てを彩っていく

 

「最近はガーデニングにも精を出しているのよ。潮風に負けない華たち。えぇ、有り得なくも綺麗でしょう?」

 

「・・・・・・・・・・・・強き華だな。そうか、まるでヒッポリュテのようだ。私も、このような強さを身に付ける日が来るのだろうか」

 

イースにて、ペンテシレイアはたおやかなる強さを知る。あらゆる苦難を越え、あらゆる苦難に堪え、自らを誇示し咲き誇る強さ。そして力を合わせる強さ。自らが知らぬその強さを示されし女王は、改めて決意を示す

 

「──よし。私も必ず、楽園の招きに応えるとしよう。かのアキレウスを必ず殺すために・・・殺すために・・・アキレウス・・・アキレウス・・・!」

 

「そう。私はパスね。ミサが終わらないもの。私は、イースは何処にも行けないのよ」

 

「アキレウスゥウゥウゥ!!!!!」

 

「・・・御願いだから私のイースで暴れないでちょうだいね?せっかく咲かせたのだから・・・聞いていないかぁ・・・」

 

一人で納得し、一人で奮起し、一人で激憤するアマゾネスの女王に辟易し肩を竦める。殺到する側近達を蹴散らし、暴れ回るペンテシレイアすらも楽しげに眺めるダユー。水の都イース・・・いや、その名は最早、背徳を忘れたこの都市には相応しく無いとダユーは笑う

 

「そうね、歓喜と清水の都・・・『アクエリアス』とでも名付けましょうか。特異点が消えていく間だけの幻。皮肉じゃないかしら?」

 

「アキレウスゥウゥウゥ!!!」

 

「──えぇ、全く噛み合わないのも楽しいわ。さようなら、楽園の皆。一時の関係、それはそれは素敵な想い出だったわよ」

 

淫蕩に、そして何処か楽しげに笑い続けるダユー。その顔に悔いも後悔もありはしない。あるのはただ、気ままに己が追い求めた快楽と幸福・・・そして、遥か短き、真っ当に生きた思い出の記憶。傍らに暴れ回るアマゾネスの女王さえいなければ様となっていた筈ではあるが、彼女はどこ吹く風とばかりに空を見上げていた。──その、気儘な感傷を思い出させた者達を眺めながら

 

「──執着。いいえ・・・共有も悪くはないわね、たまには」

 

誰とも聞かせるつもりのない気紛れを、彼女はもう一度。退去が始まる霊基が消え去るまで。ダユーは空を見上げていた見つめていた──

 

そして、思い思いの一時を過ごしていく者達、人間達を眺める者は二人だけではない。在り方は違えど、国を懐き、そして尽力した者達は顔を合わせ語り合う

 

「ふん。呑気なものじゃ。やはり民草には我慢が足りん!少し勝つだけですぐ浮き足立つ!滅びと衰退は堕落から始まると何故分からんのじゃ!」

 

中華街にて飯を食い続ける様々な民達を見つめ、どういうわけか憤慨する武則天。その憤りを、乙姫は楽しげに見つめる

 

「まぁまぁ。民の笑顔あってこその国なのです。治世には、娯楽も必要ですよ。ほら、皆様あんなに楽しそうで・・・」

 

「・・・ふん。言われずとも分かっておる。妾は理解していた。いや、理解していたつもりであったのだ。──まさかそれを、あんな小娘たちに気づかされるとはの」

 

懸命に統治を行い、懸命に理想を夢見たもの。それは何故か。理想の国を作りたかったのは何故なのか。その答えを共に懐き、夢見た二人は語り合う

 

「・・・悪が存在せぬ国を、妾は必ず再興してみせるぞ。妾は努力し、奮起し、必ずや達成してみせようぞ。必ず、必ずじゃ!」

 

「ふふ。サーヴァントという特殊な立場、可能性は無限大です。どうか挫けず、頑張ってくださいな」

 

「ふん、言われるまでもないわ!・・・に、しても乙姫。貴様は何故じゃ?」

 

「?──何故?」

 

彼女は何故、と問う。どうしてそこまで竜宮城を、自らの国を守りたかったのか。それは、何故。この特異点にて、命を懸けてまで戦い抜いたのか。彼女は問い掛けたのだ

 

「この地底にて、そこまで命を懸ける理由があったというのか?そなたには」

 

「──えぇ。無力・・・微力なばかりですが。私が私である限り、けして竜宮城は譲れぬ場所であるのです。──それは民草の思い、民草の命・・・そして、細やかな思い出があるから・・・」

 

「思い出・・・」

 

「──私の国を、竜宮城を。美しいと仰有られた方がおりました。亀を助けた、心優しきもの。何より美しき心を持った彼が・・・私の竜宮城を、美しいと仰有られたのです」

 

遥か彼方の記憶。遥か過去の思い出。──そして・・・望まずとも、哀しき結末をもたらしてしまった、儚く遠き、悔恨にして永遠の誇り

 

「その彼が、告げてくれたのです。『此処は良き都、良き場所だ』と。──誰よりも美しき心を持った人が。だから、私は誇りに思っております。大切で、大好きなのです。この竜宮城という国、そのものが。だから──護りたいのです。彼が告げてくれた言葉を、思い出を」

 

好きだから。愛せるから頑張れる。だからこそ、いつまでも戦える。だからこそ──

 

「私は、竜宮城を愛しているのです。国を護る理由は、それだけで充分なのではないのでしょうか」

 

「──のろけかぁ!毒にも薬にもならぬわ、おっろかものーぅ!!」

 

自慢気に胸を張り、そして清廉なる宣誓を告げられた武則天。彼女からしてみれば誰かに統治の理由を任せるなど想像もつかぬ真似であり、なんとなくムカつくといった感傷と共に酒を飲み干していく。カレイやヒラメの舞踏を目の当たりにし、飲めや歌えの大騒ぎを眺めながら、一時を過ごしていく

 

「やはり妾は単独にて国を治めねばならぬ!良き国を、完全なる国を作るのを諦めはせぬ!更なる妾の活躍を期待して待つがよい!くっふっふー!」

 

「ふふっ。──にはは、とは笑わないのですかか?そちらの方が可愛らしく、お似合いだと思うのですが?」

 

「ばっかものーぅ!最早妾は小娘では無いのだ、威厳を見せずしてなんとする!キチンとした使い分けをしなくては民はついてくるまい!──あ!なんかムカムカしてきた!覚えておれよ、藤丸リッカぁ!必ず、必ず今度は泣かせてやるのじゃからな~!」

 

可愛らしく、高貴に復讐とリベンジを誓う不夜城の女帝の傍らで、慎ましく微笑ましげに歓喜と営みを見守る乙姫。彼女らの奮闘を、形は違えど祝福する一行たち。──そして、勝利を掴んだものたちもまた、笑顔に満ち溢れながら凱歌を歌う

 

 

「天の宮殿から特異点の全てに物語るなど・・・御許しください、死んでしまいます・・・!」

 

「大丈夫!シェヘラザードなら行けるよ!聞きたいなー!僕の霊基をかたちどったシンドバットの冒険!聞きたいなぁー!」

 

「此処に来て押しが強いぞコロンブス君!さぁ!観念して語ろう、シェヘラザード!ちなみに死因は?」

 

「パワハラによる照れと過労と緊張によるショック死・・・その他諸々の要因が重なり確実に死んでしまいます・・・御許しください、御許しください・・・!」

 

「そ、その大袈裟に考えずに。ただ、聞きたいだけなのです。シェヘラザードさんの語りを。物語を・・・」

 

「よぅし!徹夜で行こうぜ!記念だ宴だ!お祭りだぁ!」

 

「さんせー!だいさんせー!シャルルやボクのアンポンタンさを語り継いでもらおー!」

 

「君達はそれでいいのか・・・。僕としては、先輩にして尊敬できる騎士達だと言うのに・・・」

 

「おーっはなし!おーっはなし!あ、天の宮殿は映像も飛ばせます!さぁ、りんじょーかんたっぷりに話してもらいましょー!」

 

「確実に・・・確実に死んでしまいます・・・!どうか、どうか御許しください・・・!死んでしまっては、皆様と望まぬ形で離ればなれになってしまいますから・・・!何とぞ!何とぞ・・・!」

 

「おおっ!Japanese!土下座!すげぇフォルムだよなぁ、いつみても!」

 

「──。ねぇシェヘラザード。土下座って『首を差し出して切ってもいいから許してください』っていう死を覚悟しての懇願だから、死を回避するアピールには縁起が悪かったりするよ?」

 

「──なんと・・・土下座には、そのような意味が・・・!?では私は、どのように許しを乞えば・・・!?」

 

「普通でいいんだよ普通で!大事なのは──真心と誠心誠意の想い!それだけなんだから!」

 

「・・・我が王・・・」

 

「また先輩が攻略しています!またですか先輩!後輩を差し置いてヒロインを増やすのは自重してください!」

 

「あははははは!うんうん!そうだよね!新天地は、たどり着いた場所でやることは、こうでなくちゃ──!」

 

笑い転げる一同。朗らかに賑やかに過ぎていく宴

 

「よーし!じゃあ乾杯しようか!みんな、グラスを持って!」

 

 

乗り越えた嵐の果てにある宝。それは形はなけれど、誰もが共有する想い出。──それは、冒険家の少年が想い焦がれ、懸命に求め抜いた結末と財宝

 

「じゃあ行くよ!かんぱーい!!」

 

「「「「「かんぱーい!!!!」」」」」

 

誰もが笑う新天地。たどり着いた希望と夢の成就。その祝福は、かけがえのない仲間達と共に

 

 

──そして。訪れる、別れの時・・・




『聖杯が回収された事で、歴史の是正が始まる。サーヴァント達も、同じ様にね。──皆、お疲れ様』

ダ・ヴィンチの言葉通り、皆の退去が始まっていく。民達も、地底の国も、全てが無くなっていく。在るべき場所へと、還るのだ

ダユー「じゃあね、皆。楽しかったわよ。良いものね、たまには奪われるのも」

武則天「これで終わったと思うなー!次こそは妾の前に平伏させてやる!おぼえておれよばかー!!」

ペンテシレイア「強く在れ。アキレウスがいたなら出せ。──さらばだ、ヒッポリュテ」

思い思いの言葉を告げ、退去していく者達。そして・・・

乙姫「さようなら、美しき人々。さようなら、麗しき旅人よ。どうか、鶴のようにその羽ばたきが美しくありますように」

乙姫も消え去り、やがて・・共に歩んだ者達も、また

コロンブス「というわけで、僕はここまで。征服者は此処が終着点なんだ。だから──ね。言わなくちゃ。さよならを」

消えていくコロンブス。最早楔は無いためだ。消える。稀少なるリリィ、その冒険家たる少年が消え去っていく

「皆、ありがとう。幻想のボクの夢を叶えてくれて。本当に、本当に──嬉しかった」

シャルル「あぁ。最高に楽しくて、最高にカッコ良かったぜ。コロンブス」

コンラ「さよなら、さよならだなんて・・・ぐすっ。また、また逢います!逢えます!」

「ふふっ、ありがとう。──だからこそ、僕は皆に言うよ。最期まで、何度でも」

それは、彼が信じた夢への原動力。大事な、未来への切符にして辿り着く為の力

「──諦めず、前へ!どんなことでも、絶対に諦めなければ夢は叶う!だから進んで、楽園の皆!僕も見たことがない新天地へ!世界が、みんなを待っているよ!」

リッカ「──うん!コロンブス!本当に楽しかったよ!皆がいたから、この旅は楽しかった!」

その言葉を聞いたコロンブスは、心から笑みを浮かべ、涙を堪えながら言葉を紡ぐ

「──さようなら!マスター!僕を信じてくれたマスターが、君で良かった!そして、シェヘラザード!」

シェヘラザード「・・・はい、コロンブス」

コロンブス「君には居場所がある!楽園を語り継ぐ語り手として!この別れは終わりじゃない!だから──『諦めず、前へ!』だよ!ありがとう、シェヘラザード!」

最期まで、感謝を告げながら。小さな冒険者は消えていく。この場にて、この存在の証明はただひとつ

リッカ「──ありがとう、コロンブス」

彼が託した、一冊の白紙の日誌。──否、もう・・・白紙ではない。沢山の夢が、思い出が詰まっている希望の日誌

シェヘラザード「・・・我が王。大変な、多大なる迷惑をおかけいたしました。──そんな私が告げるには、恥知らずですが・・・」

シェヘラザードは告げる。──その旅にて掴んだものを

「『また、次の夜でお会いいたしましょう』。我が王──心待ちに、しております──」

王に、また会いたいと告げたシェヘラザード。その言葉の意味を理解し、痛感し。リッカは顔を上げる

「──うん。また合おうね!シェヘラザード、そして──コロンブス!」

──全てが是正され、正され。在るべき場所へと帰っていく。──リッカら旅の一同も、また──




ギル「ふはは!留守の間に随分とたくましくなったではないか!どれ、腹筋を見せてみよ。うむ、いつも以上に割れているな!」

リッカ「それは元から!ねぇねぇ、ギル」

「?」

「見て欲しい、航海日誌があるんだけど──」


カルデアの王に捧げられし、痛快なる冒険段。その一ページ目の言葉は──写真と共に

『僕の夢を支えてくれた、最高の仲間達!』

『完全無欠の物語は、いつだって彼女達の傍に』


一時であれど存在した冒険家に、語り手の。──確かに存在した事を示す締め括りの言葉──


──わぁ・・・!

「──ほう。良き顔で笑っておるではないか。まこと、我が楽園を彩るに相応しき面貌と痛快さよ」




終わりはあれど、完結は無し。豪華絢爛にして完全無欠の物語は、これよりも続いていく──

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