人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オルガマリー「あぁマシュ、丁度良かった。少しスケジューリングに付き合ってもらえるかしら?」

マシュ「所長?スケジューリングですか?何か出張の付き添いでしょうか?」

オルガマリー「まぁそんな所よ。──Aチーム、本来の人理修復の仲間達を覚えているかしら」

「!キリシュタリアさん達ですか!」

「えぇ。オフェリアとペペロンチーノと約束がこぎ着けられたわ。近いうちに会えると思うから、話し合う場所が何処がいいかを決めようと思って。いきなり楽園に招くのは色々と問題があるから、御茶会でもしようということよ」

「なんと・・・!また皆さんに会えるのですね!二人でも、御会いできるのなら嬉しいです!あ、先輩!先輩も一緒でよろしいですか!?」

「ふふ、あなたとの会話と対話で向こうが興味を持てばね。あなたのプレゼンにかかっているわよ。カルデア三大マスターのトップにして、人類最悪のマスターを知れるかどうかはね」

「は、はい!分かりました!先輩の魅力を余すことなく御伝えいたします!レポート用紙十枚を書き起こしてきますね!はい!」

「・・・そう言えばあなたは、Aチーム首席だったわね・・・」

(・・・認識汚染でロックしているとはいえ、万が一にもカルデアの内情や機密を漏らさないようにしないと。リッカはある意味、最も魔術の世界の衆目に晒させてはいけない存在だしね。──だとしても、Aチームの皆をカルデアに招けるかどうかはこれから次第、かしら)

「オフェリアさんやペペさんの御茶会にようやく参加できます!他の皆さんにもいずれ会えるのでしょうか!あぁ、楽しみです!私の先輩も最早皆さんに負けない方である事を伝えられたら・・・!」

「あー、マシュ?あくまで人となりだけよ?間違ってもリッカがそんな凶悪な存在であることは・・・」

「大丈夫です!アニメ好き、カルチャー好き、半生の説明で日が暮れますから、きっと!」

「・・・そうね。確かにその通りよね。納得だわ・・・」




『僕』──自分の在り方──

「やぁマスター!元気にしてるかな?遊びに来てみたのと一緒に、ちょっと相談があるんだ!」

 

リッカのマイルームの扉が開き、陽気で快活な少年が彼女の下を訪れる。長い白髪に、希望と未来を夢見る力強い眼差し。その全てが前進と冒険、新天地の踏破と未来を夢見るリリィなるサーヴァント・・・クリストファー・コロンブス。少年と形容すべきその外観の英雄が、何かを伝えたいとリッカへコンタクトを取りに来たという事実に、ココアを飲んでいたリッカは快くその提案を申し受ける

 

「やっほーコロンブス!なになに、どうしたの?何か新しい冒険の気配でも感じた?カルデアはどう?」

 

「大丈夫さ!カルデアは本当に楽園で、楽しいところでワクワクが止まらないよ、歩いているだけで楽しい場所があるだなんて知らなかった!だから僕は──、あ。それはココアだね!僕大好きだよ、自分のやらかしだしね!」

 

ココアを見たコロンブスの目が輝く。彼はココア・・・というより、カカオという存在そのものが好きだと言う。チョコレート、そしてカカオ。これは何故なら『自分の大きな失態』であるというからだ

 

「どういうこと?あ、そう言えばカカオはコロンブスが・・・」

 

「そ。僕が新天地から持ち帰って広めたものだよ。でも、それは広めただけで価値を理解していた訳じゃないんだ。どんなものか、どんな風に活用すべきか。それを理解しないでただ持ってきた。だから・・・他人に、儲けや利益の発生を奪われた失態の証なのさ」

 

持ち帰ったのはいいものの、それがどのように加工されどのように広まるかまでは読めず、チョコレートとしての昇華と利益の発生は他人に譲ることになってしまった。朗らかに笑うコロンブスは告げる。自らの失態に関して『ざまぁみろ』と告げるのだ

 

「反面教師として、自戒としてカカオは大好きなんだ。どんな場所にチャンスは残ってるか、眠ってるか解らない。だからどんな手であろうともどんなものであろうとも、見逃さず自分のチャンスに変えるものだと決めてる。だから僕はカカオが、チョコやココアが大好きなのさ!悔しがる自分の未来の姿がなんとなく浮かぶみたいで面白いからね!」

 

自分の失態を笑いつつ自戒とするしたたかさに、リッカも思わず笑ってしまう。自分がこうして自分を様々な形で意識する。そんな在り方もまた、サーヴァントたる故の事象であることを理解し微笑ましげに思う。

 

「なんだかポジティブなような自虐的な様な・・・こういう客観的な判断で自分が自分を判断するのがサーヴァントの面白い所だよねー」

 

「こんなの自分じゃない、と拒絶するよりかは建設的だと自分なりに考えた結果だよ。どうせ自分の未来の姿が決まってるなら、目を逸らさずに笑い飛ばした方が色々と愉快で楽しいはずだからさ!」

 

そのポジティブかつ弱気にならない姿は、紛れもなく新天地を発見した不屈の意志の発露でありコロンブスの中核である。自らの失敗談を笑いながら、次こそはしっかり、上手くやってみせると更に高らかに笑う。それこそがリリィたる自分の在り方だと告げるかのように。だがそれはあくまで副題であり、自らの悩みや想いは別にあるという

 

 

「おっと話がそれちゃった。ねぇマスター、ちょっと相談があるんだけどいいかな?」

 

その申し出は最初に告げた通り、リッカに告げたい相談だという。その目と態度は何処か困っているかのような、それでも真剣みを感じさせるかのような真面目なものだ。それを察し、リッカもまた腰を入れて聞き及ぶ体勢に入る

 

「言ってごらん?世界焼却クラスのお悩みを解決せしめたこの藤丸リッカにかかれば大抵のお悩みはガッツリ解決しちゃうこと請け合いだよ!高校の時はそんな感じでやってたしね!」

 

誰かと触れ合い、誰かの力になることはリッカ最大の得意技であり生きざまそのものだ。だからこそその在り方にて誰であろうと力を貸す。人道に反する事以外ならばなんであろうと力になる。それが彼女が定めた生き方である故にだ

 

「マスターならそう言ってくれると思ったよ!ありがとう!僕はいいマスターやいい仲間に恵まれたなぁ・・・!」

 

そんなマスターの返答に満足げに笑みを浮かべるコロンブス。その様子にほっこりと微笑ましさを感じつつ、悩みとは何かを告げてみる

 

「実はね、カルデアで集まってる皆。その中の交流会に誘われてるんで顔を出してみようと思うんだ。僕に目をかけてくれた人達の集いだから無下にしたくなくて、それで行ってみようと思うんだけど・・・所属は断ろうかなぁ、と考えてる。だからマスターにはいい感じに立ち会ってほしくて」

 

「あれ?断るの?」

 

それぞれの交流は確かにある。最早一大都市に発展しているきらいすらある楽園、カルデア。当然人となりや交流の多様性もまた然りであり、其処には多種多様の集まりや交友関係が生まれている。そんな中にてコロンブスは、その所属を断ろうと考えているらしい。勿体無い、遠慮することなんて無いのにとリッカは考え、とりあえず理由をたずねて見ることにする。其処にはどんな考えがあるのか、と

 

「そんなに深く考えなくてもいいと思うよ?皆仲良くなろう!って気にかけてくれたんだと思うしね」

 

「それはもちろん!だけど僕は僕なりに考えていることがあるんだ。なんというか、僕は僕しか選べない答えと、自分なりの貫くべき何かを持ってる、というか。だから一ヶ所に留まるように、自分を型に嵌めてしまうのは何か違うと感じた。上手く言えないけど、だからこそ自分は自分の想いと心に従いたい。なんとなく違うと思いながら活動されちゃ、仲間達にも迷惑でしょ?」

 

本腰の入らない仲間を抱えさせるような真似は相手にも失礼、だからこそ自分が納得できない結果にて自分を偽らせる訳にはいかない。それ故にこそ、自分はあえて全てを断る選択を選ぶのだという

 

「でも僕は断り方や言い方で誤解を招いてしまうことが多々あって・・・万が一にも軋轢といがみ合いを招いてしまうことがあるかもしれない。『ごめん、お断りするよ』なんて感じがわるいでしょ?だから自分より交渉や会話が上手なマスターの力を借りたいんだ。禍根なく、誘ってくれた人達の顔を潰さない為にも。マスターに対話や口添えをしてほしいと思う。楽園で災いや禍根になるものを持ち込みたくないからさ」

 

ダメかな?と告げるコロンブスへの答えは決まっている様なものだ。恐らく彼にはまだ重ねられているのかもしれない。征服者となり、自らの夢を阻み汚したその姿、『コンキスタドール』であるクリストファー・コロンブスを。彼にはそれを否定するつもりはなくとも、征服者として色眼鏡にて見られる事態を、このコロンブス少年にて看過させる訳にはいかない。彼は彼、此処にいる彼とは大本を同じとする別人であるのだから

 

「いいよ、解った!任せて、ばっちりとりなしと仲裁をやってみせるからさ!コロンブス君は自分の信じること、信念を告げて!私がバッチリ伝えてみせる、安心して任せてよ!豪華客泥船に乗ったつもりで!」

 

そんな彼の意志を汲んであげる事にしたリッカが膝を叩いて立ち上がる。彼は自分を頼ってくれた。ならば力を貸す理由はそれだけでいい。自分は同じように、英雄や英霊を通じ、他者や友人を通じ。歴史や世界に力を借りて来たのだから。ある意味今を生きる英雄たるコロンブス少年にも、同じように力を貸すことに異論が挟まる余地はない

 

「わぁい、ありがとう!宜しくね、マスター!」

 

コロンブスの差し出された手を優しく握り返し握手を交わす。マスターへの信頼を真っ直ぐに示す彼の姿は、往来の彼とは全く異なるコロンブスの姿である。其処に損得が関わらず、意志と理念のみで自らの利益となる可能性を否定する。それは、俗に染まった彼では取れぬ選択だ。その彼が協力者を得て、いざ出発だと立ち上がる

 

「じゃあ行こう、マスター!呼ばれた会は約三つ。その全部に話を付けに行きたいからさ!よろしく頼むね!御礼はきっちりしてみせるからさ!」

 

「それは嬉しいけど、あんまり深く考えなくても大丈夫!私、誰かの力になれること自体が御礼と報酬として受け取ってる処があるからさ!じゃあ行こ行こ!コロンブス君が望む答えと納得する在り方に辿り着く為に!」

 

そんなこんなで始まった、コロンブス少年と行く数奇な旅と交渉の一幕。彼は一体楽園にてどんな立場へと落ち着くのか。彼を導かんとする御誘いは一体どのようなものなのか?ココアを飲み干し、慌ただしく着替えるリッカ。そしてコロンブスもまた楽しげに笑い、マスターと共に何かを為せる事を心待ちにしているのだ。彼にとって、自分を信じ共に進んでくれるマスターこそ良いマスター。自分を色眼鏡にて見つめ疑惑と疑念で監視するマスターこそ悪いマスターであり、その点にとって自分は最良のマスターを得たと確信する事に何ら疑問が挟む余地はないと自負しているのだ

 

「ところでマスター、マシュちゃんはどうしたの?いつも一緒にいるよね?」

 

「ん?あぁ、昔の友人に会いに行くって外してるよ。待っていてください先輩!後輩を信じて送り出してくださいって鼻息荒くオルガマリーと何処かに行っちゃった。ま、そんなに心配はしてないよ。オルガマリーいるし。あといつも一緒にいるのはじゃんぬの方が多いかなー。部屋一緒だしね!」

 

「あははっ、後輩も形無しだね!もうすぐバレンタインだから、店長も忙しそうだったなー」

 

「今度私、ヘルプとしてじゃんぬのお店手伝うつもり!だからコロンブスも遊びに来てね!」

 

「オッケー!よーし、ワクワクしてきた!やっぱり未来や明日の話は大好きだよ!自分がどういう風に過ごすのか、どういう風に迎えるのかを考えるだけで楽しくなるからね!」

 

共に部屋を出る僅かな間も、笑顔の交流は絶えず。コロンブスの願いを叶えるために、リッカは平穏なる楽園にて一肌脱ぐのであった──




そして──


メアリー「いざ征かん、まだ見ぬ財宝が持つ紺碧の大海原へ!」

アン「隠された無人島、地図に示されたドクロの印、武装していない呑気な商船。そんな夢のような言葉にこのカルデアの中で最も近いのが此処!」

ドレイク「要するに海賊会ってヤツさ!おや、リッカにコロンブスとは将来有望な組み合わせじゃないか!こいつぁ幸先が良いねぇ?歓迎するよ?まぁちょいと、海賊って言うにはピュア過ぎるってなもんだけどねぇ?」

リッカ「海賊会・・・あー・・・」

コロンブス「ほら、ね?新天地にたどり着いた後の僕の行動は誰がどう見ても・・・」

「納得の勧誘だけど納得できない抜擢な訳かぁ・・・いいよ、解った。そう言う事ならなんとか解ってもらおう・・・!」

「うん!僕は断じて、略奪や強奪を生業にしようだなんて考えてないからさ!うん!」

「オッケー、じゃ、誠心誠意説得してみよっか!」

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