人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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会合・30分経過

マシュ「そして私達は無事に、スタッフ一丸となり困難に立ち向かい人理焼却という難題を覆し!未来を取り戻すことができたのです!オフェリアさんとこうして語り合い、話し合うことが出来る素晴らしき未来を!あ、卑屈になってはいけません。決して簡単かつ容易な旅路ではありませんでした。爽快かつ波瀾万丈な旅路ではありましたが!」

オフェリア「そ、そう。そうなの。驚きだわ。カルデアに問題は無いだろうけど、そんなにも大変だったのね。えっと、たしか・・・特別一般推薦枠の藤丸立香、だったかしら。一般人のマスターが人理を救えるだなんて、余程オルガマリーやマシュ、あなたが優秀だったのね。彼女、貴女には頭が上がらないんじゃない?」

「そうなんです!先輩は強がって私をいじったり塩な対応をしたりしますが、私はマシュっと理解しています。あれは照れ隠しなのだと!表面はツンツンしているけれど実は私という後輩にメロメロなのです!マシュ・キリエライトという!ナンバーワン後輩に!」

オフェリア「・・・そ、そう・・・自己主張、するように、なったのねマシュ・・・変わったのね・・・」

「はい!オフェリアさんはどうですか?変われましたか?」

「私は・・・相変わらずよ。日曜日は怖いわ。母と父は何も言わない。Aチームに抜粋されながら、おめおめと帰ってきた私に、何も」

「そうなのですか・・・?」

「私は・・・変われないのよ、きっと。ずっとこれからも、日曜日に怯え続ける。期待に応えるために、ずっと自分を圧し殺して。それでも、私は逃げられない、踏み出せなくて。誰が来るのを、待っていて・・・」

マシュ「・・・・・・【何も為さなくていい】」

「・・・!」

「【皆の願いなんて、叶えなくても構わない。あなたは、あなたの為に生きればいいよ】」

「──その、言葉は・・・」

「・・・今の言葉を聞いて、先輩ならオフェリアさんになんと告げるかをシミュレーションしてみました。このナンバーワン後輩マシュにかかる計算なら、ほぼ、確実にオフェリアさんに告げる筈です」

「・・・・・・私に、その言葉を・・・」

「オフェリアさんは自由です。オフェリアさんは変われます。勇気がないなら、私や先輩が手を伸ばします。変われない人間はいません。何故なら私が変わったのですから!だから、そんなに自分を閉じ込めてはいけません!」

「マシュ・・・」

「日曜日はニチアサヒーロータイムがある楽しい日です!先輩とテレビを見る嬉しい日です!一緒に過ごしましょう、オフェリアさん!二人やみんなで、日曜日を楽しくしましょう!その為に私は、こうして会いに来たのです!」

オフェリア「・・・──ふふ、ふふっ。あはははっ!」

「?」

「──ねぇ、マシュ。聞かせてくれる?貴女の先輩、藤丸立香。その人が、どんな人なのか・・・」

「分かりました!お任せください!あれは今から34万・・・いえ、一万四千年前だったような──」

「・・・まさか、そんなに古い魔術の家系だったの・・・!?」




『僕』──信頼と信用の担保──

「はーい、と言うわけで!めくるめくドルセント!儲けてウハウハ大繁盛!カルデア商人会へようこそいらっしゃいました~♪」

 

 

元気よくフリフリと尻尾を振るい、歓迎の挨拶にてリッカとコロンブスを迎えるはカルデアの経済の担い手にしてカルデアスの眼、偉大なるチキン、ロマンの妻たるシバの女王。カルデアの一室、きらびやかに煌めく部屋にてその輝きにも劣らぬ笑顔が上機嫌さを示し、キラキラと光を放っているかのようだ

 

「経済会、と言い替えてもよい。すなわちここはカルデア内で行われている経済活動の担い手たちが集う場所だ。無論胴元にして本元なる御機嫌王の許可を得てな。さぁ情報を制するものは経済を制す。ワイングラスを傾けながら密やかなる商談を交わそうではないか」

 

そして脇を固めるのはふくよかなりし偉大なるローマ、カエサルである。ワイングラスを揺らし、流暢なる弁舌にて耳に涼やかな印象と会話をもたらし推し進めていく

 

部屋は煌めくばかりのパーティー会場。豪華にして豪奢なる集い。そして大人の対話と会話を推し進める体を示す密やかなる集いがベールを脱ぐのだ

 

「此処では自然、世間話と儲け話が同じ概念に落とし込まれ、その輪郭を失う。其処から何を汲み取りまた汲み取らないかこそが我々の腕の見せ所というもの。無論、その経済の円環に振り落とされぬ・・・いやさ、共に回すものとして信頼に足る手腕を持つと判断されたからこそ、君にも招待状が送られたのだよ。これは誇りに思っていいことだぞ?」

 

「あ、あはは・・・それは、どうも・・・」

 

コロンブスは果てしなく困窮し答えに詰まっている。自分の預かり知らぬ能力を判断され怒るべきか笑うべきなのか、それすら差し計れぬといった様子だ。そして同時に、シバにゃんがぷんすこと語調を荒げ腕で×を作る

 

「ただし!『ダ』のつく王は出禁でぇす!あの人とはどうあってもウィンウィンの関係になれる気がしませんのでぇ!」

 

(生々しい・・・なんかオトナの世界だなぁ・・・)

 

リッカがふむふむと頷き無言で財布の紐をキツく締め上げる。じゃんぬのスイーツ代の一万円しか入っていないのでそれほど危機は無いのであるが念のためだ。ちなみに、カルデアの機器や設備は英雄王負担の為身分証明カードさえあればフリーパスで衣食住使い放題なのである為それほど現金を持ち運ぶ必要は無いのだ

 

(コロンブス。此処も断るんだよね?)

 

ひそひそと耳打ちし、コロンブスが頷く。自分はとてもではないが商売や商いを行える人種ではない。生粋の冒険に夢見る者として、確かな見解を告げるために。こほんと咳払いし彼は顔を上げる

 

「あー、はい。申し訳無いのですが女王さま、そして偉大なるローマさま。せっかくの御招待ですが・・・僕はそれを断りに来たのです。すみません」

 

此処にはいられない、だからこその辞退。申し訳無くとも躊躇うことはできない。きっちりと断りを入れ、コロンブスは頭を下げる。その答えは予想外だったのか、ひわわとシバにゃんはあたふたと弁解し始める

 

「ど、どうしてですぅ・・・?これは本当に、裏切りとか出し抜きとかのない健全な商人同士の互助会のようなものを目指していましてぇ、マネーロンダリングは必要ない、安心安全綺麗でお金ガッポガッポの素敵な場になる予定ですよぉ・・・?」

 

「そして何より、このオリエンタルな美女と秘密の会合が出来ると言うだけで心踊るものではないかね?最愛の善き美女、クレオパトラにも内密という事実から私の本気度も測ってもらいたいものだが!」

 

それはそうだとしても、決して納得してはいけないものがある。偽りのまま参加し、そしてそれを容認しては内部の瓦解を招きかねない。それは何より、彼等の迷惑になってしまうからだ。だから、コロンブスは迷わずに告げるのである

 

「いや、ここはいい場所なのは凄く解る。ワクワクする。でも、僕は・・・商人ではないと思うんだ」

 

それは、自分が思っていた事であり、そして自分自身の在り方に影響するものである。コロンブスは告げる。かつて、未来の自分は確かに──

 

「商船に乗ってた事があるのは事実だし、それは貿易商のような動きもしていた。だけど・・・」

 

「む?ははは、そんな事か。肩書きの話なら気にする必要は無かろう。私とて商人ではなく独裁官だ。ただその才があるというだけでな。この女王においても似たようなもの。つまりこれは、ただの『在り方』の区分に過ぎん。経済活動に興奮する、そんなハイソな上級者達のな?」

 

それだと。その『在り方』の話だとコロンブスは告げるのだ。不確かであるからこそ、何よりもそれが大事なのだと

 

「商人なら僕も知っているよ。大商会の権勢を笠に着た人、慎ましい個人商、あくどい詐欺師。善良で、騙されてばかりな人。色々な人を見た、だから商人の理想ってものも分かるよ。──『最小のリスクで最大の利益』。それを求めるのが貴女たち、ですよね」

 

「えぇ・・・まぁ、基本的にはそうでしょうねぇ?」

 

「なら、僕は違います。僕は──『リスクも困難も受け入れるし、それを乗り越えて夢を掴みたい』。だから僕は損や不利益を考えて、足を止めたりはしたくないんだ」

 

行けば必ず手に入る利益がある。たどり着ける場所がある。何年かかっても、どんな犠牲を払っても。諦めずに辿り着けるのなら、辿り着きさえすれば。全てがひっくり返る程の夢が、希望がある。それを自分は考えていた。いや──信じていたのは、それだけなのだ

 

「夢見る夢の大きさと困難さ。航海に必要な費用、苦難の道のり。その引き算は僕はしない。困難な道や、嵐にも躊躇わず向かっていきたい。商人なら絶対にする『見積り』を・・・僕はしない。だから・・・商人や計算や利益や損得に関する集まりには入れない。リスクや困難に尻込みして歩みを止めるなんて、僕には絶対に出来ないからさ」

 

その言葉をシバにゃんは、カエサルは静かに受け止める。その在り方を吟味し、その存在の本心を見定め口を開く

 

「なるほど・・・分かりました。確かに、あなたの在り方は商人ではないかもですねぇ。むしろその逆。──あなたは、ギャンブラー。ですね」

 

「えっ?」

 

なんだって?と聞き返すコロンブスに、ピしりと指を突きつけ言葉を紡ぎ続ける。カエサルもまた、顔色を変える

 

「より正確に言えばぁ、期待値計算をしない、できない。報酬だけを見てリスクを無視する享楽主義のギャンブル狂!」

 

「あぁ、いかん。それはいかんぞ。何の勝ち筋もイカサマも用意せず大勝負に挑むものではない。サイは投げられた、と言うときには最低限、望んだ目が上を向くような仕掛けを施してからでなくてはならんのだ。それが適正価格の設定なのか、話術なのか軍隊なのかは、その都度変わってくるものなのだろうがね」

 

「えぇ!えぇ!いけませぇん!ギャンブラーはダメでぇす!こちらの計算通りの損得感情で動いてくれない人が同じ市場にいるというのはとってもデンジャラス、逆にこちらの繊細な計算が狂ってしまいます!一歩先にはこちらの、損が、損が!いやぁー!」

 

「・・・計算に、入れなければいいんじゃないかな?」

 

リッカの言葉にふるふると首を振る。彼には、無視できないものがあり、けして無視しきれない因果があるのだと

 

「私が迷わず招待状を送ってしまう程の蟠る(マネー)のオーラ!良くも悪くもこれから大きなお金を動かしそうな気配!」

 

「そ、そんな・・・そんな事は無い、筈!」

 

「いいえ、いいえ!あなたは必ずこれから偉大なる方になります!そうなれば、そうなればあなたは・・・!無視も放置もできませぇん・・・!」

 

ひわわわわわ、とあらゆる部分をたぷたぷ揺らしふるふるしながらシバは言う。具体的には・・・

 

「ギャンブラーに商機を無茶苦茶にされたくないです・・・具体的には大損こきたくないですぅ・・・ロマン様との生活に、家庭の安定。ミスは絶対に許されません・・・!」

 

「・・・大損こきたくない、かぁ」

 

リッカは思案する。コロンブスの持ちえる因果、シバやカエサルの懸念。それらすべてを考慮に入れ、リッカは──この場を収める言葉を告げる

 

「解った。じゃあ私は──コロンブスの『連帯保証人』になるよ」

 

「ひわっ!?」

 

「ま、マスター!?」

 

「ほう。連帯保証人・・・それを意味することが何なのか理解しているのかな、マスター?」

 

連帯保証人。借金等が返せない者になった場合、変わりに払い、負債を受け持つ契約を交わすこと。それをリッカはなると告げた。もし、コロンブスが二人に損を被らせたならば、必ず自分がそれを請け負い二人に返してみせると

 

「私がいる限り、コロンブスにも、二人にも絶対に損はさせない。私の魂と身体を担保にして、コロンブスの在り方と貴女たちの利益を保証して見せる。だからここは私に免じて、コロンブスを信じてあげてほしいんだ」

 

「・・・信じて、いいのですね?マスター」

 

それを聞き、リッカはニヤリと。そして──白い歯を見せ、英雄王のように。獰猛に笑って見せる

 

「私は──『滅びる世界』の助けを求める声に応えて。世界を救う契約を全うした女だよ?私は絶対に・・・交わした契約と信頼は裏切らない!」

 

バシリ、と拳を打ち鳴らすリッカ。コロンブスの肩を叩き、ビシリと自らを指し示す。信じてほしい。絶対に損はさせない。自らの魂に懸けて契約は履行すると。自らの全てを担保にした宣誓に・・・

 

「・・・──はい。分かりました。かのロマン様、英雄王・・・そして、カルデアの全てを担い、そして立ち上がり戦い抜いた。貴女の言葉と魂を信じます」

 

女王は、肯定を示し是と為した。損益を、そして計算を越える彼女の魂と宣告に、価値を見出だしたのだ。その、慧眼なる叡知にて。

 

「我が美女、クレオパトラが信を置く友、藤丸リッカ。その君を私が信じずして何が信じると言うのか。そして──彼女が信じる彼をね」

 

「二人とも・・・マスター・・・僕は・・・」

 

「えぇ、えぇ。ならば見せてくださいね?貴方がカルデアで何をもたらすのか。あなたがマスターの信頼と保証に、相応しき輝きと働きを。私達はそれを・・・」

 

「ワイングラスを片手に眺めさせて頂こう。うむ、これもまた商売。まさに先行投資というれっきとした商売!うむうむ、実によいもの!実によい商売の語らいである!」

 

その言葉と笑顔をもって、裁定は交わされた。そして・・・此処に、コロンブスの身柄は、信頼はリッカに委ねられ、損得の概念は託されたのである

 

「ではでは♪ゴージャスキングにお伝えください♪プレシデンテ、万事順調にですよ、と♪」

 

「クレオパトラにはくれぐれも内密に頼む。無制限ダイエットなどを受けてしまえば私の自由は潰えてしまうのだからね!」

 

「もしもしロマン?クレオパトラ?此処に良からぬ事を為さってる会合がね」

 

「ひわ~~!!?」

 

「藤丸リッカ、お前もか──!!?」

 

二つ目の会合もまた、収まるべき箇所に収まる。笑うコロンブスの、朗らかな笑顔を目の当たりし・・・リッカは確かな勝利と手応えを感じ取るのだった──

 

 




リッカ「さぁて、あと一つ!はっきり断りにいこっか!コロンブス!」

コロンブス「うん。・・・ね、マスター」

「んー?」

「・・・ありがと。僕、マスターの信頼に、絶対に応えてみせるから。絶対」

「ん!期待してるよ!」


「・・・それと、僕が夢を望んだ理由、西を目指した理由はね。もうひとつあるんだ」

「?」

「色々あるんだけど、全てをひっくるめて・・・『神様のお導き』だと思ってるんだ。・・・だから、僕は何をおいても信じてるんだ。自分自身の信念を。きっと、マスターに会えたのも・・・」

「・・・うん!コロンブスは信じて。自分が信じたいと思ったもの、成すべきものを!私は、それを全力で支えるから!」

「うん!・・・次の会は、僕が呼ばれるべくして呼ばれる会だ。きっとマスターも合点が行ってすぐに察してくれると思う。だからこそ、断るのは僕だけじゃ無理なんだ。だから──力を貸して、マスター。これを断らなきゃ、僕は僕でいられないんだ」

「・・・?う、うん!じゃあ最後の会は・・・僕は・・・──」




メッフィー「イッヒヒヒィ!」

黒ひげ「おやおや!?リッカたん!?何故此処へ!?」

モリアーティ「あぁ、予想外ではあるが歓迎しよう。・・・カルデア悪人会へ、ようこそ」

コロンブス「・・・・・・・・・・・・ね?」

リッカ「────否定、しなきゃ・・・・・・・・・!!」

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