人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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SweetSじゃんぬ

アルク「~、~♪むむ?」


ロマン「えーと、カドック君はこっちでキリシュタリアが・・・で、こっちが・・・」

『芥ヒナコ』

「あ、これ確か凍結されてたメンバーの写真よね?」

ロマン「あー、そうだね。芥ヒナコ。他人と距離を取っていて本ばかり読んでいたなぁ。健康診断にも参加してくれなくて苦労したよ、本当にさぁ・・・」

「・・・この経歴・・・」

(なーんかおかしいような、おかしくないような・・・ぜーんぶ元がマリスなんとかになってるわコレ。改竄し放題じゃない。一から十まで覆い隠してるように見えるの、気のせいかしら)

ロマン「マリーがコンタクト取ってるからさ、僕も資料を洗い出してみてたんだけど。いやぁ、一般参加のリッカちゃんがまさかAチームにもいないような逸材になっちゃうなんてなぁ。予想すら出来なかったなぁ・・・」

(誰にもいない、かぁ・・・ん?)

『写真』

「あ、皆の写真だよ。まだ一年くらいなのにもう懐かしいだなんてなぁ・・・」

「──犬歯・・・え、ひょっとして」

「?どうかしたのかい?」

「・・・・・・えー、ひょっとしてなんというか・・・ひょっとする、のかな?」

「・・・???」


『僕』──推し量る観念──

「何かの間違いだと思いたい、それでもこの面子から感じる圧と凄みと人選は全く以て冗談でも間違いだと言える気がしない・・・ッ」

 

リッカの慟哭もさもありなん、悪魔に大海賊に犯罪紳士に薄暗い部屋。その場から醸し出される圧倒的悪い人オーラはどう繕っても誤魔化せない。人類史に名を残す悪人の集い、蜘蛛の巣に足を踏み入れてしまった純真なコロンブスの身をおもんばかる

 

「コロンブス、大丈夫?気をしっかり持ってね!?惑わされないで──」

 

「まぁ、うん。覚悟はしてるというか常日頃自覚はしているさ。大丈夫だよマスター、ダイジョーブ・・・」

 

若干涙目になりつつ笑うコロンブスの様態を本気で案じ、私が守護らねば・・・と決意を深く露にし、真っ直ぐに相対するリッカの熱い眼差しに、モリアーティもまた華麗にして邪悪な笑みをジャブ代わりの返礼と為す

 

「そう怖い顔をしないでくれたまえ。新宿以来の相対かなマイガール。こうしてみると随分と精悍になったものだネ」

 

「教授、ダメチャレで頭が・・・」

 

「いやいや違うよ?此処の集いは楽園の劇薬となる者達の極めて健全な集い、即ちクリーンな集いにして集会なのサ。ほら、彼らの純真無垢な訴えを聞いてやってくれたまえ。そして私は最愛の愛弟子が外出中なので暇という切実な事情がだネ」

 

アラフィフの妄言もそこそこに、後ろの二人が語り始める。カルデアにて招かれし危険人物。令呪を信頼の証として提供(意味深)された悪魔、メフィストフェレス・・・

 

「イッヒヒヒィ!そうですそうです、メッフィー無実でーす!私達気の合う遊び相手が欲しいだけなのですがぁ!」

 

いつものように愉快なのか愉快でないのか。どちらにしても笑うメフィストフェレスの聞いていて不安になるような朗らかな笑いが響く。彼の言葉は真偽の境すら容易に覆い隠してしまう、まさに悪魔が故に信用がならないともっぱらの評判である。話してみると意外と理性的、とはリッカと式の談なのだが

 

「せっかくBBAとリッカたんのとうとみ空間から距離をおいてヲチろうと思っていたのにどうしちゃったでござるかリッカたん!そちらのショタはともかくリッカたんはノー!自分の悪を振りかざしたらリッカたんのアイディンティティがクライシスっちゃう!ダユーとかいう輩に会いたくない避難場所の此処から早急にゲラアウッするでござるよ!」

 

黒ひげは何か色々思うところがあるらしく、コロンブスはまぁいいとしてリッカが悪人会へ来るのは断固反対なようだ。みょうちきりんな判断に、コロンブスとリッカは顔を見合わせる

 

「まぁ、このように何も本格的に悪事を企む訳じゃない。むしろ悪事など企める筈がない。御機嫌王の膝元で出し抜こうなどと考えるなどホームズなんぞを欺くより難題・・・いや、慢心油断無き英雄王など計算に入れてはいけない要因だ。故にこそこれは本当の反社会的行為に耽る悪の秘密結社、というわけじゃあない」

 

御機嫌王が在る限り、カルデアでの悪事は不可能だとモリアーティは直々に告げる。ならばこの集まりはなんなのかと問われた彼はこう返した。『ごっこ遊び』と

 

「人は誰しも夢を持つ。──そして鼻唄混じりに唱えるものだろう?あんなこといいな、可能ならいいな、と。我々は密やかにその夢を語り合ったり、頭の体操がてら机上で組み立てたりしているだけさ。それなりにストレス解消にはなるものでね、悪人でも居心地のいい場所は必要なのサ」

 

「我々は顔を見られたらブザーを鳴らされる類いの者でして。食堂で美少女サーチが難しいのですよ、はい・・・最近なんか2PBBAとかいるし・・・」

 

「私は見て見ぬふりが常の悪魔でして!見られるだけで割りとテンションが上がる質なのですがねぇ!メッフィーずっと見ていたい?ウレスィー!御礼に眼球を預かりますとも!」

 

「・・・なんというか、メッフィーとくろひーって絶対に一枚岩にならない気が・・・」

 

「多様性は大事だよ、リッカ君。まぁそんなわけで仲良くやろうじゃないか。名高き悪龍にコロンブス君。そう、この場は君達にも良き集まりだと思うがネ」

 

そんなほんわか悪巧み連合に勧誘してくるモリアーティにもまた、コロンブスは告げる。この集まりには、少なくとも今の自分は参加するわけには行かないのだ

 

「やるべき事は理解したよ。僕もやるときには敵の排除とかエゲつなくやる時もある。だけど、だからこそ自分はこの集まりには入れない」

 

「──理由を、聞かせてもらえるかな?」

 

決まっている、と彼は告げる。そして誇り、誇示する。自らの霊基、この自身の姿こそが証明であると。彼の魂がそうであると告げるのだ

 

「マスターが、カルデアが招いてくれた今此処にいる僕。僕はそんな自分を悪人だとは全く思っていないからだよ」

 

「──・・・・・・フッ」

 

モリアーティが笑みをこぼし、そしてメッフィーとくろひーも同様を表す。コロンブスを語る上で決してはずせない『征服者』の概念。その在り方。航海の先、新天地に辿り着いた果ての彼の所業・・・

 

「無かったことには出来ないし、目を逸らす事もできない。僕という存在は間違いなく征服者の概念の発端だよ。──悲しい事に、ここだけは。老いた僕と今の僕の見解は同じだ。『やっていい』と思った事をやり、やってはならないとした事をやらなかったんだ。心から略奪を肯定し、裏切りや出し抜きを行った部下は罰した。・・・それだけで、僕の夢は終わっているんだ」

 

効率よく奴隷を確保し、無軌道や裏切りにはきつく罰した。其処に善悪はない。いや『善悪という物差しを用意しては行かなかった』のだ。西回りの航海は壮絶であり、余計なものは持っていけなかったが故にと彼は語る

 

「でも、だからこそ今の僕は違う。僕には、善悪を計る物差しがある。やってはならないこと、やるべきことを示してくれる指針があるんだ」

 

「──それは、何かな?」

 

「『マスター』だよ。此処にいるマスターが僕の物指しであり羅針盤さ。今此処にいる僕の善悪を、なすべき事を託せる人が此処にいる。過去の自分が、生前の自分が悪であるか。今此処にいる自分が悪なのか。それを計れる人は此処にいる」

 

そう。それは自分ではない。善悪を計るのは自分ではない。だからこそマスターに委ねる。マスターに託す。自分が、いや『コロンブス』がどんな存在なのかを。この会にいるべきかどうかの人物なのかを

 

「・・・だそうだ、マスター君。君から見てコロンブス君は・・・いや『クリストファー・コロンブス』はどう映っているのかな」

 

リッカに振り向き、頷くコロンブス。同調や賛同ではない。託したのだ。自らの行く末を。彼女が悪人として自らを定義するなら、未来に必ずなすべき事を為すと思うなら。自分は此処に入るつもりだと

 

「──私の答えは決まってるよ」

 

そう、最初から決まってる。真面目な話、迷う理屈も理由もない。何故なら、善悪を見て、彼と契約を交わした訳ではない。そう・・・

 

「カルデアのコロンブスはこれから善悪を体験していく。そして必ず、自分だけの結末に辿り着く。だから、過去に何があろうと、私はコロンブスっていう存在を決めつけたりしない」

 

「マスター・・・」

 

「未来を信じる夢と希望に溢れた子に『お前は悪だから』とか、『悪であること』を誘おうとする。それをやることの方がよっぽどの悪人だよ。だから私は、コロンブスを此処に入れさせるつもりはないよ。『善も悪も全てはこれから』。それが、私のコロンブスへの酌量なんだから」

 

過去の悪、そして為し遂げた功績。それらは全てコロンブス自身の成果ではあるがこの場にいる少年が掴んだものではない。彼はまだ、何も為し遂げてはいないのだ。だからこそ。悪や善では図らない、計れない。ならばこそ。この場にて彼女は告げる。『此処には入れない』と

 

「ふむ、成る程。そうかそうか。ならば──」

 

「チョイと待ったぁ!!何度も言っていますが、リッカたんだけは!リッカたんだけはこの会には入れるわけには参りません!参りませんぞ!」

 

「イヒヒヒッ、私としては彼凄く素直にしてあげたいですねぇ!そうですねぇ!」

 

モリアーティが口を開こうとしたとき、三種三様にて意見が真っ二つに割れる。それぞれに想いがあり、それを正しいと告げる我の強さが此処に来て、コロンブス、リッカという人員を以てスパーク、ブッキングしてしまったのだ

 

「リッカたんは『悪いやつだ化け物だ』なんてクソみてぇな風評に負けない心のタフネスさや挫けずに自分の善を貫く姿勢がエモく尊いのであって!私は悪者だヒャッハーなんてモヒカンムーブさせたら魅力もクソもねぇざんしょ!それただのイキりマスターじゃん!だから認めねぇ!力や立場を振りかざしてイキる『サンシタ』や『チンピラ』に堕ちるリッカたんは俺ぁぜってぇ認めねぇからな!リッカたんはなぁ・・・悪だ人類悪だなんだのっつー楽なレッテルや物差しに逃げずに頑張る姿がカッコいいんだよぉ!」

 

 

「くろひー・・・」

 

リッカの在り方、スタンスには誰よりも理解と拘りを示す黒ひげが熱く語り抜く。だからこそ彼は驚いていたのだ。リッカが悪人会などという『分かりやすい』悪の集いに来たことに

 

 

「イヒヒヒッ、イヒヒヒッ!私としてはコロンブスきゅんかなぁり素敵なのですがぁ!自分は違うという相手を引きずり落とすのは大得意!本当によろしいですか?後悔しませんねェ?イヒヒヒッ!」

 

「あ、悪魔の誘惑・・・!」

 

コロンブスに誘惑のターゲットを見定めるメフィストフェレス。彼は得意なのだ。『自らが違う』と思い込む心を暴くことが、誰よりも

 

「いや、二人の言葉は気にしないでくれたまえ。君達の意志は理解できた。コロンブス君が今、何を物差しに、指針にしているかをね」

 

対するモリアーティは満足げであった。彼という存在の定義。『悪として作り上げられた』モリアーティ。そして時代に、論理に『悪として当てはめられた』コロンブス。その観点に共通する『誰が』という主観。それをこのリリィは如何にするのか。それを見定めるが故の勧誘だったが為に

 

「君は最新の物差しを使うようだネ。一般倫理を持つ、マスターという物差しを。それならまぁ大丈夫だろう。共に肩を組んで冒険していながら急に『魔が差した』だなんて私のマイガールを後ろから刺されては堪らないからネェ・・・」

 

「・・・モリアーティ・・・」

 

「証明は完了した。正しい関係を築けており、裏切りや不忠の心配がないなら結構。だがマスター君、覚えておきたまえ。本当の悪というのは・・・あらゆるものにおける『こんな事をするはずがない』『こんな事をするわけがない』という『妄信』なのだと言うことサ。信頼は本心を覆い、信用は打算を紛らわす。──疑うことは絆と交流の一環だ。信頼や信用をしたいなら、僅かの疑念を殺してはいけないヨ」

 

二人の肩を叩き、そっと部屋から送り出すモリアーティ。証明は終わったと、悪人の集いに相応しくない異分子を追い出したのだ

 

「私としてはマスターが破滅に転がる様も見てみたい気がします!まぁ転がる際は恐らく世界も道連れにしますよねきっと!いやぁオソロシー!」

 

「そうなんでござるよ。一歩間違ったら世界ヤバイなリッカたんが皆に支えられて、裏返って世界や皆を守護する。拙者そこに闇落ちから解き放たれた追加戦士な輝きやエモさを感じて止まんでござる。この環境、凄く微細に成り立ったミラクル・・・拙者は声を大にして言いたい!リッカたんはサンダーブレスターやキュアパッション的なポジであるべきと!微細なバランスが大事なんでござるよ!」

 

「は、はい!それでは失礼いたします!」

 

「くろひーから尋常じゃない熱を感じる・・・!」

 

 

二人は挨拶をし走り出す。悪人会の集いも断りを告げ、走り出すは可能性に満ちた若人達

 

「おや、マスターにコロンブス。廊下を走ると危ないですよ」

 

「うむ、転んでは痛いぞ。いや、痛くはないのか?大丈夫か?」

 

「あ、騎士王にヒッポリュテ!彼処に悪い人達の集いがあります!」

 

「──押し入り調査が必要でしょうか」

 

「なんだと!卑劣な集いが!?まずは話を聞こう!事と次第には赦さん!」

 

とりあえず、公式に許可を取っているのか確認しよう。リッカはそう感じ、そっと基地の所在を告げるのであったとさ




リッカ「よーし断った断った!良かったね、コロンブス!これでしっくり来たかな?」


コロンブス「──・・・現代の、物指しかぁ・・・」

「?どったの?」

「ううん。今、考えていたんだ。自分自身が何者なのか。何者であるべきなのか。色んな会にあって、その全てが僕の一面なら、僕は一体どれが本当の僕なのかな、って」

「それは──」

「ううん。答えは出てるんだ。──ねぇマスター。最後の問い掛けしてもいい?」

「う、うん?」

「僕は、一体誰だと思う?」

「・・・それは、勿論──」

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