人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マシュ「今日はありがとうございました!とってもとっても、楽しかったです!オフェリアさん!」

オフェリア「えぇ、私もよ。・・・いつか、また機会があったなら」

「はい!」

「今度は三人でお話ししましょう。私と、あなたと・・・藤丸リッカの三人で。あと、オルガマリーにもよろしくね」

「はい!どうか、必ずまた!御元気で!あ、連絡先を交換しましょう!えっと、私はですね・・・!」




オルガマリー「心配はない、か。・・・オフェリアとの交流は続けても大丈夫そうね。良き友人、と言った所かしら」

アイリーン『次は貴女も一緒に行きなさいな。息抜き、大事なことよ?』

「えぇ、そうね。もし機会があるのなら、必ずね」

(次は、ペペロンチーノにしようかしら。彼は大人だったし、問題は無さそうね・・・)

「・・・キリシュタリアになんて説明しましょうか。いつか彼とも顔を合わせなくてはならないのは、なんだか不安ね・・・彼と私では、持って生まれたものが違いすぎるから・・・」

『ふふっ、そうかしら?案外会ってみたら、驚くのはあちらかも知れないわよ・・・?』


『僕』──信念と夢の始まり──

「彼は──」

 

 

全てが終わり、勧誘を断りし二人の間にもたらされた最後の問い。自分自身は何者で、どんな人物であるのだろうか。何を以て己は定義された者であるのか。コロンブスから問われたその問答に、リッカは頭を悩ませる

 

彼はそもそも、一つの肩書きに当てはめられる事を良しとはしなかったが故にこれまでの勧誘を丁重に断ってきた。彼が告げるように、彼自身を定義するもの。定義する言葉が存在し得なかったからだ。そこはやはり大切な部分であり、その定義は極めて重要であるがゆえに今回の問題は提議されてきた。だがそれが改めて問われるとなると難しい。彼自身が納得できるような答えを用意してあげられるかどうか。それを考えれば考える度に答えが遠くなっていくような気がして・・・

 

「あははっ、ごめんごめん。意地悪だったよ。──僕が何であるか。正直な話、しっくりくるような答えは僕にも出せるかどうかは分からない。でも、一つだけ分かっていることはある。確信を以て言える事が。それは・・・」

 

コロンブスもまた、複雑なれど確かなる答えを告げる。それだけははっきりと、自らの存在を懸けていう言葉があるとばかりに、告げるのだ

 

「僕は僕さ。皆が知ってる征服者、クリストファー・コロンブス。若くて、私掠船に乗っていた時なんかはクリストーフォロ・コロンボ。エスパーニャだとクリストバル・コロン。全部ひっくるめて僕なのさ。──そして、今此処にいる僕。サーヴァントとしての僕がどういった意味で呼ばれたか。それを考えたなら、問いにもきっと意味が生まれると思う」

 

この姿で呼ばれた理由。夢と希望を懐き、俗な儲けや名声などには興味を持たないこの姿にて招かれた事実。それを、彼は彼なりに考えていた。そして、最後に此処に至り。答えらしきものを導けたような感覚を得ていたのである

 

「僕が船乗りだから喚ばれたのかな?それとも商人だから、悪人だから。きっと違う。そんな風にキチッと決められて扱われるのがしっくりこないから、皆の貴重な誘いを僕は断ったんだから。そして、結局。僕が何故、サーヴァントとして喚ばれたのかとするなら・・・」

 

「・・・」

 

「『僕』は、僕が夢を叶えたからだと思うんだ。諦めなければ、どんな事でもどんなものでも絶対に夢は叶う。どんな姿であろうとも、この真理だけは変わらない。世界もきっと、この答えを信じて僕みたいな人を英霊にしてくれたんだと思うな」

 

夢を叶えた。困難を達成し、新天地に辿り着いた。その理念は間違いなく、どんな自分であろうとも根付いているのだと彼は言う。そして、自分のクラス。ライダーというくくりについても所感と見解を告げる

 

「ライダークラスだからさ、海賊や船乗りのイメージが強いのは仕方ないよ。でも、乗っている、乗っていないの話ならきっとこう考えるべきなんだ。『僕は夢から降りなかった』」

 

「夢から、降りなかった・・・」

 

「うん。どんな困難があっても、どれほど他人を踏みつけにしても、どれだけ時間がかかっても。進み、諦めず。頑張れば必ず目的地に辿り着ける。そんな信念に、僕は。クリストファー・コロンブスは乗り続けたんだ。だから、きっと・・・今此処にいる僕もそうなんだ。そんな夢を懐いて追いかける『夢追い人』のサーヴァントなんだと思う。今を生きる人たちに、『諦めないで』『挫けないで』という姿を見せるために、僕は此処にいるのだと思う」

 

そして告げる。自分自身の役割と、自分自身が何をすべきなのかという存在の在り方を。彼は言う。マスターに対する自分自身のスタンスを

 

「僕は新天地を目指す。でもその新天地の夢はもう達成されているんだ。もう一度大西洋を渡りたい訳じゃない。それはもう叶って、汚された僕の終わった夢だ。じゃあ、サーヴァントとして喚ばれた僕が言う新天地は何処なんだろう?夢はなんなんだろう?何処に、何に、どこにある新天地に向かって進んで行けばいい?──僕だけじゃ、それは永遠に分からないんだ」

 

新天地は目指したくても、リリィたるコロンブスには永遠に見つからない。希望に満ち溢れ、夢を追いながら。もう世界に、自分に。新天地は奪われている。夢は『叶えられている』。なら自分は何を、何処を、どうやって目指せばいいのか?何に向かって行けばいいのか?サーヴァントの自分に答えをくれるのは、今目の前にいる存在。つまり・・・

 

「夢追う僕に道を示してくれるのは。僕の言う新天地を教えてくれるのは。夢と希望に、中身をくれるのは、きっと・・・君なんだ。マスター」

 

「──私が・・・」

 

「うん。行きたい場所はたくさんあるし、したいことはたくさんあるし、一ヶ所に留まれないような性分だから、迷惑ばかりかけるかもしれない。──でも、もしマスターが。かつての僕が行った西回りの航路に匹敵する『価値あるもの』を示してくれて。僕がそれを『向かうべき希望、叶えるべき夢』つまり・・・新天地だと思えたなら。一緒だよ。諦めない、挫けない。僕は絶対に其処に行く。勿論、マスターも、カルデアの皆も必ず一緒に辿り着いて見せる。その内容は宇宙旅行でも、世界平和でも、世界を滅ぼした果てにあるものを掴む旅でも。僕はなんだっていい。絶対に諦めない、挫けない僕に、新天地を教えて道を指し示してくれるのは・・・きっと、マスターなんだと思うな」

 

リッカは、コロンブスの言葉を深く受け止めた。彼の言う新天地。彼の言う夢と希望。それらは一人じゃ叶えられない。その夢を示すのは、その未来を示すのは・・・マスターである自分であるのだと。彼は告げた。『サーヴァントとして、マスターの夢見る場所こそが僕の新天地だ』と告げてくれた、夢を追うライダーの言葉に、リッカは深く頷いたのだ

 

「そしていつか、その旅路を僕は懐いて告げるんだ。『僕は、僕だけの夢を皆と叶えた』ってね。誰がその結果をなんと言おうとも。善や悪やと判断されても、夢を貶める事だけはしないし、他の人の評価はどうでもいい。僕は皆と叶えるべき夢に向かって進むだけなんだから。だからマスター。ずっと、これからも。諦めずに、前へ進もう。僕と一緒に。皆と一緒に。かけがえのない未来を、夢を叶えるために!」

 

「──うん!ありがとう、コロンブス!」

 

旅路の善悪は問題じゃない。為すべき夢を、未来を懐いて進むなら、それはきっと大切な旅路になる。その為にも進もう、立ち止まらずに。この完全無欠の旅路を、夢と希望を更に求める為に。この小さき彼が消え去る瞬間まで、笑顔でいられるような旅路を手にするために

 

「今日はありがとね!マスター!ゴタゴタは抜きに、皆のマスターを独り占め出来て嬉しかったよ!また、一緒に何かをしようね!」

 

そう言って、コロンブスは固くリッカの手を握り握手を交わし、手を振りながら走り去っていく。彼にとっての旅は、何処までも続いていくと告げるかのように

 

「・・・コロンブス」

 

世界を変え、あらゆる流通や経済を変える偉業を。世界を震え上がらせ、徹底的に征服と侵略を行った蛮行を。叶えた結果はあくまで個人的な夢の結果でしかなかった。だから自分の行動を悪や善だと計らない。それは夢にラベルを貼るようなものだ。『夢に善悪はない』。希望と夢。叶えたい欲望。それに、他者が介在するような評価などないのだから。自分自身が計る夢、個人的な自分自身がたどり着きたい場所。それしか彼を動かす基準はないのだから。

 

だから──自分やカルデアが、コロンブスが目指したい夢を、新天地を用意できたなら。その時は必ず。心強き仲間となり、頼もしい原動力になってくれるのだろう。彼は、夢を一度・・・誰もが出来ぬと思っていた事を成し遂げたのだから

 

「──君の新天地や夢、か。責任重大だなぁ・・・」

 

もし、間違った夢を示してしまえば。略奪や破壊や、無秩序な夢を示してしまえば、彼がそれを素晴らしいと思ってしまえば。彼の新天地は血塗れとなり、屍を踏み越え血の海を往く旅路になるのだろう。そんなおぞましい夢であろうと、それはマスターと夢見た新天地にたどり着くための手段に他ならないのだから

 

「──でも、大丈夫だよ。コロンブスに夢を示すのは、私だけじゃない。私にしてくれたように、カルデアの皆が。ギルが、姫様が。きっと・・・」

 

きっと、皆が理解し夢見て、向かいたいと願う道筋を示してくれる。笑顔と愉悦に溢れた未来に向かわせてくれる。人類悪の自分ですら、世界を救う中心になれた事実と結果があるのだから

 

「きっと連れていってくれるよ。完全無欠の結末。誰もが夢見る『新天地』へ!」

 

それを信じ、ただ進み続ける。諦めず、前へ。それこそが人間の力であり、人間の未来であり。行き止まりに陥ることが無い、歴史の在り方にほかならないのだから

 

 

──少年に生き方と在り方を託された少女は、胸を張って部屋へと戻る。自分自身の在り方と旅路に、誇りと自信を抱きながら──

 




──そして、これは翌日のお話。新天地に向かうと決意した少年が、その夢に対する心構えを、具体的にリッカに示した時のお話だ

『部屋には静かに入ってね』

リッカ「???」

その張り紙に従い、そっと部屋の扉を開ける。すると其処には──コロンブスの信念が、具体的な形で。何よりも鮮明に示されていたのだ

「──!」

ゆで卵が、5つ整然と並んでいる。きっちりと屹立し、一つも底が割れていない。それに必要なのは単純だ。ただ、『諦めないこと』さえすれば、誰にでも出来る簡単な事である

彼に出会った者は一度は問う。彼は、何度も何度も問われたのだ

『卵のエピソードは本当なのか』

『潰して立ててなんの意味があるんだよ?』

その行動の是非を問われる度に、彼は笑い飛ばしてきた。あまりにも馬鹿馬鹿しい風評や、作り話であるが故に

だがこの少年は、実際に示して見せた。共に一緒に時間を過ごした御礼として。そして、彼自身の言葉を信じてもらうために

大事なのは、卵ではない。この光景に込められた彼の信念。信じる真理が、確かに存在するという証拠

『マスター、ずっと一緒だよ!嬉しさも哀しさも、絶対に半分こしよう!これからよろしくね!』

「・・・コロンブスくん・・・」

どれだけ失敗しても。

いくら時間がかかっても。

諦めずに努力し続けさえしていれば

「──写真の待ち受けにしよう・・・カルデア皆の集合写真と日替わりにしよう・・・」


──いつか必ず。夢は叶うものなのだと。

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