人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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以蔵「あのそぼろ!生かしちゃおかん!忍だろうが夜道を歩かせなくしちゃるき覚悟せぇ!えぇい、いつになったら・・・」

『隠れ蓑』

「ん?なんじゃこ──うがぁあ!?」

盛大に転び、隠れ蓑に触れる。──そして、自らの姿が消えることに気付く

「こりゃあ・・・」

『気付いたならば、共に龍馬を救わん。そのために──』

「・・・はっ。わしの力がいるがか。それならそうと先に言わんか、バカたれが!」


第六天魔王

【うぉおぉおぉおぉ!!】

 

帝都の夜に、竜と化し現れ出ずる龍馬の宝具たる『天翔る竜が如く』により神秘の体、力を全解放したお竜さんが、咆哮と唸りをあげてアーチャーの戦線を暴れ回る。かつて龍馬が、彼女が封印されていた矛を抜いた事により運命的な出会い(一方的)を果たしたお竜さん。古代の竜種が如き力を発揮せし龍馬の奥の手、そして伴侶(力説)がその本領を魔王に向けて全開する

 

「お竜さん!相手は信長じゃき、手加減抜きで行くぜよ!」

 

【勿論だ。カエルを沢山持っているんだぞ、リョーマ!】

 

「「「「「ノブブブブブー!!?」」」」」

 

UFOが、タンクが、巨大ノッブが蹴散らされていく。竜の巨大なうねりと咆哮、黒き破壊の蹂躙が蟇めきあい蹴散らし吹き飛ばしていく。強靭な鱗は銃弾を通さず、斬撃も刃も跳ね返す鱗、返す噛みつきにて蹴散らす牙。暴れまわる災厄と嵐の象徴たる竜の顕現を阻めるものは無く、雑兵が紙くずや藁の家が如く蹴散らされていく様を、信長は静かに見ている

 

「成る程。人型でさえ力は竜、真名を懸け力を振るえば正しく最強の種の名を欲しいままとするわけか」

 

「そう言うことさ。──君を勝たせはしない。なんとしても此処で討ち果たして見せるさ!」

 

龍馬もまた、刀を・・・秘蔵の刀を抜き放ち信長に斬りかかる。我成すことは、我のみぞ知る。それ故の一対一、それ故の単独行動であるが故に

 

魔王、織田信長の聖杯奪取は存分に人の歴史を変える力と因果をもたらしかねない。それ故にこそ世界は、人類存続の意思は彼を送り出した。それを未然に防ぎ、正しき結果を。正しき歴史を紡ぎ上げんが為に。世界の後押しを受けし維新の英雄は、修めた剣を此処に開帳する

 

「ほう。昼行灯の腰抜けかと思えば中々やるではないか、坂本とやら」

 

「それはどうも。あんまりこれは抜きたくは無いんだけどね・・・!」

 

信長の日本刀、龍馬の直刃が火花を閃き散らす。何度も何度も打ち放たれしは気迫と意地の発露にして覇気と決起の交錯。互いに譲れぬ物を、覇を掴まんが為に振るわれる武力を以て互いを迎え撃つ

 

【雑魚を蹴散らすまで頑張れ、リョーマ!どけどけ、邪魔だ邪魔だ!!】

 

うねりを上げ、身体を震わせ巨大な竜が信長の兵力を蹴散らし滅ぼしていく。最早象が念入りに蟻を踏み潰しているようなものだ。聖杯で形を取った雑兵とは格そのものが、法則が異なる生物の顕現を阻める道理はない。精鋭かつ酷薄なちびノブの部隊では相手にもならず、瞬く間に滅ぼされ霧散する信長部隊。僅か数分にて兵力は粗方お竜さんが蹴散らし抜き、残すところは──信長一人だけとなったのだ

 

「わしの兵を容易く抜くか。竜の名、それほど大言壮語ではないと見える」

 

「──お竜さん!一気に決めるき、あわせるぜよ!」

 

【おおっ!!】

 

織田信長の隙を、逃してはならない。勝機は万に一つ、あの戦乱の風雲児たる信長を下せるチャンスがあるというのなら、それを掴まなくてはけして未来は開けない。大きく反転し大口を開けて迫り来るお竜さんの頭部に乗り、一閃の態勢を取って必殺の構えを、必勝の一撃を叩き込まんと一気呵成に雪崩れ込む

 

「これで、しまいじゃ──!!」

【うぉおぉおぉおぁあぁあ!!!】

 

一気呵成、疾風怒濤。その威勢、まさに天翔る竜が如く成。龍馬、お竜の協力宝具にて追い詰められし信長。その数秒先に決まる運命にて、戦国の覇王は脱落と退去を余儀無くされるかと思われたのだが

 

「──是非も無し!!我が魔王波旬、貴様らに抜くに相応と認めてくれようぞ!!」

 

──戦国の覇王は見定めたのだ。己に食らい突く者の実力、威勢、気勢。そして自らに立ち塞がるに相応しきものか。世界に後押しされている者が

如何なる者か。・・・・・・そして、不幸にも。龍馬とお竜さんは、信長の全霊を抜かせる程までに上質の敵であると認識された。断定されたのである

 

「いざ見るがよい。三千世界よ灰塵と化せ。故きは淘汰され新たなる天下の有り様を導く魔王の名、とくとその身に焼きつけよ!!」

 

【!?】

 

変化が起こりしは信長自身。燃え盛り燃え上がり、やがてその焔は辺り一帯を飲み込みくらい灰塵焦土の体を要する。それらはやがて世界そのものを飲み込み、あらゆる神秘や旧きものを焼き尽くす魔界が如き地獄絵図を顕現せしめる。魔王、その名の下に

 

「我こそは、第六天魔王波旬!!織田信長ぞ!!我に仇なす者、悉くを討ち滅ぼさん!!」

 

興が乗り、全身全霊にて討ち果たす事を定めた者へと開帳せしめる織田信長の魔王としての宝具、『第六天魔王波旬』。全ての神秘を、古きを焼き滅ぼす大焦熱。生前の魔王のイメージ、概念を昇華したもの。この空間に引きずり込まれし者、魔王たる織田信長の概念『天下布武』の強制干渉を賜ることとなるのだ

 

【ぐぅっ、あぁあぁあぁあ!?】

 

「お竜さん!?」

 

お竜の全身を紅蓮の焔が焼き焦がし滅していく。神秘を、古きを、それら全てを有するものを問答無用で焼き払い打ち払っていくのだ。龍馬は神秘の薄い近代であるため暑さを感じるだけであるが、神秘の塊であるお竜さんには、絶えず魂を焼き焦がす業火が襲い掛かり全てを焼き払っていく

 

「我が異界、古き神仏全てを焼き払いし魔王の業!神秘に生きた竜など等しく我が焔の餌食!貴様らは余さず、将棋における詰みへと落ち果てたのよ!」

 

燃え上がり燃え盛る第六天魔王。悶え苦しむお竜さんを垣間見、魔王のもう一つの業、その生前の逸話と戦法を昇華せしめる宝具を開帳し止めと成す

 

「さぁもがけ、足掻け!苦しみ果てるがよい!そして──三千世界に屍を晒すがいい!我が本領、目の当たりにした恐悦を懐きながらなァ!!」

 

「──」

 

視界を埋め尽くす無数の火縄銃。数多無限とも錯覚せしめん数の一斉射撃。それらが全て──お竜さんへと向けられている。そしてそれは即座に放たれ、決着の様相を導き出す

 

「これが魔王の三段撃ちよ!!──撃てぇえい!!」

 

一斉掃射、数による蹂躙制覇による掃討射撃。それらが焔にて悶えるお竜さんへの追い討ち、そして決定打として撃ち放たれる

 

【ぐ、ぅおぉおぉおぉおぉおっ!!ぐぁあぁぁあぁっ!!】

 

「お竜さん──!!くっ──!!!」

 

このままではお竜さんが保たない。燃やされ蜂の巣にされるお竜さんを救わんが為に、己が身を省みる事なく突撃し信長を討ち果たさんが為に刀を振り上げる

 

「うぉおぉおぉおぉおぉお!!」

 

甘いッ!!貴様程度の剣客、戦国の世には掃いて捨てる程におったわッ!!」

 

その渾身の一撃すら、紅蓮の外套一振りにて無力化され弾き飛ばされる。第六天魔王と成りし信長に、最早敵となる者は有り得ぬと痛感せしめる程に圧倒的で絶対的なる武威。

 

「ぐっ、う──があぁっ・・・!」

 

龍馬は遅れながら痛感する。目の前にいるものの凄まじさを。その存在の大きさ。想像も及びも付かぬ動乱を生き抜き、天下へと王手をかけた存在・・・日本における最大の英傑の名を

 

「──なんて、こった。此処までだとは・・・」

 

世界の後押しなどあってないかのような実力差。最早瀕死であり、死に体である自らとお竜さん。それを見下ろす、紅蓮にして風雲児たる魔王。──誰もが日の本にて知る、最大最強の知名度を誇る第六天魔王

 

「わしに波旬を抜かせた事、誇るが良い。幕末の端役にしては楽しめたぞ。誉めて遣わす」

 

織田、信長。その圧倒的な存在と驚異的なまでの武力と実力に、龍馬は戦慄と驚愕を叩き込まれ地へと伏せる。バチバチと音を上げ、燃え尽きんとするお竜さんを、せめて庇わんと立ち上がりながら

 

【リョーマ・・・また・・・護れなかった・・・】

 

「・・・ありがとう、お竜さん。僕の事なんかほっといて、天に登ってくれれば良かったのに・・・」

 

息も絶え絶えになりつつあるお竜さんを、龍馬は庇い剣を構える。最早死に体でありながらも。その目はけして諦めや絶望に染まってはいない

 

「フン、幕末の意地と言うやつか?最早逃げる事もできぬか」

 

「・・・たまにはかっこいい所を見せないと、愛想、尽かされてしまうぜよ。・・・だから、踏ん張らせてもらおうかな」

 

いつも護られているように、いつも傍にいてくれているように。自らもまたお竜さんを護る。そして──その無慈悲さと苛烈さを痛感し、龍馬は一つ確信を懐いた。目の前の織田信長の存在の在り方を

 

「──織田信長。君は君であって、君じゃない・・・それは、確かに見てとれたよ」

 

「・・・わしが、わしじゃない?なんじゃそれは。末期の言葉がそれか?」

 

そう。彼女は彼女ではない。彼女は何かに・・・聖杯に。もっと凄まじく、大きな。狂いし妄念に縛られている。そう、龍馬は実感し確信したのである。そうでなければ、彼女が穴熊を決め込み機会を練るような殊勝な真似を取る筈がない。──そして、彼女を野放しにしておけば、やがて・・・

 

「・・・だけど、それをなんとかするのは・・・僕の仕事じゃなさそうだ・・・」

 

最早立ち上がる事で精一杯な有り様で、自らの運命の終焉を感じ帽子を目深に被る。最早これ迄、天命尽き果てる。そうした龍馬の潔さに則り、信長は最後の一撃を構える

 

「・・・フン、さらばだ維新の英雄。この帝都を足掛かりにし、更なる世界へとわしは羽ばたく事としよう」

 

「・・・──ごめんね、皆。厄介事を押し付けちゃってさ・・・」

 

【リョ、ーマ・・・】

 

最後まで、お竜さんを庇い立てる龍馬。動けずとも、最期は今度こそ共に。──その誓いと無念を、今度は覆すことが叶うように

 

「では、さらばじゃ。我が覇道の礎と成る事、光栄に思い逝くが良い──」

 

突き付けられる火縄銃。目を閉じる龍馬。決着の一撃が今、過たず放たれ──

 

「・・・む?」

 

・・・否。放たれる事はなく。龍馬もお竜さんも道半ばに倒れることは成り得なかった。・・・その天命を良しとせぬ者が、それらが巻き起こした『忍術』が、彼を。彼等を救ったのだ

 

「──秘技。砂塵の術」

 

魔力を存分に練り上げた砂塵が、信長を取り巻く。そして、それは変化をもたらした。魔力を含みし砂を受けた火縄銃が、全て一時的な機能不全を起こしたのだ

 

「・・・!何者か!」

 

「──名乗る名前は無し。そぼろ丸やモヤシ丸、好きな名を覚えるがよい」

 

龍馬の前に立つ、忍装束の男。魔王と相対せし、かつて龍馬の誘いを受け盃を交わした忍・・・

 

「この男は死なせんよ。その為に・・・──此処に来た」

 

・・・おぼろ丸。かつて自らに道を示した男に、忠と、恩義を果たせんと忍は駆けたのであった──

 

 




織田信長「おぼろ丸・・・?知らぬ名じゃがまぁよい。まとめて殺せば同じことよ」

おぼろ丸「・・・」

「たかが数十の火縄銃を散らした程度で図に乗るな。──我が火縄銃は事実無限!武田の騎馬を討ち果たした暴威を特と見るがよい!」

向けられる無数の火縄銃。絶体絶命の危機にも、おぼろ丸は動じない。危機、窮地。それらは忍びには日常にしか過ぎないが故に

「死ねぃ!!無銘の忍よ!!」

放たれる銃撃。それを──

「忍法『火の鳥(ライザー・ブレイブバード)』」

小太郎命名の忍法を使い、巨大なる火の鳥を生成し銃撃を全て焼き尽くし吹き飛ばす。ただ一撃、ただ一度なれど。楽園にて極限にまで強化された霊基にて。かつての若き忍は、織田信長と拮抗せしめたのだ

「何ッ・・・」

そして、同時にこの場を切り抜ける策が成る

「──動くな!動いたらこいつの命は無いきのぅ!」

信勝「あ、あねうえー!」

「信勝・・・いつの間に・・・」

いつの間にやら現れたアサシン、以蔵が信勝の首に刃を突き付けている。人質の形だ。要求せしは──

「そぼろぉ!おまん一時間なんぞ嘘つきおって!これをやらせるつもりだったがか!」

『隠れ蓑』

「明察だ、ポメ蔵」

「二人とも・・・」

「死なせはせん。──あなただけはな」

信長「・・・・・・」

「あ、あねうえー!」

「・・・・・・ふう。よい、何処へなりとも失せよ。見逃してやろう」

銃を下ろす信長。・・・魔王なれど、外道に非ず。信勝を失ってまで、羽虫を刈る道理はないと判断したのだ

「・・・感謝する。行くぞ、龍馬」

「・・・ありがとね、二人とも」

「はっ、貸しじゃぞ、貸し!」

「姉上ー!ありがとーございますー!」

「・・・全く。少しは気を配らんか。うつけめ」

此処に、勝敗は水入りにて流れ。互いに痛み分けとして、この場は収まる


───一人の忍は、また。もう一人の主君を護ったのであった・・・──

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