人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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以蔵「これでぇ、しまいじゃぁ!!」


英霊兵「「「「!!!」」」」

おぼろ丸「よし、大勢は決した。即座に主君の援護に向かわん」

茶々「ふー、茶々ちょっと一休み、一休み・・・スイーツ食べて栄養補給したいなって!」

龍馬「もうちょっと頑張ってね、茶々さん。さぁ、皆。向かうとしようか」

沖田「・・・・・・」

土方「なんだ、なにぼさっとしてやがる。沖田」

「え?あぁいえ!・・・もう一人の私、大丈夫でしょうかね?」

土方「あ?・・・心配ねぇだろ。お前より剣の腕が立ったヤツはいねぇ。なら、負ける筈がねぇ」

「・・・土方さん。・・・はい!それに、マスターもいますしね!」

土方「そう言うことだ。行くぞ!次だ!」

「承知!!」

おぼろ丸(・・・胸騒ぎがする。おそらくこれは、・・・決戦が、討ち果たすべきの敵が現れる前触れなのだろうか・・・)


降誕──第六天魔王──

「むっ──せいっ」

 

無数に群がる英霊兵、キャスターの私兵たる機械達に、瞬間移動なる歩法を組み合わせた斬撃を縦横無尽に振るい、数の不利をたった一人で覆していく褐色のサーヴァント、マジンさん。自らの存在を定義し、此処までの短くも濃密な激闘を潜り抜け鍛え上げられた万事における十全の剣術が冴え渡る。最早素人剣と呼ばれ侮られた姿の面影は何処にもない。迅速に、鋭利に。そして不退転の魂を宿した大刀が紅く輝き空間毎敵対者を斬り倒し閃きを放つ

 

【魔力は任せて!全開でやっていいよ!】

 

やっとこさ、とうとみによる討伐から復帰し鎧を纏ったリッカが、マジンさん、そしてノッブに潤沢かつ超絶に膨大な魔力を供給する。この世総ての悪、人類の悪性そのものを魔力源とする特性にて、無尽蔵な魔力供給、生成が可能なリッカの存在が、楽園により鍛え上げられた霊基のサーヴァントの十全の行使を可能とするのだ

 

「解った。行くぞ、ミツヒデ。・・・お前には、訪ねたい事が出来た」

 

「・・・訪ねたい、事だと?」

 

聖杯戦争のどのクラスにも該当しない謎のサーヴァントの台頭、信長を騙るふざけた装いのサーヴァントという不確定材料を推し量っていた光秀に、マジンさんは投げ掛けたい疑問、問いたい命題があると告げる。攻撃をかわし、反転して打ち砕き、時には大刀を投げ付けながら、光秀へと問いと視線を飛ばす

 

「お前は、ノッブが大切だといった。あらゆるものを捧げても惜しくないといった。・・・それは本当なのか」

 

「何を言っている。私の信長公への献身を疑うと言うのか」

 

「違う。大切であるなら何故、こんな事をする。それはノッブが望んだ事であるからか。それとも、お前が望んだ事であるからか」

 

自身の野望であるのか、それとも自らの悲願であるのか。そして、大切な者に対する仕打ちは、これであっているのかと。彼女は問い質した。沸き上がる、疑問のままに。本来なら、使命を果たし倒すだけの存在に問い掛けたのは・・・マスターの影響を授かり、そして自意識を確立させた故の行動であった

 

「無論、私が望んだ事だ!私が、理解者たる私が信長公を神とする!今一度、この天下を信長公へお捧げいたす!そして今度こそ、今度こそ私は信長公の忠実なる腹心として──」

 

「したことは、決して無かった事にならない。どんなに繕って、どんなに誤魔化したとしても。それでは、お前の望む結果には辿り着けない。お前は、ノッブを裏切った裏切り者のままだ」

 

断言する。どれ程悔やもうと、どれ程惜しもうと。時計の針は戻らず、事象は無かった事にならない。それを、その意味をマジンさんは此処に来て理解が及んだのだ。一度成し遂げたもの、一度定まった天命は、全うせねばならないのだから。そしてそれは・・・──

 

「貴様ッ・・・!」

 

「お前には、まだいくらでも道がある筈だ。まだ、自分が本当に欲しいものに気付ける筈だ。──投降しろ。聖杯を渡して、自分の成すべき事を成せ、ミツヒデ」

 

マジンさんは知っている。終わりの、最後の瞬間の光景を。まだ間に合う。無穹の狭間に落ちる必要は未だ無い。今ならば──

 

「貴様に何が解る!私の、私の!私には信長公しか、信長公だけしかおらぬのだ!故にこそ、信長公が無い世界など滅ぼうが構いはしない、むしろ──我が信長公の誕生の土壌となりし事を歓喜しながら滅び行くがいい!」

 

しかし、最早光秀にとっては自らの信長を産み落とす以外の出来事は些事であり、如何なる説得や如何なる事象はなんの意味も成さない。自らと、信長のみで完結した世界の他には何も望まぬ。神を降ろし、世界の救済と統治を行う。その果てに古い世界がどうなろうとも、最早彼にはどうでもよいことなのだ

 

「・・・・・・──そうまでして、大切な存在なのに。何故、そんな未来を選んでしまったのか。・・・何よりも、それを悔いているのは・・・」

 

「気安いぞ、サーヴァント!我が心胆を暴くなど、恥を知れ!!」

 

英霊兵の一撃が、マジンさんを吹き飛ばす。大きく態勢が崩れたマジンさんを、リッカが即座に受け止める

 

【対話は時に人を怒らせちゃうこともあるけど、だからって分かろうとしないことは解らない。うんうん!偉いよ、マジンさん!】

 

「ん・・・。まだリッカみたいにはできないな。・・・そうまでして、縛られているんだな。自分の我に、想いに」

 

そうであるならば──。最後の機会、最期の問答にて、真に自分の成すべき事は此処に定まった。最早迷いも悩みも、介在する余地はない。──あるとすれば・・・

 

「・・・・・・」

 

【?どしたの、マジンさん?何処か、痛めた?】

 

リッカを見つめ、そっと首を振る。この瞬間、この戦いにこそ、たった一度だけ。自分はリッカに力を貸す誰よりも力になれる。そう思い返したならば、最早苦悩などは無用なものだ。決意と共に、マジンさんは立ち上がる

 

「──それが選択ならば。私は」

 

「いやいや待った待った。なぁに、わしにもちょびっと良いところを分けてもバチは当たらんじゃろ?」

 

その決意をそっと遮るは、バスターTシャツのノッブ、バーサーカー、信長THE・ロックンローラー。巨大なスクラッチ式万能兵器を構え、光秀に相対を果たす

 

「信長公を騙る不届きものめ。その存在こそが目障りだ・・・やれ!!」

 

光秀からしてみれば、正体不明のサーヴァントなどより此方の方が重要かつ重大であった。自分以外の信長公、自らを否定せしめる信長公など虚威、贋作の紛い物でしかない。此より真なる第六天魔王の降臨に、けして容認してはならぬ存在であるのだ

 

取り囲む英霊兵。泰然と構えるノッブ。救援、支援を執り行わんとするリッカとマジンさんを、手で制し腕を組む

 

「神たる信長公の降臨に、貴様は不要だ・・・!醜く死ぬがいい!度しがたき信長公の紛い物よ!」

 

「・・・──」

 

雪崩れ込む英霊兵、次々と積み重なっていく重量と重圧が、ノッブのみに向けて襲い来る。存在を赦さぬと圧壊させせしめる程の大質量が、かつての主君に振るわれる

 

「ノッブ!」

 

「ノッブが、ぺしゃんこ・・・か?」

 

「ハハハハハ!所詮紛い物などその程度!我が主、我が魔王を騙りし重罪、その身を以て──」

 

その二の句を告げんとした光秀を、猛烈な火柱が遮る。突如として発生せしめた巨大なる火焔。英霊兵たちを即座に焼き滅ぼした、業火と火柱の発生源、それは・・・

 

「──わしが神になどなりたがる筈が無かろうに、だからわかっとらんと言っておるのだ、うつけめ」

 

燃え盛り、真っ赤に炎上せしめる紅蓮の魔王。その背後に現れし巨大なる畏怖の具現、真紅の骸骨と共に厳かにその紅蓮なる姿を見せつける

 

【ノッブ!良かった・・・ってすごく燃えてるよ!?】

 

「うむ、ちっと諸刃かつ熱いナリじゃが我慢しといてくれな。なぁに、すぐに終わるからの。──行くぞ、キンカン。言って分からぬならば、こうするまでよ!!」

 

スクラッチギターを叩き付け、燃え上がる炎を噴出せしめる。熱くたぎる魔力と覇気が、焔となりと形を成す

 

「こ、これは・・・!?」

 

燃え盛り、全てを滅ぼし焼き尽くす信長の宝具『第六天魔王波旬』の限定解放。背後に巨大なり骸骨、パワーあるビジョンが現れ魔王がごとき力を振るう

 

「───命が惜しい輩は疾く失せよ。此よりは、大焦熱が無間地獄!」

 

唸りと咆哮を上げる、巨大なる第六天魔王の化身。燃え続ける信長の命に応えるように、その両拳が雄々しくおぞましく振るわれ、英霊兵を蹴散らし光秀に猛進していく

 

「三界神仏灰燼と帰せ! 我こそは、第六天魔王波旬!! ――織田、信長!

 

「と、止めろ!そいつを、そいつを近付けるな──!」

 

「うぉおぉおぉッ!!『第六天魔王波旬(ノブナガ・THE・)~~夏盛~~(ロックンロール)』!!!!!」

 

英霊兵を薙ぎ倒し、打ち払い、猛然と迫る紅蓮の魔王に畏怖せし光秀ではあったが、全てが遅きに失した。発動した時点で第六天魔王の力は振るわれており、そして──

 

「ぐあっ、ぐぉおぉおぉおぉおぉっ!!!ぐあぁあぁあぁ!!」

 

顕現した第六天魔王の化身の両拳が、光秀を打ちのめし叩きのめし、豪腕のラッシュを彼に叩き込んでいく。人の手にも、英雄の手にも成し得ぬ速さのラッシュが、過たず光秀の全身に叩き込まれていく。火炎を放ちながら、信長は手にしたギターをかき鳴らし──

 

「オラオラオラオラオラオラァ!!わしのビートが有頂天!燃え尽きるほど本能寺!!貴様を裁くのはッ──」

 

光秀の体を殴り飛ばし、止めの一撃を振りかぶる第六天魔王。最早言葉が伝わぬのなら是非も無し。その一撃と連打を以て──

 

「わしの──第六天魔王(スタンド)じゃぁ──!!イェイッ!!」

 

「ぐがっ──あぁあぁあぁあぁあぁ!!!」

 

遥か彼方まで吹き飛ばされ止めの一撃を直撃せしめる光秀。排熱がごときロックンロール・シャウトにて自らの火炎を抜き放ちクールダウンを行い、元凶たる自らのかつての家臣を討ち果たす

 

「・・・アルトリア先輩を笑えんのぅ。わしもまた、解っておらなんだ、か・・・」

 

忠臣の乱心を見抜けず、自らを滅ぼした業と落ち度を悼む信長。こうして直接手を下すことすら、生前成す事はなかった。だからこそ、この確執は是非も無いのやもしれない

 

「おぉ・・・これがロックか。スゴいな。あんなに向こうまで吹っ飛んでいったぞ」

 

【ノッブやるぅ!あ、両手両足大丈夫!?すっごい燃えてるけど!】

 

「ん、まぁ──是非も無いネ!さぁて、英霊兵も品切れ、キンカンも虫の息。あとは聖杯を取り上げてお仕舞いじゃ!さっさと解決してしまうかの!帰って敦盛踊って歌って寝るのじゃ!いつもみたいにの!」

 

その鉄槌にて、この戦いに決着はついたと誰もが確信した。──だが、それはまだ甘い判断であり、妄執と妄念は、肉体の崩壊では決して潰えなかったのだ

 

「──フフ、ハハハハハ、ハハハハハ!ハハハハハハハハハハ!!」

 

「ッ!光秀、まだ動けるというか!貴様ガッツ持ちか!」

 

「──良いでしょう!あなたが信長公だとするならばそれでも構わぬ。信長公すら私を否定すると言うのならば・・・!」

 

手にした聖杯が輝き、変化が訪れる。それは、一人の男の妄執の果て──

 

「『私こそが!真なる信長公へと成りましょうぞ!!』フハ、ハハハハハ!ハハハハハハハハハハ──!!」

 

「貴様、何を──!」

 

聖杯の輝きと共に、おぞましき泥が金の杯より溢れ出す──

 




光秀「そうだ、私こそが!私だけが信長公を理解し!信長公を殺し!信長公をお救いできる!!」

リッカ【この泥・・・!?私の使う泥と同じ・・・!?】

沖田さん「何事ですか!?マスター、ノッブ、私!無事ですか!?」

マジンさん「──聖杯だ。万能の願望機にて、自らを・・・」

光秀「信長公こそ我が光!我が導べ、我が全て!ハハハハハ!フハハハハハハハハハハハハ!!」

・・・やがて、光秀の形は完全に消え失せ、目の前には単眼にして不定形の存在が現れる。泥人形がごとき不定形、定まらぬ形は、自らの心が如く

土方「ボサッとしてるんじゃねぇ!みすみすやらせるな!!」

第六天魔王・明智光秀【フハハハハハハハ!!そうだ、私が、私こそが真の信長公・・・!!】

「──剣が通らねぇ!なんだこの身体は!?」

以蔵「天誅ぅうぅう!!」

おぼろ丸「忍法、ブレイブバード・・・!!」

あらゆる攻撃は呑み込まれ、意味を成さず。その偉容は、まさに神が如く

【衆生済度の神・・・・・・、第六天魔王波旬!織田信長!!ハハハハハハハハハハハハハハハ!!】

自らの全てを捨て去り、神へと変生せし光秀の哄笑が一同の前に響き渡り立ち塞がる──

龍馬「・・・なんてこった。このレベルの溜め込みを使って呼び寄せたモノがあれなら、あれの規模は──最早神霊クラスだ・・・!」

リッカ【へこたれてる場合じゃない!皆で止めるよ!!】

マジンさん「──・・・・・・」

【神に挑む愚かしさ、その身にて味わうがいい・・・!フフ、ハハハハハハハハハハ!!】

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