人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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将門公『・・・・・・』


アマテラス「ワフ・・・」

武蔵(随分とどっしりしているのね、将門公。自分の膝下の東京で大暴れとか、祟り案件かもとビクビクしてたのに・・・)

将門公『・・・』

小太郎(胸中に去来している感情は如何なるものなのか、とても推し量れません。守護神として彼を招けば、あるいはアマテラス殿を招けば勝ちは確約という程ですからね・・・)

(案外出番待ちとかだったりして?よーし、平定しちゃうぞー!みたいな!)

(あはは・・・全日本英霊が平伏する未来しか見えませんね・・・)

将門公『・・・その身、喪われど魂は尽きず。紡いだ縁が、再会の呼び水とならん事を』

「ワフ!」

『・・・ぐだぐだ東京坂東宮・・・』

「ワフ!?」

『何れ機会があるならば、興してみるも一興也』

「ワッフ・・・」



宝具威力アップ攻撃力アップバスターアップ×4→フルチャージ宝具

クリティカル威力アップ発生率アップ×4→攻撃連打



「ワフ・・・ワッフ・・・Σ(゚Д゚;)」

『・・・控えるべし、とな。・・・うむ、ばらんす調整に難儀せり。理不尽はけして遊興に繋がらぬが故に』

「ワフ・・・!」

『・・・報酬は、『全攻撃無効』なる将門コマンドカード・・・』

「ワフ!?」

『・・・超難易度には釣り合わず。・・・あな、困難なりや。ばらんす調整・・・』

「ワフゥ・・・」


武蔵(・・・意外と・・・)

小太郎(親しみやすい方、なのですね・・・)

(案外、親しげに話し掛けてくるのがアマテラス様とリッカちゃんだけだから寂しいとか!)

(交友は、山の翁様もいらっしゃいますが・・・)

『慈母よ、桃と骨なり』

「ワフゥ!(ガツガツ)」

(・・・まさか)

(ねぇ・・・?)


無穹

「えぇい、わしよりわしみたいな物言いをしよってからに!わしはわしじゃ、このうつけキンカンめが!」

 

あらゆる霊基を喰らい、束ね、重ね、そして顕現せしめた第六天魔王・明智光秀。全てを救う神を名乗る在り方とはかけ離れた醜悪な不定形の怪物がごとき面妖が一同の前へと立ち塞がる

 

【我が導き、我が光、我が全て・・・この威光、救済を受け入れよ、衆生ども!我が信長公が、この世の全てを手中に納めん・・・!】

 

沸き上がる聖杯の泥、隆起する全身より放たれし悪性の魔力が、津波や怒濤の様にリッカらに襲い掛かる。それは練り込まれに練り込まれた妄執と怨念、執着の具現。故に、一度触れたならば容易く取り込まれかねないほどの悪辣なる汚濁にして汚泥。足許に急速に広がっていく程の拡散の速度を保ちながら一同を呑み込まんと襲い来る

 

「こけおどしも大概にせぇ!そんなもんでわしがびびり上がると思うがか、バケモンがぁ!」

 

死骸を足掛かりにし、第六天魔王へと果敢に切り込む以蔵。その刃が二度三度と閃き、魔王の身体へと食い込んでいく。同時におぼろ丸、そして土方が続きその混沌の身体を切り裂き、燃やし、吹き飛ばしていくのだが・・・

 

【無駄なことを・・・貴様らとは質が、量が、格が!その総てが違うのだ!】

 

あらゆるサーヴァントを取り込み喰らい、溜め込んだとされる第六天魔王の在り方に矛盾は存在しない。神霊並の霊基を手に入れたとするその有り様に偽りはなく、一騎一騎の攻撃など滝に石を投げ込むように、海に角砂糖を入れ込むように押し流してしまう。剣術も、忍法も、誠の矜持も一纏めに押し潰すその姿は、まさに無慈悲な神そのものであった。埒が空かず、逆に取り込まれかねないほどの混沌に、飛び下がるを得ない現状に以蔵は苛立たしげにうめく

 

「だめじゃ!全くきいちょらん!気色悪くなったのは酔狂じゃないっちゅーがか・・・!」

 

「・・・単体の攻撃では埒が空くまい。これは秘技と奥義の開帳の時分と見た」

 

「丸くんの言う通りだね。信長公、さっきの奥の手・・・まだ使える?」

 

真なる神の具現であるならば、神を焼き尽くす信長公の宝具は極めて相性がいい。アーチャーは被るとバーサーカーとなりやってきたノッブに問い掛ける龍馬。だが・・・

 

「さっきキンカンぶっ飛ばした時に全霊掛けすぎての!そう波旬は何度も使えんのじゃ!わしとしたことが第一形態に全身全霊注ぎ込むとか、不覚!」

 

「肝心なときに役に立ちませんねノッブはもー!完全に要らんことしぃなダメ助っ人外人じゃないですかやだー!」

 

「おう今の今まで寝込んでた人斬りサーの姫だけには言われたくないわ!マジンさんやシャナっちのヒロイン力見習わんかトマトジュース製造機!!」

 

「ほざきましたねノッブゥ!!」

 

そんな進退極まる中でも、必ず突破口は在る筈と一同は足掻く。侵食する泥に、リッカの魔力放出による泥の噴出を叩きつけ拮抗させサーヴァント達を守護せしめ時間を稼ぐ。必ず見つかる筈だ。状況を打開する何かが

 

【諦めるわけにはいかない!私達しか止められる人がいないなら、此処は絶対に退くわけにはいかないよ、皆!!】

 

サーヴァント達を保護し、そしてマスターとしてのサポートを怠らないリッカ。この程度のピンチに膝を屈していたら、人理修復などやってはいられなかった。まだ誰も欠けていないなら、諦める理由など何処にもない。諦めない限り敗けじゃない。諦めなければ、必ず前に進める。そうすれば何かが変わる

 

【フハハハハハハ!!私こそが真の信長公!!有り得た獣などといった紛い物の出来損ないなどに破れる道理はない!──第六天魔王たる私に平伏すがいい!!!!!】

 

拮抗を崩さんと唸りをあげる光秀。リッカの魔力はほぼ無尽蔵なれど、失った魔力が即座に補填される訳ではない。回復を消費が上回れば枯渇は訪れる。後一時間も拮抗が続けば危うしとなる程には追い詰められるも、けして下がりはしないリッカ。この場所では終われない。こうなったら人類悪としての全力を──そう考えた瞬間であった

 

「大丈夫だ、リッカ。『完全勝利』の為にこそ私はいる」

 

【───マジンさん?】

 

恐れなく、不安なく。静かにリッカの背中を支える者がある。それはこの帝都にて出逢った、かけがえのない──

 

「あいつの胸の聖杯。あれを切り離してもらえるだろうか。──それさえ出来たなら、あいつは私がやっつける」

 

マジンさんは告げる。聖杯さえ取り除けたなら、後は自分が為し遂げると。それを聞いて、様々な想いを浮かべる土方、龍馬、沖田・・・そしてその決意を汲んだおぼろ丸が、了承を示す

 

「はぁ?わしらが束になっても叶わんちゅーに、おまんが何を・・・」

 

「──承知した。龍馬、此処は我々の力を見せるときだ。共に・・・日本の夜明けを切り開かん」

 

「・・・そうだね。やろう、おぼろ丸くん。皆」

 

「阿呆しかおらんがか、此処は!?」

 

「・・・やるんですね、私。その全てを懸けて」

 

「あぁ。マジンさんの全てを懸けて、リッカを勝利者にしてみせる。敗北者になんてさせないぞ」

 

「──龍馬ァ!んで忍者!!お前らが聖杯を取れ、動きを止めろ!!人斬り、小娘!お前は右だ!俺と沖田が左をやる!!」

 

即座に冷静に担当を分割するは土方だ。副長たる彼は、合理的であるならば全てを使い勝利を掴む 

 

「リッカ。──あの雷の剣、最後に一度。私に見せてほしい。そうすればきっと・・・」

 

【雷位の事?解った、任せて!必殺技、見せちゃうよ!】

 

決意した一行が分担し、泥を掻き分けながら第六天魔王の本体にありったけの一撃を叩き込んでいく。──されどその身は神となりし偉容。渾身の一撃や攻撃すら分け隔てなく。無慈悲に吸収していくのだ

 

【無駄なことを!衆生救度の神となりしこの信長公に、貴様ら雑多の攻撃など効く筈も無かろうが!!】

 

それらはまさに神の傲慢、あらゆる物を飲み込みし魔王の覇道。かつて光秀が魅せられた光で在ったのだが──光を見出だしたのは、けして光秀ばかりではない

 

「──人を捨て、神を名乗り、道を外した者よ。今こそ・・・その業を両断せしめん。・・・我が賜りし人の未来、人の夜明け、日本の明日をこの一刀に示さん」

 

其処には、鉄の掟よりも・・・人の情と手を取り合う力こそが大事を為すに相応しき力であると。手を伸ばされた忍がいた。共に夜明けを見るのだと、命を奪わぬ風変わりな忍に手を差し出した者がいた

 

「この身は忍にして、人。──我が信念をこの一刀に」

 

抜き放ちしは、清らかな波がごとき輝きを放つ刀。誰も殺めず、しかして未来を切り開かんが為にこそ託された刃。かつての主君、主に託された至高の名刀

 

「それは──・・・そうか。君は・・・納得がいったよ。なら──行くぜよ、お竜さん!丸!!」

 

「任せろ。カエル食べて元気百倍なお竜さんの力、見せてやる」

 

鞘から溢れだす青と白の光に照らされながら、お竜さんが輝き出す。神秘と決意に満ちた、維新の輝き。幕末の英雄と、その大望に魅せられた忍が、今こそ夜明けを迎えんが為に力を示す──!

 

 

「──世を決めるは人の力、かの者の信は我が刃に」

 

「天逆鉾に忌われし、国津の大蛇」

 

【なんだ、何を・・・】

 

抜き放たれし純白の穢れ無き刃、変化する巨大なる竜。魔王を名乗る存在へと叩き込まれる、人の意志と可能性の刃

 

「太古の昔、遥かなる未来(サキ)──、あり得ざる出逢いの絆は我が心に!」

 

「天翔ける──!」

 

かつて、共に夜明けを見ようと。絆と誓いの証に託された至高の名刀。そして有り得ざる世界にて再会を果たしたかつての主君の刃。人ではなく、『業』を、『外道』を切り裂くおぼろ丸の真の宝具。龍馬の宝具と同時に、今こそ真の力が放たれる。──維新の英雄と共に時代を、世を渡りしその身。外道へと堕ちた神を切り捨てし刃となりて抜刀せしめる

 

天翔る、竜が如く翔る者と共にありし忍の至宝。その名は──

 

 

「───竜が如く!!!」

 

「縁を示せ──ヨシユキ!!」

 

嵐を、荒波を、時代の困窮を切り裂く一刀。神秘の塊である竜の顕現。輝ける一閃、暴れ狂う竜が、神たるモノに叩き込まれた。・・・かつておぼろ丸は、囚われし坂本龍馬に訪ねられたのだ。この世界を飛び回り、共に往かないか。と。使命に殉じながらも、けして人の在り方や心を手放さなかった、変わり種である一人の忍びに。その忍に託されたこの剣こそ、彼が紡いだ絆。龍馬との変わらぬ絆の証──

 

「続きます!『無明・三段突き!!』」

 

「俺がァ!!新!撰!!組だァァア!!!」

 

繋がるように、畳み掛けるように叩き込まれる宝具の追撃。神に挑みし人の究極が、絶え間無く此処に再現されせしめる。おぼろ丸の再生すら間に合わせぬ衝撃波の剣が、確実に泥を穿ち貫いていく

 

「わしはぁ!!剣のぉ!!天才じゃァ!!神だろうがなんだろうがぶったぎれる!!わしは天才じゃぁあぁぁあぁぁあぁ!!!」

 

「此処が茶々楽園アピールポイントのチャンス!『絢爛魔界日輪城』ー!!」

 

気合いと意地、そして無邪気なる剣と業火もまた神に挑む。焼け落ち、切り刻まれていく魔王に、そして──

 

【雷位、──開帳。この一刀で道を拓く!!】

 

左手より引き抜きし漆黒と真紅の刃『龍哮怨獣斬村正』。そして、腰に差した生涯の護り刀『童子切安綱』。雷を放ち全身に負荷をかけ、極みと達した因果をも駆け抜け切り裂く一閃を・・・『殺す』のではなく『救う』為の奥義を此処に人類最悪のマスターが示す

 

【『龍哮一閃・雲曜神雷』──!!!!】

 

【─────】

 

反応すら、身動ぎすら赦されぬ至高にして正しく神の速さの一閃。紫と真紅の雷が閃いた瞬間には、その総てが終わっていた

 

【───とった!】

 

鎧を纏いし人龍の手に握られしは聖杯。──下総を巡り、母を助けんが為に身に付けるしか無かった必殺・・・否、『活人』の奥義が、命を奪わずその業の根源を過たず手にしたのだ。業を両断せしめる奥義こそ、雷位の真骨頂であるが故に

 

「──此処まで御膳立てしたのじゃ!決めてみせいよ、マジンさんとやら!!」

 

「・・・あぁ。もう迷いはない。皆の生きざま、皆の決意、皆の頑張り・・・その全てを私が束ねる」

 

・・・そして、この時が来る。マジンさんが・・・彼女がこの場に現れし意味。そして、この世界にもたらす結末

 

「──リッカを必ずカルデアに送り返す。決着の時だ。──魔王、明智光秀」

 

その全てを、自らの全てを今此処に示す──駆け抜けし稲妻が照らし示した、果ての空へ──




光秀【何を世迷い言を・・・信長公ですら私を止められんのだ。貴様ごとき矮小な霊基のサーヴァントが私を倒すだと?話にならんな・・・・・・!】

・・・そう言葉にした光秀は目を見開く。マジンさんの身体から、霊基から。目映くも真白なる光が溢れ出している。そしてその光は、聖杯と共鳴し尚も目映くも輝いていく

沖田「・・・すみません。どうか・・・マスターをお願い致します」

土方「じゃあな、沖田。あとはお前の問題だ」

信長「・・・すまんの。わしでは、どうやら光秀を戻せんようじゃ。せめて・・・解放(ころ)してやってくれ」

マジンさん「──うん。お前たちと一緒に過ごした私。そして、リッカと共に過ごした私。・・・此処にいる私。・・・そうだ。その全てはこの為に」

リッカ「・・・マジンさん・・・」

「・・・最後まで、一緒に来てくれるだろうか。リッカ。・・・此処まで来て、一人で決めるのは水臭いと思うから」

リッカ「──勿論!だって、それが私とマジンさのやってきた戦いだから!」

マジンさん「・・・ありがとう。──共に往こう。無穹の空へ──」




────其処は、始まりも終わりもない、完成も崩壊もない、果ての果て。あらゆるものが此処にて終焉を迎えし、先もなく、終わりもない。無穹の狭間。何も依る辺無き、大空が如き広大にして空白の空間

【な、なんだ此処は!?一体、何が!?】

リッカ「此処は・・・」

マジンさん「・・・ありがとう。リッカ。本当なら、貴女には私など不要だった。貴女には、困難を討ち果たす力を持ち合わせていた。私の介入など、要らなかったのに。私を受け入れ、私に沢山の想い出を・・・生を、名前をくれた」

──それは、マジンさんの末期の言葉。使命を果たすために世界が鋳造した、たった一度の霊基。使命と役目を果たしたならば、最早塵一つ残らぬ天命を懐いた少女の万感の想いを込めた、リッカに遺す感謝の言葉

「今こそ、私は私の為すべき事を果たす。──いざ、聴くがいい。仮初めの偽神よ」

鎧もまた、変化を示す。共に傍に在った龍の少女の色合いを、色彩を色濃く残した白黒の鎧に。全身を纏う、──抑止の鎧に

「──我は、抑止の守護者。人理を臨む龍に見出だされ・・・魔を裂き、神を穿つ。人の祷を束ねしもの」

大刀が紅く輝き、その極致を・・・天命を告げる。マジンさんと名付けられ、最弱であった彼女が今・・・その真名を示す

「我が名───『()神人(じん)』、沖田総司」

──その名こそ、世界に召し上げられし自らの証明。世界を守護せし、抑止の顕現──

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