人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オルガマリー「リッカ、お疲れ様。──なのだけど、新しいチョコの反応よ。よろしく頼むわね」

『オッケ!お任せ!』

ロマン「あ、もしもし?シバ?聞きたいことがあるんだけど。動いたチョコの出所が何処だかわかるかい?・・・薬?薬品?──よーし!大分絞れたぞぅ!確か前に・・・」

オルガマリー「・・・この騒動が終わったら、私も配りにいかなきゃね。マシュも大丈夫かしら・・・」

蓮「~♪」

『針のない時計チョコ』


「まさかこうして行事に参加する日が来るとはな。リッカのやつ、俺は世界すら違う顧客だって言うのにマメだよなぁ。・・・よし、ホワイトデーの御返しは奮発しなきゃな。マフラーでも編み込んでやるか・・・」

『アパート部屋』

「ただい」

『部屋を埋め尽くすチョコ』

「うぉおぉお!!!?」

『皆へ! マルグリッド』

「配れと!?」

『愛すべき、輝かしき楽園の皆へ ラインハルト』

「お前は自分で配れよ!?というか全部爆発とかしねぇよな!?」

『お前に贈る菓子は、無し 水銀』

「要らねぇよ!!というか嫌がらせに余念がね──」

『虹の守護者へ渡しておくのだ 愛しの父より』

「・・・お、おぉ・・・だから!自分で!渡せって言ってるだろぉ!?」

『この後加速して配った』


天の鎖と行く!バレンタイン道中記!~ウルク晴れ時々チョコ~
一番はだぁれ?──女性の戦い!──


「忙しいね、リッカ。レイシフトの後は即座にカルデアにとんぼ返りだなんて。一難去ってまた一難、といったところかな?」

 

エルキドゥが楽しげに漏らす通り、今度のチョコレートの反応はカルデア、楽園の一室に示された。帰ってきて休む暇もなく現場へと急行する二人。広き廊下を、緑のサーヴァントと黒きマスターが駆け抜けていく。チョコレートが脱走し、誰かが持ち去るといった人災的被害を鎮圧する為に、カルデアのマスター代表は一目散に急行するのだ

 

「毎日が充実してると稀によくある事!さぁて、誰がチョコレートをかっさらっていったのかなー?情状酌量の余地があるかどうかを聞きつつ、チョコレートを回収して渡さなきゃ!」

 

回収や没収だけでなく、きちんと作り上げたチョコを渡すことも含めてミッションである。だからこそ、リッカは心を踊らせるのだ。自分が作り上げたもの、そしてサーヴァントがチョコレートに込めた想いを感じ取る。それを為し遂げるミッションなればこそ、苦難には感じていない。楽しい労働は決して苦痛、ルーチンワークにはなり得ないのだ

 

「食堂・・・?あ、誰かいるみたいだよリッカ。様子を伺ってみよう」

 

「ん、ホント?どれどれ?」

 

エルキドゥの導きにて、身を隠すリッカ。そっと食堂に目を向ける。すると──

 

「・・・きよひーに、せーひつちゃん?あと、タマモ?」

 

いつもの仲良し面子が、食堂にて睨みを効かせている光景が繰り広げられている。その様子と言葉に、二人は耳を傾け・・・

 

「・・・チョコ争い?」

 

三人の言い争いの内容は、今回の騒動に密接に関わっており・・・また、リッカを巡る想いの結実であるのだった──

 

ちょこれいと あまくさわぎし かかおかな

 

 

「今回ばかり、いえ。今回にて決着をつけさせていただきます」

 

決意を露に二人に大見得を切りしは、日本が誇る大量のバーサーカーが一人、きよひーこと清姫。扇子を振るい高らかに告げる。傍らに在りし、カカオの匂いが漂う垂れ幕に手をかけ・・・

 

「御覧くださいませ、これが私の、愛のちょこれいと!『ますたぁ♥ちょこれいと』にてございます!」

 

ふぁさり、と手をかけ垂れ幕を下ろし、その全容を食堂にて披露する。──其処に在りしは、カルデアにて脱走したチョコレート。それをふんだんに使用して手掛けし、清姫が存分に愛を注ぎ込んだマスター、リッカへの愛の証・・・

 

「どうでしょう!絡み付くますたぁ、そして鐘!竜と化したますたぁを忠実に再現いたした力作にてございます!」

 

鐘に巻き付く下半身が蛇と化したリッカが鐘に巻き付き火を吹いているチョコレートを、自慢気に見せつけ胸を張る嘘つき焼き殺すウーマン。自らの愛の形を示したカカオの菓子を示し、二人に自慢気に見せつける

 

「いやあの、清姫さん?こちら、御主人様のおつもりなのです?清姫さん二号ではなく?」

 

「何を仰るのです。竜となり雄々しく戦うマスターを忠実に再現した力作です。もしや玉藻さん、あまりの出来栄えに叶わぬとねがてぃぶきゃんぺーんでしょうか?」

 

「・・・マスターが鐘に絡み付いたという記録はございませんが・・・」

 

そう、これらはチョコレート騒動にてチョコを手に入れた、手に入れてしまったマスターLOVE勢が腕によりをかけて作り上げたチョコの形。テーマはずばり『リッカチョコレート』。チョコサーヴァントを容易く撃退し形を溶かした後に、望みの形にしようと一念発起して三人は作り上げたのだ

 

そして──三人がマスターのチョコレートを作ったとあれば、『誰の出来映えが一番か』に行き着くのは当然の帰結である。己がマスターの一番と憚らぬ三人が集い、食堂にて披露宴と争いを兼ねた口論を行っていたのだ。先行は清姫であり、彼女の主観と愛が大量に詰まったリッカチョコを、玉藻たちに見せ付けているといった様相であるのだ

 

「そんな事は問題ではありません。御覧なさい。人理を焼き尽くす美しきますたぁのお姿を!まるで今にも動き出してしまいそうな迫力・・・!あぁ、鐘の中にてますたぁに焼かれても悔いはありません・・・♥」

 

「いやいやいやいや!御主人様下半身蛇にならないですよ!?これ完全に清姫さんの竜観点マシマシですよねぇ!?」

 

「マスターの戦うお姿は、もっと雄々しく麗しいです・・・そんな怪物めいて無いです。解釈違いはダメだと思います・・・」

 

「なっ・・・!そ、そうやって私とますたぁの絆と愛を否定なさるおつもりなのですね!く、口ではなんとでも仰えます!あなた方のチョコレートに自信がないゆえ、否定なさる事しか出来ないのでしょう!」

 

割りと改心の出来映えであったのにイマイチな反応であることに困惑と狼狽を示すきよひー。汗を流しあたふたする事を確認し、せーひつちゃんが一歩前へ出る

 

「解釈違いはダメです。・・・──私も一生懸命頑張って作りました。御覧ください。これが、マスターへと捧げる忠義の証です」

 

そっと用意していた掛け幕を下ろし、その渾身の出来映えたるチョコを披露する。──其処に在りしは、せーひつの願いと想いを注ぎ込んだ・・・

 

「マスターに、お姫様だっこ・・・私を助けてくださったあなた、本当に素敵でございました・・・」

 

お姫様だっこにて抱えるリッカ、そして抱えられるせーひつ。第六特異点にて行われた救出劇、色褪せない想い出のメモリアルチョコとして──

 

「いやこれも大分脚色入ってますよねぇ!?確かにイケメン度はよく再現されておりますが!こんなキスしてください五秒前♥なんてあまーい雰囲気覚えが無いですよ!?」

 

「あぁ、私に触れてくださるマスター・・・お慕いしております♥お仕えいたします・・・♥いつまでも、何処までも・・・♥」

 

「あー、ダメですこれ完全に自分の世界に入ってしまってますねぇ・・・というか大丈夫です?色合い、エグいくらいの黒なのですが。毒とか入ってないです?」

 

「はい、毒しか入って無いです・・・せーひつの、性質的に・・・毒まみれで、マスターにしかお召し上がっていただけない・・・マスターの為だけの・・・」

 

「特級の危険物じゃねーですかー!?これ触れてもヤバい奴ですよねぇ!隔離!隔離です!そんなエゲつない生物兵器はおしまいになってくださ──」

 

「まぁ・・・お姫様だっこなどとは素敵なお趣味をなさっておられます。このますたぁも中々の造形。ですがいささか睫毛が短く鼻がひくすぎるような(パタッ)」

 

「清姫さーん!?お話聞いておりましたか!?触れてもアウトだとたった今話しておりましたでしょう!?あーもう、バーサーカーはホントお話しをお聞きになられませんねぇ!?」

 

二つのリッカチョコが御披露目になり、昏倒者が現れた中、いよいよ以て玉藻がそのチョコを披露する番となる。清姫を介護しつつ、そして自慢気にチョコレートの垂れ幕に手をかける

 

「あーもう、それでは私!私のチョコレートをご照会致します!よーく御覧になさいませ!これが私の、御主人様へのLOVEを形としたゴディーヴァ!チョコレートにございます~!」

 

一息に手を下ろし、現れしは玉藻製、新郎衣装のリッカであった。格式高き新郎衣装リッカの隣に、白無垢に身を包んだ玉藻の姿を添えたいずれ至るであろう(玉藻観点)未来の新郎新婦チョコレート。それを精緻なる手際にて再現したのだ。無論、本人には無許可である

 

「我ながら、凝りに凝ってしまった未来の縮図!そして幸せなゴールインの予想図でございます!御覧いただけます?この幸せそうな二人のお顔!嬉しはずかし、どきどきと戸惑いを表しながら、広がる未来、始まる四畳半への確かな期待!最早もう!結婚するしかねーですよ!!」

 

うっとりと見つめ、そして力説にて弁舌を振るう。──女性と女性しかいないのだが、其処は呪術で何とかすると豪語して憚らない力業である

 

「どうです!?これは最早MVP、そして御主人様との幸せは貰いました!私、例えチョコレートであろうとも!御主人様を譲る気はねーのです!」

 

「私のチョコレート、それは甘く堅い毒・・・、そして唯一無二具体的には、マスターしか食べられないのですから」

 

「ならばどうでしょう?ますたぁが好む歌に、愛は負けないと言った素敵なフレーズがあります。これにならい、チョコを炙り溶けなかった者がますたぁを戴く、という決着の方針は・・・」

 

火花を散らし、マスター不在のなかリッカを巡って火花を散らす三人のマスター大好きサーヴァント達。互いに譲ることなく愛を形とし、そして憚らずに食堂にてチョコレートを見せびらかす。──そして、彼女らは失念している事柄をやがて知らされ思い知らされる

 

「──うん。それ、本人の前でやってあげるべきなんじゃないかな。ほら、審査員がいないじゃないか。最後の査定は、本人にやってもらうべきだろう?」

 

「「「・・・あっ」」」

 

「うん、気づいてなかったのかい?──いけないなぁ。視野狭窄に陥った夫婦関係は悲惨だよ?という訳で・・・」

 

即座に巻かれる鎖、用意されるハリセン。──正しき手筈を取らず、己の愛に溺れた三人のマスターLOVE勢に、この騒動を解決するために奔走する天の鎖によって──

 

「はい、確保。──反省の言い訳は考えたかい?このチョコレートはきっちり回収させてもらうからね」

 

「そ」 「ん」 「なぁ!?」

 

あわれ、一途なれど邪なりし非公式マスターNo.1決定戦は、あえなく無効となってしまいましたとさ・・・──

 




リッカ「なんて精巧な技!ワザマエ!下手をすれば私より美人!──ラミア型!そう言うのもあるのか!」

エルキドゥ「反省したかい?これからやるべき事をやるなら報告、連絡、相談を徹底すること。どんな兵器にも通信機はついているのと同じことさ。言葉を尽くして意思疏通をしなくちゃダメだ」

「「「はい・・・」」」

「見逃すのは一回だけ。次に同じことをしたら・・・雑に行くよ?(ニコッ)」

玉藻(何を!?何を雑に行くのでございましょう!?)

きよひー(なんと恐ろしい・・・バーサーカーでないのが不思議なくらいです・・・)

せーひつ(マスターが、私のチョコレートに触れてくださっている・・・あぁ・・・)

「返事は?」

「「「すみませんでした・・・」」」

「よろしい。──じゃあリッカ。どうぞ?」

「あ!はーい!じゃあ三人に、どうぞ!」

『宇賀ノ鏡チョコレート』

『火生三昧大炎上チョコレート』

『ハサン仮面チョコレート』

玉藻「んまっ──!?これを、私めに!?」

きよひー「まぁ・・・!鐘に巻き付く私、炎上する鐘・・・!素晴らしいです・・・!」

「・・・かめんを、チョコレートに・・・?凄い・・・」

リッカ「クオリティはともかく、感謝の気持ちはたっぷり込めたよ!だから、さ」

エルキドゥ「~」

「これからも、末長くよろしくね!私のこと、好きでいてくれてありがとう!私も皆の事、大好きだよ!」

「「「──♥♥♥♥」」」

バタッ

「ちょ!?」

エルキドゥ「ふふっ、特効薬だね。流石の対話力だ。──ん?」

「ど、どったの!?」

「数が足りない。──どうやらまだ、持ち去った子がいるみたいだね」


武蔵城

美少女リッカチョコレート【?】

武蔵「うへ、うへ、うへへへへ・・・出来ました、出来もうした素敵な麗しきリッカちゃん(12)・・・!あぁ、いつもの快活で元気なリッカさんは最高ですが、私の味わったことのないリッカさんをこの手でbuild致しました!うへへへへ・・・見てよし、撫でてよし、そしてそして・・・味わってよし──此処に仏様はいらっしゃいました!だって此処に!魂は宿っているんですもの!!」

【~?】

「大丈夫大丈夫・・・じゅるりっ、怖がらなくて、怖がらなくていいんですよリッカさん・・・御姉さん、御姉さん怖くないから・・・ぐへへへっ、うへへへへ・・・いっただっきまぁーーー」

リッカ【この年齢の私はこんなにピュアピュアしてねぇ────!!!(ラリアット)】

「無刀ッ──!!!??」


エルキドゥ「わぁ、小さいギルみたいだぁ」

【?】

『このあと美味しくリッカがリッカをいただきました』



将門公『直れ』

「すみませんでしたーーー!!!(土下座)」

あまこー「ワフ、ワフン(まぁまぁ・・・と宥めている)」

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